

「月経前になると、普段なら流せることに強くいら立つ」「理由なく落ち込み、涙が止まらない」「不安や緊張が強まり、仕事や家事が手につかない」「月経が始まると数日で少し楽になる」。こうした変化が毎月繰り返されると、本人の努力だけでは生活を守りにくくなります。
月経前の精神症状は、性格や我慢の問題ではありません。排卵後のホルモン環境の変化に対する脳の感受性、セロトニンやGABAなどの神経伝達、睡眠、ストレス、既存の精神疾患などが複合して関係すると考えられています。
意外に思われるかもしれませんが、精神症状が強いPMS・PMDDでは、抗うつ薬の一種であるSSRIが日本産科婦人科学会の2025年指針でも使用が推奨される治療選択肢です。うつ病がある方だけに使う薬という意味ではなく、月経前に繰り返す強いいら立ち、落ち込み、不安、気分変動を和らげる目的で使用を検討します。期待できる効果、副作用、費用、服用方法を診察時にご説明します。
当外来では、月経周期と症状の関係を確認しながら、PMDD、PMS、うつ病・不安症・双極症などの月経前増悪(PME)、併存症を整理します。精神科・心療内科の視点から、症状記録、心理療法、抗うつ薬、必要に応じた漢方薬などを検討し、婦人科での評価やホルモン治療が適する場合は連携します。
強い月経痛、過多月経、不正出血、周期の乱れ、骨盤痛、妊娠の可能性などがある場合は、婦人科での身体評価が必要です。反対に、希死念慮、著しい抑うつ・不安、パニック症状、衝動性、既存の精神疾患の悪化が目立つ場合は、精神科・心療内科の評価が重要です。
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PMS・PMDD外来は、月経前に繰り返す気分・不安・睡眠・衝動性の変化と、生活への影響を精神科・心療内科の視点から整理する外来です。外来名は相談内容を分かりやすく表したもので、受診した時点でPMDDと決まるわけではありません。
精神症状が中心:落ち込み、絶望感、強い不安、怒り、涙もろさ、パニック、不眠などが月経前に目立つ。
生活への支障が大きい:欠勤・遅刻、家事や育児が回らない、対人関係の衝突、衝動買い・過食などが繰り返される。
既存治療が揺れる:うつ病や不安症などで通院中だが、月経前だけ症状が大きく悪化する。
薬の整理が必要:抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬、ホルモン製剤の役割と安全性をまとめて確認したい。
軽い変化と、治療を要するPMS・PMDDは同じではありません。症状そのものに加え、仕事、学校、家庭、社会活動、対人関係のどこに、どの程度支障が出ているかを確認します。
日本産科婦人科学会はPMSを、月経前3~10日の黄体期に続く精神的または身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するものとしています。PMDDは、特に気分変動、いら立ち・怒り、抑うつ、不安などが強く、明確な苦痛や生活機能障害を伴う状態です。
出血開始後、PMS・PMDD症状は数日以内に大きく軽くなることが典型です。
月経後は症状が最小限となる時期があるかを確認します。
排卵を境に次の黄体期へ移ります。周期には個人差があります。
こころ・身体の症状が出現または悪化し、周期ごとに繰り返します。
| 項目 | PMS | PMDD |
|---|---|---|
| 中心となる症状 | こころと身体の多様な症状。症状の種類は一人ひとり異なります。 | 強い気分変動、いら立ち・怒り、抑うつ、絶望感、不安・緊張など精神症状が前景に出ます。 |
| 生活への影響 | 軽い月経前変化がすべて治療を要するPMSとは限りません。本人の苦痛と生活への支障を確認します。 | 仕事・学校・家事・社会活動・対人関係に明確な支障または強い苦痛があります。 |
