🏠 休職相談・休職外来
休職相談を考える自宅の朝の場面

このページでは、休職に関するよくある疑問や手続きについてわかりやすくご案内します。朝起きても会社に向かえない、勤務中の不安や抑うつが強い、眠れない状態が続いているなど、心身の不調を抱えながら働き続けることは大きな負担になります。休職を検討されている方休職中の方が安心して自分に合った支援を受けられるよう、診察で確認すること、休職診断書の発行、会社への相談、傷病手当金などの制度、療養中の過ごし方、復職に向けた準備までを順番にまとめました。

休職は「仕事から離れること」だけが目的ではなく、現在の状態を正しく評価し、必要な治療と環境調整を行いながら、再び無理なく働ける状態を整えるための大切な選択肢です。まずはご自身の健康を最優先にし、正しい手続きと支援を受けながら、スムーズな回復と職場復帰を目指しましょう。

📌 目次
朝起きたら、会社に出勤できません。
朝起きても出勤できずベッドで悩む人
朝に動けない状態は、気合いの問題ではなく心身の不調のサインかもしれません。
苦手な上司や合わない職場環境・人間関係、長時間労働、パワハラ・セクハラなどを背景に、「出勤できない」と感じる方は少なくありません。 これは、ストレス関連障害である 適応障害神経症性障害に含まれる 不安障害パニック障害、あるいは気分障害である うつ病など、メンタルヘルスの不調に該当する可能性があります。新卒入社や転職・異動・昇進といった環境変化、各種ハラスメントにより強いストレスを抱え、同様のご相談が増えています。

主な症状としては、気分の落ち込み(抑うつ)、意欲低下、動悸、不眠などの睡眠障害、食欲低下、集中力の低下が挙げられます。とくに就労中の方では「頭の働きが鈍い」「記憶力が落ちた」「以前できていた業務がこなせない」といった変化が目立ち、放置すると悪循環に陥りやすくなります。 このような症状がみられる場合は、早めに当院へご相談ください。現在の状況を総合的に評価し、傷病休職(いわゆる休職で回復を優先するのか、認知療法薬物療法で症状を緩和しながら就労を継続するのかなど、患者さまのご希望も踏まえて柔軟に検討します。

当院では、就労継続の可否判断から休職の診断、治療、復職支援まで、働く人を一貫してサポートします。まずは医師が丁寧に診察し、休職・復職の方針を一緒に決めていきますので、安心してご相談ください。 状況に応じて医学的に必要と判断される場合は、休職診断書の発行にも対応いたします。予約時・診察時にお気軽にご相談ください。休職を検討される方は、不安や疑問が多いのが当然です。以下に、休職に関連する受診から手続きまでの流れをまとめました。少しでも不安の軽減につながれば幸いです。
欠勤と休職は違う?
欠勤

自己都合で休む場合、または有給休暇を使い切った後に突発的な体調不良などで短期間休むことを指します。多くの場合、1日単位・数日単位の休みとして扱われ、会社への連絡、勤怠処理、有給休暇の使用可否が中心になります。

  • 会社の承認がないまま休むと、無断欠勤や勤怠不良として扱われることがあります。
  • 有給休暇を使えるか、欠勤控除になるか、病気休暇制度があるかは会社の規定で異なります。
  • 数日で戻れる見込みがある不調では欠勤で足りることもありますが、長引く場合は早めの相談が必要です。
休職

医師の診察結果を踏まえ、会社と事前に協議・合意したうえで一定期間継続して休むことを指します。多くの会社では、診断書の提出、休職開始日、休職期間、連絡方法、復職判定の流れが就業規則で定められています。

  • 休職診断書が必要になることが多く、提出先や会社指定様式の有無を確認します。
  • 休職期間の上限、延長の可否、給与や社会保険料の扱いは会社ごとに違います。
  • 復職時には、主治医の意見、産業医面談、会社側の就業判断が関わることがあります。
欠勤と休職の違いを整理する書類と勤務メモ
欠勤と休職では、会社への連絡、診断書、休む期間、復職手続きの扱いが変わります。

欠勤休職には、会社との合意の有無、診断書の必要性、休む期間、制度利用、復職時の手続きといった違いがあります。欠勤は短期の勤怠処理に近い一方、休職は治療と回復のために一定期間仕事から離れる制度として扱われます。どちらも「会社を休む」という点は同じですが、会社側の扱い、必要書類、給与や社会保険料、復職時の確認事項が大きく変わります。

実務上、欠勤は「今日・明日出勤できない」という急な不調や短期間の休みに対する処理であり、会社への連絡、勤怠入力、有給休暇を使うかどうかが中心になります。一方で休職は、症状が続いて通常勤務が難しく、治療と環境調整のためにまとまった期間仕事から離れる必要がある場合に検討します。休職に入ると、診断書の提出、休職期間の管理、傷病手当金、会社との定期連絡、復職判定など、確認すべき項目が増えます。

数日で改善する見込みがあれば欠勤で対応できることもありますが、朝に体が動かない、会社に近づくと動悸や涙が出る、連絡すること自体が負担になる、欠勤や遅刻が繰り返される場合は、欠勤を重ねるだけでは状況が整理されにくくなります。欠勤のまま長引くと、本人も会社も見通しを立てにくくなり、無断欠勤・勤怠不良・就業規則上の問題として扱われるおそれがあります。

どちらを選ぶかは、病名だけで決まるものではありません。症状の強さ、睡眠や食事の乱れ、出勤できる頻度、仕事中の判断力や集中力、職場要因、会社の休職制度を合わせて判断します。医師の診察では、欠勤で様子を見る段階なのか、休職診断書を作成して休職に切り替える段階なのかを、生活機能と就労機能の両方から確認します。

欠勤が続く前に整理したいこと

受診を考える目安
朝になると動けない、涙が出る、会社に近づくと動悸が出る、連絡する気力がない、メールを開けない、判断や記憶が落ちているなどが続く場合は、単なる疲労ではなく治療が必要な状態かもしれません。

欠勤で対応しやすい場合
発熱や一時的な体調不良など、数日で改善する見込みがあり、会社への連絡や勤怠処理ができる場合です。ただし、同じ理由で欠勤を繰り返す場合は休職相談の対象になります。

休職を検討した方がよい場合
不眠、抑うつ、不安、動悸、集中困難、出勤困難、欠勤日数の増加、遅刻や早退、業務ミスが続き、通常勤務を続けることで悪化するおそれがある場合です。診察で症状、就労機能、職場環境を整理します。

会社へ確認すること
就業規則、休職期間の上限、診断書の提出先、原本提出の要否、有給休暇の扱い、給与・社会保険料、傷病手当金申請書、産業医面談の有無を確認します。

放置すると起こりやすい問題

欠勤が続くと、会社の指示どおりに業務を遂行できない状態が続くため、就業規則上の問題や契約違反を指摘され、最悪の場合は解雇に至るおそれがあります。また、無理に出社しても集中力や判断力が落ちていると、業務ミス、対人トラブル、事故リスクが高まることがあります。

そのような事態を避けるためにも、体調や勤務継続が難しいと感じた時点で医師の診察を受け、必要に応じて休職の申請、勤務時間の調整、業務量の見直しを検討しましょう。

医師の診察から、休職開始までの流れ
休職診断書や手続きについて医師と相談する場面
診察では、症状だけでなく勤務状況や会社手続きも順番に整理します。

休職相談では、診断書が必要かどうかだけを急いで決めるのではなく、現在の症状、睡眠、食欲、集中力、判断力、出勤状況、職場で困っている作業、会社の休職制度を順番に整理します。朝に動けない、涙が出る、会社へ近づくと動悸がする、メールを開けない、業務ミスが増えているなど、生活や仕事の機能がどの程度落ちているかを具体的に確認することが大切です。

診断書は、単に「休むための紙」ではなく、治療と環境調整を始めるための医学的な説明書です。会社へ提出する前に、提出先、原本提出の要否、休職開始日、休職期間の上限、給与・社会保険料の扱い、傷病手当金申請書の有無を確認しておくと、手続きが混乱しにくくなります。出社が難しい場合は、無理に会社へ向かわず、電話・メール・チャット・郵送で対応できるかを会社へ相談してください。

診察から休職開始までの流れは、医療機関だけで完結するものではありません。医師は症状や就労機能を評価し、医学的に必要な休養期間を診断書に記載します。一方で、実際に休職を開始する日、会社への提出方法、休職中の連絡頻度、給与や社会保険料の扱いは、勤務先の就業規則や人事・総務の運用によって決まります。診断書を受け取った後は、できるだけ早めに会社へ共有し、無理なく休養に入れる形を整えましょう。

休職開始までの基本的な流れ
1.診断書の発行 診断結果と精神症状の程度、現在の職場環境などを総合的に評価し、必要と判断される場合は休職診断書を発行します。診断書には病名・症状の概要・休職期間等を記載します。会社や健康保険組合の指定様式や記載要件がある場合は、事前にご相談ください。
2.会社へ提出・相談 発行された診断書をもとに、会社へ休職の申請・相談を行います。提出先は多くの場合は直属の上司ですが、会社によっては総務や人事など指定部署が異なることがあります。出社が難しい場合は、電話やチャットで連絡したうえで、郵送での提出に対応してもらえることもあります。
3.自宅療養と定期通院 休職の手続き後は出勤を停止し、自宅療養に専念します。会社によっては定時連絡(受診後の報告など)を求める規定がある場合があります。なお、休職中月2回以上(概ね2週間に1回)の受診をお願いしています(詳細は後述)。

上記は一般的な流れですが、会社によっては産業医面談、人事面談、健康保険組合の指定様式、追加書類の提出が必要になることがあります。診断書の原本を郵送するのか、画像やPDFで一時提出できるのか、休職開始日を診断書の日付に合わせるのか、会社承認日から扱うのかも確認しておくと安心です。分からない点は一人で抱え込まず、会社の担当窓口や主治医に相談しながら進めてください。

休職中の収入について(傷病手当金)
傷病手当金の申請書類と家計を整理する手元
休職中の収入不安は、制度と申請時期を早めに確認して整理します。

休職で最も気がかりなのは、やはり収入面です。休職期間中の給与の取り扱いは会社ごとに異なり、有給休暇が残っていればまずは有給消化とする会社もあれば、独自の病気休暇制度を設けている会社もあります。休職に入る前後で、給与がいつまで出るのか、無給になる時期、賞与や各種手当の扱い、社会保険料や住民税の支払い方法を確認しておくと安心です。

会社から十分な給与が出ない場合は、健康保険から給与の一定額が補填される傷病手当金という制度を利用できることがあります。支給額は、原則として支給開始日前の標準報酬月額をもとに計算され、概ね給与の3分の2が目安です。ただし、実際の手取り額とは異なり、社会保険料や住民税などの支払いが別に必要になる場合があります。

傷病手当金でまず確認すること
支給条件 業務外の病気やけがで療養し、仕事に就けず、給与が出ないまたは少ない場合が対象です。連続する3日間の待期後、4日目以降が支給対象になります。
支給額 おおむね給与の3分の2が目安です。健康保険の加入期間や標準報酬月額により計算が変わるため、最終判断は加入先の健康保険で確認します。
支給期間 支給される期間は、支給開始日から通算して1年6か月が上限です。途中で復職した期間があっても、通算で管理されます。

傷病手当金の申請には、本人記入欄、会社記入欄、医師の記載欄がある「傷病手当金支給申請書」が必要です。医師が記載できるのは、診察で確認できた医学的な状態にもとづく期間です。注意点として、初診日以降の期間しか記載できません。受診前の状態は医師が証明できないためです

申請書は会社の人事・総務担当から受け取るか、加入している健康保険(協会けんぽ・各種健保組合)の公式サイトからダウンロードします。入手方法が不明な場合は会社担当にご確認ください。申請書をお持ちの方は、請求期間を確認のうえ受診時にご持参ください。請求期間、会社の証明欄、給与支給の有無、欠勤期間がずれていると差し戻しになることがあるため、会社記入欄と医師記入欄の期間が合っているかも確認しましょう。

なお、傷病手当金は申請してすぐ振り込まれるとは限りません。会社記入、医師記入、健康保険での審査を経るため、初回は時間がかかることがあります。家賃、ローン、保険料、住民税、社会保険料など毎月の固定費が不安な場合は、休職開始時点で会社や家族と資金計画を整理し、必要に応じて自治体窓口や社会福祉協議会などの相談先も確認しておきましょう。

また、他の注意点について幾つかあげておきます。

受診回数
傷病手当金支給申請書には当月の診察日を記載する欄があるため、月2回以上(概ね2週間に1回程度)の受診をお願いしております。受診回数が少ない場合、支給可否は各健康保険(協会けんぽ・健保組合)の判断となります。受診回数が少なく不支給になるケースもあります。

