

仕事や家事でうっかりミスが続いたり、約束を忘れやすかったり、じっとしている場面で落ち着かなさを感じることはありませんか?
ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)は、成人期の注意欠如・多動症(ADHD)の症状を自己記入で確認するために作成されたスクリーニング検査です。世界保健機関(WHO)と成人期 ADHD の研究グループの協力のもとで作成され、過去 6 か月間の状態を振り返りながら回答します。ASRS-v1.1 は 18 項目で構成され、不注意と多動性・衝動性の両面を確認できます。
注意欠如・多動症は、以前は注意欠陥多動性障害と呼ばれていた概念で、英語ではAttention-Deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD)と表記されます。子どもの頃からみられていた不注意や落ち着きのなさが成人期まで続き、仕事・学業・家事・対人関係に影響している場合に検討されます。ASRS は、自分の傾向を整理する手がかりや、医療機関で相談する際の補助資料として活用されます。

ASRS-v1.1 は、成人期の ADHD 症状を確認するための自己記入式スクリーニングテストです。18 項目の質問に対し、全くない・めったにない・時々・頻繁・非常に頻繁の 5 段階で回答します。質問は、過去 6 か月間の感じ方や行動をもとに答える形式です。
検査は パート A(6 項目) と パート B(12 項目) に分かれています。パート A は、成人期 ADHD を最も鋭敏に予測する 6 問で構成されるスクリーニング部分です。パート B は、症状の全体像を把握するための補助情報として用いられます。
ASRS は診断そのものを行うものではありません。 結果が高くても ADHD の診断が確定するわけではなく、症状による困りごとの程度、幼少期からの持続、他の精神症状や身体状態なども含めて総合的に判断する必要があります。反対に、スコアが低くても ADHD の可能性を完全に否定することはできません。
ASRS は、次のような目的で活用されています。
✅ 自身の特性理解と受診相談
忘れ物、段取りの苦手さ、集中の続きにくさ、落ち着かなさなどを整理し、医療機関で相談する際の材料にします。
✅ 臨床場面での初期スクリーニング
精神科・心療内科・プライマリケアなどで、成人期 ADHD の可能性を短時間で確認するために用いられます。
✅ 仕事や家事の困りごとの整理
締切管理、整理整頓、会議中の落ち着かなさ、会話での割り込みなど、日常生活上の課題を可視化できます。
✅ 面接前の情報整理
診察や心理面接の前に症状の頻度をまとめておくことで、困りごとを伝えやすくなります。
✅ 経過観察の補助
支援や治療の前後で回答傾向を見比べることで、主観的な変化を振り返る材料になります。
✅ 研究・調査での指標
一般集団や臨床群における成人 ADHD 症状の把握に用いられることがあります。
👉 ASRS は主に成人を対象とした自己記入式検査です。症状だけでなく、仕事・学業・家庭・対人関係での支障がどの程度あるかも合わせて確認することが大切です。
ASRS の結果はあくまで相談の入口です。高得点なら詳しい評価を検討し、低得点でも困りごとが続く場合は、点数だけで判断せず専門家に相談することが重要です。
ASRS は、成人期 ADHD に関連する症状の頻度を整理できる自己評価式の検査です。全体の傾向だけでなく、不注意と多動性・衝動性のどちらの特徴が目立ちやすいかを把握する手がかりになります。ここでは検査の流れ、採点の考え方、各領域から分かることをご紹介します。
ASRS では、18 の質問文を読みながら、過去 6 か月間の自分の状態に最も近い頻度を 5 段階で選びます。パート A の 6 問は、成人期 ADHD のスクリーニングとして特に重要な項目です。従来の臨床用判定では、パート A の基準に合う回答が 4 つ以上ある場合、成人期 ADHD に一致する症状を持つ可能性が高いと考え、さらなる評価を検討します。
パート B の 12 問は、症状の全体像を把握するための補助的な情報です。どの場面で困りやすいか、どの症状が目立ちやすいかを詳しくみる助けになりますが、パート B 単独で診断的な判定を行うものではありません。
検査時間は5 分前後が目安です。回答後は、症状の頻度だけでなく、仕事・学業、家庭生活、対人関係でどの程度の支障があるか、またそれらの傾向が子どもの頃から続いているかも確認していきます。