| 確認方法 | 発症・軽快の時期、症状、支障を確認し、正確な評価には前向きの日誌が望まれます。 | DSM-5-TR相当の要点を確認し、少なくとも2回の症状周期を毎日記録して確かめます。 |
| 主な診療科 | 身体症状や月経異常が中心なら婦人科、精神症状が強ければ精神科・心療内科。併診も選択肢です。 | 精神科・心療内科での精神症状・安全性評価と、婦人科での月経管理を組み合わせることがあります。 |
PMS・PMDDは、一般に正常範囲の周期的なホルモン変化へ脳や身体が敏感に反応することが関係すると考えられています。血液検査だけでPMDDを確定することはできず、症状の周期性と生活への影響が重要です。
有病率は、軽い月経前症状まで含めるか、一度の質問票で評価するか、2周期の日誌で確定するかにより大きく変わります。数字を比較するときは、対象者と評価方法が同じかを見る必要があります。
| 調査 | 主な結果 | 解釈上の注意 |
|---|---|---|
| 日本人20~49歳 1,187人(2006) | 中等度~重度PMS 5.3%、PMDD相当1.2%。該当者で治療中は5.3%でした。 | 子宮がん検診受診者への一回の想起式質問票による横断調査で、2周期日誌による確定診断ではありません。 |
| 世界44研究・48標本 50,659人(2024) | 前向き記録で確認した10標本のPMDD推定は3.2%(95%信頼区間1.7~5.9%)、想起式中心の暫定診断群は7.7%(5.3~11.0%)。地域住民で完全なDSM条件と2周期記録を満たす6標本・6,044人では1.6%(1.0~2.5%)でした。 | 全研究をまとめた解析は異質性が非常に大きく、3.2%の分母はレビュー総数50,659人そのものではありません。1.6%も6標本中4標本が同一研究由来で、地域・選び方・診断法によって推定値は変わります。 |
| 日本の働く女性 2,987人(2025) | 中等度~重度群は欠勤リスク約2倍、出勤中の能率は18~30%低い関連がありました。 | 18~41歳の横断・自己記入調査で、妊娠・産後等の無月経、ホルモン療法中、精神疾患既往等は除外されています。直接の因果関係は示しません。 |
| 日本全国18~44歳 5,439人(2026) | スクリーニング上の中重度PMS 10.7%、PMDD相当4.8%。PMDD相当は自殺念慮との調整後リスク比1.88でした。 | オンライン横断・自己申告・想起式スクリーニングです。因果関係や確定診断を示しません。 |
症状があっても出勤し、仕事の速さ・判断・対人対応が落ちる「プレゼンティーズム」が目立つことがあります。2025年の国内調査では、重症群の約3分の2が、欠勤せずに30%以上の能率低下を報告しました。診察では欠勤日数だけでなく、普段どおり働けた割合も確認します。
PMS・PMDDの症状は一つではありません。毎月すべてが出る必要もありません。何があるか、いつ始まり、月経後にどこまで下がるか、生活にどう影響したかを組み合わせて評価します。
仕事・学校:遅刻、欠勤、提出遅れ、ミス、会議や発表の回避、同僚との衝突、授業に集中できない。
家庭:家事・育児が回らない、家族への強い言い方、引きこもる、パートナーとの関係悪化。
セルフケア:過食、飲酒量の増加、衝動買い、薬の自己調整、睡眠リズムの崩れ。
安全:「消えたい」という考え、自傷衝動、他人を傷つけそうな感覚、運転や重要判断が危うい。
PMDDだけでなく、うつ病、不安症、双極症、PTSD、ADHD、摂食症などがあり、月経前にさらに悪化するPMEや併存を検討します。「周期と関係があるから、ほかの病気ではない」とは限りません。
診療で特に重要なのが、PMDDと月経前増悪(Premenstrual Exacerbation:PME)の区別です。PMEでは、もともとある精神疾患・身体疾患の症状が月経後にも残り、月経前にさらに悪化します。PMDDとPMEが同時に存在する場合もあり、二者択一ではありません。
| 状態 | 月経前 | 月経後 | 診療上のポイント |
