🧭慢性めまい・PPPD外来耳鼻科/脳神経内科との連携
前庭リハビリ・心理療法・薬物療法
長く続くふらつきと生活への影響を医師へ相談する日本人女性

ふわふわする、立つ・歩く・人混みや画面で悪化するめまいが長く続くとき、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)が鑑別に入ります。

PPPDの診断基準はA〜Eの5項目で、すべてを満たすことが必要です。症状の経過と誘発条件、生活への支障、ほかの原因を順に整理し、以下で各項目を分けて説明します。検査が正常という理由だけで決めたり、すべてを心因性とみなしたりはしません。

ふわふわする
立つと悪化
歩くと悪化
人混みがつらい
画面で悪化
3か月以上続く

耳鼻咽喉科・脳神経内科・内科での評価と連携し、前庭リハビリテーション、認知行動療法、薬物療法を症状と希望に合わせて検討します。

慢性めまい・PPPD外来をご希望の方は
医師の診察」をご予約ください

予約はコチラ👆
🧭 1. 慢性めまい・PPPD外来で扱うこと

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は、浮いている感じ、ふらつき、非回転性のめまいが長く続き、立つ・歩く・乗り物で動く・画面や人混みを見る、といった状況で悪化する病気です。症状は実在し、生活や仕事への影響も大きい一方、一般的な画像検査や平衡機能検査だけでは異常が見つからないことがあります。

当外来では、PPPDの診断基準に沿って症状の時間経過と誘発条件を整理し、耳鼻咽喉科・脳神経内科・内科で確認すべき病気、併存する不安や抑うつ、睡眠、薬剤の影響を一緒に見直します。めまいを一律に心因性と決める場所でも、検査が正常という理由だけでPPPDと診断する場所でもありません。

大切な前提:PPPDの診断には、国際基準のA〜Eの5項目すべてを満たすことが必要です。新しく突然始まった強いめまい、神経症状、失神、胸痛などはPPPDとみなさず、まず救急・身体診療で評価します。

PPPDの診断基準はA〜Eの5項目

症状の長さ、悪化条件、きっかけ、生活への支障、ほかの原因の検討を順に整理します。

① 基準A|持続期間

浮動感・不安定感・非回転性めまいが、3か月以上、ほとんどの日に続くか。

② 基準B|悪化条件

立位、能動・受動運動、複雑・動的な視覚刺激の3群すべてで悪化するか。

③ 基準C|先行病態

前庭疾患、片頭痛、身体疾患、外傷、心理的苦痛などのきっかけがあるか。

④ 基準D|生活への支障

通勤、買い物、仕事、家事、外出などに強い苦痛や機能障害があるか。

⑤ 基準E|ほかの原因

別の疾患や障害だけでは、症状全体をより適切に説明できないか。

一部だけを満たす状態をPPPD確定とは扱わず、診断名より未評価の危険な原因と現在の機能低下を優先します。

▲ 目次へ戻る

🧠 2. PPPDは「機能性前庭疾患」です
安全な姿勢で眼球運動と神経所見を確認する日本人患者と医師
医師が指標を用いて眼球運動を確認する診察場面

PPPDとはどのような病気ですか?

「PPPD」という病名を初めて知る方も少なくありません。名称と統一された診断基準は比較的新しいものですが、症状そのものが最近生まれたわけではありません。Bárány Societyは、慢性自覚性めまい、恐怖性姿勢めまい、視覚性めまいなど約30年の知見を統合し、2017年にPPPDの国際診断基準を公表しました。現在は、WHOが2018年に公表し、2019年に採択、2022年に発効したICD-11で、慢性前庭症候群の一つ(AB32.0)として位置づけられています。

PPPDでは、ふわふわする、揺れる、足元が不安定といった症状が、3か月以上、ほとんどの日に持続します。立つ・歩く、自分や周囲が動く、乗り物に乗る、人混みや陳列棚を見る、スマートフォンやパソコンの画面をスクロールするなど、姿勢・動き・複雑な視覚刺激で悪化しやすいことが特徴です。持続性知覚性姿勢誘発めまいという日本語名は、この続き方と悪化条件を表しています。

なぜ起こるのか(発症のきっかけ)

めまい疾患後に発症することがあります

PPPDは、次のような急性・反復性のめまい疾患をきっかけに始まることがあります。

良性発作性頭位めまい症(BPPV 前庭神経炎 メニエール病 前庭性片頭痛

ほかに、脳振盪・むち打ち、身体疾患、自律神経疾患、強い心理的苦痛が先行することもあります。国内のPPPD 138例の報告では、末梢性・中枢性の前庭疾患が先行した方は69.6%でした。これは「原因不明のめまいの約70%がPPPD」という意味ではありません。

不安・ストレスとの関連

不安や心理的ストレスは、PPPDのきっかけや症状を強める要因の一つになり得ます。強い不安で身体感覚へ注意が集まり、体を固めたり呼吸が速くなったりすると、ふらつきが上乗せされることがあります。

ただし、PPPDが「ストレスだけで起こる」「気の持ちようで続く」という意味ではありません。不安症や抑うつは診断の必須条件ではなく、症状が作りものという意味でもありません。動悸、血圧変化、失神しそうな感覚が目立つ場合は、自律神経疾患などの併存を別に確認します。

バランスは、耳だけでなく「耳・目・体」のチームで保たれます

ふだん脳は、内耳が伝える頭の動き、目が捉える景色の動き、足裏・筋肉・関節が伝える体の位置を照らし合わせ、「自分が動いたのか、周囲が動いたのか」「体がどちらへ傾いたのか」を、ほぼ自動で判断しています。

めまいをきっかけに、脳がバランスを保つための情報処理に偏りが生じることがあります。その結果、目や体からの情報に過敏に反応し、非回転性めまい・ふわふわ感が続きます。立つ・歩く、乗り物で動く、人混みや画面を見る場面では、症状がさらに強まりやすくなります。

この仕組みはまだ完全には解明されていません。元の前庭疾患が活動中のままPPPDと併存する場合もあるため、どちらか一方へ決めず、経過・診察・必要な検査を合わせて評価します。

内耳・視覚・体からの情報を脳で統合し、めまいをきっかけにバランス情報の処理に偏りが生じ、非回転性めまいやふわふわ感が起きる仕組みを実写と医療CGで示したPPPD図解

▲ 目次へ戻る

🌫️ 3. よくみられる症状と困りごと

代表的な症状

陳列棚の視覚刺激でふらつきを感じ安全にカートへ手を添える日本人女性
人混みや陳列棚など複雑な視覚刺激での悪化を具体的に確認します。

ふわふわした持続性の浮動感

「床や体が揺れる」「雲の上を歩く」「船に乗っている」「頭がふわふわする」「まっすぐ立てない・歩きにくい」「周囲が流れる」と表現されます。典型的には、ぐるぐる回る発作だけではなく、長時間続く浮動感・不安定感・非回転性めまいが中心です。症状は3か月以上、1か月の半分を超える日、多くは毎日またはほぼ毎日みられ、数時間続きながら強さが上下します。

一日の経過とともに症状が強まり、夕方につらく感じる方もいます。疲労や寝不足で波が大きくなることもありますが、夕方の悪化や疲労は診断の必須条件ではありません。

視覚刺激で悪化する「視覚誘発めまい」

スーパーの陳列棚、人混み、流れる映像、スマートフォンのスクロールなど、視覚情報が多く、動きのある環境で症状が強まることがあります。目の病気だけを意味するのではなく、前庭・視覚・体性感覚の情報をまとめる際に、視覚へ頼りやすくなったり、視覚の動きに過敏に反応したりする状態が関与すると考えられています。

動作・姿勢・視覚刺激で悪化する症状

症状が「立っている姿勢」「自分や周囲の動き」「動く・複雑な視覚刺激」の3群で悪化することは、PPPDの重要な診断ポイントです。刺激によって短い発作だけが起こるというより、すでに続いている症状が強まる形が典型的です。3群で悪化の強さが同じである必要はありません。