受診のない月
傷病手当金支給申請書には当月の診察日を記載する欄があるため、該当期間に受診が無い月は、申請書の記載自体が出来ません

退職後の継続給付
基本的に『1年以上同じ会社に勤務している』等の条件を満たせば、退職後も傷病手当金を受け取ることができます。

勤続期間の条件
『1年以上同じ会社に勤務していない』場合は、退職と同時に傷病手当金は申請が出来なくなります。

記載できる期間
記載は記載日までの実期間のみで、未来日を記載することはできません

その他、制度のルールは細かいため、最新情報は全国健康保険協会(協会けんぽ)や加入する健康保険組合の公式情報をご確認ください。 また、退職により傷病手当金が打ち切りとなった場合でも、条件を満たせば雇用保険(失業給付)へ切り替えられる可能性があります。詳細は最寄りのハローワークにお問い合わせください。
就業規則や会社の休職ルール確認
就業規則や休職ルールの書類を確認する手元
休職期間、提出先、給与や社会保険料の扱いは会社ごとに異なります。

労働基準法や労働契約法に、休職制度そのものの法定規定はありません。休職の可否・期間・手続き・復職時の取り扱いは、各社の就業規則で定められます。就業規則には、休職期間の上限や延長条件、復職判定の方法、復職後の配慮事項(勤務時間・業務量・残業制限・テレワーク等)が記載されているのが一般的です。お試し出勤は賃金発生の扱いが会社により異なるため、就業規則を事前に確認してください。

休職期間は勤続年数に応じて段階設定されることもあり、上限が1か月程度と短い会社もあれば、2年3年まで認める会社もあります。休職期間の途中で診断書の再提出が必要になる会社、延長申請の期限が決まっている会社、一定期間を超えると自然退職・普通解雇の検討に進む会社もあるため、休職開始時点で「いつまでに何を提出するか」を確認しておくことが重要です。

また、明文の規定がなくても、復職直前に会社独自の復職プログラム(産業医面談、通勤訓練お試し出勤リワーク等)の受講を求められる場合があります。お試し出勤は、勤務扱いか、無給の訓練扱いか、通勤中や職場内で体調不良・事故が起きた場合の扱いが会社ごとに異なります。実施する場合は、期間、時間帯、作業内容、上司への報告方法、途中で中止する基準を事前に確認しましょう。

復職時の配属に関しても、復職時は必ず異動とする会社がある一方で、同一部署・同一チームでのみ復職を認める運用を採る会社も珍しくありません。職場要因が不調の背景にある場合は、元の部署へ戻ることが安全なのか、上司・業務量・対人負荷・通勤負荷を変えられるのかを、主治医、産業医、人事担当と整理していきます。

業務量の段階的な復帰(短時間勤務→時短解除→残業可否の段階変更)や在宅/ハイブリッド勤務の可否、合理的配慮の申出窓口(人事・産業保健スタッフ等)も合わせて確認しておくと安心です。復職後の面談頻度、残業・休日出勤の制限期間、業務の優先順位、体調悪化時の相談先、再休職になった場合の扱いまで決めておくと、復職後に無理を重ねにくくなります。

まずは休職が決まった後で構いませんので、所属先の就業規則と担当部署(人事・総務・産業医)に必ず確認してください。規程と実際の運用を把握しておくことが、手続きの遅れやトラブルを防ぎ、円滑な復職計画につながります。確認した内容は、口頭だけで済ませず、メモやメールで残しておくと後から見返しやすくなります。

治療について①(療養)
🛌 休職による療養と環境調整
休職中に自宅で朝の光を見ながら療養を考える人
療養は、ただ横になるだけでなく、刺激を減らしながら回復の土台を整える時間です。

休職中は、まず睡眠・食事・通院を安定させ、心身が安全に休める環境を作ることが出発点です。休職直後は「早く戻らなければ」と焦りやすい時期ですが、業務連絡や会社の情報に触れ続けると緊張が抜けず、回復が遅れることがあります。回復が進んできたら、原因となった職場要因を整理し、復職後に同じ負荷へ戻りすぎないよう調整します。

休職期間中は、心身の回復に専念する時間を確保しつつ、復帰後の再発を防ぐために職場環境の調整部署異動業務量の見直し残業制限テレワーク配慮等)を検討します。最初の段階では、寝る・食べる・受診する・薬を整えるなど、生活の土台を戻すことを優先します。

一般的な目安として、適応障害』『不安障害』『パニック障害』は2〜3か月、『うつ病』は6か月以上かかることが少なくありません。ただし個人差が大きいため一律ではありません。症状名だけで期間を決めるのではなく、睡眠、食欲、気分の波、外出できる範囲、集中力、対人場面での疲れやすさを診察ごとに確認します。

まずは暫定1か月休職で診断書を作成し、経過に応じて延長の可否を柔軟に判断します。想定より早く改善した場合は前倒しの復帰も可能です。一方で、少し動けるようになった直後に予定を詰めすぎると反動が出ることがあるため、散歩、買い物、家事、短時間の読書や作業などを段階的に増やします。

原因がハラスメントや人間関係にある場合は、復職時に部署異動等の条件を付すことがあります。原因が長時間労働・業務過多の場合は、業務量の軽減残業制限を明確にすることが重要です。必要に応じて、復職前に会社側と業務内容、勤務時間、残業可否、相談先、復職後面談の頻度を整理し、無理のない復職支援プランにつなげます。

劣悪な労働環境や理不尽な要求が慢性化している場合は、配置転換・転職を含む大きな環境変更を検討する必要があるかもしれません。休職は単に時間を空けるだけではなく、症状を悪化させた要因を見える化し、同じ状況へ戻りすぎないための準備期間でもあります。

💊 薬物療法(メディケーション)
服薬と体調を医師に相談するための水と薬のイメージ
薬物療法は症状を抑え込むだけでなく、睡眠と日中機能を戻すための支えになります。

薬は「飲めばすぐ元通り」というものではなく、症状の強さ、眠気、副作用、仕事への影響を見ながら調整します。自己判断で急に止めると再燃や離脱症状につながることがあるため、変更は主治医と相談して進めます。

抑うつ・不安・過緊張・不眠などの症状を緩和し、日中機能(集中力・作業能率・対人応答)を回復させること、ならびに再発予防を図ることを目的とします。

対象症状と主な薬の例

抗うつ薬抑うつ気分、意欲低下、不安の改善を目的に用います。代表的にはSSRIやSNRIなどがあり、症状の種類、体質、副作用の出方、日中の眠気の有無を見ながら調整します。

抗不安薬強い不安、緊張、動悸、過緊張が目立つ時に短期的な対処として検討します。眠気やふらつき、依存の問題があるため、漫然と長く続けず、必要性を確認しながら使います。

睡眠薬入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などを整えるために使います。睡眠の質が改善すると、日中の集中力、感情の安定、回復力が戻りやすくなります。

補助的な薬必要に応じて漢方薬や補助薬を併用する場合があります。胃腸症状、体の緊張、頭痛、動悸など、身体症状の強さも含めて治療方針を検討します。

進め方(標準的な流れ)
①初期調整 症状、体質、就労状況を踏まえ、最少必要量から開始します。眠気、胃腸症状、頭痛、ふらつきなどの副作用を確認しながら、必要に応じて少しずつ調整します。
②維持・評価 効果と副作用のバランスを評価し、日中機能の回復を目標に用量を最適化します。気分だけでなく、睡眠、集中力、作業能率、対人応答の戻り方も確認します。
③再発予防 症状が落ち着いた後も、しばらくは継続投与を検討します。よくなった直後に自己判断で中断すると、再燃や離脱症状につながることがあります。
④減薬・中止 主治医と相談し、体調、生活リズム、復職状況を見ながら計画的に行います。離脱症状や再燃を避けるため、段階的に進めることが大切です。
治療で目指すこと

抑うつ・不安の軽減、睡眠の質改善、日中機能の回復再発予防を図ることを目標とします。薬は「気分だけ」を見るものではなく、生活リズム、仕事に必要な集中力、対人場面での余裕を取り戻すための一つの手段として位置づけます。

🧠 認知療法(認知行動療法:CBT)
認知療法で考え方を整理するノート
考えを書き出すことで、反すうや自責を少し距離を置いて見やすくなります。

認知療法では、つらさを根性で消すのではなく、出来事の受け取り方、行動の選び方、休み方の癖を一緒に見直します。復職後に同じストレスで崩れにくくするための実践的な練習として使います。

薬物療法に心理的アプローチを併用することで、回復のスピード再発予防の双方に効果があることが、臨床研究で示されています。認知療法は、物事の受け取り方(認知)の偏りに気づき、より現実的で柔軟な考え方・行動を身につけるための実践的な手法です。
■主な内容(代表的技法)
  • 認知行動療法CBT
    出来事そのものではなく、そこで浮かぶ自動思考に気づき、事実・解釈・予測を分けて検討します。「また失敗する」「戻っても迷惑だ」などの考えを、根拠と別案から見直し、行動の選択肢を増やします。
  • ストレス対処法(コーピング)
    不安や緊張が強い場面で使える対処を具体化します。呼吸法、休憩の入れ方、相談先の整理、業務を小さく分ける方法などを練習し、復職後に負荷が上がった時も一人で抱え込みすぎない形を作ります。
  • マインドフルネス
    反芻(くよくよ思考)や未来への心配に巻き込まれた時、呼吸、身体感覚、目の前の行動へ注意を戻す練習です。不安を完全に消そうとするのではなく、考えを「考え」として眺め、今できる行動へ戻りやすくします。
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
    職場での伝え方・断り方・相談の仕方をロールプレイで練習します。体調不良の伝え方、業務量の相談、期限調整、上司や同僚への報告など、復職後に必要になりやすい場面を事前に言葉にしておきます。
  • 不眠の認知行動療法CBT-I)
    刺激制御睡眠制限認知介入睡眠衛生で睡眠障害を整えます。眠れない不安、寝床での考え込み、昼夜逆転、日中活動量の低下を整理し、回復と復職準備の土台を作ります。
■目標
  • 抑うつ・不安の軽減、仕事の集中力と遂行力の回復、そして再発予防プランの確立を目指します。症状が落ち着いた後も、ストレスサインに早く気づく、相談する、休む、業務量を調整するなど、復職後に使える具体的な行動まで落とし込みます。
🌙 心理教育(睡眠教育を含む)
心理教育で生活と治療のポイントを整理するノート
症状の仕組みを知ると、休む理由や回復手順を説明しやすくなります。

心理教育では、うつ・不安・睡眠・ストレス反応の仕組みを知り、自分の状態を言葉にする力を育てます。病気の知識だけでなく、生活リズム、再発サイン、相談のタイミングも整理します。

心理教育は、症状の背景にあるメカニズムを理解し、日常で活かせるセルフケアの知識と手順を身につけるプログラムです。とくに睡眠は回復と再発予防の土台となるため、必要に応じて睡眠教育(CBT-Iの基礎)も行います。
■主な内容(代表的テーマ)
  • 症状の理解
    うつ病適応障害不安障害パニック障害・自律神経失調症等の疾患に対するの基礎知識について。
  • ストレスと身体反応
    交感神経/副交感神経、ホルモン、体内時計の仕組みについて。
  • 生活リズムの整え方
    起床後の採光、リズム運動(週150分目安)、食事・カフェイン・アルコールの扱いについて。
  • ④職場でのセルフマネジメント
    負荷調整、報連相、合意形成のコツ。
  • 再発予防の設計
    引き金・初期サイン・対処行動をまとめたリラプスプラン(再発防止計画)の作成。
■睡眠教育(CBT-Iの基礎)
  • 刺激制御
    寝床=睡眠の連合を再学習します。眠れないまま布団の中で考え続ける時間を減らし、寝床を「悩む場所」ではなく「眠る場所」に戻していきます。眠気が来てから布団に入る、20分ほど眠れなければ一度離れるなど、脳にわかりやすい合図を作ります。
  • 睡眠制限
    実際に眠れている時間に合わせて、就床・起床スケジュールを整えます。長く寝床にいるほど眠れるわけではなく、寝床時間が長すぎると浅い眠りや中途覚醒が増えることがあります。安全に配慮しながら、睡眠効率を高める方向で調整します。
  • 認知介入
    例「眠れないと翌日が必ず台無し」「早く寝なければ」といった思い込みを調整します。睡眠への焦りや過度な自己観察は、かえって覚醒を強めることがあります。事実、予測、対処を分けて考え、眠れない夜の不安を少し扱いやすくします。
  • 睡眠衛生
    光・デバイス・カフェイン・入浴・運動・寝室環境を整えます。朝の光で体内時計を合わせ、夕方以降は強い光や仕事の刺激を減らします。アルコールを睡眠対策に使わない、寝る直前のスマホや仕事連絡を避けるなど、眠りを邪魔する要因を一つずつ減らします。
■目標
  • 症状悪化のサイクルを理解し、再発しにくい生活習慣と実践手順を身につけます。睡眠だけを単独で見るのではなく、朝の光、日中活動、食事、服薬、仕事刺激、夜の過ごし方を一つのリズムとして整えます。
💬 臨床心理士によるカウンセリング
臨床心理士とのカウンセリングで話を整理する場面
カウンセリングでは、仕事・生活・考え方の絡まりを安全な場で整理します。

