



「病院では、もう健康保険証は使えないの?」「マイナンバーカードを作っていないと受診できない?」「精神科でマイナ保険証を使うと、過去の病歴が全部知られてしまうのでは?」。マイナンバーカードと健康保険証をめぐる制度はここ数年で大きく変わったため、このような疑問を持っている方は少なくありません。
特に2026年8月現在は重要な節目を迎えています。従来型の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終了し、その後設けられていた経過的な対応についても2026年7月31日で終了しました。現在、医療機関や薬局では、基本的に「マイナ保険証」または「資格確認書」を使って保険資格を確認する仕組みになっています。
一方で、ここで大切なのは、マイナンバーカードそのものの取得が義務になったわけではないということです。マイナンバーカードを持っていない方や、健康保険証として利用登録していない方にも「資格確認書」が交付され、これを提示すれば従来と同じように保険診療を受けることができます。
💡この記事のポイント
マイナンバーカードを持っていないから病院を受診できない、ということではありません。2026年8月現在、医療機関では主に「マイナ保険証」または「資格確認書」で保険資格を確認します。また、マイナ保険証を使ったからといって、税金・年金・銀行口座・診察で話した内容などが医療機関にすべて見えるわけではありません。
マイナンバーとマイナンバーカードは、似ていますが同じものではありません。マイナンバーは、日本国内で住民票を持つ人に割り当てられている12桁の個人番号です。一方、マイナンバーカードは、本人が申請することで交付される顔写真付きのICカードです。
カードの表面には氏名、住所、生年月日、性別、顔写真などが記載されており、本人確認書類として利用できます。裏面には12桁のマイナンバーが記載されています。
さらにICチップと電子証明書を利用することで、マイナポータルへのログイン、行政手続き、コンビニでの各種証明書取得、健康保険証としての利用など、さまざまな用途に使えるようになっています。
ここでよくある誤解があります。
❌ マイナンバーカードについてのよくある誤解
このような仕組みではありません。マイナンバーカードのICチップそのものに、病歴、税金、年金、銀行口座の残高といったプライバシー性の高い情報が一括して保存されているわけではありません。
マイナ保険証という別のカードが発行されるわけではありません。健康保険証として利用できるように登録したマイナンバーカードのことを「マイナ保険証」と呼んでいます。
つまり、
マイナンバーカード + 健康保険証利用登録
= マイナ保険証
というイメージです。
利用登録は、マイナポータルだけでなく、医療機関や薬局に設置されている顔認証付きカードリーダーや、対応するATMなどから行うこともできます。
一度登録しておけば、その後は対応している医療機関や薬局で、マイナンバーカードを使って保険資格を確認できます。
ここは制度変更が続いたため、非常に分かりにくくなっている部分です。
従来型の健康保険証は、2024年12月2日以降、新たに発行されなくなりました。その後、それまで持っていた健康保険証については一定期間使用できましたが、すべての従来型健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終了しました。
さらに、有効期限が切れたことに気づかず従来の健康保険証を持ってきた患者さんに対する経過的な取り扱いも行われていましたが、これについても2026年7月31日で終了しています。
したがって、2026年8月現在は、
というのが基本になります。
以前使っていた健康保険証を財布に入れたままにしている方もいると思いますが、現在は「古い健康保険証だけを持っていけばよい」という状況ではありませんので注意してください。
「マイナンバーカードを作っていないと、病院にかかれなくなった」と思っている方がいますが、これは正確ではありません。
マイナンバーカードの取得そのものは義務ではありません。
マイナ保険証を持っていない方には、加入している健康保険の保険者から「資格確認書」が交付されます。
資格確認書を医療機関や薬局の窓口に提示すれば、これまでの健康保険証と同じように、原則として自己負担割合に応じて保険診療を受けられます。
✅ マイナンバーカードを作っていなくても大丈夫です
マイナンバーカードを持っていない方や、カードを健康保険証として利用登録していない方などには、当分の間、原則として資格確認書が交付されます。資格確認書を使えば保険診療を受けることができます。
したがって、「マイナンバーカードを持つかどうか」と「健康保険を使って医療機関を受診できるかどうか」は、分けて考える必要があります。