□ 立っている、歩く、家事をするとつらい

□ 車・電車・エレベーターで悪化する

□ スーパーの棚、人混み、横断歩道が苦手

□ スクロール、動画、会議画面で揺れる

□ 長く活動した日の夕方、疲労、寝不足、緊張で波が大きくなる

□ 転倒への不安から外出を避けている

これらはPPPDに特徴的ですが、項目に当てはまるだけでは診断できません。症状が3か月未満の場合、短い発作だけの場合、特定の頭位だけで起こる場合、新しい難聴や神経症状を伴う場合は、別の原因を優先して調べます。

▲ 目次へ戻る

📅 4. 診断基準A:3か月以上、ほとんどの日に続く

基準Aは、浮動感、不安定感、非回転性めまいのうち1つ以上が、3か月以上にわたり、ほとんどの日に存在することです。「ほとんどの日」は、注記では1か月の半分を超える日(30日なら16日以上)で、多くの方では毎日またはほぼ毎日と説明されています。

症状は何時間も続くことが多く、1日の中で強弱があります。一日中ずっと同じ強さである必要はありません。瞬間的な増悪が重なることはありますが、数秒〜数分の短い発作だけでは基準Aを満たしません。

発症日、1か月の症状日数、1日の持続時間、良い時間帯、休むとどう変わるかを記録すると判断に役立ちます。3か月に達していない時点では、原因疾患の評価と経過観察を行い、将来PPPDになると決めつけません。

▲ 目次へ戻る

🚶 5. 診断基準B:立位・動き・視覚刺激で悪化する

持続症状には単一の決まった誘因がなくても、経過中に次の3種類すべてで悪化することが基準Bです。強さが同程度である必要はなく、避けるようになったため現在は曝露が少ない場合も丁寧に確認します。

人のいない陳列棚、エスカレーター、駅通路が連続する視覚刺激の強い生活環境
陳列棚や通路など、視覚刺激が強い場面と症状の変化を記録します。

① 立位:立つ、歩く、列に並ぶなど、体を起こした姿勢。

② 能動・受動運動:自分で動く、頭を動かす、電車・バス・車・エレベーター・エスカレーターで運ばれるなど。特定方向や特定頭位だけに限りません。

③ 視覚刺激:人混み、陳列棚、流れる景色、縞模様、細かい文字、スクロール、動画など、動く物や複雑な模様。

「立つと悪い」だけなら起立性低血圧など、「寝返りの一方向だけ」ならBPPVなど、別の病態がより適切なことがあります。3つの悪化因子を形式的に数えるのではなく、実際の生活場面と症状の再現性を確認します。

PPPDで症状が強くなりやすい、立つ・歩く場面、体や頭が動く乗り物、動くものや複雑な視覚刺激の3場面を写真で示した図解

▲ 目次へ戻る

🧩 6. 診断基準C:きっかけとなる病態がある

PPPDは、めまい・ふらつき・不安定感を起こす病態をきっかけに始まります。急性または反復性の前庭疾患、片頭痛、脳や全身の病気、自律神経系の障害、頭部外傷・むち打ち、強い心理的苦痛などが含まれます。

急性・反復性の病気がきっかけの場合、元の発作が回復するにつれて、症状が断続的なものから基準Aの持続型へ移ります。慢性疾患がきっかけの場合は、徐々に持続症状が強まることがあります。薬剤の副作用や不整脈などが先行する場合もあります。

「きっかけが思い当たらない」場合は、聞き取りをやり直すとともに、基準Cを満たすか慎重に判断します。先行疾患が今も活動性を持つなら、その治療を止めてPPPDだけを扱うのではなく、両方を並行して評価します。

▲ 目次へ戻る

⚖️ 7. 診断基準D:生活への支障

基準Dは、症状が強い苦痛または機能障害を起こしていることです。通勤、買い物、運転、パソコン作業、育児、家事、対人場面、外出などへの具体的な影響を確認します。単に「できる・できない」だけでなく、勤務時間を短くする、買い物に付き添いが必要になる、画面作業を中断する、外出後に長く休むなど、続けるために増えた準備・助け・回復時間も生活への支障に含めます。

症状が毎日同じ強さでなくても、混雑した場所や動く映像、立位・歩行を避けて活動範囲が狭くなっていれば重要な情報です。診察では、困る場面、頻度・持続時間、必要な付き添いや休憩、諦めた予定を整理し、症状の点数だけでなく、取り戻したい行動を治療目標として決めます。

▲ 目次へ戻る

🔎 8. 診断基準E:ほかの原因の検討

基準Eは、症状がほかの疾患や障害だけでは、より適切に説明できないことです。これは「すべての検査が正常でなければならない」という意味ではありません。別の前庭疾患、身体疾患、精神疾患が見つかっても、それだけでは持続症状全体を説明できない場合、PPPDの併存を検討できます。反対に、その病気だけで十分に説明できるならPPPDと診断しません。

A〜Eのうち一部だけを満たす状態を、便宜的にPPPD確定として扱いません。診断名よりも、未評価の危険な原因がないか、現在の機能低下に何が関与しているかを優先します。

▲ 目次へ戻る

🩺 9. 「検査が正常」だけでは診断できません
めまいの持続時間と誘発場面を空欄の日誌で整理する日本人女性
症状日数、持続時間、立位・動き・視覚刺激との関係を同じ日誌で確認します。

PPPDに固有の血液検査、MRI所見、眼振、平衡機能検査はありません。検査が正常であることは診断の一材料になっても、PPPDの証明にはなりません。反対に、軽い前庭機能低下などがあっても、PPPDを否定する理由にはなりません。

新潟PPPD問診票(NPQ)、Dizziness Handicap Inventory(DHI)、不安・抑うつ尺度は、誘発因子や生活支障を数値化し、治療前後を比較する補助ツールです。点数だけで確定診断したり、性格の問題と判定したりはしません。

MRI、CT、聴力検査、眼振・頭位検査、前庭機能検査は全員に同じ組み合わせで行うものではありません。年齢、発症様式、難聴、神経症状、診察所見に応じ、耳鼻咽喉科・脳神経内科・救急科などが必要性を判断します。

受診時は「異常なし」という結論だけでなく、検査名・実施日・結果が分かる資料を持参してください。症状が始まった時期と検査後の変化を並べると、すでに除外できた病気と再評価が必要な変化を分け、重複検査を減らしやすくなります。

▲ 目次へ戻る

🏥 10. 最初に耳鼻咽喉科・脳神経領域で確認すること

慢性めまいでも、まず耳、脳、循環、全身状態を確認することが大切です。発症が突然か徐々か、回転性か浮動性か、持続時間、頭位との関係、難聴・耳鳴り、頭痛、神経症状、失神、動悸、服薬変更を整理します。

耳鼻咽喉科:耳鏡、聴力、眼振、頭位・頭位変換、必要に応じ前庭機能検査。

脳神経領域:眼球運動、構音、筋力・感覚、小脳機能、立位・歩行、必要に応じ画像評価。

内科・循環器:血圧・脈拍、起立前後の変化、貧血・代謝、心電図などを症状に応じて確認。

急性めまいは複数診療科にまたがり、一つの科だけで全原因を網羅できません。当外来は耳鼻咽喉科・脳神経内科・救急医療の代替ではなく、必要な身体評価が未実施なら先に、または並行して受診をお願いすることがあります。

▲ 目次へ戻る

🔄 11. 主なめまい5疾患の比較

PPPD、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病、前庭性片頭痛、前庭神経炎では、めまいの続き方、起こるきっかけ、耳症状・片頭痛症状の組み合わせが異なります。ただし、一人に二つ以上が併存することもあります。「どれか一つ」と決めつけず、短い発作、長く続く発作、日常の持続症状を分けて確認します。

