障害年金とは

精神科・心療内科の患者さんが経済的な不安を抱えないよう、精神疾患による障害に対して公的年金が支給される制度が障害年金です。このページでは、当院の患者さんに向けて精神障害に関する障害年金について分かりやすく解説します。

精神障害でも支給される
精神障害が原因で日常生活が制限される場合も障害年金の支給対象となります。ただし、精神障害者保健福祉手帳の交付基準とは異なり、障害年金では対象とならない精神疾患もあります(後述参照)。

障害年金に関するイメージ
目次
障害年金の種類

障害年金には加入している年金制度に応じた2種類があります。精神障害の場合は初診日にどちらの制度に加入していたかが重要です。

障害厚生年金

厚生年金加入者(会社員など)が対象で、初診日が厚生年金保険の被保険者期間中であることが条件です。障害等級が1級または2級に該当すると、障害基礎年金も併せて支給されます。

障害基礎年金

国民年金加入者や20歳未満60歳以上65歳未満で日本国内に住む方が対象です。精神疾患の場合、初診日が国民年金加入中、20歳前、または60歳以上65歳未満であることが必要です。

初診日が国民年金加入期間中なら障害基礎年金、厚生年金加入期間中なら障害厚生年金を請求します。


対象となる精神疾患

障害年金の対象となる精神障害は、精神障害者保健福祉手帳よりも範囲が狭いことが特徴です。

主に対象となる疾患

  • うつ病や双極性障害などの気分障害
  • 統合失調症や妄想性障害
  • てんかん
  • 知的障害
  • 発達障害(自閉スペクトラム症・注意欠如多動症など)

原則対象外となる疾患

  • パニック障害・不安障害・適応障害・強迫性障害などの神経症や、パーソナリティ障害(人格障害)は原則対象外とされます。これらは日常生活への支障が比較的軽く、治癒する可能性が高いことが理由です。
  • 違法薬物等による精神疾患も対象外です。

障害等級と判定基準

障害年金では、障害の程度に応じて等級が定められています。精神障害の等級判定は日常生活能力労働能力を基準に行われます。

【1級】 — 自分で日常生活の用を弁ずることができず、常に他人の援助が必要な状態。

【2級】 — 日常生活が著しく制限される状態で、多くの場面で援助や指導が必要。

【3級】 — 日常生活は行えるものの、労働が著しく制限される状態。障害基礎年金には3級はありません。

障害厚生年金の等級は1級〜3級、障害基礎年金は1級2級のみです。精神障害者保健福祉手帳の等級とは別制度のため、手帳の等級と一致しないことがあります。


受給の条件

障害年金を受給するためには以下の要件を満たす必要があります。

  • 初診日の要件 — 障害の原因となった病気で初めて医師の診療を受けた日(初診日)が、国民年金あるいは厚生年金の被保険者期間中、20歳前、または60歳以上65歳未満の日本国内居住期間中であることが必要です。
  • 保険料納付要件 — 初診日の前日までに、公的年金の加入期間の3分の2以上が保険料納付期間または免除期間であることが原則です。特例として、初診日に65歳未満であれば前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ要件を満たします。この直近1年の救済措置は2025年の法改正2036年3月末まで延長されました。
  • 障害認定日の要件 — 初診日から1年6か月を経過した日または治療の効果がないと認められた日を障害認定日といい、認定日に障害等級1級〜3級に該当していることが必要です。認定日に該当しなくても、後日状態が重くなれば事後重症として請求できます。
  • 年齢制限65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。初診日が65歳以上の場合は原則として障害年金の対象になりません。

支給される年金額の目安(2025年度)

障害年金の金額は物価に応じて毎年改定されます。ここでは2025年度(令和7年度)の支給額の目安を示します。

障害基礎年金(国民年金)

  • 1級 — 年額1,039,625円(月額86,635円) + 子の加算
    子の加算は、子どもがいる場合に支給されます。1人目・2人目の子どもは239,300円/年(月額19,942円)、3人目以降の子どもは79,800円/年(月額6,650円)です。
  • 2級 — 年額831,700円(月額69,308円) + 子の加算(加算額は1級と同じ)
  • ※障害基礎年金に3級はありません。1級の支給額は2級の1.25倍です。

障害厚生年金(厚生年金)

障害厚生年金は会社員などが加入する厚生年金保険において、初診日が加入期間中にある人が対象です。支給額は報酬比例の年金額や加入期間によって個人差があります。2025年度の基準の概要は次の通りです。