カウンセリングは、気持ちを吐き出すだけでなく、困っている場面を具体化し、次に取れる行動を小さく決める場でもあります。医師の診療と組み合わせることで、薬物療法だけでは扱いにくい対人関係や再発予防も扱いやすくなります。

悩みや辛さが続くと、自分の気持ちがつかめず、どう動けばよいか迷ってしまうことがあります。カウンセリングは、安心して話せる場で気持ち・考え・課題を整理し、回復に向けた一歩を一緒に見つけていく支援です。しっかり話し、しっかり聴かれることで、問題点が見えやすくなり、解決の糸口が生まれます。
当院併設のカウンセリングルーム武蔵小杉では、認知療法CBT)や心理教育をはじめ、複数のカウンセリング技法を組み合わせて提供します。医師(薬物療法・診断書)と連携し、メンタルヘルスの改善から復職再発予防まで一貫して支援します。
■カウンセリングで扱う主なテーマ
  • ①認知療法自動思考の気づき・検討、別案づくり、行動の再設計を行います。考え方を無理に変えるのではなく、つらさを強めている受け取り方に気づき、現実的な選択肢を増やします。
  • ②心理教育症状やストレス反応の仕組み、生活リズム・睡眠(CBT-Iの基礎)、再発予防の実践手順を整理します。自分の状態を説明できるようになると、会社や家族にも相談しやすくなります。
こんな方にお勧めです。他にもどんな些細なご相談でも構いません。お気軽にご相談下さい。
不安・抑うつが続く 仕事や生活のペースを立て直したい方。気分、睡眠、活動量、考え方の癖を一緒に整理します。
復職や対人関係が不安 職場での伝え方・断り方・相談の仕方を、具体的な場面に合わせて練習します。
睡眠を整えたい 入眠困難・中途覚醒・起床困難などを、生活リズムと認知行動療法の視点から扱います。
当院に併設したカウンセリングルーム武蔵小杉で臨床心理士がカウンセリングを行っております。 ご希望の方は以下のリンクからご予約下さい。

医師による外来は、日本の保険診療制度の都合上、2回目以降の診察時間はおおむね5〜10分となります。
臨床心理士によるカウンセリングは、1コマ50分・予約制です。併行してカウンセリングでの治療を希望される方は、カウンセリングルーム武蔵小杉にてご予約ください。
臨床心理士によるカウンセリングでは、診断書の発行や薬の処方薬物療法)は行えません。

休職中の過ごし方について

まずは仕事から距離を取り、しっかり休むことが大切です。休職中に業務メールやチャットを確認すると不安や焦りが高まり、心身が十分に休まりません。体調を回復させるために、意識的に仕事から離れる時間を確保しましょう。気分が少し上向いてきたら、短時間の散歩や外出で外気に触れることから再開してください。

「つらい」「苦しい」「死にたい」と感じるような精神的な不調の際は、セロトニン・オキシトシン・ドーパミンなどの神経伝達物質(ホルモン様に働く物質)が不足していることがあります。これらは心の安定に関わるため、分泌を促す生活習慣を取り入れることが重要です。セロトニンを高める方法の一つとして抗うつ薬が用いられます。薬物療法に加えて生活面の工夫でも分泌を後押しできます。また、自分で取り組める認知療法も併用して進めていきましょう。

☀️ 1.朝早い時間に日光を浴びる
朝の自然光と緑の葉
朝の光は体内時計を整え、夜の眠気を作る起点になります。

起床後の光は、睡眠リズムと気分の安定に関わります。強い運動が難しい時期でも、カーテンを開ける、窓際に座る、短時間外に出るなど、負荷の低い方法から始められます。休職中は活動量が落ちやすく、寝る時間・起きる時間が後ろにずれやすいため、朝の光を毎日の合図として使うことが大切です。最初から「早寝早起き」を完璧に目指すより、まずは起床時刻を大きく崩さず、朝に光を入れるところから整えていきます。

起床後1時間以内に20〜30分ほど屋外で日光を浴びることが基本です。網膜が強い光を受けると体内時計がリセットされ、日中には気分の安定・意欲・集中に関わる神経伝達物質「セロトニン」が分泌・活性化します。セロトニンは必須アミノ酸トリプトファンから作られ、夜間にはこのセロトニンを材料に松果体で睡眠ホルモン「メラトニンが生成されます。そのため、朝に光を浴びるほど日中はシャキッと過ごしやすく、夜は自然な眠気が訪れ、睡眠‐覚醒リズムが整います。朝食や服薬、軽い散歩を同じ時間帯に重ねると、体内時計に複数の合図を送ることができます。

朝の光を習慣にする3つのコツ
1.起床時刻を固定する 眠れなかった翌日も、起床時刻を大きく後ろ倒しにしないことが大切です。まずは平日・休日の差を小さくし、毎朝同じ合図を体に送ります。
2.外の明るさを入れる カーテンを開ける、窓際に座る、玄関先へ出る、5分だけ歩くなど、体調に合わせて段階を選びます。太陽を直接見つめる必要はありません。
3.夜の光を弱める 朝の光だけでなく、夜の強い照明やスマホの光を減らすことも重要です。寝る前は部屋を少し暗くし、脳に「夜」の合図を送ります。

室内照明では光量が不足しやすく、雨天や曇天でも屋外は室内よりはるかに明るいことが多いため、可能な日は外の光を浴びることを意識しましょう。体調が悪い日、猛暑・強い寒さ・大雨の日は無理をせず、ベランダ、玄関先、窓際などから始めても構いません。日光を見るために太陽を直接見つめる必要はなく、屋外の明るさを目に入れるだけで十分です。まぶしさがつらい場合は、数分から始める、日陰を歩く、帽子を使うなど、続けられる方法を選びます。

起床したら、まずカーテンを開け、水分を取り、着替えて外に出る準備をします。屋外で深呼吸をしながら軽いストレッチを行う、家の周りを5分だけ歩く、近くのコンビニまで行くなど、最初は小さな行動で十分です。療養中で体力が落ちている場合でも、自宅周辺をゆっくり歩くだけで日光を浴びられます。冬場や早朝の冷え込みが厳しいときは、防寒対策をして無理のない範囲で続けましょう。起き上がるのが難しい日は、布団の中でカーテンを開ける、窓際に座る、洗顔だけするなど「最低ライン」を決めておくと、完全にリズムが崩れるのを防ぎやすくなります。

ヒトの体内時計は約24時間よりわずかに長い(25時間前後)といわれており、このズレを毎朝の光刺激で24時間周期に合わせる必要があります。ズレを放置すると就寝・起床時刻が後ろにずれ、昼夜逆転日中の倦怠感を招くおそれがあります。夜眠れなかった翌日ほど、昼まで寝続けるより、起床時刻を大きく崩さず朝の光を入れる方がリズムを立て直しやすくなります。どうしても眠気が強い場合は、長時間の昼寝ではなく、午後早めの短い休息にとどめる方が夜の睡眠を妨げにくくなります。

朝の光と同じくらい、夕方以降の過ごし方も大切です。夜遅くまで強い照明、スマホ、パソコン、動画視聴を続けると、脳が昼間だと勘違いしやすく、眠気が後ろにずれます。就寝前は照明を少し落とし、画面を見る時間を短くし、仕事連絡や刺激の強い情報から距離を置きましょう。朝は明るく、夜は暗く、というメリハリが睡眠リズムを安定させます。

また、週末の「寝だめ」は体内時計を再度後ろ倒しにするため、平日と週末の起床・就寝時刻の差は1時間以内に抑えるのが理想的です。起床時刻を固定し、朝の光、朝食、軽い活動をセットにすると、睡眠だけでなく食事や服薬のリズムも整いやすくなります。数日できなかったとしても失敗ではありません。再開するときは、翌朝のカーテン、窓際、玄関先、5分散歩のどれか一つから戻せば十分です。このように「朝日を浴びる習慣」は心身の健康を支える土台です。毎日少しずつでも実践し、規則正しい生活リズムを維持しましょう。

🚶 2.適度なリズム運動を行う
朝にベッド上で軽く体を伸ばす人
リズム運動は、疲れすぎない範囲で少しずつ続けることが大切です。

運動は長時間行うより、短くても同じ時間帯に続ける方が回復に役立つことがあります。散歩、ストレッチ、家事など、翌日に反動が出ない強さを目安にしましょう。休職中は体力が落ちていることも多いため、「運動しなければ」と追い込むより、まずは外に出る、5分歩く、階段を少し使うなど、成功しやすい行動から始めることが大切です。調子が良い日に急に頑張りすぎると、翌日に寝込んだり気分が落ちたりすることがあるため、少し物足りない程度で終えることも回復期には大切です。

ウォーキングや軽いジョギングなど、一定のリズムで続ける有酸素運動は脳内のセロトニン分泌を促進します。特に朝、日光を浴びながら20〜30分行えば、体内時計の調整と運動刺激を同時に得られます。運動開始から約5分でセロトニン分泌が高まり、20〜30分でピークに達しやすいとされます。

健康づくりの一般的な目安としては、中等度の身体活動を週150分程度行うことがよく示されます。ただし、療養中はこの数字を最初から達成しようとしなくて構いません。150分に満たなくても、行った分だけ効果は積み上がります。まずは5分、10分、15分と増やし、体調が安定してきたら20〜30分を目標にしていきましょう。週150分は「療養中のノルマ」ではなく、回復が進んだ後の健康づくりの目安として捉えると続けやすくなります。

運動の強さは、息が少し弾むけれど会話はできる程度が目安です。翌日に強い疲労、頭痛、眠れなさ、気分の落ち込みが出る場合は、量や強度を下げます。反対に、散歩後に少し気分が軽くなる、食欲が戻る、夜に眠気が来やすいと感じる場合は、その強さが今の体に合っている可能性があります。休職中は「その場でできたか」だけでなく、帰宅後の疲労、夕方以降の気分、夜の睡眠、翌朝の起床状態まで見て判断します。

療養中の運動は段階を分けて始める
1.まず外に出る 玄関を出る、ベランダに出る、家の周りを1周するなど、成功しやすい行動から始めます。起床後の光とセットにすると生活リズムも整いやすくなります。
2.短時間を固定する 5〜10分の散歩、軽いストレッチ、家事を同じ時間帯に行います。時間を固定すると、気分に左右されにくい習慣になりやすくなります。
3.反動を見て増やす 翌朝に強い疲れが残らなければ、時間や距離を少しずつ増やします。反動が出た日は、休むか前の段階に戻すことも大切です。

体力に不安がある場合は、まず毎朝の散歩から始め、徐々に距離や時間を延ばしていくと無理なく継続できます。外出が難しい日は、室内での足踏み、ストレッチ、掃除、洗濯物を干すなどの家事でも構いません。買い物に行く、郵便物を取りに行く、部屋を片づけるといった日常活動も、療養中には立派な活動量になります。大切なのは、完璧な運動メニューではなく、同じ時間帯に体を少し動かすリズムを作ることです。

活動量を増やすときは、簡単な記録を残すと調整しやすくなります。歩いた時間、外出した場所、疲労感、気分、睡眠、翌日の反動を一言でよいのでメモしておくと、主治医と相談するときに「どのくらいなら無理がないか」を確認しやすくなります。復職前には通勤訓練やお試し出勤も視野に入るため、運動はその前段階として体力と生活リズムを戻す意味があります。

有酸素運動はセロトニンだけでなく、成長ホルモンの分泌も促進し、脂肪燃焼・疲労回復・睡眠の質向上・免疫力強化など多面的なメリットをもたらします。とりわけ成長ホルモンは睡眠を深め、翌朝の目覚めをすっきりさせる重要な役割を担います。また、リズム運動にはストレス反応を和らげ、自律神経バランスを整える働きも期待できます。

注意点として、動悸、胸痛、めまい、強い息切れ、発熱、著しい不眠がある日は無理をしないでください。夜遅い時間の激しい運動は眠気を遠ざけることがあるため、まずは朝から夕方までの軽い運動を中心にします。自分に合った運動を見つけ、習慣化して心身のコンディションを整えましょう。