名前が似ているため、特に間違えやすいのが「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」です。
資格確認書は、マイナ保険証を持っていない方などが医療機関で保険資格を証明するために使う書類です。
一方、資格情報のお知らせは、マイナ保険証を持っている方に対して、自分の保険資格情報を確認できるよう交付されるものです。
重要なのは、
⚠️ 「資格情報のお知らせ」だけでは、原則として保険証の代わりにはなりません。
マイナ保険証による資格確認が何らかの理由でできない場合などに、マイナンバーカードと組み合わせて使うものです。
「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」は名前が似ていますが、役割が異なりますので注意しましょう。
マイナ保険証を利用する場合、多くの医療機関では受付に顔認証付きカードリーダーが設置されています。
基本的な流れは次のようになります。
① マイナンバーカードをカードリーダーに置く
② 本人確認を行う
顔認証、または4桁の暗証番号などを使用します。
③ 医療情報の提供について選択する
過去の診療・薬剤情報などについて、医療機関へ提供するかどうかを選択します。
④ 受付完了
カードを忘れずに取り出します。
顔認証がうまくいかない場合には暗証番号を使うことができ、状況によっては医療機関職員による目視確認など別の方法が利用できる場合もあります。
機械操作が苦手だからといって、すぐに保険診療を受けられなくなるわけではありません。困った場合には受付スタッフへ確認してください。
精神科・心療内科では、マイナ保険証について特にこの点を心配される方がいます。
「以前うつ病で通院していたことが全部分かってしまうのではないか」「別の精神科で話した家庭の事情まで見られるのではないか」「会社にも精神科の受診歴が伝わるのではないか」と不安になる方もいます。
まず重要なのは、マイナンバーカードのICチップそのものに病歴やカルテの内容が保存されているわけではないということです。
また、マイナ保険証を利用した際に医療機関が確認できる医療情報については、患者さん本人による情報提供への同意を前提とする仕組みがあります。
🔐 マイナ保険証を使う=カルテ全文を公開する、ではありません
医療機関で医師と話した会話、心理面接の詳しい内容、生活歴、家族関係、医師がカルテに記載した文章すべてが、マイナンバーカードの中に保存されて他院から自由に読める、という仕組みではありません。
一方で、患者さんが情報提供に同意した場合には、オンライン資格確認等を通じて、過去の薬剤情報や診療情報などを医師や薬剤師が確認できることがあります。
精神科の場合、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬、気分安定薬、抗精神病薬、ADHD治療薬などの処方情報が確認できれば、過去の治療を推測できる場合があります。そのため、「精神科に通院していたことが絶対に分からない」という意味でもありません。
重要なのは、
「何でも全部見える」わけではない一方、「何も分からない」わけでもない
ということです。
精神科では、マイナ保険証による薬剤情報の共有が役立つ場面があります。
たとえば初診時に、
といった場合があります。
精神科の薬には、他の薬との相互作用に注意が必要なものもあります。また、患者さん自身が「白い錠剤」「寝る前の薬」などとしか覚えていないことも珍しくありません。
過去の薬剤情報を正確に確認できれば、重複処方や薬の飲み合わせを確認するうえで役立つ可能性があります。
ただし、マイナ保険証から得られる情報だけで診療が完結するわけではありません。市販薬、サプリメント、一部の自費診療など、オンライン上の情報だけでは十分に把握できないものがあります。
そのため、現在服用している薬については、マイナ保険証を利用する場合であってもお薬手帳を併用することが望ましい場合があります。
ここも重要なポイントです。
マイナ保険証を使えば、すべての医療情報がその瞬間にリアルタイムで医療機関へ共有されると思われがちですが、必ずしもそうではありません。
診療・薬剤情報の一部は、医療機関や薬局から審査支払機関へ提出される診療報酬明細書などを基に作られているため、反映まで一定の時間がかかることがあります。
マイナポータルでは、診療・薬剤情報について原則として過去5年分が閲覧対象となっていますが、データの種類や医療機関・薬局の対応状況などによって取得できる範囲は異なります。
そのため、
⚠️ 「マイナ保険証があるから薬の説明はしなくてよい」とは考えないようにしましょう。
直近に薬が変更された場合や、他院でもらったばかりの薬、市販薬、サプリメントなどは、診察時に医師へ直接伝えることが重要です。
