



「初対面の人と何を話せばよいか分からない」「会話を盛り上げようとして、自分ばかり話してしまう」「相手に良い印象を持ってもらいたいのに、会話が続かない」。このような悩みを抱えている方は少なくありません。
会話が得意な人というと、話題が豊富で、面白い話を次々にできる人を想像するかもしれません。しかし、実際には、自分が上手に話すこと以上に、相手に関心を向け、適切な質問をすることが、良い印象につながる可能性があります。
特に効果的だと考えられているのが、相手の話を受けて、もう少し詳しく尋ねるフォローアップ質問です。
たとえば、相手が「先週、久しぶりに旅行に行きました」と話した時に、すぐ自分の旅行の話を始めるのではなく、
「それで、どうなったんですか?」
と聞いてみるのです。
この一言には、「あなたの話を聞いています」「続きを知りたいと思っています」というメッセージが含まれています。
💡この記事のポイント
人から好かれるために、無理に面白い話をする必要はありません。相手の話をよく聞き、その内容を受けて「もう少し聞かせてください」と質問することが、会話の安心感や好印象につながる可能性があります。
質問と好感度の関係を調べた代表的な研究として、ハーバード大学のKaren Huang氏らが2017年に発表した研究があります。
研究では、見知らぬ相手同士に、15分間の会話をしてもらいました。参加者の目的は、会話を通じてお互いのことを知ることでした。
参加者の一部には、
という異なる指示が出されました。
その結果、質問を多くするよう指示された人は、質問を少なくするよう指示された人よりも、会話相手から高い好感を持たれる傾向がみられました。
さらに研究者たちは、質問を多くした人が、相手から反応性が高い人として受け取られていたことに注目しています。
ここでいう反応性とは、単に返事が速いという意味ではありません。
という感覚のことです。
人は、自分の話を真剣に聞いてくれる相手に対して、安心感や親しみを持ちやすくなります。質問は、その関心を具体的な行動として伝える方法の一つなのです。
ただし、ここで注意したいのは、「9問すれば必ず好かれる」という意味ではないことです。
9問と4問は、研究者が事前に行った調査における質問数の分布を参考に設定した基準です。9という数字自体に特別な心理的効果があるわけではありません。
重要なのは質問数を数えることではなく、相手の話に関心を向けながら、自然に質問を重ねることです。
すべての質問が、同じように好感度を高めるわけではありません。
研究では、会話中の質問をいくつかの種類に分類しています。その中で、相手からの好感と特に関係していたのが、フォローアップ質問でした。
フォローアップ質問とは、相手が直前に話した内容を受けて、続きを尋ねる質問です。
たとえば、次のような会話です。
相手:「最近、仕事の部署が変わったんです」
自分:「そうなんですね。新しい部署はどんな雰囲気ですか?」
あるいは、
相手:「昨日は子どもの運動会でした」
自分:「それはお疲れさまでした。お子さんはどんな競技に出たんですか?」
という質問です。
フォローアップ質問をするためには、相手の話を聞いて、その内容を理解している必要があります。そのため、質問そのものだけでなく、「あなたの話をきちんと聞いています」という姿勢が伝わります。
一方、相手の発言とは関係なく、突然別の話題に移る質問は、話を広げる効果が弱くなることがあります。
相手:「最近、仕事の部署が変わったんです」
自分:「そうなんですね。休日は何をしていますか?」
この質問自体が悪いわけではありません。しかし、相手の発言を十分に受け止めないまま話題を変えると、「今の話にはあまり興味がなかったのかな」と感じさせる可能性があります。
会話を続ける時には、新しい話題を探す前に、まず今話している内容をもう一段掘り下げることがポイントです。
「それで、どうなったんですか?」という質問は、とても単純です。しかし、会話では幅広く使うことができます。
この言葉には、次のような特徴があります。
たとえば、相手が「上司に呼ばれて、少し驚いたんです」と話した時、すぐに「何か失敗したんじゃないですか」と推測すると、相手の感じ方とずれてしまうことがあります。
一方で、
「それで、どうなったんですか?」
と尋ねれば、相手自身の言葉で続きを話してもらえます。
また、「その時、どう思いましたか?」「一番大変だったのはどの部分ですか?」という質問も、相手の経験や気持ちを理解するうえで役立ちます。
質問をする時は、相手の出来事を詳しく知る質問と、相手の気持ちを尋ねる質問を使い分けると、会話が深まりやすくなります。
相手の気持ちを決めつけるのではなく、確認するように尋ねることが大切です。
「それは絶対につらかったでしょう」と断定するよりも、「それは大変だったのではないですか?」と少し余白を残した方が、相手は自分の感じ方を訂正したり、補足したりしやすくなります。
多くの人は、自分の経験や考え、気持ちを誰かに理解してもらいたいという欲求を持っています。
しかし、ただ話す機会が与えられればよいわけではありません。相手がスマートフォンを見ていたり、うわの空だったり、すぐに自分の話へ戻したりすると、「本当は興味がないのだろう」と感じることがあります。
反対に、相手が自分の話に沿って質問してくれると、
と感じやすくなります。
質問の効果は、質問文そのものだけで生まれるわけではありません。質問を通して伝わる、理解・受容・関心・配慮が重要です。
そのため、質問を考える時には、「何を聞けば会話が続くか」だけでなく、「相手は今、何を分かってほしいのだろう」と考えてみることが役立ちます。
