

トラゾドンは、日本ではデジレルやレスリンの名で処方される抗うつ薬です。SARI(セロトニン遮断再取り込み阻害薬)というカテゴリーに分類され、1970年代から世界で使用されている実績のある薬剤です。
SARIのユニークな作用機序
SARIは、セロトニンを「増やす」だけでなく、「調整する」作用を併せ持ちます。
トラゾドンは現在、うつ病の第一選択薬としてだけでなく、その副作用を逆手に取った「睡眠薬代わり」としても広く利用されています。
「眠くなる」メカニズムと利点
トラゾドンは、以下の2つの受容体もブロックする作用があります。
この「深い眠気」を利用して、不眠を伴ううつ病や、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(依存性が懸念される薬)を使いたくない高齢者の睡眠導入に少量で用いられることが多くあります。
ふらつき・立ちくらみに注意
アドレナリンα1受容体の遮断は、血管を広げて血圧を下げる作用にもつながります。そのため、起立性低血圧(立ち上がった瞬間のめまい・ふらつき)が起こりやすくなります。特に高齢者や、普段から血圧が低い方は、転倒予防のために用量の慎重な調整が必要です。
一方で、三環系抗うつ薬に見られる「口の渇き」や「尿が出にくい」といった副作用(抗コリン作用)は少ないため、内科的な合併症を持つ方でも比較的使いやすい薬剤とされています。
トラゾドンは内服後速やかに吸収され、血中濃度のピークは用量により異なりますが概ね2〜3時間で達します。半減期は6〜8時間前後で、短時間の作用を持つ睡眠薬に比べるとやや長めです。肝臓で代謝される過程でm‑CPPという活性代謝物が生じますが、血中濃度は低く治療効果や副作用への影響は少ないとされています。
作用時間の目安
特徴と注意点
半減期がやや長いため、夜間に服用すると翌朝に眠気が残ることがあります。特に高齢者では薬の代謝が遅くなるため、用量を少なめにし、翌日の体調を見ながら調整することが重要です。
日本で処方されている製剤は25 mg錠と50 mg錠の2種類です。原則として抗うつ薬であり、うつ病・うつ状態が保険適応となっています。医師は患者さんの症状や体格、年齢を考慮して用量を調整します。以下に目安を示します。
服用のポイント
トラゾドンは眠気を利用して治療効果を得る薬であるため、就寝前に飲むことが多い薬です。睡眠薬として使用する場合は、通常の抗うつ療法よりも少ない用量で済むことが多く、25 mg錠や50 mg錠を分割して用量を調整します。眠気が現れるまでに1~2時間ほどかかることから、寝る直前ではなく早めの時間帯に服用すると寝つきがよくなることがあります。
トラゾドンの4つのメリット
注意点と副作用
こんな方に向いています
デジレル(レスリン)は安全性の高いお薬ですが、効果が持続しやすいため翌朝の眠気や、血圧が下がることによるふらつきが見られることがあります。
デジレル/レスリンは依存性がなく安全性が高いお薬ですが、効果が出るまでに少し時間がかかる(ピークまで2~3時間)ため、「布団に入る直前」ではなく、「寝る少し前」に飲んでおくとスムーズに入眠できることが多いです。
デジレル(レスリン)は、本来は抗うつ薬ですが、副作用の「眠気」を利用して睡眠薬として使われます。そのため、一般的な睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)とは効き方のメカニズムが異なります。
ポイント:
デジレル(レスリン)は、「普通の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)だと依存性が怖い」「眠りが浅くてすぐ目が覚める」という方に適しています。また、抗うつ作用も持っているため、気分の落ち込みや不安を伴う不眠には一石二鳥の効果が期待できるお薬です。
トラゾドン(レスリン・デジレル)は胎盤や母乳に移行する可能性が指摘されていますが、十分な研究が行われていないため、使用には慎重な判断が必要です。
添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」と明記されています。
