



「いつもの頓服薬を、前のクリニックでは14回分もらえたのに、今回は10回分だった」「東京都と神奈川県で、頓服薬の処方回数が違うと聞いた」「頓服は全国一律で何回までと決まっているの?」。精神科・心療内科の診察では、このような疑問を持つ方が少なくありません。
先に結論をお伝えすると、頓服薬の処方回数は、処方箋を受け付けて調剤する薬局の所在地における取扱いに沿って処理されます。東京都内の薬局では原則10回分、神奈川県内の薬局では14回分として扱うのが実務上の目安です。
これは、薬局の所在地ごとに積み重ねられてきた保険審査上の慣習によるものです。医療機関の所在地ではなく、実際に処方箋を持参する薬局の所在地によって取扱いが変わります。処方回数は、この地域基準に加えて、薬の種類、症状、受診間隔、使用頻度、年齢、身体状態、副作用の危険性などを踏まえて判断されます。
💡この記事のポイント
東京都内の薬局では原則10回分、神奈川県内の薬局では14回分を、地域の保険診療実務における目安として取り扱います。同じ医療機関が発行した処方箋でも、利用する薬局の所在地により取扱いが異なることがあります。
頓服薬とは、毎朝・毎夕など決められた時刻に続けて服用する薬ではなく、症状が現れた時など、必要な場面で臨時に服用する薬です。「頓用薬」「屯服薬」と表記されることもあります。
精神科・心療内科では、たとえば次のような指示で処方されることがあります。
処方箋には、通常「不安時 1回1錠 10回分」のように、1回に使う量、使う場面、交付する回数が記載されます。したがって、頓服薬は「10日分」ではなく、原則として「10回分」と数えます。10回分を10日で使う方もいれば、数週間から数か月かけて使う方もいます。
社会保険診療報酬支払基金が2024年9月30日に公表した統一事例では、頓服薬について「1日2回程度を限度として臨時的に投与するもの」と説明しています。毎日決まって服用する定期薬とは異なり、必要な時に限って使うことが頓服薬の基本です。
頓服薬の回数を理解するには、次の3つを分けて考える必要があります。
院外処方では、処方箋を発行した医療機関の所在地ではなく、患者さんが実際に利用する薬局の所在地に応じて回数が確認されます。そのため、同じ医療機関が発行した処方箋でも、東京都内の薬局へ持参する場合と神奈川県内の薬局へ持参する場合とで取扱いが異なることがあります。
また、新薬、麻薬、一部の向精神薬などには、薬ごとの投与期間制限があります。これは、東京都内の薬局で10回分、神奈川県内の薬局で14回分という頓服の地域取扱いとは別に確認する必要があります。
⚠️「地域の取扱い」と「薬そのものの使用制限」は別です
たとえば添付文書で1日最大量が決められている薬は、その範囲を守る必要があります。また、向精神薬の種類によって14日・30日などの投与期間上限が定められている場合があります。地域でいわれる10回・14回だけを見て、安全性を判断することはできません。
東京都については、東京都医師会の「保険診療の要点」に、「頓服薬は、東京都では原則、10回分までの処方とする」と明記されています。このため、東京都内の薬局へ11回分以上の頓服処方箋を持参した場合、薬局から医療機関へ疑義照会が行われたり、処方回数の調整が検討されます。
そのため、東京都内の薬局では、通常は一処方10回分までとして処理します。処方箋を発行した医療機関が東京都外にあっても、東京都内の薬局で調剤を受ける場合は、この取扱いに沿って確認されます。
短期間に何度も頓服を追加する必要がある場合は、単に回数を増やすのではなく、定期薬への変更や治療計画の見直しを検討します。患者さんの安全性と保険診療上の適切な処理の両方を考えた対応です。
神奈川県内の薬局では、実務上、頓服薬は一処方14回分までとして取り扱うのが一般的です。同じ医療機関が発行した同じ種類の頓服薬でも、東京都内の薬局で受け取る場合と、神奈川県内の薬局で受け取る場合とで取扱いが異なります。
これは、神奈川県内の薬局と審査実務の間で共有されてきた慣習的な取扱いです。したがって、神奈川県内の薬局で調剤する場合は、14回分を地域の実務基準として処理します。
もちろん、14回分がすべての患者さんに必要という意味ではありません。症状、使用頻度、副作用、受診間隔などによって、処方回数を少なくする場合があります。
神奈川県内の薬局での取扱い
頓服薬は、通常一処方14回分までとして処理します。医療機関の所在地ではなく、調剤を行う薬局の所在地が基準になります。
頓服薬の回数に関する地域の取扱いは、全国共通の一覧として一括公表されているとは限りません。社会保険診療報酬支払基金は審査の取扱いを順次統一していますが、地域で長く用いられてきた慣習的な基準が実務に残っている場合があります。
頓服回数については、地域ごとの「暗黙の取扱い」が知られています。以下は、調剤する薬局の所在地ごとに、医療実務上の目安が知られている地域だけを整理したものです。正式な全国共通表ではなく、同じ都道府県内でも薬局、薬剤、保険者などによって取扱いが異なる場合があります。
