

子どもの頃から落ち着きがない、忘れ物が多い、かんしゃくが強かった、学校で力を発揮しにくかったと感じることはありませんか?
WURS(Wender Utah Rating Scale)は、成人が自分の子ども時代を振り返りながら、ADHD 関連症状の程度を自己評価する自己記入式の心理検査です。原版は 61 項目で構成されており、実務上はその中から ADHD と関連の深い 25 項目の合計点(WURS-25)がよく参照されます。項目には、不注意、多動性、衝動性だけでなく、気分の不安定さや学校生活でのつまずきなども含まれています。
ADHDは、現在は注意欠如・多動症とも呼ばれます。成人の ADHD を考える際には、子どもの頃にも同様の傾向があったかを確認することがとても大切です。WURS は、学校記録や家族からの情報が十分に得られない場合でも、児童期の傾向を整理する手がかりとして活用できます。ただし、あくまで振り返りによる自己評価であり、診断そのものを行う検査ではありません。

WURS は、成人が子どもの頃の自分を思い出しながら回答する、回顧式のスクリーニング検査です。一般的には 0〜4 点の 5 段階で各項目を評価し、臨床では 25 項目合計(0〜100 点)を参考にすることが多くなっています。点数が高いほど、児童期に ADHD 関連症状が強かった可能性を示唆します。
項目には、集中しにくさ、そわそわしやすさ、衝動的な反応、かんしゃく、気分の波、学校での困りごとなどが含まれています。そのため、WURS は単に「現在の不注意」を見るだけでなく、子どもの頃から続いていた行動傾向や感情面の特徴をまとめて振り返るのに役立ちます。
WURS は診断そのものを行う検査ではありません。 点数が高くても ADHD が確定するわけではなく、現在の症状、生活上の支障、面接所見、家族や学校からの情報などをあわせて総合的に判断する必要があります。反対に、子どもの頃の記憶があいまいな場合や、現在の気分・不安の影響が強い場合には、結果の解釈に注意が必要です。
WURS には 61 項目版 と、そこから抽出された 25 項目版 があります。61 項目版を実施した場合でも、解釈では 25 項目部分の合計点を参照することがあります。本ページでは、臨床で比較的よく使われる 25 項目合計を中心に解説します。
成人 ADHD の評価では、WURS に加えて ASRS などの現在症状の尺度、診察や面接、必要に応じて家族からの聞き取りや学校記録の確認を行うことが一般的です。WURS はその中の「児童期を振り返るための補助資料」として位置づけられます。
WURS は、次のような目的で活用されています。
✅ 成人 ADHD の初期評価
現在の症状だけでなく、子どもの頃から同様の傾向があったかを確認するための補助資料として用いられます。
✅ 子ども時代の整理
「昔から忘れっぽかった」「授業に集中しづらかった」など、児童期の行動パターンを言語化する手がかりになります。
✅ 自己理解と振り返り
現在の困りごとの背景に、子どもの頃から続く特性が関係していないかを見直すきっかけになります。
✅ 家族や支援者との共有
本人が感じていた昔の困りごとを整理し、家族や支援者と共通理解を持つ材料として使われます。
✅ 他の検査との照合
ASRS や面接結果と合わせることで、現在症状と児童期症状のつながりを検討しやすくなります。
✅ 情報が乏しい場合の補助
通知表や母子手帳、家族からの聞き取りが得にくいときでも、過去の傾向を振り返る補助手段になります。
👉 WURS は成人が自分の児童期を振り返って答える検査です。現在の困りごとだけでなく、子どもの頃からの持続性を考える場面で役立ちます。
WURS には 気分の落ち込み や 不安、反抗性 に関する項目も含まれています。そのため、現在のストレスや精神症状が強い時期には、子どもの頃の記憶がやや否定的に想起され、点数が高く出ることがあります。結果は必ず面接や他の資料とあわせて解釈してください。
WURS は、子どもの頃の ADHD 関連症状の強さを回顧的に把握する検査です。現在の状態そのものではなく、児童期にどのような傾向があったかを整理するのに向いています。総得点に加えて、不注意、多動性、衝動性、情緒の不安定さ、学校生活でのつまずきなどの側面を振り返ることができます。
WURS の実施方法は比較的シンプルです。各項目について、「子どもの頃の自分にどの程度あてはまっていたか」を 0〜4 点で評価します。一般的な選択肢は、「まったくない / ごくわずか」 から 「とても強い」 までの 5 段階です。
原版は 61 項目ですが、実務上はその中の 25 項目を合計した WURS-25(0〜100 点) がよく用いられます。61 項目版を用いた場合でも、解釈では 25 項目部分の合計を参照することがあります。検査時間は、25 項目中心であれば5 分前後、61 項目版でも10 分前後が目安です。
回答するときは、現在の自分ではなく、子どもの頃の典型的な様子を思い出して答えることが大切です。「最近つらいから昔も全部つらかった気がする」といった形で、現在の状態に引きずられないよう注意してください。