🍽️ 3. 3食バランスの取れた食事を、よく噛んで食べる
栄養バランスの取れた和食の食卓
食事は体力回復だけでなく、睡眠や気分の安定にも関わります。

食欲が落ちている時期は、完璧な食事を目指すより、決まった時間に少量でも口にすることを優先します。たんぱく質、炭水化物、水分を少しずつ戻すことが、活動量の回復にもつながります。

セロトニンの材料は必須アミノ酸のトリプトファンです。動物性のたんぱく源(肉・魚・卵・乳製品)と、植物性のたんぱく源(大豆製品・ナッツ)や果物(バナナ)に多く含まれます。合成を円滑に進めるにはビタミンB6が不可欠で、あわせてビタミンB1・B2、ビタミンC、亜鉛も補因子として重要です。色とりどりの野菜・果物・海藻・キノコ類を組み合わせ、「主食・主菜・副菜」がそろった3食を意識しましょう。

EPA・DHA(青魚の脂)は脳内の炎症反応を抑える働きがあり、抑うつ症状の軽減に役立つ可能性が示されています。イワシ・サバ・サンマを取り入れる、あるいはえごま油・アマニ油などオメガ3系の植物油を小さじ1杯プラスする方法も良いでしょう。主菜の肉は魚や鶏を中心にし、牛や豚を完全に避ける必要はありませんが、脂質が多くなりやすいため量と調理法に注意します。

よく噛むこと自体がセロトニン分泌を促す刺激になります。1口30回を目安に、玄米・雑穀ご飯・根菜など歯ごたえのある食材を取り入れて、自然に咀嚼回数を増やしましょう。ガムを20分ほど噛むだけでもセロトニンが増えたとする報告もあります。他にも、咀嚼には、消化の促進、肥満予防、記憶力の向上、免疫機能のサポート、口臭予防など、多くの健康効果が知られています。

炭水化物(ご飯・パン・麺)や甘い飲料は、食後血糖の急上昇とその後の反動低下を招きやすく、だるさ・眠気・気分の波につながります。まずは量と頻度を控えめにし、清涼飲料や菓子類は「たまに・少量」を基本にしましょう。また、食べる順番を工夫することで食後血糖の上昇を緩やかにできます。最初に食物繊維(野菜・海藻・キノコ)、次にタンパク質(肉・魚・卵・乳製品・大豆製品)、最後に炭水化物(ご飯・パン・麺)という順番を意識すると、気分の安定や次の食事までの間食抑制にもつながりやすくなります。

「食欲がわかない」日は、バナナ+ヨーグルト+はちみつなど、トリプトファンとビタミンB群を同時に補える軽食から始めても構いません。少量でも“決まった時間に口に入れる”ことが、体内時計と血糖リズムの安定につながります。 間食には、素焼きナッツ・チーズ・ゆで卵など、高タンパクかつ良質な脂質を含む食品がおすすめです。なお、タンパク質は満腹中枢を刺激して満足感を高め、食欲を抑える作用が期待でき、過食が気になる方にも有用です。

ポイントのまとめ
  • 3食を欠かさない。食欲が落ちる日は軽食からでも、同じ時間に口に入れることを優先します。
  • 良質なたんぱく質、ビタミンB群、オメガ3を意識し、魚・卵・大豆製品・野菜を組み合わせます。
  • しっかり咀嚼する。1口30回を目安に、食事を急がないことが自律神経の安定にもつながります。
食事を整えるだけでも、セロトニン成長ホルモン、自律神経のバランスが底上げされ、メンタルの安定と睡眠の質の向上につながります。
🤝4.自分で出来る認知療法①誰かの役に立つ・他者を喜ばせる
相談や手続きを整理する書類と手元
小さな役割や人とのつながりは、回復期の自己効力感を支えます。

誰かの役に立つ行動は、大きな貢献でなくて構いません。短い挨拶、家事を一つ行う、家族に感謝を伝えるなど、負担にならない範囲の小さな行動を積み重ねます。

人は、誰かの役に立つ/喜ばせる体験を通じて、幸福感や充足感を得やすくなります。これは、いわゆる“幸せホルモン”と呼ばれる オキシトシンの分泌が高まることで説明されます。友人とのおしゃべり、家族団らん、ペットとのふれ合いといったアナログな関わりも同様に オキシトシンを促し、気分の安定に寄与します。だからこそ、大きな困難があっても、安定した人間関係に支えられて乗り切れた経験は、多くの方に共通する実感ではないでしょうか。

心理学者アルフレッド・アドラーは、心の不調に悩む人へ他者を喜ばせることに意識を向け、実際に行動する」ことを勧めました。自分の問題だけに注意が向くと視野が狭まりやすい一方で、「誰かの役に立つ」という視点は孤立感を和らげ、共同体感覚(社会の中に自分の居場所がある感覚)を育てます。 実践は 小さな一歩からで十分です。

1)手帳(またはスマホメモ)で「喜ばせリスト」を作る
  • 欄を「家族/友人/近所/お店の方/地域/LINE」などに分けます。
  • 毎朝1~3個、相手を喜ばせる具体的な行動を書き出します。 例:家族にお礼を一言家事を10分手伝う友人へ近況メッセージ近所であいさつ散歩中のゴミ拾い/店員さんに丁寧に感謝を伝えるLINEで感謝コメント
  • その日のうちに“できる範囲”を実行し、夜にチェック。できたら○、未実行は翌日に繰り越します。
2)毎日の「小さな徳」を積み重ねる
  • 席や順番を譲る、エレベーターで先を譲る。
  • 会話では相手の話に共感する。
  • 配達員や店員さんにひと言のねぎらいをかける。
  • LINEでも、感謝の一言やスタンプを添える。
3)「感謝」を言葉と記録で育てる
  • 言葉にする:その場で「ありがとう」を伝える(家族・友人・店員さんへ、短くてもOK)。
  • 感謝メモ:寝る前に「今日の感謝を3つ」書く。
  • 週1の振り返り:1週間分を読み返し、伝えそびれた相手にメッセージを送る。
こうした見返りを求めない小さな行為自己効力感を高め、気分や睡眠にも良い影響が生まれやすくなります。 親密な関係が少なくても、まずは「あいさつ」「」「ねぎらい」といった短い接点から始めましょう。 対人不安が強いときは、家族やペットとの関わりを足場に、少しずつ輪を広げていけば大丈夫です。
ポイントのまとめ
  • 親密さより「小さく・頻回に」を優先する。
  • 手帳やメモで喜ばせリストを作り、毎日1~3個実行する。
  • 毎日の「小さな徳」と感謝(言葉+記録)を習慣化し、共同体感覚を育てる。
▶️5.自分で出来る認知療法②何かしら行動を起こす
自宅で無理のない作業を再開する人
行動を少し起こすことで、気分が後からついてくることがあります。

気分が整ってから動くのを待つだけでは、回復が停滞することがあります。1分だけ片付ける、短い文章を読む、外の空気を吸うなど、成功しやすい行動から始めます。

「やらなきゃいけないのに、やる気が出ない」。多くの方が直面する壁です。やる気は待っていても出ません。行動を起点に生まれることが分かっています. 脳の側坐核(そくざかく)が刺激されるとドーパミンという神経伝達物質が分泌され、やる気・集中・「できそう」という見込み感が高まります. ――刺激の与え方は難しくありません。まず動くこと自体が刺激になります。
すぐ始めるためのコツ
  • 1)「5分だけ」ルール
    抵抗の低い超小さな一歩を決め、最初の5分だけ着手。 例)資料を1枚開く/机を30cmだけ片づける。着手の瞬間に側坐核が反応し、続きが楽になります。
  • 2)最初の1手を決める
    例)PCを開く → ファイル名を検索 → 文章を1行記載する、のように開始動作を具体化しておく。
  • 3)物理スイッチ
    手をたたく/ガッツポーズをしながら、「よし、〇〇から始めよう」と短く声に出す。数秒の身体刺激+言語化でも着手のハードルが下がります。
いずれの方法も、ドーパミン分泌の立ち上がりを助け、スタートを切りやすくします.
続けるためのコツ
  • 1)分割して小さな達成を増やす
    大きな作業は3~5個の小タスクに分解。小さな完了ごとにドーパミンが出やすく、継続力が高まります。
  • 2)見える化で報酬を前倒し
    紙のToDoリスト+チェックボックス/進捗バー/完了ログを活用。タスク完了後は線を引いて消すたびに達成感が生まれ(ドーパミンの分泌を促し)、次の着手を後押しします. ※モニタより紙に書くほうが注意の分散が少なく効果的な人が多いです
  • 3)時間ブロック(短時間×回数)
    25分作業+5分休憩を1セットとして繰り返す。長丁場より短く刻むほうが続きやすく、疲れを感じる前に休憩を入れると効率が上がります.
  • 4)環境を先に整える
    前夜に道具を出す/通知を切る/作業場所を固定。選択肢と迷いを減らす=着手の促進です。服や持ち物を定番化する、身の回りを断捨離してシンプルに保つのも有効です。
ポイント:行動 → 小さな達成 → ドーパミン → 次の行動という上向きスパイラルを、意図的に設計する。
まとめ
  • やる気は待たずに動いて呼び込む5分だけ最初の1手物理スイッチ
  • 小さく分けて見える化して数で稼ぐ(チェック/進捗バー/完了ログ)
  • 環境と予定を先に決める道具を出す短時間ブロック通知オフ
🕊️6.自分で出来る認知療法③嫌なことを手放す
閉じたノートとペン
手放すとは忘れることではなく、抱え続ける時間を少し減らすことです。

嫌な出来事を無理に消そうとすると、かえって頭の中で大きくなることがあります。考える時間を区切る、紙に退避する、相談先へ渡すなど、距離を取る工夫を使います。

仕事の失敗など嫌な出来事が頭から離れないことは誰にでもあります。 気持ちを軽くするために人に話すとカタルシス効果で一時的には楽になりますが、同じ話を繰り返すほど記憶が再活性化・強化され、かえって忘れにくくなります。とはいえ、誰にも言わず抱え込むのも強いストレスです。

そこで、「一度だけ話して終える」→「切り替えて他の行動に移る」というステップをおすすめします。

カタルシス効果
つらい感情や出来事を言語化して吐き出すことで一時的に心が軽くなる現象。反復は記憶の強化につながりやすいため、「1エピソード=1回だけ話して終える」のがコツです。
1)一度だけ話して終える
  • 宣言してから話す:「この件は一回だけ聞いてください。終わったら切り替えます」と前置きします。
  • 時間を区切る:3〜10分で区切り、「ここまで」と締めます。
→ 吐き出して発散しつつ、記憶の上塗りを防ぐことが大切です。
2)反芻(同じ考えの堂々巡り)に気づいたら切り替える
  • ラベリング
    「今、反芻している」と心の中で名付ける。
  • 合図を決める:深呼吸3回/肩回し/席を立って水を飲むなど、「体の動きで区切る」。
  • 置き場所を作る:「心配メモ」に1行だけ書いてノートを閉じ、頭の外へ退避。
3)“良い出来事”を意図的に増やし、記憶を上書きする
  • 楽しい予定を入れる
    友人と短いお茶・自然の中を10分散歩/好きな音楽・香り/趣味を15分。
  • セイバリング日記(“味わう”日記):寝る前に「今日よかったことを3つ」書く(人・出来事・自分の努力もOK)。
  • 写真・メモで残す:嬉しい瞬間を1枚撮る/一言メモ。見返す習慣が「“良い記憶”の回路を太く」します。
注意の資源は有限です。「良い体験に注意を向けている間は、嫌な記憶に割く余力が減る」ため、結果として思い出しにくくなります。
4)五感で「今ここ」に戻る(グラウンディング)
  • 目に入るもの5つ→触れる感覚4つ→聞こえる音3つ→匂い2つ→味1つを順に意識。
  • 氷水で手を冷やす/冷たいペットボトルを握るなど、「強めの無害な感覚刺激で注意を現在へ」。
5)思考の「時間割」を作る
心配タイムを1日10〜15分だけ設定(できれば午後早め)。その時間にまとめて考え、終わったらノートを閉じる。 それ以外の時間に浮かんだら「心配は◯時に考える」と先送りして、今やることへ戻ります。
6)夜は“心の充電時間”にする(就寝前の整え方)
  • 就寝前1時間はニュース・SNS・仕事の振り返りを避ける(嫌な記憶が再点火しやすいため)。
  • 代わりにぬるめの入浴・軽いストレッチ・穏やかな音楽・深呼吸など、静かに鎮めるルーティンへ。
  • ベッドに入った後に思考が回り出したら、「明日の心配タイムに回す」とメモして終了。
ポイントのまとめ
  • 一度だけ話す+時間を区切る(発散と強化防止の両立)
  • 反芻に気づいて合図→切り替え(ノートに退避)
  • 良い出来事を予定化し、日記で強化(注意の向き先をデザイン)
  • 五感グラウンディングで「今ここ」に戻る
  • 心配タイムを決め、それ以外は先送り
  • 就寝前は鎮静ルーティンで再活性化を防ぐ
🧩7.自分で出来る認知療法④自動思考とスキーマに気づき、やさしく整える
認知療法で考えをノートに書き出す手元
自動思考は、書き出すことで事実と解釈を分けやすくなります。

