A-ADHDとは

仕事や家事で忘れ物や先延ばしが多い、締切に追われやすい、会話でつい相手の話をさえぎってしまう、落ち着かずそわそわしやすいと感じることはありませんか?
A-ADHD(Adult ADHD Self-Rating Scale)は、成人期のADHD傾向をみる自己記入式の心理検査です。18歳以上を対象とし、35項目の質問に答えることで、不注意多動性衝動性といった中核症状を中心に、二次障害他の発達障害の合併傾向も含めて把握する手がかりになります。

ADHD は現在、注意欠如・多動症と表記されることが多く、以前は注意欠陥・多動性障害とも呼ばれていました。子どものころの「落ち着きのなさ」が目立つ場合だけでなく、成人では段取りの悪さ不注意によるミス内的な落ち着かなさ衝動的な発言や判断として表れやすい点が特徴です。A-ADHD は、そうした成人期の特徴を整理し、診察や追加評価につなげるためのスクリーニングとして活用されます。

A-ADHD検査イメージ
目次
概要・注意事項

A-ADHD は、成人期のADHD傾向を把握するための自己記入式スクリーニング検査です。回答形式は 4 段階で、各項目について「あまりない」「ときどき」「しばしば」「いつも」の中から最も近いものを選びます。実施時間はおおむね10〜15分で、短時間で実施しやすいのが特徴です。

質問項目は35項目で構成され、不注意多動性衝動性というADHDの三大症状に関連した項目に加えて、二次障害他の発達障害の合併を示唆する項目も含まれています。また、不注意に関連する14項目を用いることで、ADD(不注意優勢の傾向)のスクリーニングも補助的に行えます。

A-ADHD は診断そのものを確定する検査ではありません。 ADHD の診断では、現在の困りごとだけでなく、症状が子どものころからみられていたか家庭・学校・職場など複数の場面で持続しているか生活機能にどの程度の支障が出ているかを含めて総合的に判断する必要があります。

そのため、睡眠不足、うつ状態、不安、ストレス反応、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)など、ADHD と似た形で表れうる要因との見分けも重要です。A-ADHD の結果は、臨床面接生活歴の確認、必要に応じた他の心理検査とあわせて解釈します。

成人女性では不注意優位で見えにくいことがあるため、施設によっては女性版A-ADHDを併用する場合もあります。

検査の対象と活用例

A-ADHD は、次のような目的で活用されています。

✅ 不注意の傾向を整理したい

忘れ物、うっかりミス、片づけの苦手さ、先延ばし、時間管理の難しさを振り返る手がかりになります。

✅ 多動・そわそわ感を確認したい

子どものような多動だけでなく、成人に多い内的な落ち着かなさやじっとしていられない感覚も確認できます。

✅ 衝動性を見立てたい

思ったことをすぐ言ってしまう、待つのが苦手、勢いで判断しやすいといった傾向の整理に役立ちます。

✅ 二次障害の影響を考えたい

長年の失敗体験から生じやすい不安、抑うつ、自己評価の低下などを追加で検討するきっかけになります。

✅ 他の発達特性も見たい

ASD や学習障害など、ADHD と併存しうる発達特性の手がかりを補助的に把握できます。

✅ 初診時のスクリーニング

外来初診時や追加検査前の整理として用い、詳しい評価や支援につなげる判断材料になります。

👉 A-ADHD は18歳以上が対象です。成人女性では症状の表れ方が異なることがあるため、必要に応じて女性版が用いられることがあります。

不注意や落ち着きのなさは ADHD だけでなく、睡眠不足不安うつ状態ストレスなどでも強くなることがあります。スコアだけで自己判断せず、困りごとの内容や経過と合わせて専門家に相談することが大切です。


検査で把握できること

A-ADHD は、成人期にみられる ADHD 傾向を定量的に整理する自己評価式の検査です。単に「ADHDっぽいか」をみるだけでなく、不注意多動性衝動性に加えて、二次障害他の発達障害の合併の手がかりも把握できます。