解釈では、46 点以上を比較的厳しめの基準、36 点以上を見逃しを減らしたい場合の参考基準として扱うことがあります。どちらを使うかで、感度 と 特異度 のバランスが変わるため、単独の数値だけで結論は出しません。
WURS には、項目ごとに公式スコアがあるわけではありません。ただし、項目内容をみると、主に次のような側面を振り返ることができます。
研究によって因子のまとめ方は多少異なりますが、WURS はこのような児童期の広い行動・情緒の傾向を把握する尺度として用いられています。
子どもの頃から気が散りやすい、空想にふけりやすい、始めたことを最後まで続けにくいといった傾向があった可能性があります。宿題や持ち物の管理が苦手で、「分かっているのに抜ける」体験が多かった方もいます。
子どもの頃の集中力ややり遂げる力は比較的保たれていた可能性があります。忘れ物やうっかりはあっても、全体としては注意の持続や段取りに大きな困難は少なかったと考えられます。
じっと座っていることが苦手、いつもそわそわする、身体を動かしていたいといった傾向が目立っていた可能性があります。授業中や食事中でも落ち着きにくく、周囲から「忙しない」と見られやすかったかもしれません。
子どもの頃の身体的な落ち着きは比較的保たれていた可能性があります。動き回りたい欲求やそわそわ感が少なく、集団場面でも比較的静かに過ごせていたことがうかがえます。
子どもの頃に短気、怒りやすい、かんしゃくを起こしやすい、反発しやすいといった傾向がみられた可能性があります。感情が一気に高まりやすく、対人トラブルや叱責につながっていたこともあります。
衝動的に反応することは比較的少なく、感情のコントロールは保たれていた可能性があります。怒りや反発があっても、全体としては強い爆発や対立は少なかったと考えられます。
不安が強い、落ち込みやすい、自分に自信が持ちにくい、気分の波が大きいなどの傾向が子どもの頃からみられた可能性があります。ADHD に伴う情緒調整の難しさが反映されることもありますが、これだけで ADHD 特有とは言えません。
子どもの頃の気分や自己評価は比較的安定していた可能性があります。不安や落ち込みがあっても、持続的・全般的ではなく、日常の中で大きな支障にはつながりにくかったと考えられます。
成績が安定しない、実力のわりに結果が出にくい、宿題や持ち物管理が苦手、学校で注意されやすいといった傾向があった可能性があります。学力そのものではなく、集中・段取り・感情調整の影響で力を発揮しにくかったケースも少なくありません。
学校生活のルールや課題への対応は比較的保たれていた可能性があります。苦手分野があっても、全体としては授業・宿題・集団生活に大きな混乱は少なかったと考えられます。
WURS の解釈では、25 項目合計がよく参照されます。以下は一般的な目安であり、点数が高いほど児童期の ADHD 関連症状の既往が示唆されます。
| 総得点 | 解釈 | 意味 |
|---|---|---|
| 0〜35 | 低い〜平均 | ADHD傾向は少ない |
| 36〜45 | 境界域 | ADHD傾向がややある |
| 46〜100 | 高い | ADHD傾向は強い |
36 点以上は見逃しを減らしたいときに参考にされやすく、46 点以上はより厳しめの基準として使われます。61 項目版を実施した場合でも、臨床ではこの 25 項目合計を解釈の中心に置くことがあります。
点数はあくまで傾向を把握するための指標です。現在の不注意や生活上の支障がはっきりしていても、子どもの頃の記憶があいまいだと低く出ることがあります。逆に、現在の抑うつ・不安・対人ストレスが強いと、昔をよりつらく思い出して高く出ることもあります。
WURS-25 では、36 点と46 点がよく参照される基準です。以下は、一般対照との比較で報告された代表的な目安です。
| 基準 | 感度 | 特異度 | 偽陰性 | 偽陽性 |
|---|---|---|---|---|
| 36 点 | 約96% | 約96% | 約4% | 約4% |
| 46 点 | 約86% | 約99% | 約14% | 約1% |
46 点は偽陽性を抑えやすい一方で見逃しはやや増え、36 点は見逃しを減らしやすい一方で陽性が広めに出ます。なお、これらの数値は一般対照との比較での目安であり、抑うつ・不安・パーソナリティ特性などを伴う精神科集団では、これより判別しにくくなることがあります。
ご自身にとって – 子どもの頃からの流れを理解する
WURS の結果は、現在の困りごとが「最近始まったもの」なのか、それとも子どもの頃から続く傾向の延長にあるのかを考える材料になります。高得点でも能力が低いという意味ではなく、注意の向け方、感情の動き方、学校や集団場面での負荷の受けやすさに特徴があった可能性を示します。
ご家族や支援者にとって
本人がどのような子ども時代を過ごしていたかを整理することで、現在の困りごとをより理解しやすくなります。責めるためではなく、どのような環境や支援があれば力を発揮しやすいかを考えるきっかけになります。
WURS は非常に有用ですが、これだけで結論は出しません。現在症状をみる ASRS、必要に応じた面接や発達歴聴取、学校記録、家族からの情報などと組み合わせることで、より正確に評価しやすくなります。特に、昔のことをあまり覚えていない方や、現在の気分症状が強い方では、補足情報の確認が重要です。