内耳とバランスを感じる器官

外耳、中耳、内耳、三半規管、耳石器、蝸牛、前庭神経の位置を示す耳の解剖図
三半規管は頭の回転、耳石器は傾きや直線的な動きを感じ、その情報を前庭神経から脳へ伝えます。蝸牛は主に音を感じる器官です。BPPVやメニエール病では内耳の病態が重要ですが、PPPDは内耳の構造異常だけで説明する病気ではありません。前庭・視覚・体性感覚の情報処理や姿勢制御を含めて評価します。

主な5つのめまい疾患を比べます

非回転性が中心の持続症状

持続性知覚性姿勢誘発めまい
(PPPD)

症状と時間

ぐるぐる回る発作よりも、ふわふわする、揺れる、足元が不安定といった非回転性の浮動感・不安定感が中心です。症状は3か月以上、1か月の半分を超える日にみられ、1日の中で数時間続きながら強さが変わります。

主な悪化条件

立つ・歩く、自分や周囲が動く、複雑な視覚刺激を見ることで悪化します。人混み、陳列棚、画面のスクロールなどが代表例です。

耳症状・検査

難聴、耳鳴り、耳閉感はPPPDの診断基準ではありません。PPPDだけを確定する検査所見はなく、基準A〜Eと先行・併存疾患を確認します。

治療の方向

病態の説明、前庭リハビリテーション、認知行動療法、必要に応じた薬物療法を組み合わせ、生活機能の回復を目指します。

頭位で起こる短い回転感

良性発作性頭位めまい症
(BPPV)

症状と時間

寝返り、起き上がり、上を向く、かがむなどで、典型的には短い回転性めまいが起こります。不安定感や吐き気を伴うこともありますが、強い回転感は多くの場合数秒〜1分未満です。

主な誘因

重力に対する頭の位置の変化で繰り返します。頭を動かさない間も何時間も同じ強さで続くめまいは、典型像とは異なります。

耳症状・検査

難聴や耳鳴りはBPPV自体の特徴ではありません。頭位・頭位変換検査で誘発される特徴的な眼振から、病型と患側を確認します。

治療の方向

半規管と病型に合った耳石置換法が中心です。症状や眼振が典型的でない、処置後も続く場合は、別の原因やPPPDの併存を再評価します。

耳症状を伴う反復性の回転感

メニエール病

症状と時間

自然に始まる反復性の回転性めまいが中心です。確実例の診断基準では、20分〜12時間続く発作が2回以上あります。

主な起こり方

特定の寝返りだけで起こる短い発作とは異なり、明確な頭位変化がなくても発症します。発作の間は症状が軽くなることがあります。

耳症状・検査

同じ耳の変動する難聴・耳鳴り・耳閉感が重要です。聴力検査で低〜中音域の感音難聴を確認し、ほかの原因を除外します。

治療の方向

耳鼻咽喉科で聴力を追跡し、発作時の対応、再発予防、聴覚への対応を病期に合わせて検討します。発作後の持続性ふらつきは別に評価します。

片頭痛の特徴を伴う反復性めまい

前庭性片頭痛

症状と時間

回転性・非回転性のめまいを反復します。診断基準では、中等度〜重度の前庭症状が5回以上あり、各発作は5分〜72時間続きます。

主な起こり方

自然に起こるほか、頭位変化、複雑な模様・動く映像、頭部運動でも誘発されます。頭部運動で生じる非回転性の浮動感は、吐き気を伴う場合を診断上の前庭症状として扱います。めまいのたびに頭痛が起こるとは限りません。

片頭痛症状・検査

片頭痛の既往に加え、発作の半数以上で片頭痛様頭痛、光・音過敏、視覚性前兆のいずれかを確認します。単独で確定する検査はなく、ほかのめまい疾患を除外します。

治療の方向

生活リズムと誘因を整理し、発作時治療と予防治療を検討します。PPPDと併存する場合は、時間の限られた発作と日常の持続症状を分けて治療します。

突然始まり、1日以上続く強いめまい

前庭神経炎

症状と時間

突然または亜急性に始まる強い回転性・非回転性めまいが安静時にも続きます。確実例の診断基準では24時間以上持続し、数日かけて軽くなります。

主な起こり方

BPPVのように特定の頭位で短く起こるのではなく、持続するめまいが頭や体を動かすとさらに悪化します。吐き気・嘔吐や強い歩行不安定を伴うことがあります。

耳症状・検査

新たな難聴・耳鳴り・耳閉感は通常伴いません。眼振と一側の前庭眼反射低下を確認し、脳卒中など中枢性疾患との鑑別が必要です。

治療の方向

急性期は早急に身体評価を行い、めまい・吐き気へ対応します。回復期は状態に応じて前庭リハビリテーションを検討し、持続するふらつきはPPPDの併存も再評価します。

見分ける手掛かり

頭位で起こる数秒〜1分未満の発作はBPPV、変動する耳症状を伴う20分〜12時間の発作はメニエール病、片頭痛の特徴を伴う5分〜72時間の反復発作は前庭性片頭痛、突然始まり24時間以上続く強いめまいで新たな難聴がない場合は前庭神経炎、3か月以上続き、立位・動き・視覚刺激で悪化する日常的な症状はPPPDを考える手掛かりです。診断を決める早見表ではなく、診察で伝えるための整理として使います。

BPPV、メニエール病、前庭性片頭痛、前庭神経炎の後に持続性のふらつきが残り、PPPDが加わることがあります。反対に、新しい発作や耳症状をすべてPPPDの変動とみなしてはいけません。突然の片耳の難聴は当日中を目安に耳鼻咽喉科へ相談します。「以前BPPVと言われた」「耳の検査は一度正常だった」だけで、現在の原因を固定しません。

急に始まった強いめまいが何時間も続くときは、前庭神経炎と脳卒中を症状だけで区別できません。立てない・歩けない、麻痺・しびれ、ろれつ困難、物が二重に見える、新しい激しい頭痛などを伴う場合は119を検討してください。これらがなくても、初めての急な持続性めまいは早めに医療機関を受診します。

▲ 目次へ戻る

🌊 12. 前庭性片頭痛との鑑別・併存

前庭性片頭痛は、5分〜72時間続く中等度以上の前庭症状を反復し、片頭痛の既往と、発作時の片頭痛性頭痛・光過敏と音過敏・視覚性前兆などを組み合わせて診断します。頭痛が毎回あるとは限りません。

前庭性片頭痛は発作性、PPPDは日常的な持続性が基本ですが、両者は併存し、片頭痛発作をきっかけにPPPDへ移行することもあります。発作日と持続症状日を分け、月経、睡眠、天候、光や音、視覚刺激との関係を記録します。

頭痛・光過敏・視覚症状が目立つ方は、当院の片頭痛外来の情報も参考になります。ただし、突然の激しい頭痛や新しい神経症状は通常外来を待たず、救急で評価してください。

▲ 目次へ戻る

🚨 13. 脳卒中・起立性・心臓・薬剤性を見逃さない

脳卒中:急に始まった持続性めまい、複視、ろれつ困難、嚥下困難、顔や手足の麻痺・しびれ、強い運動失調、支えなしで立てない・歩けない、新しい激しい頭痛や頸部痛は、PPPDの悪化と自己判断しません。症状が一時的に消えても緊急評価が必要なことがあります。

起立性の病態:立ち上がって数分以内に起こり、座る・横になると速やかに軽くなる、動悸や眼前暗黒感を伴う場合は、起立前後の血圧・脈拍を確認します。PPPDも立位で悪化しますが、視覚刺激や動作でも増悪し、長時間続く点を含めて区別します。両者は併存できます。

心臓・全身疾患:失神、胸痛、息苦しさ、運動時の症状、持続する動悸があれば心電図などを検討します。貧血、脱水、感染、低血糖、甲状腺機能異常なども症状に応じて確認します。

薬剤・物質:降圧薬、鎮静作用のある薬、睡眠薬、抗不安薬、抗てんかん薬、アルコール、向精神薬の開始・増減・中断などと時間的に一致しないかを見ます。自己判断で急に中止すると、離脱症状としてめまいや不安が悪化することがあるため、処方医と調整します。