自動思考やスキーマは、本人の性格の問題ではなく、強いストレス下で繰り返されやすい心の反応です。気づくことができれば、別の見方や行動を選ぶ余地が生まれます。

認知療法は、うつや不安などの症状に限らず、困難に向き合い乗り越えるための“心のスキル”を育てる実践法です。 私たちは現実をそのまま見ているのではなく、自分ならではの受け取り方(認知)を通して世界を解釈しています。 鍵になるのが自動思考スキーマです。 自動思考は、出来事に触れた瞬間に湧く考え(例:「また評価が下がる」「どうせ嫌われている」)のことです。これを現実に即した柔らかな見方へ整えると、つらさが和らぎます。

背景にはスキーマ(考え方の土台・クセ)があり、たとえば「完璧でなければ価値がない」「誰にも嫌われてはいけない」といった硬いルールが解釈を狭めがちです。

実践は、次の流れで進めます。

ストレスに気づき整理する

自動思考を書き出して言い換える

問題解決・行動の幅・対人スキルを広げる

自分のスキーマを理解して柔軟さを育てる

基本ステップ
1)合図に気づく(トリガー&身体サイン) 心拍が上がる/肩が固い/呼吸が浅い → 自動思考が動き始めた合図です。気づいたら深呼吸3回+姿勢リセットを。
2)書き分ける(事実 vs. 自動思考)
ノートを二列に:左「事実(録音できる客観)」、右「自動思考(頭に浮かんだ言葉)」。 例)事実:課長に「後で打ち合わせ」/自動思考:「また評価が下がる」「どうせ嫌われている」
3)クセを見る(認知の偏り)
全か無か/過度の一般化/読心術/べき思考/破局化など、当てはまるものに○。 → 「これは私のクセ」と気づくだけで、思考と距離が取れます。
4)スキーマを仮説にする(やさしく掘る)
自動思考の共通項からスキーマ仮説を短く書く。 例)「評価が下がる=自分の価値はない」「相手は自分を拒む」 今は仮説でOK。断定せず「もしかして、こう思い込みやすい?」のトーンで。
5)検討する(証拠・例外・別視点)
支持する証拠/反証を1つずつ。例外探しも有効です。 やさしい言い換えの例: 「また評価が下がる」→「フィードバックかもしれない。準備すれば改善できる」 「どうせ嫌われている」→「確証はない。普通に接して確かめてみよう」
6)行動で確かめる(小さな実験)
言い換えに沿って5~10分の行動:議題メモを1項目作る/挨拶+要点確認のひと言 など。 メモ:「思ったほど悪くない」「次回の工夫は…」。 → 行動 → 小さな達成が、新しい見方の“証拠”になります。
7)新しい土台を育てる(スキーマの再学習)
バランス信念カード: 例)「完璧でなくても価値はある」「人には受け入れてくれる側面もある」 証拠ログ:その信念を裏づける出来事を1日1行。 セルフ・コンパッション:失敗時の自己対話を「親しい人に言う言葉」へ言い換える。
さらに学ぶには
こころが晴れるノート』(大野 裕 著) 自動思考の書き出し・言い換え・行動実験がワーク形式で学べます。自分でやる認知療法の練習に最適です。
🌿8.自分で出来る認知療法⑤受け入れる・求めない・赦す
窓辺で静かに考えを受け止める人
受け入れることは、我慢することではなく現状を正確に見ることです。

受け入れる・求めない・赦すという考え方は、自分を責め続ける状態から離れる助けになります。これは「仕方ない」と我慢することでも、相手の言動を正当化することでもありません。事実、感情、解釈を分け、必要以上に自分を罰する反応から少し距離を置くための考え方です。相手や過去を変えることに力を使い続けるより、今の自分が取れる行動に注意を戻します。

困りごとに直面したとき、私たちは「変えられること」と「今は変えられないこと」を混同しがちです。上司の性格、過去の出来事、相手の反応、すでに起きた失敗を頭の中で何度も再生していると、睡眠や食欲が乱れ、今できる小さな行動に使う力まで失われてしまいます。

大切なのは、つらさを無かったことにすることではなく、現実をできるだけ正確に見て、心身の消耗を増やす考え方から離れることです。「受け入れる」は現状把握、「求めない」は期待の調整、「赦す」は過去に縛られ続けないための整理として使います。どれも相手を許す義務ではなく、自分の回復を守るための選択肢です。

次の三つの姿勢で、現実を柔らかく受け止めながら、自分にできる行動へ資源を配分していきましょう。たとえば、休む、相談する、記録する、距離を取る、次に同じ状況が起きたときの合図を決める、といった小さな行動に戻すことが回復の土台になります。

現実を柔らかく扱う3つの姿勢
1)受け入れること 受け入れる」はあきらめではありません。事実を事実として認め、抵抗に費やしていたエネルギーを“いま・ここでできる一歩”に振り向けます。体調の揺らぎという事実を認めたうえで、睡眠と予定の調整、相談先の確保など、“今できること”へ切り替えます。
2)求めないこと 他者や結果への強い期待は、思い通りにならなかったときの失望や怒りを増幅させます。期待の手綱を少し緩め、コントロール可能な自分の行動基準へ焦点を戻します。「要点を簡潔に伝える」「期限を先に共有する」など、行動を具体化します。
3)赦すこと 赦す」は、相手の行為を肯定したり責任を免除したりすることではありません。過去に縛られて現在の自分が消耗し続ける状態から距離を取り、苦しみとの関係を見直す“機能的な手放し”です。出来事と影響を書き、戻せない部分と学びに変えられる部分を分け、再発予防の一行を決めます。
実践メモ

受け入れる練習として、次の三行メモを続けましょう。

起きている事実を一文で書く

それに対する感情を一語で添える

今日できる最小の行動を一つ決める

求めない練習では、期待をゼロにするのではなく、“求めを小さく・行動を具体的に”することがコツです。相手が必ず理解すべき、ではなく、自分は要点を短く伝える、期限を先に共有する、確認の機会を作る、というプロセス指標で自己評価します。

赦す練習では、次の順で進めます。

出来事と影響を書き出す

戻せない部分/学びに変えられる部分を仕分ける

学びに基づく再発予防(合図・対策・助けを求める先)を一行で決める

自分を赦す場合は、同じ状況の友人に掛ける言葉を自分へ向け直す一文(セルフ・コンパッション)を添えます。

✂️9.自分で出来る認知療法⑥課題の分離
相談内容を整理するクリップボードとペン
課題を分けると、自分が背負いすぎていた責任が見えやすくなります。

課題の分離では、自分が決められること、相手が決めること、会社が判断することを分けて考えます。これはアドラー心理学で知られる考え方の一つで、対人関係の中で「どこまでが自分の責任で、どこから先は相手や組織の判断なのか」を整理するために使われます。休職や復職の場面では、医学的判断と会社の制度判断を混同しないことも大切です。自分が背負う範囲を整理すると、過剰な責任感から少し距離を取りやすくなります。

休職中は、「上司にどう思われるか」「同僚に迷惑をかけていないか」「復職を認めてもらえるか」など、自分だけでは決められないことまで抱え込みやすくなります。一方で、自分が取り組めるのは、通院を続けること、症状を主治医へ正確に伝えること、会社への連絡期限を守ること、復職前に生活リズムや作業耐性を整えることです。

課題の分離は、相手を突き放すための考え方ではありません。必要な情報提供や相談は行いながらも、相手の感情・会社の判断・過去の出来事まで自分一人でコントロールしようとしないための整理法です。アドラー心理学では、他者の課題に過度に踏み込むこと、あるいは他者の課題まで背負い込むことが、対人関係の苦しさを増やすと考えます。境界を引くことは冷たくすることではなく、自分も相手もそれぞれの責任を持てるようにするための土台です。

休職中は、会社に迷惑をかけたくない気持ちや、復職を急ぎたい気持ちから、本来自分だけでは決められないことまで抱え込みやすくなります。しかし、体調を正確に伝えることは自分の課題、医学的に休職や復職の可否を評価することは医師の課題、就業規則に基づいて休職・復職を判断することは会社の課題です。これらを分けることで、必要な協力は求めながらも、最終判断まで一人で背負わずに済みます。

「最終的な結果の影響を主に受けるのは誰か(その課題の最終責任は誰にあるのか)」で境界を引く技法です。
  • 相手の感情・評価・選択    →  “相手の課題”(私がコントロールできない)
  • 自分の言い方・準備・期限管理 →  “自分の課題”(私がコントロールできる)
休職・復職で分けて考える3つの課題
自分の課題 通院を続ける、睡眠・活動量・症状を記録する、会社への連絡期限を守る、困っている業務や必要な配慮を具体的に伝えることです。自分が実行できる行動に集中します。
医療の課題 診断、治療方針、休職診断書の記載、復職可能性についての医学的意見は主治医が担います。本人は症状や生活状況を正確に伝え、判断材料を共有します。
会社の課題 就業規則に基づく休職・復職判断、配属、業務量、勤務時間、産業医面談の運用は会社が判断します。希望は伝えますが、最終判断を自分一人で背負う必要はありません。
“相手の課題”に介入することなく、“自分の課題”の解決・前進に注力しましょう。混同に気づいたら、
  • 課題を書き分ける
  • 自分の課題だけに計画を立てる
  • 相手の課題は尊重し、干渉しすぎない(情報提供・選択肢提示まで)
――の順で整理します。 これにより、過剰な罪責感やコントロール欲求がしずみ、対人ストレスが下がりやすくなります。 なお、他者からの評価が気になって何も行動できなくなることがありますが、他者が自分をどう思うかは“相手の課題”であり、あなたがコントロールできる領域ではありません。
〈例:休職・復職の場面〉

自分の課題は、体調を主治医に伝える、診断書や会社指定書類を確認する、生活リズムを整える、復職時に必要な配慮を具体的に言語化することです。

会社の課題は、就業規則に基づく休職・復職の判断、配属や業務量の決定、人員配置、産業医面談の運用です。希望を伝えることはできますが、最終判断まで自分が背負う必要はありません。

相手の課題は、上司や同僚がどう受け止めるか、どう評価するかです。そこまで完全にコントロールしようとすると不安が強まりやすいため、自分は「必要な情報を誠実に伝える」ことに集中します。


〈例:勉強しない子どもを叱る親〉
  • 悪い例
    「なんで勉強しないの! 将来どうするの! 私まで恥ずかしいでしょ!」
    → 子どもの課題(学ぶ/学ばない)に感情で介入し、親の不安まで子に背負わせている。
  • 良い例
    「勉強するかどうかはあなたの課題。私は学べる環境を整える。19:00〜21:00は静かな時間を作るし、質問があれば手伝うよ。今日はその時間に何をやる? 決めるのはあなた。」
    → 親:環境づくり・声かけ・ルール提示(自分の課題)/ 子:取り組み方と結果を引き受ける(子の課題)
🌀10.自分で出来る認知療法⑦不安と戦っても勝ち目はない
肩や首の緊張に気づく人
不安は消そうと戦うほど強まることがあり、扱い方を変えることが重要です。

不安が強い時は、安心材料を探し続けても落ち着かないことがあります。身体感覚、呼吸、今できる行動に注意を戻し、不安を完全に消すより巻き込まれない練習をします。

「〜になったらどうしよう」「職場に復帰できるのか不安だ」など、まだ起きていない未来と戦うことは勝ち目のない消耗戦です。そこでエネルギーを失うのはやめ、扱い方を変えていきましょう。
① 時間を区切る
朝や昼に10〜15分の「心配タイム」を設定し、それ以外に浮かんだ不安は「◯時に考える」とメモして手を離します。 ポイント:同じ不安を一日に何度も検討しない/時間になったら必ず“開始・終了”を守る(タイマー推奨)。
② 事実収集 → 決定 → 実行
心配を一文で定義し、必要な事実だけ集め、選択肢を最大3つに絞って、今日の一手を決めて動きます。 例:「復職が不安」→ 事実:主治医の所見・職場の制度・通勤所要時間 → 選択肢:主治医に質問3点/産業医面談予約/通勤トライ(時間帯ずらし)→ 今日やる1つを実行。
③ 最悪ケースの棚卸し
最悪の想定を書き、その影響を受け入れた場合の被害軽減策(プランB/C)を一行ずつ挙げ、一本だけ今すぐ着手します。 効果:脳は「何もできない不確実」より「準備済みの不確実」の方が不安を下げやすい。
④ “今日の区画”に注意を戻す
昨日の後悔・明日の不安への“常時アクセス”をやめ、今日の用事・人・体調へ意識を置きます。 実行例:通知のバッチをオフ/ニュース閲覧は1日2回・各5分に固定/「今この瞬間に役立つ行動か?」を自問して戻る。
⑤ 手を動かす
身体を使う家事・3〜10分の短い運動・誰かを助ける小さな行為で、注意を現在に固定します。 コツ:開始のハードルを下げる(例:スクワット5回・食器3枚・玄関1分掃除)。動き始めが不安の反芻ループを切ります。
また、休職中に人生に関わるような大きな決断は避けたほうが望ましいので、何かありましたら周りの人や主治医にご相談ください。
🙏11.自分で出来る認知療法⑧感謝を伝える
花束とカードで感謝を伝える手元
感謝を言葉や小さな行動で伝えると、支えられている面にも注意を向けやすくなります。