会話に苦手意識があると、「次は何を質問すればよいだろう」と焦ってしまうことがあります。
そのような時は、次の3つの手順を意識すると、比較的自然に会話を続けやすくなります。
最初から質問するのではなく、まず短い反応を返します。
この短い受け止めがあるだけで、質問が尋問のように聞こえにくくなります。
会話の中で、相手が強調した言葉や、感情が動いた部分を探します。
たとえば、相手が「大変だったけれど、最後は楽しかった」と言った場合には、「大変だった」と「楽しかった」の両方が質問の手がかりになります。
「どのあたりが一番大変だったんですか?」
「最後は何が楽しかったんですか?」
相手が実際に使った言葉をもとに質問すれば、無理に新しい話題を考える必要がありません。
質問は、深く踏み込みすぎなくても構いません。相手が話した内容を、一段だけ詳しく尋ねます。
受け止める → 言葉を拾う → 一段だけ詳しく尋ねる
たとえば、
相手:「最近、料理を始めたんです」
自分:「そうなんですね。料理を始めたんですね」
自分:「最初は何を作ったんですか?」
という流れです。
この方法であれば、会話のために大量の話題を準備しておかなくても、相手の言葉の中から次の質問を見つけられます。
質問が多ければ多いほど、必ず良い会話になるわけではありません。
質問の仕方によっては、相手に負担を与えたり、尋問されているように感じさせたりすることがあります。
❌ 尋問のようになりやすい質問
たとえば、
「どこに行ったんですか?」
「誰と行ったんですか?」
「何時に行ったんですか?」
「いくらかかったんですか?」
「なぜそこを選んだんですか?」
と質問だけを続けると、相手は調査を受けているように感じるかもしれません。
質問と質問の間には、
といった反応を挟むことが大切です。
また、相手が短い返事を繰り返している、視線を外している、話題を変えようとしている場合には、その話を続けたくない可能性があります。
良い質問とは、詳しい情報を引き出す質問ではなく、相手が話したい範囲で話せる質問です。
質問をしていても、実際には相手の話を聞くためではなく、自分が話したい話題への導入として質問していることがあります。
たとえば、
自分:「週末は何をしていたんですか?」
相手:「家族と近所の公園に行きました」
自分:「そうなんですね。私は箱根の高級旅館に行ってきたんです」
という会話です。
最初に質問していますが、相手の返答をほとんど受け止めず、自分の話へ戻っています。
このような会話は、質問が自分の話を始めるための前置きになっているため、英語ではboomeraskingと呼ばれることがあります。質問がブーメランのように自分へ戻ってくるという意味です。
自分の経験を話すこと自体は悪くありません。会話では、質問と自己開示の両方が必要です。
ただし、自分の話をする前に、相手の回答を一度受け止め、できれば一つフォローアップ質問を加えると、印象が大きく変わります。
自分:「週末は何をしていたんですか?」
相手:「家族と近所の公園に行きました」
自分:「いいですね。お子さんも楽しんでいましたか?」
相手:「はい。久しぶりに思い切り遊べたようです」
自分:「それは良かったですね。私も週末に少し出かけてきました」
この流れであれば、相手への関心を示したうえで、自分の話も自然に共有できます。
会話が苦手な方は、会話中に自分自身を強く監視していることがあります。
このように自分を監視し続けると、相手の話を聞くための注意が少なくなります。その結果、相手が話した内容を覚えられず、次の質問も思いつきにくくなります。
そのような時には、「自分がどう見られているか」から、「この人は何を伝えようとしているのか」へ、注意を少し移してみます。
「うまく話そう」ではなく、「相手の話を一つ知ろう」
と考えると、会話に対する負担が軽くなることがあります。
ただし、対人不安や社交不安が強い場合、「質問をしなければならない」と新しいノルマを作ると、かえって緊張が強くなることがあります。
質問数を数える必要はありません。最初は、相手の話の中から一つだけ言葉を拾い、「それはどうだったんですか?」と聞いてみる程度で十分です。
良い質問をしても、相手が答えている間に次の質問を考えていたら、十分に話を聞くことができません。
大切なのは、質問をした後です。
沈黙が数秒続いても、すぐに埋める必要はありません。
相手が思い出したり、考えを整理したりしている可能性があります。少し待つことで、相手がより本音に近い内容を話し始めることもあります。
また、質問の回答に対して、評価や助言を急がないことも大切です。
相手が「最近、仕事に行くのが少しつらくて」と話した時に、
「転職すればいいですよ」
「気にしすぎですよ」
「運動した方がいいですよ」
とすぐに解決策を伝えると、相手は「気持ちを分かってもらえなかった」と感じるかもしれません。
まずは、
「そうだったんですね。どのような時に、特につらいと感じますか?」
と尋ねることで、相手が困っている内容をより正確に理解できます。
質問は、人との距離を縮める便利な方法です。しかし、いつでも質問を続ければよいわけではありません。
相手が疲れている時、強いショックを受けている時、話したくない話題に触れている時には、質問が負担になることがあります。
質問を控えた方がよい可能性があるサイン
そのような時は、
「無理に話さなくて大丈夫ですよ」
「話したくなったら聞かせてください」
「今はそっとしておいた方がよいですか?」
と伝える方が、相手への配慮になることがあります。
質問することだけが関心の表現ではありません。相手が話さないことを尊重することも、大切なコミュニケーションです。
