

現代社会では災害や事故、暴力事件や犯罪被害、突然の病気の宣告など、誰もが想像もしていなかった出来事に遭遇する可能性があります。このような強烈なショックや恐怖にさらされた直後、人の心と身体はしばしば大きく揺さぶられます。多くの人は時間の経過とともに少しずつ落ち着きを取り戻しますが、ごく一部の人はショックが大きすぎて短期間にさまざまな精神・身体症状が出現し、日常生活が立ち行かなくなることがあります。その状態が急性ストレス障害(Acute Stress Disorder:ASD)です。
急性ストレス障害は、自然災害や重大事故、犯罪被害などの極端なストレス体験によって引き起こされる急性的なこころと身体の反応です。症状は時間とともに軽快することが多いものの、適切な理解と対応がなければ日常生活への復帰が遅れたり、PTSDへ移行する可能性があります。
本記事では、急性ストレス障害の定義や症状、診断基準、治療法、日常生活での対処法、再発予防などについて詳しく解説します。小児に関する記述は含めず、主に成人の方を対象とした内容になっています。
急性ストレス障害の症状は多岐にわたり、大きく五つの領域に分類されます。以下ではそれぞれの特徴を解説します。
急性ストレス障害の治療には、症状の軽減とPTSDへの進展を防ぐことを目的とした多角的なアプローチが必要です。主な治療法を紹介します。
Q1怖い体験をした後に眠れないのは普通のこと?急性ストレス障害なのか判断がつきません。
怖い出来事を経験した直後に不安や不眠が生じるのはごく自然な反応です。しかし、複数の症状が3日以上続き、日常生活に支障が出る場合は急性ストレス障害の可能性があります。判断に迷ったら早めに専門家に相談しましょう。
Q2どの時点で病院を受診すべきでしょうか?
症状が強く本人や周囲が困っている場合、また自傷行為や他害行為のリスクがある場合は直ちに受診が必要です。また、症状が軽度でも数日経っても改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は専門機関に相談すると安心です。早期受診によりPTSDへの移行を防ぐことが期待できます。
Q3薬に頼りたくありません。心理療法だけで治せますか?
急性ストレス障害では薬物療法よりも心理社会的支援が中心です。安全確保とセルフケア、適切な心理療法が有効で、多くの場合それだけで回復が望めます。薬物は必要に応じて一時的に使用することがあり、医師と相談しながら進めます。
Q4治療を受けることでフラッシュバックが悪化しないか心配です。
トラウマフォーカストCBTなどの治療は状態が安定してから行われます。急性期に無理に思い出させることは推奨されておらず、専門家が安全を確保しながら進めるため過度に不安を抱える必要はありません。治療への不安はそのまま治療者に伝え、納得できるペースで進めましょう。
急性ストレス障害は、誰にでも起こり得る極端なストレス体験に対する急性の反応であり、正しい理解と適切な対応が求められます。多彩な症状によって心身を揺さぶり、短期間に日常生活を大きく変えてしまうことがありますが、適切な支援とセルフケアによって多くの場合は数週間以内に回復します。重要なのは、以下の点です。
急性ストレス障害はこころと身体が発する防御反応であり、恥ずべきものではありません。自分を責めず、周囲の支援を受けながら一歩ずつ回復への道を歩んでください。本記事が理解を深め、適切な対処と支援につながる一助となることを願っています。