感謝は、つらい出来事を無理に肯定することではありません。いま自分を支えている小さな出来事、人の配慮、体が動いた瞬間に注意を向けることで、不安や自責だけに偏った視野を少し広げる練習です。

感謝を言葉にすると、相手は「自分の行動が役に立った」と感じやすくなります。その安心感や温かい反応は、表情、声の調子、態度として自分にも返ってきます。人には相手の表情や態度を映すミラー効果があるため、感謝を向けることは周囲を少し幸せにし、その空気が自分にも戻ってきやすくなります。

もちろん、休職中に「すべてに感謝しなければ」と自分を追い込む必要はありません。大切なのは、苦しさを否定せずに、同時にありがたかったこと、助かったこと、守られていることを一つだけ見つける姿勢です。感謝はポジティブ思考の強制ではなく、注意の向き先を少し整える認知療法的な練習です。

① 1日3つ、感謝を短く書く
大きな出来事でなくて構いません。「朝に光を浴びられた」「薬を飲めた」「家族が声をかけてくれた」など、具体的に一行で書きます。抽象的に「全部ありがたい」とまとめるより、具体的な場面にすると心に残りやすくなります。
② 伝えられる感謝は、短く伝える
「助かりました」「ありがとう」「気にかけてもらえて安心しました」など、短い言葉で十分です。感謝を伝えることは、相手との関係を温かくし、孤立感を和らげるきっかけになります。
③ 自分にも感謝する
休職中は「できなかったこと」に目が向きやすくなります。受診した、寝床から起きた、食事を取った、連絡を一つ返したなど、回復のために動いた自分にも「よくやった」と言葉を向けます。
④ 感謝を再発予防につなげる
誰に支えられたか、どんな環境で安心できたかを記録しておくと、復職後に疲れた時の相談先や休み方を思い出しやすくなります。感謝の記録は、支援資源のリストにもなります。

感謝の練習を続けると、「足りないもの」だけでなく「すでにある支え」にも気づきやすくなります。周囲に温かさを向けることは、結果的に自分の安心感や幸福感を育てる行動にもなります。

睡眠とメンタルヘルス
睡眠日誌と寝室環境を整えるベッドサイド
睡眠の乱れは気分や判断力に影響するため、療養中の重要な治療目標です。

 ―― よく眠ることは、大事な「治療」です ――

1)睡眠が心身の健康に与える影響
質の高い睡眠は、気分の安定・ストレスの軽減・集中力や判断力の維持に直結します。眠っているあいだに脳は情報を整理し、身体は疲労を回復させます。十分に眠れている人ほど日中のパフォーマンスが高まり、感情のコントロールもしやすくなります。

一方、慢性的な睡眠不足イライラや不安、抑うつ傾向を招き、人間関係や仕事・学業の質も低下させます。成人の推奨睡眠時間は7〜9時間であり、6時間では基本的に睡眠不足です。この状態が続くと記憶力・判断力・注意力が著しく落ち、日常業務に大きな支障を来します。
2)不眠とこころの病気
不眠はうつ病などのメンタル不調と深く関係しています。 うつ病では「寝つけない」「途中で目が覚める」「早朝に目が覚める」といった睡眠障害がよく見られます。さらに、慢性的な不眠が続くと日中の疲労感や集中力低下を通じて、うつ病などの発症リスクが数倍〜数十倍に高まることが報告されています。
3)睡眠負債と社会的時差ぼけ
  • 睡眠負債 必要な睡眠時間を下回る状態が蓄積すると「睡眠負債になります。たとえば、必要睡眠7時間の人が毎日6時間しか眠らないと、1日1時間ずつ負債が増えていきます。 週末の“長時間睡眠”は一時的な返済にはなりますが、睡眠を前倒しで「貯金」することはできません溜まった負債を解消するには数日かかります。
  • 社会的時差ぼけ―ソーシャルジェットラグ― 平日は早起き、休日は夜更かしと寝坊――このリズムのズレが体内時計を狂わせ、月曜朝の倦怠感や集中困難を招きます。 止む無く休日に睡眠を少し増やす場合は、睡眠中央時刻(就寝と起床の中間)が平日と大きくズレないよう、「就寝を早める時間」と「起床を遅らせる時間」を同じだけ長くしましょう。これにより社会的時差ぼけを最小限に抑えられます。
4)自分に合った睡眠時間を知る
8時間でも9時間でも眠れてしまうなら、それだけの睡眠が必要というサインです。 人は必要以上には眠れないことが分かっています。理想は、仕事の有無にかかわらず、毎日ほぼ同じ時刻に寝て同じ時刻に起きること。規則正しいリズム体内時計を整え、質の高い睡眠につながります。 そのため、睡眠をとる事で脳を深く眠らせて、精神的な疲労も回復させる事が重要です。以下に重要なポイントを挙げました。
快適な眠りをつくる習慣

休職中は、眠れないことを根性で解決しようとするより、体内時計に毎日同じ合図を送ることが大切です。まずは「起床時刻」「朝の光」「夕方以降の刺激」を整え、寝床を眠る場所として保つことを目標にします。

  • 毎日同じ時刻に起床する
  • 朝は起床後1時間以内に日光を浴びる
  • 午前中に短い散歩や家事を入れる
  • 夕方以降はカフェインを控える
  • 夜は予定を詰めすぎず、刺激を下げる
  • 入眠前のスマホ・PC・仕事連絡を避ける
  • 夕食は就寝直前を避ける
  • 入浴は就寝の1〜2時間前を目安にする
  • 寝酒を睡眠対策に使わない
  • 眠くなってから布団に入る
  • 20分ほど眠れなければ一度寝床を離れる
  • 休日も起床時刻を大きく崩さない
睡眠環境を整える

眠れない時期ほど、寝室を「考えごとをする場所」ではなく「眠るための場所」として整えることが大切です。光、温度、湿度、音、寝具、香りを調整し、寝床で仕事やスマホをしない環境を作ります。

  • 遮光カーテンで外の光を遮る
  • 就寝2時間前から部屋を暗めにする
  • 就寝時はできるだけ真っ暗にする
  • テレビや動画をつけたまま眠らない
  • 通知音を切り、スマホは寝床から離す
  • 雑音が気になる時は耳栓や環境音を検討する
  • 室温は夏26〜28度、冬18〜20度を目安にする
  • 湿度は50〜60%を目安に整える
  • 寝具や寝巻きを季節と体質に合わせて見直す
  • ソファで寝落ちせず、眠る時は寝室へ移動する
  • 強い香りは避け、アロマは少量から試す
  • 夜中に起きても時計を何度も確認しない
治療について②(復職に向けて)
📝 生活記録表(生活リズム表)の活用方法
朝食とノートで生活記録をつける場面
生活記録は、回復の波を主治医と共有するための材料になります。

記録は細かく書きすぎると続きません。睡眠、活動、気分、仕事への接触を短く残すだけでも、回復段階や復職準備の判断に役立ちます。

生活記録表は、一日の行動や体調を簡潔に書き留めるセルフモニタリングツールです。復職可否の判断材料になるだけでなく、ご自身の生活リズムを客観的に見直すきっかけになります。
生活記録表で見る3つの視点
睡眠と食事 起床時間、就寝時間、眠れた感覚、食事の時間を記録します。生活リズムの安定度を確認し、昼夜逆転や食事抜けに早めに気づく材料になります。
活動と外出 外出した場所、時間、家事、散歩、リワーク通勤訓練お試し出勤の状況を残します。
疲労と気分 起床時の疲れ、日中の集中力、不安、涙もろさ、翌日の反動を簡単にスコア化します。復職準備を進める強さを調整しやすくなります。
等を記録します。また、ご自身の生活を見直すきっかけになり、復職へのモチベーションを挙げる事に繋がります。必要と判断したらご案内させて頂きます。会社の産業医に求められる場合もあります。
🏢 リワークについて
復職準備に向けて整えた自宅の作業スペース
リワークは、生活リズムと作業耐性を段階的に戻す選択肢です。

リワーク(Return to Work)は、うつ病不安障害などで休職中の方が、職場復帰に向けて行うリハビリテーションです。通勤に近いリズム、集中作業、対人場面、ストレス対処を練習し、症状が軽くなったかだけでなく、週に何日通えるか、何時間集中できるか、作業後に翌日の反動が出ないかを確認します。

単に「休んで症状が落ち着いたか」を見るだけでは、復職後の実際の負荷に耐えられるかは分かりません。リワークでは、決まった時刻に起きる、外へ出る、一定時間作業する、人と関わる、疲労を翌日に持ち越さないという実践的な回復度を、段階的に確認します。

リワークを検討する際、実際に中心となりやすいのは、医療機関で行う医療リワークと、障害福祉サービスや民間施設を利用する福祉リワークです。どちらも、生活リズム、作業耐性、対人場面、ストレス対処、再発予防を段階的に確認する点は共通しています。一般的なプログラム期間は、医療リワーク・福祉リワークともに3〜6か月程度が一つの目安です。施設によっては、週1〜2回の面談やカウンセリング、グループワーク、軽作業、パソコン作業、運動、心理教育を組み合わせ、半日参加から週3〜5日・1日参加へ段階的に広げます。

医療リワークは、精神科・心療内科などの医療機関で行われる復職支援です。医師、看護師、作業療法士、公認心理師・臨床心理士、精神保健福祉士などが関わり、症状の評価、服薬調整、睡眠・生活リズム、認知行動療法、集団プログラム、復職可否の医学的判断をまとめて整理しやすい点が特徴です。抑うつ、不安、不眠、集中力低下などの症状の波が残っている場合や、診断書・復職判定・産業医面談と連動させながら進めたい場合は、医療リワークが適していることがあります。

福祉リワークは、就労移行支援、自立訓練、民間の復職支援プログラムなどを活用して、復職に必要な生活リズム、作業習慣、対人コミュニケーション、相談の仕方を整える方法です。医療リワークよりも、日中活動の場を確保しやすい、作業訓練や面談を継続しやすい、福祉的な相談支援を受けやすい、という利点があります。一方で、診断書の発行、薬の処方、休職延長や復職可否の医学的判断は医療機関で行うため、福祉リワークを利用する場合も、外来診療と並行して進めることが大切です。

どちらを選ぶかは、症状の安定度、通える距離、費用、利用条件、会社や産業医との連携のしやすさで変わります。体調の波が大きい、服薬調整中である、復職可否の医学的判断を丁寧に確認したい場合は医療リワークを優先しやすく、生活リズムや作業習慣を整える場が必要、日中の居場所や相談先を増やしたい、継続的な訓練を受けたい場合は福祉リワークが合うことがあります。いずれの場合も、参加状況、疲労の出方、睡眠、欠席の理由、グループ場面での反応を主治医と共有し、復職条件の調整に活かします。

実務上、リワークの利用先としては福祉リワークが80%以上医療リワークが10%程度という印象です。他にも企業リワークや公共の職業リワークもありますが、数が少ないため、こちらでは詳しい説明は割愛します。実務上は、通いやすさ、費用、利用条件、主治医との連携、会社との調整のしやすさを比べて選びます。

中心となるリワークの選び方
医療リワーク 医師や医療スタッフが関わるため、症状の評価、服薬調整、診断書、復職可否の医学的判断と連動しやすい方法です。うつ病、不安障害、適応障害などで症状の波を見ながら復職準備を進めたい場合に向いています。
福祉リワーク 就労移行支援など福祉サービスや民間施設を活用する形です。生活リズム、作業訓練、相談支援、就労準備を進めやすく、通える範囲に施設がある場合は現実的な選択肢になります。医療面は主治医と並行して確認します。
選ぶときの確認 週何回通えるか、費用負担はどの程度か、主治医と情報共有できるか、会社や産業医へ参加状況を説明しやすいかを確認します。継続して通える現実性も大切です。
リワークで確認する実用的な目安
3〜6か月程度 医療リワーク・福祉リワークで案内される一般的な実施期間の目安です。短期で復職を急ぐより、生活リズム、作業耐性、再発予防まで確認します。
週3〜5日 施設によっては半日参加から始め、体調を見ながら週3〜5日、1日参加へ広げます。翌日の反動が出ないかも重要な判断材料です。
主治医と並行 医療リワークでも福祉リワークでも、診断書、服薬、復職可否の判断は主治医と並行して確認します。施設だけで復職判断を完結させないことが大切です。

