

双極性障害は、「躁状態」と「抑うつ状態」という二つの極端な気分の波を繰り返す精神疾患です。
躁状態では異常なほど気分が高揚し、活動量が増えて睡眠時間が短くても疲れを感じにくいことがあります。反対に抑うつ状態では気分が落ち込み、興味や喜びが感じられなくなり、日常生活に支障をきたすほど無気力になることが特徴です。症状の程度や期間は個人差がありますが、多くの場合、早期から適切な治療を受けることで生活の質を向上させることができます。
ポイント
双極性障害は一生のうちに複数回のエピソードを経験することが多く、再発のリスクが高い疾患とされています。ただし、適切な治療と生活管理により寛解状態(症状が落ち着いている状態)を長く維持することも可能です。
以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在は国際的にも「双極性障害」という名称が一般的です。成人期に発症することが多いものの、若年成人でも発症が見られることがあります。ここでは成人の双極性障害を中心に解説します。
双極性障害は躁(または軽躁)状態と抑うつ状態が周期的に現れます。症状の具体的な内容を理解することは、早期発見や治療の適切な選択に不可欠です。
軽躁状態は本人にとって「調子が良い」と感じられやすく、治療を受けずに放置されやすい点が注意点です。しかし軽躁状態を契機に、その後重度の抑うつ状態が続くことも多いため、適切な治療による予防が重要です。
抑うつ状態は単極性うつ病とよく似ていますが、双極性障害では過去に軽躁・躁状態を経験している点や、抑うつ期の前後に気分の波が見られる点が診断上重要です。
双極性障害の原因は一つに特定できません。遺伝的素因、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ、ホルモン変動、心理社会的要因などが複合的に関係していると考えられています。
双極性障害の診断は精神科医や心療内科医が行います。症状が一見うつ病や不安障害と似ているため、正確な診断には慎重な評価が必要です。
双極性うつを見逃さないように、治療歴や気分の変遷を詳しく確認することが大切です。
双極性障害では、躁・軽躁の抑制、抑うつの再発予防、混合状態の安定化など、目的に応じて薬剤を組み立てます。
気分安定薬(リチウム・バルプロ酸など)
気分安定薬は躁状態の抑制や再発予防に用いられます。代表的な薬剤にはリチウムやバルプロ酸があり、カルバマゼピンやラモトリギンも使用されます。
抗精神病薬とその役割
抗精神病薬は躁状態や混合型エピソードで用いられます。非定型抗精神病薬は気分の安定化に加え、抑うつ症状に対しても一定の効果が報告されています。
抗うつ薬とその注意点
抑うつエピソードの治療に抗うつ薬が用いられることがありますが、双極性障害では注意が必要です。抗うつ薬の単独投与は躁転(抑うつ状態から躁状態へ移行)を引き起こすリスクがあるため、一般には気分安定薬や抗精神病薬と併用します。躁転の兆候が出た場合には速やかに調整します。抗うつ薬の使用は短期に限定されることが多く、抑うつ症状が改善した後も気分安定薬を継続することが再発予防につながります。
心理教育と自己理解
疾患の性質、治療法、再発の兆候などを学び、早期にサインに気づくことを目指します。家族が参加することで、支援方法を学び家庭内サポートを強化する効果も期待されます。
認知行動療法(CBT)
気分変動を引き起こしやすい思考・行動パターンを見直し、抑うつ期の無力感や過剰な自己批判に対処します。気分日誌や活動記録をもとに、気分と生活の関連を一緒に検討し、ストレス対処や生活リズム整備につなげます。
家族療法と社会的リズム療法(IPSRT)
家族療法ではコミュニケーションを改善し、ストレスの少ない環境づくりを支援します。IPSRTは睡眠・食事・活動などの時間を整え、生活リズムのばらつきを減らすことで気分の安定を図ります。
双極性障害は再発しやすい疾患です。再発を防ぎ、安定した生活を送るためには日常の行動と自己管理が重要になります。
双極性障害では、他の精神疾患や身体疾患を併発することが少なくありません。これらの併存症は症状の悪化や治療の複雑さに影響するため、早期発見と適切な対応が重要です。
双極性障害は長期にわたる疾患ですが、適切な治療と自己管理によって良好な社会生活を送ることができます。再発率は高いものの、病気との付き合い方を学ぶことで安定した期間を長く維持できます。
双極性障害は、気分の波が激しく日常生活に大きな影響を及ぼす精神疾患ですが、適切な治療と生活管理によって多くの人が充実した生活を送っています。症状を早期に認識し、専門家の診断と治療を受けることが第一歩です。
薬物療法と心理社会的治療を組み合わせ、規則正しい生活を心がけることで再発を予防できます。また、家族や友人、職場の理解と支援が何より大切です。
相談先の例
不安や悩みを抱え込まず、早めに相談することで回復のチャンスが広がります。双極性障害を抱える人々が安心して暮らせる社会を目指し、周囲の理解とサポートが広がることが期待されます。