実施方法と採点

A-ADHD の実施は比較的シンプルです。受検者は 35項目の質問を読み、それぞれについて「あまりない」「ときどき」「しばしば」「いつも」の 4 段階から 1 つ選びます。回答は頻度に応じて数値化され、ADD(不注意傾向)ADHD(三大症状の総合)二次障害他の発達障害の合併などの観点から解釈されます。

検査は通常 10〜15分程度で完了します。中核症状に関する 20項目のほか、不注意に関連する 14項目は ADD 傾向の確認にも用いられます。さらに、二次障害に関する9項目ASD や学習障害などの併存を示唆する6項目が設定されています。

検査では「理想の自分」ではなく、普段の自分にもっとも近い頻度で答えることが重要です。良く見せようとしたり、逆に困りごとを強調しすぎたりすると、結果の解釈が難しくなります。

結果は、生活歴や現在の困りごと、仕事や家庭での具体的な支障とあわせて読む必要があります。点数が高くても ADHD と確定するわけではなく、逆に点数が高くなくても臨床的に困りごとが大きい場合は、追加の面接や評価が必要になることがあります。

評価される5つの領域

A-ADHD では、成人期の ADHD に関連する特徴を中心に、次のような領域を整理します。

  • 🧠不注意(14項目)
    集中の持続忘れやすさ段取りや整理整頓締切管理などに関する傾向をみます。
  • 🏃多動性(3項目)
    子どものころの目立つ多動だけでなく、成人でみられやすい内的な落ち着かなさじっとしていられない感覚も含めてみます。
  • 衝動性(3項目)
    思ったことをすぐ言う待つのが苦手考える前に動くなど、自己コントロールに関する傾向を確認します。
  • 🌧️二次障害(9項目)
    ADHDでは、50%以上の方が何らかの精神疾患を併発するとされており、不安障害やうつ病アルコールやギャンブル依存症等の併存がみられます。この領域は、そのリスクや影響を把握するために含まれています。
  • 🔗他の発達障害の合併(6項目)
    ASD傾向の有無を把握する手がかりとなり、ADHDと重なってみえる特性の理解にも役立ちます。併存する特性を把握することで、支援や治療方針を検討しやすくなります。

これらの評価は、成人期の困りごとを立体的に理解するためのものであり、どれか 1 つの得点だけで結論づけるものではありません。

 🧠不注意の得点から分かること
✅ スコアが高い方(男性38点以上、女性41点以上)

気が散りやすい忘れ物やなくし物が多い作業の優先順位づけが苦手締切直前まで取りかかれないといった傾向がみられやすくなります。仕事や家事では、やるべきことが頭の中で整理しにくく、うっかりミスや先延ばしにつながることがあります。

⚠️ スコアが低い方(男性37点以下、女性40点以下)

集中を比較的保ちやすく、持ち物や予定の管理、作業の見通しづけがしやすい傾向があります。細かな見落としや先延ばしが少なく、日常の段取りを比較的安定して進めやすいでしょう。

 🏃多動性の得点から分かること
✅ スコアが高い方(概ね8点以上)

じっとしていることが負担に感じられたり、そわそわして落ち着かない、複数のことを同時に始めたくなるなどの傾向が出やすくなります。成人では目立つ走り回りよりも、内的な焦り休みにくさとして表れることがあります。

⚠️ スコアが低い方(概ね7点以下)

座って行う作業や待ち時間でも比較的落ち着いて過ごしやすく、気持ちの切迫感や身体のそわそわ感が目立ちにくい傾向があります。静かな場面でも行動を調整しやすいでしょう。

本項目については、明確なカットオフはなく、あくまで参考所見です。個々の質問事項の結果を参照することが重要です。

 ⚡衝動性の得点から分かること
✅ スコアが高い方(概ね8点以上)

相手の話を最後まで待てない思いついたことをすぐ口に出す勢いで判断しやすいなどの傾向がみられやすくなります。会話の中断、対人トラブル、衝動買い、予定変更の多さなどにつながることもあります。

⚠️ スコアが低い方(概ね7点以下)