|---|---|---|---|
| PMS | こころ・身体の症状が現れる、または明らかに強まる。 | 月経開始後に軽快し、症状が乏しい時期がある。 | 周期性と生活への影響を確認し、身体症状・精神症状の双方を治療します。 |
| PMDD | 強い抑うつ、不安、気分変動、いら立ち・怒りなどが目立ち、生活機能に支障。 | 数日以内に大きく改善し、月経後1週には最小限となることが典型。 | 2周期の前向き記録、希死念慮、機能障害、併存症を確認します。 |
| PME | うつ病、不安症、双極症、片頭痛など、既存症状がさらに悪化。 | 軽くなることはあっても、基礎症状が残る。 | 既存疾患の治療を土台にし、必要に応じ婦人科と排卵抑制等を検討します。 |
| 月経困難症など | 痛みや不調が始まる場合もある。 | 出血に伴う痛みが中心で、月経終了とともに軽快することが多い。 | 子宮内膜症、子宮筋腫などを含め婦人科で評価します。 |
睡眠が少なくても平気になる、活動性や自信が不自然に高まる、話し続ける、浪費や無謀な行動が増える時期があった場合は、双極症の評価が重要です。周期的な「元気な時期」を単なる回復と決めつけず、経過を確認します。
PMDDは、一度の問診や「先月つらかった」という記憶だけでは確定しにくい病気です。日本産科婦人科学会の指針では、症状が月経周期とともに現れ、消えるかを詳しく聴取し、少なくとも2回の症状周期を毎日、前向きに記録して確認することが重視されています。
記録は月経前だけでなく、月経後も続けます。月経後に症状が十分下がる「症状の少ない期間」があるかを見ることで、PMDDとPMEを分けやすくなります。専用アプリでなくても、カレンダーや簡単なメモで構いません。
記録が終わるまで治療や安全確保を待つわけではありません。強い症状がある場合は暫定的な評価のもとで必要な支援を開始し、経過を見ながら診断を見直します。
症状記録は診断がついたら終わりではありません。治療開始後も同じ項目を続け、月経前のピーク、月経後の回復、生活への支障が前周期からどう変わったかを比べます。薬を使った日・服用時刻・飲み忘れ・気になった症状を重ねておくと、効果と副作用を整理しやすくなります。周期が不規則な場合や不正出血がある場合は、婦人科での周期評価と並行して確認します。
記録の形式は、紙、カレンダー、スマートフォンなど、毎日続けやすい方法を選びます。つらい日だけを抜き出すのではなく、同じ項目を症状の少ない日にも記録すると、月経前の変化と普段の状態を比較しやすくなります。診察では、書けなかった日があっても中断とせず、残っている記録から一緒に整理します。
月経・出血、気分、不安、いら立ち、睡眠、身体症状に加え、欠勤・口論・家事停止などの支障、服薬・飲酒も同じ尺度で記録します。「症状がない日」も診断には重要です。
※上記はDSM-5-TR等の内容を要約した説明であり、診断票の転載ではありません。項目数だけで自己診断せず、医師が経過・支障・鑑別を含めて判断します。
| 記録項目 | 書き方の例 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 日付・月経 | 出血の有無、月経開始日、周期日。不正出血は別に記録。 | 症状と月経周期の位置関係を確認します。 |
| こころの症状 | 落ち込み、不安、いら立ち、気分変動、衝動性を0~3など同じ尺度で。 | 月経前に上がり、月経後にどこまで下がるかを見ます。 |
| 睡眠・食欲・集中 | 睡眠時間、眠気・不眠、過食、集中困難、疲労。 | 治療の標的と副作用を区別しやすくします。 |
| 身体症状 | 頭痛、乳房の張り、むくみ、腹部膨満、痛みなど。 | 婦人科・内科での評価や治療との連携に役立ちます。 |
| 生活への影響 | 仕事・家事・学業の能率、欠勤、口論、予定の取消を0~3で。 | 症状の数だけでなく、機能障害を評価します。 |