医療情報のデジタル化は便利ですが、患者さんから直接聞く情報が不要になるわけではありません。
マイナ保険証の受付では、過去の医療情報などを医療機関へ提供するかどうかを選択する場面があります。
「精神科の受診歴について必要以上に共有されたくない」「今回は薬剤情報を提供したくない」など、不安を感じることもあるでしょう。
マイナ保険証による保険資格の確認と、過去の医療情報を医師へ提供することは、同じではありません。
情報提供については受付端末上で選択する仕組みがあり、医療情報への同意をしなかったからといって、それだけを理由に健康保険の資格そのものがなくなるわけではありません。
ただし、情報を共有しない場合には、医師側で過去の処方内容などを確認できないため、必要な情報は診察時に患者さん自身から伝える必要があります。
特に、
「以前、副作用が出た薬」「現在ほかの病院でもらっている薬」「アレルギー」「妊娠・授乳」「持病」
などは、安全な治療のために重要です。
「マイナ保険証を使うと、精神科に通院していることが会社に知られるのではないか」と心配される患者さんもいます。
しかし、医療機関でマイナ保険証を利用したことを理由として、診察内容や医師との会話が勤務先の上司などへ自動的に通知される仕組みではありません。
また、マイナンバーカードを医療機関へ提示することで、医療機関側が勤務先の人事情報、給与、税金、銀行口座残高などを閲覧できるようになるわけでもありません。
一方、健康保険制度では、マイナ保険証の導入以前から保険者が診療報酬請求に必要な情報を取り扱っています。これは「マイナンバーカードを病院に出したから、新しく会社へカルテが送られる」という意味ではありません。
精神科ではプライバシーへの不安そのものが受診のハードルになることがあります。不安がある場合には、受付や主治医へ「どこまで情報が共有されるのか」を確認してみるとよいでしょう。
「機械の故障でマイナ保険証が読み取れなかったら、医療費を10割払わなければならないのでは?」という不安もあります。
厚生労働省では、何らかの事情でマイナ保険証による資格確認ができない場合にも、別の方法で資格確認を行える仕組みを用意しています。
状況に応じて、
などを利用して対応する場合があります。
したがって、「カードリーダーが故障した=必ず10割負担」ではありません。
ただし、実際の対応は患者さんの資格状況や医療機関側で確認できる情報によって異なります。受付で読み取りができない場合には、そのまま帰らずスタッフへ相談してください。
マイナンバーカードを健康保険証として使っている方が特に注意したいのが有効期限です。
実は、マイナンバーカードには、
① マイナンバーカード本体の有効期限
② ICチップに入っている電子証明書の有効期限
という2種類の期限があります。
カード発行時に18歳以上だった場合、カード本体の有効期限は原則10年です。一方、電子証明書の有効期限は年齢にかかわらず原則5年です。
そのため、
「カード自体にはまだ有効期限が残っているのに、マイナ保険証として利用できなくなった」
ということが起こる可能性があります。
電子証明書の有効期限が切れた場合でも、一定期間は保険資格情報の確認に利用できる措置があります。厚生労働省によると、有効期限切れ後3か月間はマイナ保険証として資格確認が可能ですが、その期間は診療・薬剤情報等を提供できない場合があります。
更新のお知らせが届いたら、早めに市区町村で手続きをしておくと安心です。
マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載する仕組みも進んでいます。
2026年現在、対応するスマートフォンと、必要な設備を導入している医療機関・薬局であれば、スマートフォンを使ってマイナ保険証による受付ができる場合があります。
iPhoneや対応するAndroid端末などで利用できますが、すべての医療機関がスマートフォン受付に対応しているとは限りません。
📱 「マイナ保険証対応」=「スマホだけで受診できる」とは限りません。
スマートフォンによる資格確認に対応しているかどうかは、受診する医療機関・薬局ごとに確認する必要があります。
普段スマートフォンでさまざまな手続きをしている方にとっては便利な機能ですが、初めて利用する医療機関では実物のカードや資格確認に必要な書類も確認しておくと安心です。
マイナンバーカードには本人確認書類としての機能がありますので、紛失した場合には放置せず、速やかに利用停止などの手続きをする必要があります。
一方で、カードを拾った人がカードを見るだけで、病歴、預金残高、税情報などを自由に閲覧できるわけではありません。
マイナンバーカードのICチップには、税・年金・医療情報などのプライバシー性の高い情報そのものが保存されているわけではなく、サービスを利用する際には暗証番号や本人確認などの仕組みが組み合わされています。
