



「健康のためには肉を食べた方がよい」「植物性タンパク質の方が体によい」「筋肉をつけるなら動物性タンパク質でなければ意味がない」など、タンパク質についてはさまざまな情報があります。
タンパク質は、肉、魚、卵、乳製品などに含まれる動物性タンパク質と、大豆、豆類、穀類、ナッツなどに含まれる植物性タンパク質に分けられます。
どちらか一方が常に優れているわけではありません。それぞれに長所と注意点があり、健康への影響はタンパク質だけでなく、一緒に含まれている脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、塩分、加工の程度によっても変わります。
たとえば、同じ動物性タンパク質でも、魚、鶏むね肉、卵、ヨーグルト、脂身の多い肉、ハムやソーセージでは、栄養的な特徴が異なります。
植物性タンパク質についても、豆腐、納豆、豆類、玄米、ナッツと、砂糖や油脂を多く含む加工食品とでは、健康への影響を同じように考えることはできません。
💡この記事のポイント
大切なのは、「動物性か植物性か」という二択ではなく、何を、どのくらい、どのような形で食べるかです。基本的には両方を上手に組み合わせ、加工肉や脂身の多い肉に偏らず、魚、大豆製品、豆類、卵、乳製品、脂身の少ない肉などから幅広く摂ることが勧められます。
タンパク質は、炭水化物、脂質とともに、身体にとって重要なエネルギー産生栄養素の一つです。
単に筋肉の材料になるだけではなく、身体の中でさまざまな働きをしています。
食事から摂取したタンパク質は、消化の過程で主にアミノ酸へと分解されます。吸収されたアミノ酸は、必要に応じて筋肉や酵素、ホルモンなどの合成に利用されます。
人の身体を構成するタンパク質には20種類のアミノ酸が関係しています。そのうち、身体の中で十分につくることができず、食事から摂る必要があるものを必須アミノ酸と呼びます。
成人では、次の9種類が必須アミノ酸です。
✅ 9種類の必須アミノ酸
ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン
タンパク質の栄養価を考える際には、単純なグラム数だけでなく、必須アミノ酸の構成や消化・吸収されやすさも重要になります。
動物性タンパク質とは、主に動物由来の食品に含まれるタンパク質です。
代表的な食品には、次のようなものがあります。
一般的に、動物性タンパク質は必須アミノ酸を比較的バランスよく含み、消化吸収率も高い食品が多いとされています。
肉や魚は、タンパク質だけでなく、鉄、亜鉛、ビタミンB群なども含みます。魚の種類によっては、EPAやDHAなどの脂肪酸も摂取できます。
卵はタンパク質のほか、脂質、ビタミン、ミネラルなどを含みます。牛乳やヨーグルトなどの乳製品からは、カルシウムやビタミンB2なども摂ることができます。
動物性タンパク質の主な長所
必須アミノ酸を比較的バランスよく含み、少ない食事量でもタンパク質を確保しやすい点が特徴です。食欲が低下している人、高齢者、成長期の子どもなどにとって、効率よく栄養を摂れる食品になることがあります。
ただし、動物性食品であれば、すべて同じというわけではありません。
脂身の多い肉、ベーコン、ハム、ソーセージなどを多く食べると、飽和脂肪酸や塩分の摂取量も増えやすくなります。
そのため、「動物性タンパク質がよいか悪いか」ではなく、魚なのか、脂身の少ない肉なのか、加工肉なのかまで考えることが大切です。
植物性タンパク質とは、植物由来の食品に含まれるタンパク質です。
代表的な食品には、次のようなものがあります。
植物性食品は、タンパク質と同時に、食物繊維、カリウム、マグネシウム、不飽和脂肪酸、さまざまな植物由来成分を摂りやすい点が特徴です。
豆類、全粒穀物、ナッツなどを取り入れると、食事全体の食物繊維量を増やすことにもつながります。
食物繊維は、便通を整えるだけでなく、食後血糖値の急激な上昇を抑えることや、腸内環境を支えることにも関係しています。
植物性タンパク質の主な長所
タンパク質だけでなく、食物繊維や不飽和脂肪酸などを一緒に摂りやすく、食事全体のバランスを整えやすいことが特徴です。
一方、植物性タンパク質は食品によって、特定の必須アミノ酸が相対的に少ないことがあります。また、食物繊維などの影響もあり、動物性タンパク質と比べて消化吸収率が低い食品もあります。
ただし、これは「植物性タンパク質では身体をつくれない」という意味ではありません。