リワークの目的は、復職日を早めることだけではありません。むしろ、復職後に同じ負荷へ戻りすぎないように、勤務時間、業務量、残業制限、対人負荷、通勤負荷を具体的に確認することが大切です。参加中に疲労が強く出る、午後まで集中が続かない、グループ場面で不安が高まる、帰宅後に寝込むといった反応があれば、復職条件を調整する材料になります。

当院ではリワークプログラム自体は実施しておりません。必要と判断した際は信頼できる外部施設をご紹介し、当院での外来診療と並行してご参加いただく形となります。紹介状の作成や産業医・人事担当者との調整もお手伝いしますので、ご希望やご不明点があればお気軽にご相談ください。

🚃 通勤訓練について
通勤訓練で駅や職場方面へ向かう人
通勤訓練は、復職前に体力と不安反応を確かめる実践です。

通勤訓練では、実際の出勤時間帯、交通手段、人混み、乗り換え、会社周辺での体調反応を確認します。最初から会社まで行けなくても、駅まで、途中駅まで、会社の最寄り駅まで、と段階を刻めば十分です。

通勤訓練は、休職中の方が職場復帰に向けて、「通勤そのもの」をリハビリとして練習する方法です。自宅を通常の出勤時刻に出発し、これまで利用していた電車・バス・徒歩ルートを使って、職場方面へ段階的に向かいます。仕事をする前に、まずは通勤負荷に心身が耐えられるかを確認します。

通勤は、単なる移動ではありません。決まった時刻に起きる、身支度をする、混雑した交通機関に乗る、乗り換える、会社の近くへ行く、帰宅後も大きく崩れない、という複数の負荷が重なります。休職中は自宅では落ち着いていても、駅や会社周辺に近づくと動悸、息苦しさ、吐き気、涙、不安、頭痛、強い疲労が出ることがあります。通勤訓練では、その反応を責めるのではなく、どの地点・どの時間帯・どの混雑度で負荷が強くなるかを観察します。

通勤訓練の進め方の目安
1.自宅周辺から始める まずは出勤時刻に起き、身支度をして外へ出ます。最寄り駅まで歩く、駅前で10〜20分過ごすなど、失敗しにくい距離から始めます。
2.途中駅まで広げる 体調が安定してきたら、実際の通勤ルートで途中駅まで移動します。混雑、乗り換え、立っている時間、車内での不安反応を確認します。
3.会社の近くまで行く 最終段階では会社の最寄り駅や建物の近くまで行きます。会社に入るかどうかは、会社や主治医と相談して決めます。

目安としては、復職が近づいてきた時期に週2〜3回から始め、体調が崩れなければ回数や距離を増やします。最初から毎日フルルートを試す必要はありません。大切なのは、当日だけでなく帰宅後の疲労、夕方以降の気分、翌朝の起床状態まで確認することです。翌日に寝込む、頭痛が強くなる、眠れなくなる、不安が再燃する場合は、負荷を一段階下げます。

記録しておくとよい項目

出発時刻、睡眠時間、移動距離、電車やバスの混雑度、動悸や息苦しさの有無、不安の強さ、途中で休んだ場所、帰宅後の疲労、翌日の反動をメモしておくと、主治医・産業医・会社へ状況を説明しやすくなります。

通勤訓練は、お試し出勤とは別のものです。通勤訓練はあくまで移動と生活リズムの確認であり、会社に入る、上司や同僚に会う、業務メールを見る、資料を確認する、といった行為は負荷が急に上がります。会社の敷地に入る場合や職場で過ごす場合は、事前に会社側と扱いを確認し、主治医や産業医とも相談して進めましょう。

通勤訓練は、体力・生活リズム・心理的準備の三方向から復職を支える実践的なリハビリです。出社ルートを実際にたどりながら少しずつ負荷を高め、記録と振り返りを繰り返すことで、復職当日の不安を軽減し、必要な配慮を具体化できます。自身の体調に合わせて無理なく継続し、スムーズな職場復帰を目指しましょう。

👟 お試し出勤について
出勤準備の服とバッグ
お試し出勤は、会社の制度や賃金扱いを確認してから進めます。

お試し出勤は、復職前に職場環境へ慣れる機会になる一方、会社ごとに扱いが異なります。勤務扱い、賃金、交通費、労災、通勤中の安全、業務を行うかどうかを事前に確認しておきましょう。

お試し出勤は、休職中の従業員が正式復職前に、職場へ短時間通いながら環境に慣れていく方法です。通勤訓練より一段階進み、会社の建物に入る、職場の雰囲気を感じる、上司や人事担当者と短く話す、軽い作業を試すなど、実際の職場に近い負荷を確認します。

ただし、お試し出勤は法律で一律に内容が決まっている制度ではありません。会社によって「リハビリ出勤」「試し出勤」「慣らし出勤」「復職前面談」といった名称や扱いが異なります。正式な勤務として扱うのか、休職中のリハビリとして扱うのか、業務命令に当たるのかによって、賃金、交通費、労災、傷病手当金への影響が変わることがあります。

お試し出勤で確認すること
目的とメリット 職場に近づいた時の不安、疲労、集中力、対人緊張を確認します。本人・主治医・会社が復職時期や必要な配慮を考える材料になります。
実施のポイント 期間、頻度、滞在時間、服装、入退館方法、誰に会うか、どこまで作業するかを会社と事前に取り決めます。初回は1〜2時間や半日など、反動が少ない範囲から始めます。
賃金・安全面 休職中のリハビリ扱いか、勤務扱いかで賃金や交通費の扱いが変わります。業務指示や実作業を伴う場合は、会社側の労務管理として整理が必要です。
始める前に確認したいこと

お試し出勤を始める前に、実施期間、回数、1回あたりの滞在時間、担当窓口、緊急時の連絡先、交通費、賃金、傷病手当金との関係、通勤中や社内で体調不良になった場合の対応を確認しておくと安心です。可能であれば、口頭だけでなくメールや書面で残しておきましょう。

進め方としては、まず会社の入口や人事窓口まで行く、次に休憩スペースや会議室で短時間過ごす、その後に軽い資料確認や面談を行う、というように段階を分けます。最初から自席に長時間座る、未読メールを一気に読む、休職前と同じ会議に参加する、期限のある業務を任される、といった進め方は負荷が高くなりやすいため注意が必要です。

お試し出勤中は、当日の疲労だけでなく、帰宅後の気分、夜の睡眠、翌朝の起床、頭痛や胃腸症状、動悸、不安のぶり返しを確認します。数時間の滞在では問題がなくても、翌日に強い疲労が出る場合は、まだ復職負荷が高い可能性があります。反対に、数回続けても大きな反動がなく、生活リズムや通勤が安定している場合は、復職時期や復職条件を検討しやすくなります。

お試し出勤復職直前の最終リハーサルです。会社・産業医主治医と連携し、無理のない計画で実施することで、復帰当日の不安を減らし、必要な配慮を具体化できます。

🌱 復職について
復職について医師と相談する場面
復職はゴールではなく、負荷を段階的に戻す再スタートです。

復職時は、症状が完全にゼロでなくても、生活リズム、通勤、作業、対人対応が一定程度戻っているかを確認します。復職後の面談や業務量調整も治療の一部です。

主治医が「就労に支障なし」と判断した場合、復職に必要な診断書(復職診断書)を発行します。 この書類は 患者さんの症状や職場環境に応じて個別に作成され、復職後の働き方や必要な配慮を具体的に示す重要なものです。
診断書に盛り込む主な配慮事項
  • ①配置転換・異動の必要性
  • ②残業制限・残業禁止
  • 業務量・業務内容の調整
  • ④テレワーク活用の可否
  • ⑤勤務日数の削減(短時間勤務など)
  • 定期通院の継続
※医学的根拠が乏しい内容は記載できませんのでご了承ください。
復職までの流れ
  • ①診断書の提出 人事部または産業医へ提出。会社によっては直属の上司が窓口となる場合もあります。
  • 復職可否の判定 通常は産業医が面談や書類審査を行い最終判断を下しますが、社内規定によっては上司が最終判断を行うケースもあります。
  • 復職開始 診断書に記載された内容、および産業医・上司との面談で合意した条件のもと、段階的に勤務を再開します。
  • 復職後のフォロー 定期的な通院と経過観察 を続け、体調の変化を早期に把握します。
労働環境が著しく不適切で健康を損なう恐れがある場合は、転職や退職など環境の見直しも検討しましょう。
復職後について - 心構え –
復職後の業務量を無理なく整理するデスク
復職後は、頑張り過ぎず業務量と相談先をあらかじめ決めておくことが大切です。

復職はゴールではなく、治療を続けながら働き方を整える再スタートです。症状が落ち着いていても、体力・集中力・対人応答・ストレス耐性は休職前と同じとは限りません。特に復職直後の1〜3か月は、頑張り過ぎによる再燃が起こりやすい時期として、慎重に負荷を戻すことが大切です。

復職後は、周囲から「もう大丈夫」と見られる一方で、本人の中では不安や疲労が残っていることがあります。反対に、過度に配慮されすぎると、仕事を任されないつらさや孤立感につながることもあります。大切なのは、完全に元通りを目指すことではなく今の回復段階に合った業務量を、上司・人事・産業医・主治医と確認しながら調整することです。

復職後に意識したい3つの心構え
1.最初から取り返そうとしない 休職中の遅れを一気に取り戻そうとすると、残業、過集中、休日の仕事につながりやすくなります。まずは勤務時間内で終えられる量に抑えます。
2.疲労を翌日に残さない その日の業務ができたかだけでなく、帰宅後の疲労、睡眠、翌朝の起床を確認します。翌日に反動が出る場合は負荷が高すぎるサインです。
3.早めに相談する つらくなってからではなく、疲労や不安が増え始めた段階で相談します。相談先を上司、人事、産業医、主治医の中で決めておくと安心です。
復職後の負荷調整で確認したいこと

勤務時間、残業の可否、会議の回数、電話対応、締切の重い業務、対人負荷の高い業務、出張、夜間や休日の連絡、在宅勤務の可否を確認します。復職診断書に配慮事項が書かれていても、実際の業務に落とし込むには会社側とのすり合わせが必要です。

復職直後は、業務量を軽くしても緊張だけで疲れることがあります。職場の音、人の視線、メールの量、会議のテンポ、通勤の混雑など、休職中には少なかった刺激が一気に戻るためです。最初のうちは、毎日100点を目指すより、決まった時刻に出勤し、定時で帰り、睡眠を崩さないことを優先してください。

早めに相談したいサイン

眠れない日が増える、朝に動けない、涙が出る、動悸や吐き気が出る、メールを開けない、判断に時間がかかる、休日も仕事のことが頭から離れない、飲酒量が増える、服薬を自己判断でやめたくなる場合は、早めに主治医へ相談してください。欠勤や遅刻が増えてからでは調整が難しくなるため、小さな変化の段階で共有することが大切です。

復職後は、業務量の増加とともにストレスも蓄積しやすくなります。「頑張り過ぎない」「抱え込まない」「早めに相談する」を合言葉に、周囲と連携しながら無理のないペースで仕事に慣れていきましょう。

再発予防について
再発予防の生活計画をノートに整理する手元
再発予防は、服薬・睡眠・活動量・相談先を日常の中で整えることから始まります。

うつ病は「いったん症状が消えれば完治」という病気ではなく、再び抑うつ状態に戻りやすい特徴があります。特に自己判断で薬を中断した直後に再燃する例が少なくありません。抗うつ薬には「発症した症状を改善する」働きだけでなく、再発を防ぐ」重要な役割があります。

調査では、初発のうつ病でも5割以上が再発するとされ、再発を繰り返すほど慢性化しやすくなります。2回目の再発率は約7割、3回目では約9割に達するという報告もあります。数字はあくまで集団で見た目安ですが、「よくなった後も予防を続ける」ことの重要性を示しています。