  • 1級 — 障害基礎年金1級(年額1,039,625円 + 子の加算) + 報酬比例の年金 × 1.25 + 配偶者加給年金(239,300円
  • 2級 — 障害基礎年金2級(年額831,700円 + 子の加算) + 報酬比例の年金 + 配偶者加給年金(239,300円
  • 3級 — 報酬比例の年金のみ(最低保障623,800円/年=月額51,983円)。配偶者加給はありません。
  • 障害手当金(一時金) — 障害厚生年金3級の受給要件には満たないものの一定の障害が残った場合に支給される一時金です。報酬比例の年金額の2年分が支給され、最低保障額は1,247,600円です。初診日に厚生年金に加入していた方で、症状が固定してから5年以内に請求する必要があります。

※障害厚生年金(報酬比例部分)は人によって金額が異なります。給与額や加入期間が長いほど年金額は多くなります。

障害年金生活者支援給付金

所得が低い障害基礎年金受給者には、生活を支えるための障害年金生活者支援給付金が上乗せされます。2025年度の給付額は1級が月額6,813円(年額81,756円)2級が月額5,450円(年額65,400円)です。この給付金は別途申請が必要で、前年の所得が一定額以下であることが条件です。


申請の流れと必要書類

精神障害による障害年金請求は手続きが複雑なため、余裕を持って準備しましょう。まずは年金事務所街角の年金相談センターに足を運び、請求の手引きや受診状況等証明書診断書(精神の障害用)の様式を受け取ることから始めます。その上で、一般的な流れは次のとおりです。

1. 初診日を調べる
「初診日」は、その障害の原因となった病気で初めて医療機関を受診した日を指します。病名が確定した日ではなく、最初に診察を受けた日が基準です。複数の医療機関を受診している場合は、最初に受診した医療機関での受診日が初診日となります。

2. 保険料納付要件を確認
年金事務所などで保険料の納付状況を調べ、要件を満たしているか確認します。

3. 初診日を証明する書類(医師が記入する用紙の原本)を揃える
障害年金の請求には、初診日を証明するために受診状況等証明書診断書(精神の障害用)が必要です。年金事務所や街角の年金相談センター等でこれらの書類を入手しましょう。初診の医療機関と診断書を作成する医療機関が同じ場合は、診断書に初診日が記載されますので受診状況等証明書は不要です。

4. 医師に診断書を書いてもらう
障害年金の請求に必要な受診状況等証明書診断書(精神の障害用)を主治医に作成してもらいます。診断書には現在の症状や日常生活の状況が記載され、初診日を証明する書類と同様に同じ医療機関でまとめて手続きを進めることができます。遡及請求の場合は障害認定日から3か月以内請求日以前3か月以内の現症2枚の診断書(精神の障害用)が必要になりますので、余裕を持って相談してください。

5. 病歴・就労状況等申立書を作成する
発病から現在までの症状の推移や就労状況を自分で記入します。

6. その他の必要書類を揃える
身元確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)、振込先の通帳またはキャッシュカード、基礎年金番号がわかる書類などが必要です。

7. 請求書類を提出する
完成した請求書類一式を住所地の市区町村役場または年金事務所に提出します。障害厚生年金の場合は年金事務所へ提出します。

障害認定日と請求時期

  • 初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)に等級に該当すると、その翌月分から障害年金を受給できます。
  • 障害認定日に該当しなくても、その後症状が悪化した場合は事後重症による請求が可能で、請求日の翌月分から支給されます。
  • 年金は請求が遅れると支給開始時期が遅れます。過去分の支給には5年の時効があり、5年以上遡って受け取ることはできません。

更新と支給期間

障害年金は認定された等級が一生続くわけではありません。障害の状態に応じて定期的に更新が行われ、更新時に提出する診断書の内容によって等級が変わることがあります。

一般的に精神障害の場合は1~5年ごとに診断書の提出が求められます。更新時期の通知は日本年金機構から届くため、必ず期限内に手続きを行いましょう


精神障害者保健福祉手帳との違い・併用
  • 制度の目的が違う — 精神障害者保健福祉手帳は、精神障害のある人の自立と社会参加を促進するための手帳で、公共料金や税金の減免など各種サービスが受けられます。一方、障害年金は生活を支える収入補助です。
  • 対象となる病名や基準が異なる — 手帳はほとんどすべての精神障害が対象ですが、障害年金では神経症や人格障害は原則対象外です。等級判定基準も異なるため、手帳で1級だからといって障害年金1級が認定されるとは限りません。
  • 併用可能 — 両制度は別物のため、精神障害者保健福祉手帳を持ちながら障害年金を受給することができます。手帳の診断書に障害年金の証書の写しを添付すれば手帳の申請を簡素化できる場合があります。

当院のサポート

当院では精神科・心療内科の診療だけでなく、障害年金の申請や更新についてもサポートいたします。初診日の特定や診断書の作成、病歴・就労状況等申立書の記入など、不明な点があればお気軽にご相談ください。患者さんの治療や生活を支えるため、必要な制度を適切に利用できるようお手伝いします