立ちくらみや動悸が中心の方は、関連する自律神経失調症外来の説明もご覧いただけます。

身体原因と緊急性を先に振り分ける

発症様式と随伴症状から、通常の専門評価と緊急評価を分けます。

① 発症と随伴症状

突然か徐々か

難聴・耳鳴り・頭痛

神経症状・失神・胸部症状

② 必要な身体評価

耳鼻咽喉科の聴力・眼振

脳神経領域の診察・画像

内科・循環器の血圧・心電図等

③ 赤旗なら救急

片側麻痺・ろれつ困難

支えなしで立てない

失神・胸痛・呼吸困難

当外来は耳鼻咽喉科・脳神経内科・救急医療の代替ではありません。薬も自己判断で急に中止しません。

▲ 目次へ戻る

🤝 14. 不安・パニック・抑うつとの関係

めまいが続くと、転倒や発作への恐怖、外出回避、体の感覚への過度な注意が強くなり、さらに姿勢を固め、視覚や動きへの過敏さを保つ悪循環が生じることがあります。パニック発作、不安症、抑うつ、心的外傷後症状がPPPDに先行または併存することもあります。

しかし、PPPDは不安症そのものではなく、不安やうつがなければ診断できない病気でもありません。「心配性だから」「精神科の薬を飲んでいるから」と原因を決めません。反対に、具体的な不安症・うつ病などがあれば、PPPDと分けて診断し、それぞれの治療目標を設定します。

天候や気圧変化と症状の重なりを整理したい方は、お天気頭痛・気象病外来の説明も参考になります。

▲ 目次へ戻る

🗂️ 15. 初診で確認することと診療の流れ

① 時間軸:最初の発作、先行疾患、3か月以上か、月の症状日数、一日の持続時間、急な変化を確認します。

② 悪化条件:立位、能動・受動運動、視覚刺激の3群を、具体的な生活場面で確認します。

③ 身体鑑別:難聴・耳鳴り、片頭痛、神経症状、失神、動悸、外傷、感染、服薬変更、耳鼻科・神経科の検査結果を確認します。

④ 機能と併存:外出、仕事、家事、運転、転倒、睡眠、不安・抑うつ、飲酒、支援者を確認します。

⑤ 共有計画:PPPD基準の充足、追加の身体評価、治療候補、測定指標、安全上の注意を整理します。紹介状、聴力検査、画像データ、お薬手帳、症状日誌があればお持ちください。

診察の結果、PPPDではない、まだ確定できない、別の疾患とPPPDの両方が考えられる、という結論もあります。診断名を急ぐより安全な順序を優先します。

診察で共有するめまい日誌(めまい手帳)

記録欄 具体的な場面 診察で確認すること
時間軸 開始、先行疾患、症状日、一日の持続 持続と急な変化
悪化条件 立位、自分・乗り物の動き、複雑な視覚 三つの群を生活場面で確認
耳・神経・循環 難聴、耳鳴り、頭痛、神経症状、失神、動悸 別の身体疾患や併存
生活への影響 外出、仕事、家事、運転、転倒、睡眠 機能と安全、支援者
行動と回復 症状の強さ、できたこと、休憩・助け、回復まで 次に安全に広げる一段階
診断名を急がず、症状だけでなく生活で保てた行動と回復までの経過も共有します。

めまい日記は「できたこと」まで記録します

長い文章を書く必要はありません。時刻、場面、立位・動き・視覚刺激、症状の強さ、続いた時間、休憩や助け、回復までを短く記録します。「めまいがあったか」だけでなく、「めまいがあっても何ができたか」も残してください。たとえば「スーパーで症状が出たが買い物は完了できた」「電車でふらついたが、座って休むと回復した」のように書くと、次に安全に広げる一段階を相談しやすくなります。

記録は診断を確定する検査でも、日記だけで症状を治す方法でもありません。数字の正確さや毎日の完璧さを目標にせず、症状への監視が強まる場合は項目や頻度を減らし、診察時に医療者と振り返ります。

▲ 目次へ戻る

🛠️ 16. 治療の全体像:ゼロを急がず、生活機能を戻す
付き添いとともに安全な歩道で日常活動へ段階的に戻る日本人女性
症状ゼロを急がず、安全にできる日常活動を一段ずつ増やします。

治療目標は、めまいをその場で完全に消すことだけではなく、症状への理解を深め、過度な警戒と回避を減らし、安全に動ける範囲を広げ、通勤・買い物・仕事・家事などの機能を回復することです。症状の強さだけでなく、DHIや日常活動、曝露できる場面を経時的に確認します。

治療は、診断と教育、先行・併存疾患の治療、段階的な前庭リハビリテーション、認知行動療法、必要に応じた薬物療法を組み合わせます。すべての人に同じ順序・同じ強度を当てはめず、転倒リスク、前庭機能低下、片頭痛、不安・抑うつ、身体状態に合わせます。

完全な回避は活動低下と過敏さを保つ一方、強い症状を無理に我慢して一気に慣らす方法も適切ではありません。実行可能な小さな段階を決め、増悪が長引く場合は負荷を調整します。

活動量は日ごとの症状だけで増減させず、通勤、買い物、画面作業など場面ごとに目標を決めます。実施時間と回復までの時間を記録すると、翌日まで増悪が残る負荷を避けながら、次に増やす段階を相談しやすくなります。

生活習慣とストレスコントロール

睡眠不足、食事や水分の乱れ、活動量の低下、強いストレスは、PPPDの唯一の原因ではありませんが、めまいの波を大きくし、回復へ取り組む余力を下げることがあります。睡眠・食事・水分・無理のない運動を整え、症状と活動量を一緒に記録します。

スマートフォンやパソコンは、「長く使ったから悪化する」と一律に決めません。スクロール、動画、画面の切り替え、長時間の姿勢固定など、何が負担かを分けて確認します。完全に避け続けるのではなく、文字や画面の大きさ、明るさ、姿勢、作業時間、休憩間隔を調整し、短時間から段階的に戻します。

ストレス対策は「気にしないようにする」ことではありません。呼吸を整える、筋緊張を緩める、予定を詰め込みすぎない、休息後に活動を再開するなど、症状が出ても回復できる手順を決めます。新しい難聴、神経症状、失神などはストレスのせいにせず、別の原因を再評価します。

PPPD治療を支⁠える三つの柱

前庭リハビリテーション、認知行動療法、必要に応じた薬物療法を、症状と生活上の目標に合わせて組み合わせる考え方を示します。

対応施設で医療者の見守りのもと前庭リハビリを行う治療場面のイメージ
① 前庭リハビリ

対応施設で、視線・頭・体を少しずつ動かし、姿勢や歩行、視覚刺激への反応を安全に練習します。

症状と生活場面を整理し段階的な行動計画を相談する認知行動療法のイメージ
② 認知行動療法

症状への予測や警戒、避ける行動を整理し、実行できる生活場面を一段ずつ増やします。

無銘柄の資料を見ながら薬の利益と副作用を医師へ相談する治療場面のイメージ
③ 薬物療法

必要に応じて、症状・持病・併用薬を確認して選び、効果と副作用を見ながら調整します。

三つを一律にすべて行うわけではありません。番号は優先順位や固定の手順を示しません。診断と教育、先行・併存疾患の治療、睡眠・活動などの生活調整も含め、本人の目標と安全性に合わせて組み合わせます。

▲ 目次へ戻る

🏃 17. 前庭リハビリテーションの位置づけ

当院では、前庭リハビリテーション(バランス訓練や姿勢制御を強化する運動療法)は実施できません。

支持物と医療者の見守りのもと前庭リハビリを行う日本人女性
視線と頭の動き、姿勢、歩行を安全な強度から段階的に練習します。

前庭リハビリテーションは、適切な頭の動きや視線移動を含め、眼球運動、姿勢、歩行、視覚刺激への慣れを段階的に練習する方法です。前庭・視覚・体性感覚の情報を使い直しやすくし、視線や姿勢・歩行の安定、動きや複雑な視覚刺激による支障の軽減を目指します。「脳を正常化する」と単純に言い切れる治療ではありません。前庭機能低下が併存する場合には特に検討されます。