フォローアップ質問は、初対面の会話だけでなく、家族、夫婦、友人、職場など、さまざまな関係で活用できます。
「学校はどうだった?」という質問に「普通」と返ってくる場合には、質問の範囲が広すぎる可能性があります。
「今日の休み時間は何をしていた?」「今日、一番笑ったのは何だった?」など、少し具体的にすると答えやすくなることがあります。
特に上司や指導する立場の人は、質問した後、すぐ自分の意見で上書きしないことが重要です。
部下に「どう思う?」と聞いた直後に、自分が長く話し続けると、次第に相手は意見を求められても本音を話さなくなる可能性があります。
質問を丸暗記する必要はありません。相手の話の中に出てきた名詞、感情、出来事のいずれかを一つ拾うと、次の質問を作りやすくなります。
会話の仕方は、性格だけで決まるものではありません。少しずつ練習することができます。
最初から会話全体を変えようとすると負担になるため、まずは一つの行動に絞るとよいでしょう。
✅ 会話の練習例
会話の後に、「うまく話せなかった」「沈黙があった」と反省するのではなく、
という点を振り返る方が、現実的な練習になります。
会話には相手がいるため、常に思い通りに進むわけではありません。質問をしても会話が続かないことはあります。それは必ずしも、質問の仕方が悪かったという意味ではありません。
相手の体調、気分、性格、その場の状況、関係性など、さまざまな要因が影響します。会話の結果をすべて自分の責任として考えないことも大切です。
人から好かれようとすると、「面白いことを言わなければならない」「沈黙を作ってはいけない」「自分の魅力を伝えなければならない」と考えがちです。
しかし、良い会話に必要なのは、必ずしも話術や豊富な話題ではありません。
相手の話を聞き、その内容を受けて、
「それで、どうなったんですか?」
と尋ねるだけでも、相手への関心を伝えることができます。
大切なのは、質問の数を増やすことだけではありません。
という姿勢です。
会話が苦手だと感じている方は、上手に話すことよりも、まず相手について一つ知ることを目標にしてみてください。
質問とは、情報を集めるためだけのものではありません。
「あなたの話を、もう少し聞きたいと思っています」
と伝えるための、大切なコミュニケーションなのです。
※会話への不安について
人との会話に強い恐怖を感じる、会話を避けるために学校や仕事へ行けない、会話後の反省が何時間も続くなど、日常生活に大きな影響が出ている場合には、単なる会話技術の問題ではなく、社交不安症、抑うつ状態、発達特性などが関係していることもあります。つらさが続く場合は、精神科・心療内科などの医療機関へ相談することも選択肢の一つです。
1. Huang K, Yeomans M, Brooks AW, Minson J, Gino F. It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking. Journal of Personality and Social Psychology. 2017;113(3):430-452.
https://doi.org/10.1037/pspi0000097
2. Correction to “It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking” by Huang et al. Journal of Personality and Social Psychology. 2025;128(3):669.
https://doi.org/10.1037/pspi0000491
3. Yeomans M, Brooks AW, Huang K, Minson J, Gino F. It Helps to Ask: The Cumulative Benefits of Asking Follow-Up Questions. Journal of Personality and Social Psychology. 2019;117(6):1139-1144.
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4. Kluger AN, Malloy TE. Question Asking as a Dyadic Behavior. Journal of Personality and Social Psychology. 2019;117(6):1127-1138.
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5. Brooks AW, Yeomans M. Boomerasking: Answering Your Own Questions. Journal of Experimental Psychology: General. 2025.
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6. Boothby EJ, Cooney G, Sandstrom GM, Clark MS. The Liking Gap in Conversations: Do People Like Us More Than We Think? Psychological Science. 2018;29(11):1742-1756.
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