| 都道府県 | 回数の目安 |
|---|---|
| 北海道 | 14回前後 |
| 埼玉県 | 10回分 |
| 千葉県 | 14回分前後 |
| 東京都 | 原則10回分 |
| 神奈川県 | 14回分 |
| 福井県 | 10~14回程度 |
| 愛知県 | 14回分程度 |
| 大阪府 | 14回分程度 |
| 京都府 | 14回分程度 |
| 兵庫県 | 14回分程度 |
| 奈良県 | 14回分程度 |
| 滋賀県 | 10~14回程度 |
| 福岡県 | 14回分程度 |
※東京都の原則10回分は、東京都医師会の公開資料に記載されています。北海道では、広域で通院が難しい事情などから、痛み止め等を20~30回分として処理する例もあります。
📍全国一覧を見る時の注意
地域の取扱いは、時期、薬剤、保険者、審査機関によって変更されることがあります。上記の回数は、患者さんがその回数を必ず受け取れるという意味ではありません。処方箋を受け付けた薬局が所在地の最新運用と照らし合わせて処理します。
薬局所在地で通常取り扱う回数と異なる処方箋を受け付けた場合、薬局から医療機関へ疑義照会が行われます。これは、1回量、用法、回数、薬の種類などに誤りがないかを確認し、安全かつ適切に調剤するための通常の手続きです。
たとえば、東京都内の薬局で11回分以上、神奈川県内の薬局で15回分以上の頓服処方箋を受け付けた場合、薬剤師が薬局所在地の取扱いと照らし合わせて確認します。疑義照会を受けた医療機関では、原則として薬局所在地の基準に回数を整え、必要に応じて定期薬への変更や次回受診時期の調整を行います。
調剤後のレセプト審査でも、病名、薬剤、用法、処方量などが確認されます。薬局所在地の実務基準に沿って処理することは、医療機関と薬局の間で不要な確認や査定を減らし、患者さんへ円滑に薬をお渡しすることにつながります。
地域の目安を超える量が必要に感じられる時は
頓服の回数だけを増やすのではなく、症状が強くなっている理由、定期薬の効果、服用後の副作用などを診察で確認し、治療全体を見直します。
「頓服14回」という話は、新薬や向精神薬で聞く「14日分まで」という投与期間制限と混同されやすいため、注意が必要です。この2つは別の考え方です。
| 頓服の回数 | 投与期間上限 |
|---|---|
| 数え方 服用する「回数」 |
数え方 処方する「日数」 |
| 対象 必要時に臨時使用する薬 |
対象 国が指定した特定の薬 |
| 取扱い 調剤する薬局所在地の審査実務に沿って処理 |
取扱い 薬ごとの規定に沿って処理 |
| 例 不安時1錠・10回分 |
例 就寝前1錠・14日分 |
同じ薬がこの両方に関係する場合もあります。たとえば、投与期間上限がある向精神薬を頓服で処方する場合には、調剤する薬局所在地で取り扱う頓服回数と、その薬に定められた投与期間や最大用量の両方を確認して処理します。
同じ薬でも、使用頻度によって「頓服」と「定期薬」のどちらが適切かは変わります。月に数回、特定の場面だけで使うのであれば、頓服として管理しやすいことがあります。一方、ほぼ毎日同じ時刻に使用している場合、実質的には定期的な服用になっている可能性があります。
この場合、医師は単に処方箋の書き方を変えるだけでなく、そもそもその薬を毎日続けることが適切か、別の治療が必要かを検討します。特に、依存や耐性が問題になり得る抗不安薬・睡眠薬では、急な中止により不安、不眠、震えなどの離脱症状が出ることがあります。自己判断で急にやめたり、定期的に飲むよう変更したりせず、医師と相談しながら調整することが大切です。
「頓服が多く必要になった」という変化は、悪い報告ではありません。治療を今の状態に合わせるための重要な情報です。診察では、回数を少なく見せようとせず、実際に使った頻度をそのまま伝えてください。
院外処方では、医療機関が処方箋を発行し、患者さんが選んだ薬局が調剤します。薬局は、調剤内容を調剤報酬明細書(調剤レセプト)にまとめ、審査支払機関へ請求します。このため、処方回数の地域取扱いは、処方箋を発行した医療機関ではなく、実際に調剤を行う薬局の所在地が基準になります。
調剤レセプトの審査では、薬の効能・効果、用法・用量、病名、処方量などを確認します。都道府県単位で判断が積み重ねられてきた経緯から、同じ処方箋でも、どの都道府県の薬局で調剤するかによって取扱いが異なる場合があります。
現在、支払基金は「審査の一般的な取扱い」を公表し、地域差の縮小に取り組んでいます。たとえば、2024年9月の統一事例では、5-HT3受容体拮抗型制吐剤などは頓服として原則認める一方、経口抗菌薬、特定の抗凝固薬、神経障害性疼痛などに用いる一部の薬は、頓服として原則認めないと整理されました。つまり、審査は単に何回分かだけでなく、その薬を頓服として使うこと自体が医学的に適切かも見ています。
精神科・心療内科の頓服薬は、強い不安、不眠、緊張、焦燥感などを和らげるうえで役立つことがあります。「手元に薬がある」という安心感によって、実際の服用回数が少なくなる方もいます。