PPPDに対する研究では改善が報告されていますが、研究数、対象数、比較群、追跡期間には限界があり、全員に有効と確立したわけではありません。日本の報告では、他の前庭疾患より症状悪化で継続が難しい例や、効果が小さい可能性も示されています。

めまいが少し出れば成功、強く出るほど効く、という治療ではありません。激しい増悪、転倒、失神様症状、新しい神経・聴覚症状が出た場合は中止し、再評価します。専門的な前庭リハビリテーションが必要な場合は、対応可能な耳鼻咽喉科・リハビリテーション施設への相談または紹介を検討します。

練習は目的別に分けます。一定の目標を見ながら頭を動かす視線安定化、立位・方向転換・歩行、負担となる動作や視覚刺激への慣れ、買い物・通勤などの生活課題を別々に設定します。自己流で一度に増やさず、転倒しない環境、安全に反復できる回数、休止条件を先に決めます。症状が一時的に出た場合も、継続できる負荷か、中止して再評価すべき変化かを判断しやすくします。

▲ 目次へ戻る

🧠 18. 認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、症状への破局的な予測、体の感覚への過度な注意、確認や回避を整理し、安全な段階的行動を支える方法です。めまいを「気のせい」と扱ったり、脳の「誤作動」を気合で正したりする治療ではありません。症状と不安・注意・行動のつながりを理解し、対処の選択肢を増やします。

① 悪循環を整理します。「ふらつくと転ぶのでは」「外出先で動けなくなるのでは」という予測、揺れを確かめ続けること、外出を避けることなどを振り返ります。場面・考え・体の反応・行動を分けて記録し、負担が強まる条件を確認します。

② 予測と実際を比べます。身体的な安全確認が済んだ場面で、「必ず転ぶ」「動けなくなる」といった予測と実際の経過を比べ、安全を確認した小さな行動を試して振り返ります。一時的なふらつきと差し迫った危険を区別し、症状を絶えず監視する状態から、目の前の作業や周囲へ注意を戻す練習も行います。「ふらつきは絶対に安全」と決めつけるものではなく、新しい症状や転倒リスクは別に評価します。

③ できる行動を少しずつ広げます。混雑の少ない店に短時間入る、近所の平坦な道を歩くなど、取り戻したい活動を小さく分けます。本人の合意と転倒予防を大切にし、医療者と時間・距離・刺激の強さを調整します。必要な杖や手すりを一律に外したり、強い症状を我慢して続けたりはしません。

効果はめまいの強さだけでなく、買い物・仕事・家事など、生活の中でできることが増えたかも確認します。前庭リハビリテーションや、必要な方では薬物療法と組み合わせますが、全員が薬を使うわけではありません。小規模研究やメタ解析では改善が示唆されますが、長期効果を含む高確実性の証拠は十分ではなく、誰にでも同じ効果を保証できません。

▲ 目次へ戻る

💊 19. 薬物療法

SSRI・SNRIは臨床で用いられ、観察研究や一部の比較研究でDHI、不安・抑うつなどの改善が報告されています。しかし、Bárány学会基準のPPPDを対象にした十分な期間のプラセボ対照試験は乏しく、確立した万能薬ではありません。

効果と副作用を確認し、前庭リハビリテーションや認知行動療法と組み合わせて検討します。うつ病・不安症が併存していない場合にも使われることがあります。

SSRI・SNRIを使う目的と始め方

SSRI・SNRIはうつ病などの治療薬として知られていますが、PPPDでは、うつ病・不安症の有無だけでなく、持続するめまい、視覚刺激への過敏さ、症状への警戒や生活への支障を改善できるかをみながら用いることがあります。「症状は精神的なもの」と決めつけて処方するわけではありません。

これらの薬はセロトニンやノルアドレナリンの伝達へ作用します。ただし、PPPDでどの経路を介して効くのかは確立していません。前庭・視覚・体性感覚を統合する脳内ネットワークや、症状への警戒・不安に影響する可能性が考えられていますが、前庭核や姿勢制御ネットワークを直接調整すると断定できる段階ではありません。

① 少量から開始

吐き気、めまいの一時的な増悪、焦燥、眠気・不眠などを確認しやすいよう、薬剤・年齢・体質・併用薬に応じて通常の開始量より少量から始めることがあります。「一律に半量」が標準という意味ではありません。

② 慎重に調整

開始後の副作用と日常生活への影響を確認し、必要な場合だけ段階的に増量します。少量のまま経過を見る場合もあります。

③ 数週〜数か月で評価

即日効果を期待する薬ではありません。開始直後は副作用を、数週間後からはめまい、視覚刺激、生活機能の変化を分けて確認します。

吐き気が出たとき:まず増量の延期、減量、服用時刻や胃腸疾患などを見直します。症状に応じて短期の制吐薬・消化管運動改善薬を併用する場合はありますが、一律の予防併用ではありません。ガスモチン(モサプリド)の併用例は報告されていますが、SSRI開始時の吐き気予防やPPPD治療として全員に必要な標準治療ではありません。薬自体の適応、併用薬、効果と副作用を確認し、短期で見直します。

少量SSRI療法の国内研究

国内の単施設観察研究では、Bárány Societyの診断基準と新潟PPPD質問票(NPQ)を用いて選ばれた138例に、セルトラリン12.5mgとメトクロプラミド5mgを就寝前に1日1回使用した経過が報告されています。10週以上追跡できた79例のうち、研究で定めたNPQの判定基準で「改善」以上となったのは60例(75.9%)でした。NPQの平均は治療前40.1点から、4週26.8点、10週18.7点へ低下しました。2週以上追跡できた120例では、95例(79.2%)が治療を継続しました。

研究への登録138例

平均年齢53.3歳の単施設報告

10週の効果解析79例

登録例のうち10週以上追跡できた症例

改善以上60/79例

効果解析対象の75.9%

75.9%は、登録した138例全体に対する有効率ではありません。59例は10週時点の効果解析に含まれず、対照群のない観察研究で、メトクロプラミドも併用されています。そのため、セルトラリン12.5mg単剤の効果や、すべての方に同じ結果が得られることを示す数字ではありません。少量でも吐き気やめまいの悪化などが起こることがあり、開始量と増量方法は個別に決めます。

誘発因子の偏りと治療反応

同じ79例を、研究内で症状を誘発する条件の偏りによって3群に整理した報告があります。これはPPPDを別々の病気へ分ける正式な診断分類ではなく、どの場面で悪化しやすいかを治療計画に生かすための見方です。

視覚刺激優位59例

改善以上46例(78.0%)

能動運動優位8例

改善以上4例(50.0%)

混合12例

改善以上10例(83.3%)

3群の「改善以上」の割合に統計学的な有意差はありませんでした。一方、NPQの減少幅は視覚刺激優位群が能動運動優位群より大きい結果でした。視覚刺激優位型だけに特効する、あるいは図の割合どおりに個人の効果を予測できるという意味ではありません。起立性調節障害を先行疾患とした視覚刺激優位群では8例中7例が改善以上でしたが、少人数の部分集団であり、一般的な有効率としては扱えません。

治療期間と見直し

2025年の同一施設からの報告では、服薬を続けている途中で再び悪化した症例は、悪化まで平均35.0週で、その後も平均8.0週継続すると57.1%が再び改善しました。著者らは、この平均値を合わせた約43週を治療期間を考える一つの材料として示しています。また、休薬後に再び悪化した症例の平均経過から、約85週という治療案も提示しています。