行動の前にひと呼吸おいて考えやすく、順番待ちや会話のやり取りも比較的安定して行いやすい傾向があります。結果を見通して行動を調整しやすいでしょう。

本項目については、明確なカットオフはなく、あくまで参考所見です。個々の質問事項の結果を参照することが重要です。

 🌧️二次障害の得点から分かること
✅ スコアが高い方(23点以上)

失敗体験や対人トラブルの積み重ねにより、不安が強い気分が落ち込みやすい自信を失いやすいなどの影響が目立つことがあります。これは ADHD の中核症状そのものではなく、長期的な困りごとに伴って生じる二次的な苦しさを示すことがあります。

⚠️ スコアが低い方(22点以下)

ADHD 関連の困りごとがあっても、気分や不安への波及が比較的軽い、または現時点では二次的な心理的負担が目立ちにくい状態と考えられます。ただし、状況により変動する点には注意が必要です。

 🔗他の発達障害の合併から分かること
✅ スコアが高い方(概ね15点以上)

ADHD の発達特性以外に、対人コミュニケーションの独特さこだわりの強さなど、ASD(自閉スペクトラム症)の特性が強くみられますADHD 単独では説明しきれない特徴がある場合に、その背景として ASD 傾向を併せて検討する手がかりとなります。

⚠️ スコアが低い方(概ね14点以下)

ADHD の発達特性以外に、対人コミュニケーションの独特さやこだわりの強さなど、ASD(自閉スペクトラム症)の特性は強くありませんただし、特性の現れ方は状況や環境によって変わるため、必要に応じて追加の評価を検討することがあります。

本項目については、明確なカットオフはなく、あくまで参考所見です。個々の質問事項の結果を参照することが重要です。

📊 スコアの目安

A‑ADHDは、注意欠如・多動性障害の特性(不注意・多動性・衝動性)に加え、 二次障害やASD傾向もあわせてみる検査です。

🧠不注意
得点範囲 解釈 意味
男性:38~56点 高い 不注意の傾向が強い
男性:14~37点 低い 不注意の傾向は少ない
女性:41~56点 高い 不注意の傾向が強い
女性:38~40点 低い 不注意の傾向は少ない
🏃多動性
得点範囲 解釈 意味
8~12点(目安) 高い 多動性が強い
3~7点(目安) 低い 多動性は少ない
⚡衝動性
得点範囲 解釈 意味
8~12点(目安) 高い 衝動性が強い
3~7点(目安) 低い 衝動性は少ない
🚀ADHD特性(🧠不注意+ 🏃多動性+⚡衝動性)
得点範囲 解釈 意味
男性:54~80点 高い ADHD特性が強い
男性:20~53点 低い ADHD特性は少ない
女性:52~80点 高い ADHD特性が強い
女性:20~51点 低い ADHD特性は少ない
🌧️二次障害
得点範囲 解釈 意味
23~36点 高い 二次障害が強い
9~22点 低い 二次障害は少ない
🔗他の発達障害の合併
得点範囲 解釈 意味
12~24点(目安) 高い ASD傾向が強い
6~11点(目安) 低い ADHD傾向は少ない

1~14までが不注意、15~17が多動性、18~20番までが衝動性に関する質問です。 ADHD特性(不注意・多動性・衝動性)は1~20番の20項目の合計点でみます。 二次障害は21~29番の9項目、他の発達障害の合併は30~35番の6項目を参考にします。 これらの数値はあくまで傾向を示す目安であり、診断は検査結果だけでなく、 発達歴や生活上の困りごと、面接所見なども含めて総合的に判断します。

検査精度の目安
📏 検査精度の目安

本検査は、🧠不注意・🏃多動性・⚡衝動性・🌧️二次障害・🔗他の発達障害の合併の5領域から構成されていますが、 ADD(注意欠如障害)のスクリーニングとして直接的に用いられるのは「🧠不注意」の得点であり、 ADHD(注意欠陥多動性障害)のスクリーニングとして直接的に用いられるのは「🧠不注意・🏃多動性・⚡衝動性」の合計点です。

なお、本検査ではADD(注意欠如障害)のスクリーニングにおいて男性38点以上・女性41点以上を陽性男性37点以下・女性40点以下を陰性とし、 ADHD(注意欠陥多動性障害)のスクリーニングにおいて男性54点以上・女性52点以上を陽性男性53点以下・女性51点以下を陰性とします。