一方で、薬の種類によっては、眠気、ふらつき、注意力低下、記憶への影響、依存、離脱症状などに注意が必要です。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」では、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬について、高齢者では有害事象が生じやすく、依存の可能性もあるため特に慎重な使用が必要とされています。
頓服の量を決める時に確認すること
頓服を頻回に必要とする状態は、「意志が弱い」「我慢が足りない」という意味ではありません。症状が十分に落ち着いていない、生活上のストレスが強い、定期薬の効果が不十分、心理療法や環境調整が必要といったサインである可能性があります。そのため、単に頓服の回数を増やすのではなく、治療全体を見直すことが大切です。
「不安時」「不眠時」など、どの症状に使う薬かを確認しましょう。同じ不安時の薬でも、「1日1回まで」「少なくとも何時間空ける」など指示が異なることがあります。自己判断で1回量を増やしたり、短時間に追加したりしないでください。
スマートフォンのメモなどに、服用日時、きっかけ、症状の強さ、効き方、副作用を残すと、次回診察で治療を調整しやすくなります。「何となくたくさん使った」ではなく、実際の頻度が分かることが大切です。
睡眠薬や抗不安薬の中には、アルコールと一緒に使用すると眠気や判断力低下が強くなるものがあります。また、服用中は自動車運転や危険を伴う作業を避ける必要がある薬もあります。薬ごとの説明書と医師・薬剤師の指示を確認してください。
予定より早く薬がなくなりそうな時は、受診日まで我慢したり、他人の薬を使ったりせず、早めに医療機関へ相談してください。服用回数が増えた背景を確認し、安全な対応を一緒に考えます。
以前の処方薬が残っていても、現在の定期薬との組合せや体調によっては適さないことがあります。家族や知人へ渡すことも避けてください。残薬は診察時や薬局で相談しましょう。
診察前に確認しておくとよい4項目
Q1. 東京では、頓服は何回分になりますか?
東京都内の薬局では、原則として一処方10回分までとして取り扱います。医療機関が東京都外にあっても、東京都内の薬局へ処方箋を持参した場合は、この取扱いに沿って確認されます。
Q2. 神奈川県では14回分処方されますか?
神奈川県内の薬局では、一処方14回分までを実務上の目安として取り扱います。ただし、14回分を必ず処方するという意味ではなく、安全性や必要性から少なくする場合があります。
Q3. 10回・14回は「1か月の上限」ですか?
通常は一処方で取り扱う回数の目安です。ただし、短期間に追加処方を繰り返す場合は、月全体の使用状況を確認し、治療内容の見直しを検討します。
Q4. 以前は20回分処方されたのに、今回は減ったのはなぜですか?
以前と今回で利用した薬局の所在地が異なる可能性があります。処方箋を発行した医療機関の場所ではなく、調剤する薬局所在地の取扱いによって確認される回数が変わります。また、薬剤、診療時期、病状、医師の治療方針によって回数が異なる場合もあります。
Q5. 薬局から「回数が多いので確認します」と言われました。処方ミスですか?
必ずしも処方ミスではありません。薬剤師が安全性、用法、地域の審査運用などを確認するため、医療機関へ疑義照会することがあります。地域の取扱いに沿って、回数や用法を調整する場合があります。
Q6. 頓服を毎日使ってはいけませんか?
薬によっては一時的に連日使用することもありますが、頓服がほぼ毎日必要なら、臨時薬としての使い方が現在の状態に合っているか見直す必要があります。自己判断で中止・増量せず、使用頻度を医師へ伝えましょう。
院外処方では、当院の所在地ではなく、患者さんが処方箋を持参する薬局の所在地によって取扱いが変わります。東京都内の薬局では原則10回分、神奈川県内の薬局では14回分として処理されます。当院では、患者さんが利用する薬局の地域取扱いと、症状・安全性を考慮して処方します。
頓服を使った回数、効果、眠気などの副作用、残っている薬の数を診察時に教えていただくと、より適切な判断につながります。頓服が足りないと感じる場合も、遠慮なくご相談ください。必要に応じて、定期薬の調整、服用方法の見直し、生活上の工夫、心理的支援などを含めて治療方針を考えます。
🌿大切なのは「何回もらえるか」だけではありません
頓服は、つらい症状を乗り切るための大切な選択肢です。同時に、必要回数が増えている時には、病状や治療を見直す手がかりにもなります。処方回数について疑問がある時は、自己判断で調整せず、診察時に率直にご相談ください。
※本記事は2026年9月1日時点の公開情報と医療実務上の取扱いをもとに作成した一般的な解説です。診療報酬の審査取扱いは改定・統一・変更されることがあり、保険者や個別事例によって判断が異なる場合があります。服用中の薬については、主治医または薬剤師にご相談ください。