暗証番号については、
といった基本的な対策が大切です。
これはキャッシュカードやクレジットカードなどを管理するときと同じように、便利な本人確認手段だからこそ適切に管理する、という考え方がよいでしょう。
マイナ保険証には課題や分かりにくい部分もありますが、医療の場面ではいくつかのメリットがあります。
精神科では、特に薬の治療歴が重要です。
「以前どんな薬を飲んだか」「どのくらいの量だったか」「ほかの病院から何を処方されているか」が分かることは、治療方針を考えるうえで役立つことがあります。
一方で、薬が処方されていたという情報だけでは、「その薬が効いたのか」「なぜ中止したのか」「どのような副作用があったのか」までは分かりません。
したがって、デジタル情報は診察を補助するものであり、患者さんと医師との会話に代わるものではありません。
Q. マイナンバーカードを作っていません。精神科を受診できますか?
はい。マイナ保険証を持っていない方には、原則として資格確認書が交付されます。資格確認書を医療機関へ提示して保険資格を確認します。
Q. 昔の健康保険証を持っていけば大丈夫ですか?
2026年8月現在、従来型健康保険証の有効期限は終了しており、経過的な対応についても2026年7月31日で終了しています。マイナ保険証または資格確認書を準備しましょう。
Q. マイナ保険証を使うと、精神科のカルテが他院に全部見られますか?
カルテに記載された文章すべてがマイナンバーカードに保存され、自由に閲覧される仕組みではありません。本人の同意に基づき、対象となる診療・薬剤情報などが共有される仕組みです。
Q. 精神科で話した家庭の事情や悩みも共有されますか?
診察中に話した内容が、そのまま他院へ自動送信されるという仕組みではありません。マイナ保険証で共有される情報と、医療機関が保有するカルテそのものは分けて考える必要があります。
Q. 医療情報の提供に同意しないと受診できませんか?
保険資格の確認と、過去の医療情報を医師へ提供することは別の仕組みです。情報提供を希望しない場合でも、必要な資格確認ができれば保険診療を受けることができます。ただし、治療上必要な過去の薬や副作用などについては医師へ直接伝えましょう。
Q. カードリーダーの機械が故障したら10割負担になりますか?
必ずしもそうではありません。マイナポータルの資格情報、資格情報のお知らせ、過去の資格情報、被保険者資格申立書などを利用して資格確認する方法があります。
Q. マイナ保険証があれば、お薬手帳はいらなくなりますか?
必ずしもそうではありません。情報が反映されるまで時間がかかる場合や、市販薬・サプリメントなど把握できない情報があります。お薬手帳がある場合には併用するとよいでしょう。
マイナンバーカードやマイナ保険証については、制度が短期間に変化してきたため、患者さんだけでなく医療従事者にとっても分かりにくい部分があります。
しかし、基本的なポイントを整理すると、それほど複雑ではありません。
✅ 2026年8月現在のポイント
精神科・心療内科の診療では、病名だけでなく、これまでの経過、生活環境、ストレス、睡眠、仕事、人間関係、過去の治療への反応など、多くの情報を総合して治療方針を考えます。
マイナ保険証によって過去の薬剤情報などを確認できることは診療の助けになりますが、それだけで患者さんの状態が分かるわけではありません。
マイナンバーカードは医療そのものではなく、より安全で効率的な医療を支えるための一つの道具と考えると分かりやすいでしょう。
「個人情報が全部見られてしまうのではないか」と過度に恐れる必要はありませんが、一方で、どの情報をどのように共有する仕組みなのかを知ったうえで利用することも大切です。
制度は今後も変更・拡充される可能性があります。受診時の資格確認方法について不明な点がある場合には、受診する医療機関や加入している健康保険の保険者に確認してください。
🌱 最後に
マイナ保険証を利用するか、資格確認書を利用するかにかかわらず、体調が悪いときに「保険証のことでよく分からないから」と受診を先延ばしにする必要はありません。必要な医療を受けることが第一です。分からない場合には、医療機関の受付で確認しながら手続きを進めましょう。
※本記事は2026年8月時点で公表されている厚生労働省・デジタル庁等の情報をもとに作成しています。制度や運用方法は今後変更される場合があります。