事前学習や準備は不要です。良く見せよう、悪く見せようと考えず、ありのままの頻度で答えることが、結果を実際の困りごとに近づけるポイントです。
近年は、6問版の各項目を1問0〜4点で点数化し、6項目の合計を0〜24点として評価する新しいスコア法も提案されています。この方法は研究や有病率の検討で扱いやすい一方、ASRS-v1.1の従来の見方では、パートAで基準に達した項目が4項目以上あるかどうかでみる方法が案内されています。
ASRS の 18 項目は、成人期 ADHD の症状を大きく不注意と多動性・衝動性の 2 つの領域で捉えます。以下にそれぞれの概要を示します。
なお、パート A の 6 問は、この 2 領域の中から成人期 ADHD を見分けるうえで特に有用とされた項目で構成されています。パート B を含めた 18 項目全体を見ることで、より具体的な困り方を整理しやすくなります。
締切や細かな仕上げを後回しにしやすい、段取りを組むのが苦手、約束や物の置き場所を忘れやすい、退屈な作業で集中が切れやすいといった傾向が目立つ可能性があります。学校・仕事・家事の場面で、ミスの繰り返しや作業の抜け漏れとして表れやすい領域です。
計画を立てて進めることや、単調な作業でも注意を保つことが比較的保たれている可能性があります。忘れ物や抜け漏れは少なく、必要な情報を整理しながら課題を進めやすい傾向が考えられます。
長く座っているとそわそわする、休もうとしても落ち着けない、会話で話しすぎたり相手をさえぎったりしやすい、順番待ちがつらいといった傾向がみられることがあります。成人では、外から分かりやすい多動よりも、内側の焦りや衝動的な言動として表れやすい点が特徴です。
座位を保つことや、落ち着いて待つこと、会話の順番を意識することが比較的しやすい可能性があります。行動面の衝動性は強くなく、周囲に合わせてペースを調整しやすい傾向が考えられます。
ASRS の結果は、成人期 ADHD の可能性を考えるうえでの目安です。公式な解釈では、まず パート A の 6 項目を重視します。ここでは、実際によく参照される見方をわかりやすくまとめています。
| 陽性項目数 | 意味 |
|---|---|
| 0〜3 | ADHD傾向は少ない |
| 4〜6 | ADHD傾向が強い |
| 合計点 | 意味 |
|---|---|
| 0〜9 | ADHDの可能性は低い |
| 10〜13 | ADHDの傾向は弱い |
| 14〜17 | ADHDの傾向が高い |
| 18〜24 | ADHDの可能性が高い |
18 項目版では、パート B や各領域の回答傾向も参考にしながら、どのような場面で困りやすいかを具体的に整理します。総得点だけで診断を決めることはできず、実際の生活上の支障、幼少期からの持続、ほかの状態との見分けなどをあわせて評価することが重要です。
ASRSの検査精度について、代表的な参考値をまとめました。
| 検査 | 感度 | 特異度 | 偽陰性率 | 偽陽性率 |
|---|---|---|---|---|
| Part A(4項目以上) | 39.1 % | 88.3 % | 60.9 % | 11.7 % |
| Part A(14点以上) | 64.9 % | 94.0 % | 35.1 % | 6.0 % |
ASRS Part A は、ADHDではない方を陰性と判定する力は比較的高い一方、ADHDの方を十分に拾い上げる力はやや低めです。そのため、結果は単独で判断せず、面接や経過とあわせて解釈する必要があります。
ご自身にとって – 困りごとの整理に役立つ
ASRS の結果は、「何となくやりづらい」と感じていたことを、不注意と多動性・衝動性の視点から整理する助けになります。高得点であっても、それは性格の良し悪しではなく、困りやすい場面の傾向を示す情報です。自分の苦手さを言語化することで、受診や相談のハードルが下がることがあります。
ご家族や支援者にとって
検査結果を共有することで、「怠けている」のではなく、注意の維持や衝動コントロールに難しさがある可能性を理解しやすくなります。環境調整や声かけの工夫、予定管理のサポートなど、具体的な支援を考えるきっかけになります。
ASRS は相談の入口として有用ですが、詳細な評価には面接や他の評価法を組み合わせることがあります。仕事や生活上の支障が強い場合は、点数だけにとらわれず、医師や心理士と一緒に困りごとの背景を整理していくことが大切です。