43週・85週は、比較試験で確立した最低期間や標準期間ではありません。選ばれた症例の平均値から著者らが提案した目安であり、全員が一律に同じ期間を続けたり、決まった時期に休薬・再開したりする根拠ではありません。症状が良くなっても自己判断で急に中止せず、効果、副作用、生活機能、再燃歴を確認して減量時期を相談します。

SSRI・SNRIの代表例

症状・持病・併用薬・これまでの反応に応じて選びます。すべてを併用する意味ではなく、どの薬でも同じ効果が確立しているという意味でもありません。

分類成分名主な商品名主な確認点
SSRIセルトラリンジェイゾロフト吐き気・下痢、眠気や不眠、性機能への影響などを確認します。
SSRIエスシタロプラムレクサプロ吐き気・眠気、不整脈(QT延長)に注意し、心疾患や併用薬を確認します。
SSRIパロキセチンパキシル吐き気・眠気、急な中止や飲み忘れによる症状に注意します。タモキシフェンとの飲み合わせも確認します。
SNRIデュロキセチンサインバルタ吐き気などに注意し、血圧・脈拍や肝機能を確認しながら使用します。
SNRIベンラファキシンイフェクサーSR血圧・脈拍の上昇に注意します。自己判断で急に減らしたり、中止したりしません。
薬ごとの確認点を見る

セルトラリン(ジェイゾロフト)

吐き気・下痢、眠気や不眠、性機能への影響などを確認します。

エスシタロプラム(レクサプロ)

吐き気・眠気、不整脈(QT延長)に注意し、心疾患や併用薬を確認します。

パロキセチン(パキシル)

吐き気・眠気、急な中止や飲み忘れによる症状に注意します。タモキシフェンとの飲み合わせも確認します。

デュロキセチン(サインバルタ)

吐き気などに注意し、血圧・脈拍や肝機能を確認しながら使用します。

ベンラファキシン(イフェクサーSR)

血圧・脈拍の上昇に注意します。自己判断で急に減らしたり、中止したりしません。

開始初期の吐き気、めまい、不安・焦燥、眠気または不眠、血圧変化、性機能への影響、セロトニン症候群、自殺関連症状、躁転などに注意します。双極症の可能性、併用薬、妊娠・授乳、肝腎機能も確認します。効果は即日ではなく、自己判断で開始・増減・急中止しません。中断症状としてめまいが出ることがあります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬や前庭抑制薬を漫然と長期使用することは、PPPDの確立した根本治療ではありません。眠気、転倒、依存、離脱、前庭代償への影響を含め、既存処方は急に止めず処方医と見直します。

国内承認の注意:PPPD自体は、代表的なSSRI・SNRIの国内電子添文に承認効能として記載されていません。PPPDを目的とする使用は薬剤・状況により適応外となる場合があります。別に診断されたうつ病、パニック症、全般不安症などへの承認は薬剤ごとに異なるため、電子添文と保険上の扱いを個別に確認します。当院で処方を保証するものではありません。

めまい・併存症に用いる薬

SSRI・SNRI以外にも、めまいの原因や併存症に応じた薬を使うことがあります。PPPDそのものへの治療と、耳の病気や末梢神経障害への治療を分けて考えます。以下は代表例で、すべてのめまいに同じように効く薬の一覧ではありません。

メリスロン、セファドール、アデホス、カルナクリン、イソバイドなどは、内耳の病気やメニエール病・メニエール症候群など、薬ごとの対象に合わせて選びます。メチコバールは末梢神経障害がある場合の治療薬で、PPPDやめまい全般の治療薬ではありません。

分類成分名主な商品名主な確認点
抗めまい薬ベタヒスチンメリスロンメニエール病・メニエール症候群・眩暈症に伴うめまいに用います。消化性潰瘍、喘息、褐色細胞腫・パラガングリオーマの有無を確認し、吐き気や発疹に注意します。
抗めまい薬ジフェニドールセファドール内耳の障害によるめまいに用います。眠気・口の渇きに注意し、緑内障や排尿の問題を確認します。重い腎機能障害がある場合は使えません。
ATP製剤アデノシン三リン
酸(ATP)
アデホスコーワ
顆粒10%
メニエール病や内耳障害によるめまいに用います。胃腸症状・眠気、ジピリダモールとの飲み合わせを確認します。腸溶性のため、すりつぶさずに服用します。
循環改善薬カリジノゲナーゼカルナクリン錠メニエール症候群に伴う末梢循環障害の改善に用います。脳出血直後などの新しい出血がある場合は使えません。一部の血圧の薬(ACE阻害薬)との併用では、血圧の下がり過ぎに注意します。
浸透圧利尿薬イソソルビドイソバイドメニエール病の内リンパ水腫に対して検討します。吐き気・下痢、脱水や電解質の異常に注意し、心臓・腎臓の病気や尿が出にくい状態を確認します。急性頭蓋内血腫がある場合は使えません。
β刺激薬dl-イソプレナリンイソメニール内耳の障害によるめまいに用います。動悸・不整脈、低カリウム血症に注意します。重い冠動脈疾患、頭・首の外傷直後、一部の交感神経刺激薬との併用では使えず、持病と併用薬を確認します。
B12製剤メコバラミンメチコバール末梢神経障害を治療するビタミンB12製剤です。吐き気、下痢、発疹などに注意し、効果がないまま長期間続けないよう見直します。
薬ごとの確認点を見る

メリスロン(ベタヒスチン)

メニエール病・メニエール症候群・眩暈症に伴うめまいに用います。消化性潰瘍、喘息、褐色細胞腫・パラガングリオーマの有無を確認し、吐き気や発疹に注意します。

セファドール(ジフェニドール)

内耳の障害によるめまいに用います。眠気・口の渇きに注意し、緑内障や排尿の問題を確認します。重い腎機能障害がある場合は使えません。

アデホスコーワ 顆粒10%(アデノシン三リン酸)

メニエール病や内耳障害によるめまいに用います。胃腸症状・眠気、ジピリダモールとの飲み合わせを確認します。腸溶性のため、すりつぶさずに服用します。

カルナクリン錠(カリジノゲナーゼ)

メニエール症候群に伴う末梢循環障害の改善に用います。脳出血直後などの新しい出血がある場合は使えません。一部の血圧の薬(ACE阻害薬)との併用では、血圧の下がり過ぎに注意します。

イソバイド(イソソルビド)

メニエール病の内リンパ水腫に対して検討します。吐き気・下痢、脱水や電解質の異常に注意し、心臓・腎臓の病気や尿が出にくい状態を確認します。急性頭蓋内血腫がある場合は使えません。

イソメニール(dl-イソプレナリン)

内耳の障害によるめまいに用います。動悸・不整脈、低カリウム血症に注意します。重い冠動脈疾患、頭・首の外傷直後、一部の交感神経刺激薬との併用では使えず、持病と併用薬を確認します。

メチコバール(メコバラミン)

末梢神経障害を治療するビタミンB12製剤です。吐き気、下痢、発疹などに注意し、効果がないまま長期間続けないよう見直します。

すべてを一律に併用するという意味ではありません。持病・併用薬・妊娠や授乳の有無を確認し、治療する症状と効果を見直す時期を決めます。市販薬を含めた飲み合わせも確認し、薬を追加するだけでなく、必要に応じて耳鼻咽喉科と連携します。

吐き気・発作時の対症薬

トラベルミン・ドラマミンは、動揺病やメニエール症候群などのめまい・吐き気を一時的に和らげる薬です。メニエール病の発作に使う前庭抑制薬は、必要な期間に限って使います。プリンペラン・ナウゼリンは、消化器疾患などに伴う吐き気・嘔吐の治療薬として、原因を確認して選びます。いずれもPPPDを根本から治す薬ではありません。