再発予防の3つの柱
1.服薬と通院を続ける 症状が軽くなっても、脳と生活リズムが安定するまでには時間がかかります。減薬や中止は必ず主治医と相談し、段階的に進めます。
2.睡眠と活動量を整える 睡眠不足、昼夜逆転、休日の寝だめ、過度な運動不足は再燃のきっかけになります。起床時刻、食事、散歩、入浴を安定させます。
3.職場負荷を早めに調整する 残業、締切、対人負荷、夜間連絡、休日対応が増える時期は注意が必要です。早めに上司・人事・産業医へ相談します。

日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、症状が消失した後も一定期間の服薬継続が重要とされています。服薬期間は一律ではありませんが、再発予防の観点から次のような目安で考えることがあります。

初発の方
症状が無くなってから9ヶ月程度、服薬継続が必要になることがあります。

再発の方
再発予防のため、3年程度の服薬継続が必要になることがあります。

実際の期間は、症状の重さ、再発歴、副作用、生活環境、職場負荷によって変わります。自己判断で中止すると再燃や離脱症状につながることがあるため、減薬や中止は主治医と相談しながら段階的に進めます。

再発の早期サイン

眠れない、早朝に目が覚める、朝に動けない、食欲が落ちる、涙が出る、動悸や胃腸症状が増える、メールや電話が怖い、判断に時間がかかる、集中力が落ちる、休日も疲れが抜けない、飲酒量が増える、薬を飲み忘れる、受診を先延ばしにしたくなる場合は注意が必要です。

再発予防では、「まだ大丈夫」と我慢し続けるより、小さな変化の段階で相談することが重要です。復職後に残業が増えた、上司が変わった、部署異動があった、家庭内の負担が増えた、睡眠時間が短くなったなど、環境が変わったタイミングでは症状が再燃しやすくなります。受診時には、睡眠時間、勤務時間、残業、休日の過ごし方、気分の変化をメモして持参すると、治療方針を調整しやすくなります。

再発予防のために決めておくこと

「眠れない日が3日続いたら受診を早める」「残業が続いたら上司へ相談する」「休日に寝込む状態が2週続いたら業務量を見直す」など、相談する基準をあらかじめ決めておくと、悪化してから慌てずに対応できます。家族や職場の相談先にも、本人が崩れやすいサインを共有しておくと安心です。

減薬や服薬中止を希望する場合は、必ず主治医に相談してください。つづけるべき薬と、段階的に減らせる薬では方針が異なります。また、副作用が日常生活に支障を及ぼす場合も、薬の変更で改善できる可能性があります。服薬の継続とあわせて、十分な睡眠、食事、適度な運動、職場との情報共有を続け、一人で抱え込まない環境を整えましょう

よくある質問
❓ Q. 休職中の受診の頻度は?

休職中は、症状が落ち着いているように見えても変動しやすい時期です。診断書や傷病手当金申請書の記載にも受診状況が関係するため、間隔を空けすぎないことが大切です。

休職中は月2回以上(概ね2週間に1回程度)の受診をお願いしております。これは病状把握とともに、傷病手当金申請書などの証明に必要なためです。受診回数が少ない場合、傷病手当金の支給の決定に関しては各保険組合の判断になりますので、ご了承ください。(受診回数が少なく不支給になるケースが多々あります)

傷病手当金申請書には当月の診察日を記載する欄があるため、該当期間に受診が無い場合は、書類の記載自体が出来ません

🗓️ Q. 復職間近はどのように過ごせばよいですか?

復職が近づいたら、朝の起床、通勤時間帯の外出、短時間の作業を少しずつ試します。焦って予定を詰めるより、翌日に大きな反動が出ない範囲を探します。

起床と就寝の時刻を勤務していた頃と同じリズムで維持し、朝は実際に出勤するときと同じ時間帯に身支度を整えるようにしましょう。電車通勤の場合は、ラッシュ時間帯の列車に乗って会社近くまで足を運ぶ通勤訓練を行うと、体力や集中力の回復度合いを確認できます。自宅では午前・午後にそれぞれ1〜2時間ほど読書や資格勉強など軽い知的作業を取り入れ、作業耐性を少しずつ伸ばしていくと良いでしょう。さらに、早歩きやストレッチなどの軽い運動を毎日続けることで身体面のコンディションを整え、気分・睡眠・疲労度を日誌やアプリに記録して変調があれば早めに主治医へ相談してください。こうした準備を重ねることで、復職後に急激な負荷がかかった際の再発リスクを抑えやすくなります。
💪 Q. 何とか頑張って休まず仕事を続けたいです!

休まず続けたい気持ちは自然ですが、睡眠や判断力が落ちている状態で無理を続けると回復に時間がかかることがあります。続ける場合も、勤務時間や業務量の調整を検討します。

受診したからといって必ずしも休職になるわけではありませんが、抑うつ状態が深刻化すると判断力が低下し、自分の疲労やストレスを正確に評価できなくなることがあります。その結果、症状が急激に悪化して長期の休職を余儀なくされる例も少なくありません。短期的には仕事を優先したくても、適切なタイミングで休養を取るほうが結果として回復を早め、仕事への影響も最小限に抑えられます。投薬によって就労を継続したり、会社と相談して勤務時間や業務量の調整を願い出ることも選択肢になりますので、無理を重ねる前に主治医産業医と現在の状況を共有し、休息や業務配慮の必要性を一緒に検討しましょう。
📌 Q. 労災の証明は可能?

労災が疑われる場合は、診断名だけでなく、勤務時間、出来事、業務指示、相談記録などの事実が重要です。医療機関では症状と経過を確認し、必要に応じて相談先を整理します。

当院では労災保険の申請手続きを直接行うことはできませんが、労災保険指定医療機関への紹介状は発行できます。ただし、どの医療機関が労災保険の指定を受けているかの一覧提供や案内は行っておりませんので、受診先の選定はご自身または勤務先でご確認をお願いいたします。
💰 Q. 傷病手当金制度があるとは言え、生活が苦しいのですが?

経済的な不安が強い場合は、傷病手当金、自立支援医療、障害年金、自治体窓口などを早めに確認します。書類の期限や申請月がある場合は、診察時に具体的に伝えてください。

傷病手当金があっても、治療が長期化すると生活が厳しくなることがあります。また精神科・心療内科で処方される薬の負担も大きいかもしれません。通院医療費の自己負担を3割から1割に軽減する制度(自立支援医療制度)があり、場合によっては障害年金の対象となることもあります。まずは主治医へご相談ください
自立支援医療制度の申込用紙は神奈川・東京の役所に提出する様式については当院にご用意しています。また、障害年金をご希望される場合には、お住まいの地域の年金事務所へお問い合わせください。
♿ Q. 障害者雇用での就労を目指したい場合はどうすればよいですか?

障害者雇用を検討する場合は、精神障害者保健福祉手帳、働き方の希望、必要な配慮、就労支援機関の利用を整理します。焦って決めず、主治医や支援窓口と相談しましょう。

障害者雇用枠での就労を目指す場合には、精神障害者保健福祉手帳の取得が必要です。担当医にご相談ください。手続きに必要な申込用紙は神奈川・東京の役所に提出する様式は当院でご用意しています。その他の地域にお住まいの方は各自治体の窓口でお問い合わせください。
🤲 Q. 就労移行支援や職場復帰支援とは?

就労移行支援や職場復帰支援では、生活リズム、作業訓練、対人練習、面接準備、職場定着を扱います。自分だけで復職準備を抱え込まないための選択肢です。

障害者雇用枠での就労に不安がある場合は、国の制度である就労移行支援の活用を検討してみましょう。就労移行支援は、就職前の準備訓練や職場定着支援などを行い、合理的配慮を受けやすい職場環境を整えるサポートを提供しています。また、休職中や復職準備中の方には復職プログラム(リワーク)職場復帰支援があり、再発防止や勤務継続のためのトレーニングを受けることができます。詳しい内容や利用条件については、主治医や支援機関、産業医にご相談ください。
☎️ Q. 制度や申請について相談できる窓口はありますか?

制度や申請は、医療機関だけで完結しないことが多くあります。会社の人事、保険者、自治体、年金事務所、ハローワークなど、内容ごとに相談先を分けて確認しましょう。

各制度の申請書類の配布や提出先は、お住まいの市区町村の福祉課保健所年金事務所などです。具体的な申請手続きや対象条件についてのご相談は、これらの窓口にお問い合わせください。必要に応じて、社会保険労務士障害者就業・生活支援センターなどの専門機関への相談もご検討ください。
引用文献・参照資料

本記事は、以下の公的機関・学会資料・専門書などを参照し、一般向けに整理しています。制度の適用可否や支給判断は、勤務先、健康保険、自治体、年金事務所など各窓口で確認してください。

引用文献・参照資料を表示(全47件)
  1. 厚生労働省 こころの耳:職場復帰支援
  2. 厚生労働省 こころの耳:5分でできる職場のストレスセルフチェック
  3. 厚生労働省:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
  4. 厚生労働省:ストレスチェック制度などのメンタルヘルス対策
  5. 厚生労働省:過労死等の労災補償状況
  6. 厚生労働省:治療と仕事の両立支援ナビ
  7. 労働者健康安全機構:産業保健総合支援センター
  8. 全国健康保険協会:傷病手当金について
  9. 全国健康保険協会:健康保険傷病手当金支給申請書
  10. 厚生労働省:自立支援医療制度の概要
  11. 厚生労働省:精神障害者保健福祉手帳
  12. 厚生労働省:障害福祉サービスについて
  13. 厚生労働省:障害者雇用対策
  14. 厚生労働省:総合労働相談コーナー
  15. 日本年金機構:病気やけがで障害が残ったとき
  16. ハローワークインターネットサービス:基本手当について
  17. 高齢・障害・求職者雇用支援機構:障害者雇用・職業リハビリテーション情報
  18. 高齢・障害・求職者雇用支援機構:地域障害者職業センター
  19. 高齢・障害・求職者雇用支援機構:精神障害者総合雇用支援のご案内
  20. 日本うつ病リワーク協会:リワークとは
  21. e-Gov法令検索:労働契約法 第16条
  22. e-Gov法令検索:労働基準法
  23. e-Gov法令検索:労働安全衛生法
  24. e-Gov法令検索:健康保険法
  25. e-Gov法令検索:労働者災害補償保険法
  26. e-Gov法令検索:雇用保険法
  27. e-Gov法令検索:障害者総合支援法
  28. e-Gov法令検索:障害者雇用促進法
  29. 厚生労働省:健康づくりサポートネット
  30. 厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
  31. 国立精神・神経医療研究センター:精神保健研究所
  32. 国立精神・神経医療研究センター:認知行動療法センター
  33. Mindsガイドラインライブラリ
  34. 日本うつ病学会:うつ病治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害 2016
  35. 日本精神神経学会:精神科医療と専門医制度に関する情報
  36. American Psychiatric Association 著、日本精神神経学会 日本語版用語監修『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院
  37. American Psychiatric Association 著、日本精神神経学会 日本語版用語監修『DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院
  38. 大野裕『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』創元社
  39. 大野裕『はじめての認知療法』講談社現代新書
  40. Judith S. Beck 著『認知療法実践ガイド:基礎から応用まで』星和書店
  41. Aaron T. Beck ほか著『うつ病の認知療法』岩崎学術出版社
  42. 伊藤絵美『セルフケアの道具箱:ストレスと上手につきあう100のワーク』晶文社
  43. 日本睡眠学会 編『睡眠学』朝倉書店
  44. 井上雄一ほか 編『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』じほう
  45. 産業精神保健領域の職場復帰支援・リワーク支援に関する各種専門書、研修資料
  46. 認知行動療法、ストレスマネジメント、睡眠衛生、職場復帰支援に関する精神医学・産業保健領域の総説、教育資料
  47. 各健康保険組合、企業の就業規則、休職規程、復職判定手続きに関する実務資料
院長 田村京介のイラスト
👨‍⚕️ 執筆・医学的確認

院長 田村 京介

医療法人心のクリニック 武蔵小杉 院長
精神科専門医・精神保健指定医

本記事は、精神科・心療内科領域での診療経験をもとに、休職相談、休職診断書、傷病手当金、療養中の生活、復職支援について、受診前後に整理しやすいよう一般向けに作成しています。休職・復職・服薬・制度利用は自己判断で進めず、症状、勤務状況、会社規定、加入保険の条件を確認したうえで、主治医や関係窓口に相談することが大切です。

保有資格
  • 公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医
  • 厚生労働省 精神保健指定医
所属学会
  • 日本精神神経学会(JSPN)正会員
  • 東京精神医学会(TPA)正会員
学歴
  • 横浜市立大学 医学部
職歴
  • 東京都保健医療公社 大久保病院
  • 東京都立 広尾病院
  • 東京都立 松沢病院
  • 東京都立 小児総合医療センター
  • 昭和医科大学 烏山病院
  • 複数の精神科・心療内科クリニックに勤務
  • 医療法人心のクリニック 武蔵小杉 院長