このスコアに基づくスクリーニング精度の指標は以下の通りです。

  • 感度 : 障害を有する方正しく陽性と判定する割合
  • 特異度 : 障害を有さない方正しく陰性と判定する割合
  • 偽陰性率 : 障害を有する方誤って陰性と判定する割合
  • 偽陽性率 : 障害を有さない方誤って陽性と判定する割合
比較対象 感度 特異度 偽陰性率 偽陽性率
ADD 84 % 84 % 16 % 16 %
ADHD 86 % 85 % 14 % 15 %

これらの数値は参考値であり、対象者や比較群により変動します。検査結果は必ず専門家の診察や他の検査結果と併せて解釈してください。

結果の活用と支援

ご自身にとって – 困りごとのパターンを整理する
A-ADHD の結果は、「自分は何に困りやすいのか」を言語化する材料になります。不注意が中心なのか、衝動性が目立つのか、二次障害の影響が強いのかを整理することで、生活上の工夫や受診時の相談内容が明確になります。

ご家族や支援者にとって
スコアは、本人の努力不足では説明しにくい困難を理解するきっかけになります。責めるためではなく、環境調整タスク管理の工夫予定の見える化声かけの仕方を考える材料として活用します。

A-ADHD は有用なスクリーニングですが、詳細な評価には 臨床面接発達歴の確認、必要に応じた WAIS-Ⅳ や ASD 関連検査、気分や不安の評価などを組み合わせることが大切です。とくに二次障害や併存症状が疑われる場合は、追加の評価が支援方針を考えるうえで重要になります。


よくある質問
1. A-ADHD はどのような目的で使用されますか?
A-ADHD は、成人期の ADHD 傾向を自己記入式で整理するための検査です。不注意、多動性、衝動性を中心に確認し、必要に応じて詳しい診察や追加検査につなげるためのスクリーニングとして用いられます。
2. 検査時間はどれくらいかかりますか?
通常は 10〜15分程度です。35 項目に対して、4 段階の頻度からもっとも近いものを選んで回答します。
3. A-ADHD だけで ADHD の診断はできますか?
いいえ。A-ADHD はあくまでスクリーニングであり、診断の確定には臨床面接、発達歴、現在の支障の程度、他疾患との鑑別などを含めた総合評価が必要です。
4. どのような方が A-ADHD を受けるとよいですか?
18歳以上で、忘れ物が多い、片づけが苦手、先延ばししやすい、落ち着かない、衝動的に話してしまうなどの困りごとが続いている方に向いています。
5. ADD と ADHD の違いは何ですか?
この検査では、ADD(注意欠如障害) は主に不注意の傾向をみる補助的な見方として扱われます。ADHD(注意欠陥・多動性障害) は、不注意に加えて多動性や衝動性も含めた全体的な傾向を整理する見方です。
6. スコアが高い場合はどう考えればよいですか?
ADHD 傾向が相対的に強い可能性を示しますが、それだけで確定ではありません。実生活での困りごとがある場合は、発達歴を含めた詳しい評価や支援の相談につなげるとよいでしょう。
7. 子どものころの様子も重要ですか?
はい。成人期 ADHD の診断では、症状が子どものころから存在していたかが大切です。通知表、家族からの情報、幼少期のエピソードなどが参考になることがあります。
8. 「二次障害」とは何ですか?
ADHD そのものではなく、長年の失敗体験や対人トラブルの積み重ねに伴って生じやすい不安抑うつ自己評価の低下などを指します。必要に応じて別途評価や治療を検討します。
9. 女性では結果の見方が違うことがありますか?
あります。女性では不注意が中心で見えにくいことがあり、外から気づかれにくい場合があります。そのため、施設によっては 女性版 A-ADHD を用いて評価することがあります。
10. 他の心理検査と併用した方がよいですか?
はい。A-ADHD はスクリーニングとして有用ですが、必要に応じて WAIS-Ⅳ、ASD 関連検査、気分や不安に関する評価などを組み合わせることで、より立体的な理解につながります。