分類成分名主な商品名主な確認点
鎮暈・制吐薬ジフェンヒドラミン
+ジプロフィリン
トラベルミン
配合錠(医療用)
動揺病・メニエール症候群に伴うめまい、吐き気に用います。服用中は運転しません。閉塞隅角緑内障や下部尿路の閉塞がある場合は使えず、飲酒や眠気が出る薬との併用にも注意します。市販の同名シリーズとは区別します。
鎮暈・制吐薬ジメンヒドリナートドラマミン動揺病・メニエール症候群などに伴うめまい、吐き気に用います。眠気があるため服用中は運転しません。飲酒・鎮静薬との併用に注意し、MAO阻害薬とは併用できません。
制吐薬メトクロプラミドプリンペラン胃炎などに伴う吐き気・嘔吐に用います。眠気、そわそわ感や体が勝手に動く症状、重い不整脈などに注意します。服用中は運転せず、効果と必要性を確認して長期の漫然使用を避けます。
制吐薬ドンペリドンナウゼリン慢性胃炎などに伴う吐き気・嘔吐に用います。QT延長や重い不整脈に注意し、心疾患・併用薬を確認します。必要最小限にとどめ、長期の漫然使用を避けます。眠気やふらつきが出た場合は運転しません。
薬ごとの確認点を見る

トラベルミン 配合錠(医療用)(ジフェンヒドラミン +ジプロフィリン)

動揺病・メニエール症候群に伴うめまい、吐き気に用います。服用中は運転しません。閉塞隅角緑内障や下部尿路の閉塞がある場合は使えず、飲酒や眠気が出る薬との併用にも注意します。市販の同名シリーズとは区別します。

ドラマミン(ジメンヒドリナート)

動揺病・メニエール症候群などに伴うめまい、吐き気に用います。眠気があるため服用中は運転しません。飲酒・鎮静薬との併用に注意し、MAO阻害薬とは併用できません。

プリンペラン(メトクロプラミド)

胃炎などに伴う吐き気・嘔吐に用います。眠気、そわそわ感や体が勝手に動く症状、重い不整脈などに注意します。服用中は運転せず、効果と必要性を確認して長期の漫然使用を避けます。

ナウゼリン(ドンペリドン)

慢性胃炎などに伴う吐き気・嘔吐に用います。QT延長や重い不整脈に注意し、心疾患・併用薬を確認します。必要最小限にとどめ、長期の漫然使用を避けます。眠気やふらつきが出た場合は運転しません。

対症薬の重ね飲みや、効かないままの継続は避けます。プリンペラン・ナウゼリンは消化管の出血・閉塞・穿孔がある場合には使えないため、強い腹痛などを伴う吐き気を薬だけで抑え続けません。動悸や失神、いつもと異なる強い症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。

めまいに用いる漢方

漢方は、めまいに加えて胃腸の弱さ、冷え、口の渇き、尿量、動悸などの組み合わせを確認して選びます。「めまい」という症状名だけで同じ処方を選ぶものではなく、PPPDへの有効性が確立した薬という意味でもありません。下表は医療用漢方製剤の代表例です。

分類処方名主な商品名主な確認点
漢方苓桂朮甘湯ツムラ39めまい・ふらつきに対し、動悸や尿量なども確認して、症状・体質に合う場合に検討します。甘草を含むため、血圧上昇、むくみ、低カリウム血症や筋力低下に注意し、ほかの甘草含有薬との重複を確認します。
漢方半夏白朮天麻湯ツムラ37胃腸が弱く、下肢の冷えとめまい・頭痛などがある場合に検討します。発疹やじんましん、湿疹の悪化に注意し、改善がなければ見直します。
漢方五苓散ツムラ17口の渇き・尿量減少を伴うめまい、吐き気・頭痛などがある場合に検討します。発疹や肝機能異常に注意し、ほかの漢方との生薬の重複を確認します。
薬ごとの確認点を見る

ツムラ39(苓桂朮甘湯)

めまい・ふらつきに対し、動悸や尿量なども確認して、症状・体質に合う場合に検討します。甘草を含むため、血圧上昇、むくみ、低カリウム血症や筋力低下に注意し、ほかの甘草含有薬との重複を確認します。

ツムラ37(半夏白朮天麻湯)

胃腸が弱く、下肢の冷えとめまい・頭痛などがある場合に検討します。発疹やじんましん、湿疹の悪化に注意し、改善がなければ見直します。

ツムラ17(五苓散)

口の渇き・尿量減少を伴うめまい、吐き気・頭痛などがある場合に検討します。発疹や肝機能異常に注意し、ほかの漢方との生薬の重複を確認します。

漢方にも副作用や飲み合わせがあります。市販薬も含め、複数の漢方を自己判断で重ねません。効果を確認しながら、前庭リハビリテーションや認知行動療法も、病状と必要性に応じて組み合わせます。

▲ 目次へ戻る

❓ 20. よくあるご質問

Q1. PPPDとはどんな病気ですか?

3か月以上、ほとんどの日に浮動感・不安定感・非回転性めまいが続き、立位、動き、複雑・動的な視覚刺激の3群で悪化する機能性前庭疾患です。基準A〜Eをすべて満たして診断します。

Q2. 検査が正常ならPPPDですか?

いいえ。PPPDに固有の検査はなく、正常結果だけでは診断できません。時間経過、3つの悪化因子、先行病態、生活支障、ほかの原因でより適切に説明できないことを確認します。

Q3. 気のせい、心因性のめまいですか?

症状は実在し、気のせいではありません。PPPDは機能性前庭疾患です。不安や抑うつが関与・併存することはありますが、心理的要因だけで説明する診断ではありません。

Q4. 不安症がなければPPPDになりませんか?

不安症は必須条件ではありません。前庭疾患、前庭性片頭痛、外傷、身体疾患などをきっかけに生じることもあります。併存する不安症は別に評価して治療します。

Q5. ぐるぐる回るめまいがあってもPPPDですか?

短い回転性増悪を伴うことはありますが、短い発作だけでは基準Aを満たしません。BPPV、メニエール病、前庭性片頭痛などの発作を先に評価します。

Q6. 症状が2か月でも診断できますか?

確定基準は3か月以上です。3か月未満は原因疾患を評価し、安全を確認しながら経過をみます。将来PPPDになると断定はしません。

Q7. スーパーやスマホだけで悪くなります。

複雑な陳列やスクロールは典型的な視覚刺激です。ただしPPPDでは経過中、立位・動き・視覚刺激の3群すべてで悪化することが必要です。視覚症状だけなら眼科や片頭痛なども検討します。

Q8. BPPVとの違いは何ですか?

BPPVは特定の頭位変化で短いめまいと特徴的な眼振を起こします。PPPDは長時間続き、方向に限らない動きや視覚刺激でも悪化します。BPPV後にPPPDが併存することもあります。

Q9. メニエール病との違いは何ですか?

メニエール病は反復する発作と変動する難聴・耳鳴り・耳閉感を聴力検査とともに評価します。PPPDとの併存もあるため、発作性の耳症状と日常の持続症状を分けて記録します。

Q10. 前庭性片頭痛と両方になることはありますか?

あります。前庭性片頭痛の反復発作がPPPDのきっかけになる場合もあります。発作の長さ、頭痛・光音過敏・前兆と、発作間の持続性ふらつきを分けて評価します。

Q11. 耳鼻科の病気が見つかったらPPPDではないですか?

自動的に否定されません。その病気だけで症状全体を説明できるかを検討し、説明できない持続症状がA〜Eを満たす場合は併存を考えます。

Q12. 最初から精神科を受診すればよいですか?

新規のめまいは、耳鼻咽喉科・脳神経領域・内科で身体原因と緊急性を確認することが基本です。当外来はその代替ではなく、必要に応じて並行して連携します。

Q13. MRIを撮れば確定しますか?

確定しません。MRIは脳など別の原因を調べるため、症状と診察に応じて行います。MRIが正常という事実だけでPPPDにはなりません。

Q14. NPQの点数で診断できますか?

NPQはPPPDらしい悪化因子と重症度を把握する補助質問票です。点数だけで診断せず、国際基準A〜Eと身体評価を合わせます。

Q15. 前庭リハビリは必ず効きますか?