十分なエネルギーとタンパク質を摂り、複数の食品を組み合わせれば、植物性食品を中心とした食事でも必要なアミノ酸を補うことは可能です。
タンパク質について調べると、アミノ酸スコア、PDCAAS、DIAASといった言葉を目にすることがあります。
これらは、タンパク質に含まれる必須アミノ酸の構成や、消化されて身体に利用される程度などを評価するための指標です。
動物性食品は、一般的に必須アミノ酸のバランスと消化性に優れたものが多くあります。一方、植物性食品は、食品によって不足しやすい必須アミノ酸が異なります。
たとえば、穀類ではリジンが比較的少なく、豆類ではメチオニンが比較的少ない傾向があります。
そのため、米と大豆製品、パンと豆類など、異なる食品を組み合わせることで、お互いの不足しやすいアミノ酸を補いやすくなります。
🍚 身近な組み合わせ
ご飯と納豆、ご飯と豆腐のみそ汁、パンと豆のスープ、そばと豆腐など、日本の一般的な食事にも、穀類と豆類を自然に組み合わせる献立が多くあります。
以前は、「不足しやすいアミノ酸を同じ食事の中で厳密に組み合わせなければならない」と考えられることもありました。
しかし、健康な成人では、毎食完全にそろえることにこだわるより、一日を通してさまざまな食品を摂ることが現実的です。
なお、大豆は植物性食品の中では、比較的バランスのよいタンパク質源です。豆腐、納豆、豆乳などは、日本の食生活にも取り入れやすい食品です。
国際的には、タンパク質の質を評価する際、必須アミノ酸ごとの消化性を考慮するDIAASという方法が提案されています。単に「タンパク質が何グラムあるか」だけでなく、実際に利用できる必須アミノ酸を評価する考え方です。[1]
動物性タンパク質の注意点として、「タンパク質そのもの」よりも、食品に一緒に含まれる脂質や塩分、加工の程度が問題になることがあります。
特に、脂身の多い肉や加工肉に偏ると、飽和脂肪酸や塩分を多く摂りやすくなります。
⚠️ 頻度に注意したい食品
一方、魚、卵、乳製品、脂身の少ない肉を適量食べることまで避ける必要はありません。
たとえば、肉料理が続いている場合に、魚や大豆製品へ置き換えるだけでも、脂質や食物繊維の摂り方を変えることができます。
健康への影響を考える時は、動物性タンパク質を一つの集団として考えるのではなく、食品の種類と調理方法を分けて考えることが重要です。
植物性食品は健康的なイメージがありますが、「植物性」と表示されていれば、すべて健康的とは限りません。
植物由来の原料を使った食品でも、砂糖、塩分、油脂が多く、高度に加工されている場合があります。
たとえば、植物性の代替肉やプロテインバーには便利な面がありますが、商品によって塩分、脂質、糖類、添加物の量は異なります。
✅ 植物性食品を選ぶ時の確認点
また、豆類を急に増やすと、食物繊維や発酵性の糖質の影響で、腹部膨満感やガスが増えることがあります。
普段あまり豆類を食べていない場合は、少量から始め、体調をみながら徐々に増やすとよいでしょう。
植物性食品だけで食事を構成する場合には、タンパク質以外の栄養素にも注意が必要です。
特に完全菜食では、ビタミンB12を一般的な植物性食品から十分に摂ることは困難です。鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンD、ヨウ素、n-3系脂肪酸などについても、不足しないよう計画する必要があります。
WHOも、植物性食品を中心とする食事には健康上の利点が期待される一方、極端に制限的な食事では一部の栄養素が不足する可能性があるとしています。[2]
「動物性タンパク質と植物性タンパク質のどちらが健康によいのか」という質問に、単純な答えはありません。
観察研究やメタ解析では、植物性タンパク質の摂取量が多い人ほど、全死亡や心血管疾患による死亡が少ない傾向が報告されています。[3]
また、赤身肉や加工肉の一部を、豆類、ナッツ、全粒穀物などへ置き換えることが、心血管疾患、2型糖尿病、全死亡のリスク低下と関連するという研究もあります。[4][5]
ただし、こうした結果の多くは観察研究です。
植物性食品を多く食べる人は、喫煙が少ない、運動習慣がある、野菜や果物も多く食べるなど、ほかの生活習慣が異なる可能性があります。そのため、「植物性タンパク質だけが直接寿命を延ばす」とまでは断定できません。
さらに、置き換える対象によって結果は異なります。