母乳中への移行はごくわずかとされていますが、注意が必要です。
妊娠を計画している場合や授乳中の場合は、自己判断せず早めに医師へ相談してください。
トラゾドンは眠気を伴う鎮静作用があるため、服用すると注意力や反射運動能力が低下するおそれがあります。
【注意】
添付文書にも「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する」と明記されています。
実際には、個人差により眠気の程度が大きく異なり、服用後の数時間だけでなく翌日まで影響が残る(持ち越し効果)こともあります。特に用量が増えると日中に眠気やふらつきが残りやすくなるため、自動車や自転車の運転、高所作業など危険を伴う作業には適していません。
仕事で運転が不可欠な方は、ご自身の判断で無理をせず、担当医に相談しながら薬の種類や用量を調整してもらうことが大切です。安全のため、まずは薬を試用する期間(飲み始めや増量時)は運転を控え、様子を見るようにしましょう。
トラゾドンとアルコールの併用は、医学的に避けることが望ましい組み合わせです。トラゾドンには強い眠気を催す作用がありますが、アルコールも中枢神経を抑制するため、両者を併用すると作用が過剰に強まってしまいます。
併用によるリスク
トラゾドンは睡眠のリズムを整えるためにも使われますが、アルコールは睡眠の質を悪化(中途覚醒など)させます。治療効果を得るためには、服用期間中の節酒・禁酒が非常に重要です。
どうしても飲酒の機会がある場合は、「量を控える」「服用のタイミングをずらす」など、医師と相談して慎重に対応してください。
トラゾドンは依存性は比較的低いお薬ですが、急に服用を止めると、身体がバランスを崩して離脱症状が出ることがあります。特に、睡眠補助として使っていた場合、急に止めると以前よりも強い不眠(反跳性不眠)に悩まされることがあります。
中止時の注意点
これらは一時的なものですが、無理なく止めるためには計画が必要です。
中止する際は、医師の指導のもとで段階的に減らしていきます(例:50mg→25mg)。錠剤を割って少しずつ減らす方法が一般的です。
「眠れるようになったから」と急に止めるのではなく、生活リズム(睡眠衛生)を整えながら、薬がなくても眠れる自信をつけていき、ゆっくりと卒業を目指しましょう。
Q1トラゾドンは他の抗うつ薬とどう違いますか?
トラゾドンはSARI(セロトニン遮断再取り込み阻害薬)というタイプのお薬です。SSRIなどに比べて鎮静作用(眠くなる作用)が強く、抗コリン作用(口の渇きなど)が少ないのが特徴です。一方で、血管に作用してめまい・ふらつきを起こしやすい点に注意が必要です。
Q2どれくらいで効果を感じ始めますか?
眠気や入眠効果は服用後30分〜1時間ほどで現れますが、気分の落ち込みを改善する「抗うつ効果」は即効性がありません。通常、2週間〜1ヶ月ほど服用を続けることで徐々に効果が現れます。焦らず継続することが大切です。
Q3服用中に気をつけることはありますか?
Q4眠気が強すぎる/弱すぎる場合は?
日常生活に支障が出るほど眠い場合、あるいは逆に効果を感じない場合も、自己判断での増減量は避けてください。医師に相談し、服用量を調整したり、服用のタイミングを変更したりすることで改善できる場合があります。
Q5服用するベストなタイミングは?
効果が現れるまで少し時間がかかるため、寝る直前よりも就寝の1〜2時間前に服用すると寝つきが良くなることが多いです。夕食後すぐだと吸収が遅れることがあるため、就寝時刻に合わせて調整しましょう。
トラゾドン(商品名:デジレル/レスリン)は、SARIに分類される抗うつ薬です。抗うつ効果に加えて、穏やかで自然に近い眠気を誘う作用を持つため、不眠を伴ううつ病や不安障害の治療によく用いられます。
トラゾドンのポイント
半減期は6〜8時間程度ですが、翌日に眠気が残ることもあります。服用中は車の運転や飲酒を控える必要があります。
うつ症状の改善には時間がかかりますが、睡眠リズムを整えることで日中の活力回復を助けてくれるお薬です。焦らず医師と相談しながら継続していきましょう。