改善する方はいますが、全員への効果は保証されません。強すぎる負荷では悪化・中断することもあるため、転倒予防と段階調整が必要です。

Q16. 抗うつ薬はPPPDの特効薬ですか?

特効薬ではありません。SSRI・SNRIの有用性は示唆されますが証拠の確実性は限られ、PPPD自体は代表薬の国内承認効能に含まれません。適応、利益、不利益、保険上の扱いを個別に確認します。

Q17. 薬をやめたらめまいが出ました。

向精神薬などの急な減量・中断でめまいを含む中断症状が出る場合があります。再開や追加も自己判断せず、処方医へ速やかに相談してください。

Q18. どんな症状なら救急ですか?

突然の強いめまいに、複視、ろれつ困難、片側の麻痺・しびれ、支えなしで立てない、新しい激しい頭痛、意識障害を伴う場合や、失神、胸痛、呼吸困難は119です。急な難聴は同日中を目安に耳鼻咽喉科へ相談します。

▲ 目次へ戻る

🚑 21. 緊急時:PPPDと思い込まず、救急へ

次の症状は119:突然始まった強い持続性めまいに、複視、ろれつ・飲み込みの異常、顔や片側手足の麻痺・しびれ、強いふらつき、支えなしで立てない・歩けない、意識の異常、新しい激しい頭痛・頸部痛を伴う場合。失神、激しい胸痛、突然の呼吸困難、持続する強い動悸、けいれんも救急対象です。

急いで身体診療:急な片側の難聴・耳鳴り・耳閉感、繰り返す嘔吐と脱水、頭部外傷後、高熱と項部硬直、新しい薬の開始後の重い症状は、通常予約を待たず医療機関へ相談してください。急な難聴は同日中を目安に耳鼻咽喉科で評価します。

自傷・他害の危険:死にたい気持ちが切迫し、具体的な計画や手段がある、自分や他人の安全を保てない場合は、一人にならず、危険物から離れ、119または110へ連絡してください。

救急車を呼ぶべきか迷う急な身体症状は、利用地域・時間を確認のうえ救急相談センター#7119を利用できます。ただし、明らかな赤旗症状があるときは相談窓口を経由せず119です。症状が一度消えても、脳卒中や不整脈を否定できるとは限りません。

当院は耳鼻咽喉科、脳神経内科、循環器科、入院設備、24時間救急の代替ではありません。予約外来へのメールやフォーム回答を待って救急受診を遅らせないでください。

▲ 目次へ戻る

📚 22. 参考文献・診断基準
引用文献・参考資料

内容は2026年9月時点で確認した学会・公的資料と査読論文をもとに、患者さん向けに要約しています。診断・治療は個別の診察で判断します。

引用文献・参考資料を表示(全58件)
日本めまい平衡医学会.診療ガイドライン・各種基準一覧.https://www.memai.jp/guide/
日本めまい平衡医学会.持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)の診断基準.https://www.memai.jp/wp-content/uploads/2020/07/pppd2017.pdf
Staab JP, et al. Diagnostic criteria for persistent postural-perceptual dizziness (PPPD): Bárány Society consensus. J Vestib Res. 2017;27:191-208. Official full text
堀井新.持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)―基礎と臨床.日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報.2024;127:296-300. J-STAGE
日本めまい平衡医学会.急性期めまいの診療フローチャート.https://www.memai.jp/wp-content/uploads/2021/06/kyuseikimemaiflowchart.pdf
日本めまい平衡医学会.良性発作性頭位めまい症診断基準.https://www.memai.jp/wp-content/uploads/2020/07/standard2017.pdf
日本めまい平衡医学会.良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン2023年版.書誌情報
Lopez-Escamez JA, et al. Diagnostic criteria for Menière’s disease. Bárány Society consensus. J Vestib Res. 2015;25:1-7. Official full text
日本めまい平衡医学会.メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2025年版.書誌情報
Lempert T, et al. Vestibular migraine: diagnostic criteria. Bárány Society and International Headache Society. 日本めまい平衡医学会掲載資料
日本めまい平衡医学会.平衡訓練・前庭リハビリテーションの基準 2021年改訂.Official PDF
日本めまい平衡医学会.前庭リハビリテーションガイドライン2024年版.書誌情報
日本めまい平衡医学会誌.難治性PPPD患者に対する前庭リハビリテーションの報告.2024;83:163-170. J-STAGE
Prospective comparison of vestibular rehabilitation in PPPD and chronic unilateral vestibular hypofunction. 2024. PubMed
日本めまい平衡医学会誌.PPPDに対する認知行動療法の症例集積.2023;82:16-23. J-STAGE
日本めまい平衡医学会誌.PPPDに対する認知行動療法の効果に関する第一報.2023;82:77-83. J-STAGE
Additional cognitive behavior therapy for PPPD: meta-analysis. 2024. PubMed
Non-pharmacological interventions for PPPD. Cochrane Database Syst Rev. 2023. PMC full text
Pharmacological interventions for PPPD. Cochrane Database Syst Rev. 2023. PMC full text
Effect of conservative therapy for PPPD: systematic review and meta-analysis. 2025. PubMed
Vestibular rehabilitation therapy in PPPD: systematic review and meta-analysis. 2025. PubMed
Bárány Society. Hemodynamic orthostatic dizziness/vertigo: diagnostic criteria. J Vestib Res. 2019. PMC full text
PMDA.イフェクサーSRカプセル(ベンラファキシン)電子添文、2026年3月改訂.Official PDF
PMDA.セルトラリン錠 電子添文.Official PDF
PMDA.デュロキセチン塩酸塩カプセル 電子添文.Official PDF
日本うつ病学会.うつ病診療ガイドライン2025・双極症診療ガイドライン2023.学会公式ページ
消防庁.救急安心センター事業(#7119).消防庁公式ページ
University of Utah.Medication Management for PPPD
松吉秀武、山田卓生、後藤英功.持続性知覚性姿勢誘発めまいに対する少量セロトニン吸収阻害剤の有効性についての検討.耳鼻と臨床.2022;68(4):251-257.
松吉秀武、山田卓生、後藤英功、伊藤恵子.持続性知覚性姿勢誘発めまいのサブタイプごとの少量選択的セロトニン再取り込み阻害剤の有効性についての検討.耳鼻と臨床.2023;69(1):16-25.
World Health Organization.ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics:release history.2018年をinitial releaseとして掲載.
World Health Organization.World Health Assembly Update, 25 May 2019.ICD-11の採択と2022年1月1日の発効を案内.
厚生労働省.ICD-11(2025年1月版)の分類の表記に用いる用語の和訳案.慢性前庭症候群の分類内にPersistent Postural-Perceptual Dizziness(AB32.0)を掲載.
八木千裕ほか.持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)に対する抗うつ薬の効果について.日本耳鼻咽喉科学会会報.2021;124(7):998-1004.

▲ 目次へ戻る

👨‍⚕️ 23. 執筆者・医学的確認
心のクリニック武蔵小杉 院長 田村京介
👨‍⚕️ 執筆・医学的確認

院長 田村 京介

医療法人心のクリニック 武蔵小杉 院長
精神科専門医・精神保健指定医

本記事は、PPPDの診断基準、鑑別、耳鼻咽喉科・脳神経内科等との連携、前庭リハビリテーション、心理療法・薬物療法に関する学会資料と査読論文を参照し、患者さん向けに整理したものです。

保有資格

公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医

厚生労働省 精神保健指定医

所属学会

日本精神神経学会(JSPN)正会員

東京精神医学会(TPA)正会員

学歴

横浜市立大学 医学部

職歴

東京都保健医療公社 大久保病院

東京都立 広尾病院

東京都立 松沢病院

東京都立 小児総合医療センター

昭和医科大学 烏山病院

複数の精神科・心療内科クリニックに勤務

医療法人心のクリニック 武蔵小杉 院長

▲ 目次へ戻る