💡何から何へ置き換えるかが重要
加工肉を豆類へ置き換える場合と、魚を砂糖や油脂の多い植物性加工食品へ置き換える場合では、健康への影響は同じではありません。
WHOは、健康的な食事について、十分性、バランス、節度、多様性を基本原則としています。また、成人では赤身肉などの一部を植物性タンパク質源へ置き換えることが健康に役立つ可能性がある一方、子ども、妊娠・授乳期などでは、動物性食品が栄養確保に重要になる場面もあるとしています。[6]
したがって、現実的には、動物性タンパク質を完全に排除するのではなく、加工肉や脂身の多い肉に偏らないようにしながら、魚、大豆製品、豆類、卵、乳製品、脂身の少ない肉を組み合わせる方法が取り入れやすいでしょう。
筋肉をつけるためには、タンパク質の量だけでなく、筋力トレーニング、総エネルギー摂取量、睡眠、年齢、食事のタイミングなども関係します。
動物性タンパク質は、必須アミノ酸やロイシンを比較的多く含み、消化吸収されやすい食品が多いため、筋肉の合成という点では効率がよい場合があります。
研究全体では、同程度のタンパク質量を摂った場合でも、動物性タンパク質の方が筋肉量の増加にわずかに有利である可能性が報告されています。ただし、筋力については明確な差が認められない研究もあり、差の大きさは限定的です。[7]
植物性タンパク質でも、次の点を意識すると必要量を確保しやすくなります。
実際に、十分なタンパク質量を確保した植物性中心の食事でも、筋力トレーニングによる筋肉量や筋力の増加を支えられることが示されています。
つまり、筋肉づくりのために必ず肉だけを大量に食べる必要はありません。
一方、高齢者、食が細い人、体重が減っている人では、植物性食品だけで必要なタンパク質とエネルギーを確保することが難しい場合があります。その場合は、卵、魚、乳製品なども取り入れ、食事量を無理なく確保することが大切です。
脳内で働く神経伝達物質の中には、アミノ酸を材料として合成されるものがあります。
たとえば、トリプトファンはセロトニンの合成に、チロシンはドーパミンやノルアドレナリンの合成に関係します。
しかし、特定のタンパク質やアミノ酸を食べれば、うつ病や不安障害が治るという単純な関係ではありません。
脳内へのアミノ酸の移行には、ほかのアミノ酸との競合、炭水化物の摂取、身体の代謝状態など、さまざまな要因が関係しています。
また、気分の落ち込みや不安が強い時には、次のような変化が起きることがあります。
このような状態が続くと、タンパク質だけでなく、エネルギー、ビタミン、ミネラルなども不足しやすくなります。
精神的につらい時には、理想的な食事を完璧につくろうとする必要はありません。
ゆで卵、納豆、豆腐、ヨーグルト、牛乳や豆乳、ツナ缶、さば缶など、準備の負担が少ない食品を一品追加する方法でも構いません。
ただし、食欲不振や体重減少が続く場合、食事がほとんど摂れない場合、うつ症状が強い場合には、食事だけで解決しようとせず、医療機関へ相談することが大切です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人のタンパク質の推奨量として、主に次の量が示されています。[8]
👨 成人男性
18~64歳:1日65g
65歳以上:1日60g
👩 成人女性
18歳以上:1日50g
これは、一般的な集団を対象とした目安です。
実際に必要な量は、年齢、体格、活動量、妊娠・授乳、筋力トレーニングの有無、病気の有無などによって変わります。
また、タンパク質を一食に集中させるより、朝食、昼食、夕食に分けて摂った方が、食事として無理なく確保しやすくなります。
朝食がパンとコーヒーだけの場合
ゆで卵、ヨーグルト、牛乳、豆乳、チーズなどを一品追加するだけでも、タンパク質を補いやすくなります。
食品に含まれるタンパク質量は、食品の種類や量によって異なりますが、おおよそのイメージとしては次のようになります。
数値は製品や調理状態によって変わるため、厳密に計算しすぎる必要はありません。まずは、毎食に何らかのタンパク質源が含まれているかを確認するとよいでしょう。
動物性タンパク質と植物性タンパク質について、すべての人に当てはまる理想的な比率は決められていません。
「動物性50%、植物性50%にしなければならない」と厳密に考える必要はありません。
まずは、現在の食事を振り返り、偏っている部分を少し調整することが現実的です。
✅ 取り入れやすい工夫
たとえば、次のような献立であれば、動物性と植物性の両方を自然に摂ることができます。
🌅 朝食
ご飯、納豆、卵、野菜のみそ汁
☀️ 昼食
そば、豆腐または鶏肉、野菜
🌙 夕食
魚、ご飯、野菜、豆類や海藻の副菜
食事は一回ごとの完成度より、数日から一週間程度の流れで考えることが大切です。
外食で肉料理を食べた日があっても、次の食事で魚や大豆製品を選ぶなど、長い目で調整すれば構いません。
一般的な生活を送っている人で、通常の食事から十分なタンパク質を摂れている場合、プロテイン製品は必須ではありません。
一方、運動量が多い人、食事量が少ない人、忙しくて食事を十分に摂れない人にとっては、補助的に利用しやすいことがあります。
プロテインには、主に次のような種類があります。
どれを選ぶかは、目的、乳製品への耐性、アレルギー、味、価格、食生活などによって変わります。
筋肉を増やしたい場合でも、プロテインを飲むだけでは十分ではありません。筋力トレーニング、エネルギー摂取、睡眠、継続が必要です。
また、プロテインを大量に追加すると、総エネルギー量が増えたり、通常の食事が減って食物繊維やビタミンが不足したりすることがあります。
基本は食事で整え、不足する部分を補う目的で使用するのがよいでしょう。
健康な人にとって適切な食事が、すべての病気の人にそのまま当てはまるとは限りません。
特に、次のような場合には自己判断で高タンパク食を始めず、医師や管理栄養士に相談してください。
腎臓病では、病期や治療内容によって、タンパク質を制限する場合と、むしろ十分に確保する必要がある場合があります。
透析前と透析開始後でも考え方が異なるため、「腎臓に悪いからタンパク質を減らす」と自己判断することは避けてください。
また、食物アレルギーがある場合、大豆、乳、卵、ナッツなどは原因食品になることがあります。代替食品を使う際にも、原材料表示の確認が必要です。
Q. 植物性タンパク質だけでは筋肉がつきませんか?
植物性タンパク質でも、十分な量とエネルギーを摂り、複数の食品を組み合わせ、筋力トレーニングを行えば筋肉づくりを支えることは可能です。ただし、動物性タンパク質より多めの量や食品の組み合わせを意識した方がよい場合があります。
Q. 肉は食べない方が健康によいですか?
肉を完全に避ける必要はありません。加工肉や脂身の多い肉に偏らず、脂身の少ない肉を適量にして、魚、大豆製品、豆類、卵なども組み合わせることが大切です。
Q. 大豆製品は毎日食べてもよいですか?
通常の食品として豆腐、納豆、豆乳などを適量食べることは、一般的には問題ありません。ただし、大豆だけに偏るのではなく、魚、卵、乳製品、ほかの豆類なども含めて食事を多様にすることが大切です。
Q. 動物性と植物性は半分ずつにするべきですか?
すべての人に共通する厳密な比率は決められていません。現在、肉や加工肉に偏っている人は、大豆製品、豆類、魚などを増やすところから始めるとよいでしょう。
Q. タンパク質を多く摂れば摂るほど健康になりますか?
必要量を超えて増やせば、その分だけ筋肉が増えるわけではありません。タンパク質に偏ることで、総エネルギー、脂質、塩分が増えたり、野菜や穀類が減ったりする可能性もあります。食事全体のバランスが重要です。
動物性タンパク質には、必須アミノ酸を比較的バランスよく含み、効率よくタンパク質を摂りやすいという長所があります。
植物性タンパク質には、タンパク質とともに食物繊維、不飽和脂肪酸、カリウム、マグネシウムなどを摂りやすいという長所があります。
どちらか一方を「よい食品」「悪い食品」と決めるのではなく、食品の種類や加工の程度まで考えることが大切です。
✅ 食事を整える基本
加工肉や脂身の多い肉に偏らず、魚、大豆製品、豆類、卵、乳製品、脂身の少ない肉を組み合わせましょう。毎食に何らかのタンパク質源を一品入れ、野菜、穀類、果物なども含めて、食事全体を整えることが重要です。
食事は毎日完璧である必要はありません。
「今週は肉料理が多かったから、今日は魚にする」「朝食に納豆やヨーグルトを追加する」といった小さな調整を重ねることが、続けやすい方法です。
持病がある方、体重減少が続いている方、食事が十分に摂れない方、極端な食事制限を行っている方は、医療機関や管理栄養士へ相談してください。
※本記事は一般的な医学・栄養学的情報を提供するものであり、個別の診断や食事指導に代わるものではありません。持病や治療内容によって適切なタンパク質量は異なります。