| 薬・出来事 | 薬の開始・中止・飲み忘れ、夜勤、飲酒、強いストレス、体調不良。 | 周期以外の増悪要因や薬の効果・副作用を分けます。 |
24項目を毎日つける詳細な日誌もありますが、実臨床では負担が大きいことがあります。まずは重要な症状、支障、月経、服薬を同じ尺度で記録し、必要に応じて詳しくします。数日抜けても、そこで記録をやめる必要はありません。
月経前だけを切り取らず、毎日の症状と生活への影響を同じ尺度で記録します。
気分・不安・いら立ち
睡眠・身体症状
仕事・家事への支障
いつ始まるか
何日続くか
安全面の変化
症状の少ない期間
PMEとの区別
治療後の変化
少なくとも2回の症状周期で再現性を確認します。記録が終わるまで治療や安全確保を待つわけではありません。
同じ項目を症状の少ない日にも記録し、診察で経過を比較します。
初診では「PMSかどうか」だけでなく、緊急性、既存疾患、服薬、妊娠可能性、婦人科症状、仕事・家庭への影響を順に確認します。検査は全員に一律で行うのではなく、病歴や身体症状に応じて選びます。
| 症状・状況 | 主な相談先 | 確認すること |
|---|---|---|
| 強い月経痛・骨盤痛 | 婦人科 | 月経困難症、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣疾患など。 |
| 過多月経・不正出血 | 婦人科 | 出血原因、貧血、妊娠関連、ホルモン治療の影響など。 |
| 周期不順・無月経 | 婦人科・内科 | 妊娠、PCOS、甲状腺、体重変化、周閉経期など。 |
| 月経後も続く抑うつ・不安 | 精神科・心療内科 | PME、うつ病、不安症、双極症、PTSD等の併存。 |
| 希死念慮・自傷他害 | 精神科救急・救急医療 | 月経周期を待たず、現在の安全確保を最優先します。 |
貧血、甲状腺機能異常などが疑われる場合には検査が役立ちますが、PMDDの確定はホルモン値一回の測定ではなく、症状の周期性、生活への支障、2周期の記録、ほかの病気との鑑別を組み合わせて行います。
PMDDでは、希死念慮や自傷衝動を伴うことがあります。月経前に毎回起こるとしても、「月経が始まれば治るから」と一人で待つことは安全ではありません。
このような場合は、予約日や月経開始を待たず、119または地域の救急医療機関へ相談してください。可能であれば一人にならず、家族・同居者など信頼できる方へ状況を伝えてください。
暴言・粗暴行為、自傷の反復、欠勤や不登校、家庭生活の破綻、飲酒や薬の乱用、月経後も続く抑うつ・不安、抗うつ薬開始後の強い焦燥・不眠・衝動性がある場合は、早めの評価が必要です。
周期性だけで自己判断せず、身体症状、月経後の経過、現在の安全を分けて確認します。
月経前に悪化し月経後に十分軽くなるか、月経後も続くうつ・不安・双極症などの増悪ではないかを確認します。
強い月経痛、過多月経、不正出血、周期不順、妊娠可能性、貧血・甲状腺疾患などは身体評価を優先または並行します。
具体的な希死念慮、自傷他害の切迫、強い混乱、食事や水分が取れない状態では予約日を待たず119や救急へ相談します。
一回のホルモン値や症状数だけでは診断できません。経過、生活への支障、併存症と安全性を合わせて判断します。
PMS・PMDDの治療は、症状の種類、重症度、周期の規則性、併存症、妊娠希望、これまでの治療、副作用への考え方によって変わります。多くの方では、症状記録・疾病理解、生活調整、心理療法、薬物療法、婦人科治療を組み合わせます。
| 評価する領域 | 目標例 | 見直す時期 |
|---|---|---|
| 気分・不安 | 月経前の落ち込み・不安・いら立ちの最高点と日数を減らす。 | 毎周期の記録で比較。 |
| 安全性 | 希死念慮・自傷衝動の早期サインを把握し、危機計画を実行できる。 | 診察ごと。悪化時は予定を待たず再評価。 |
| 生活機能 | 欠勤、口論、家事停止、予定取消、過食・飲酒などを減らす。 | 1~3周期を目安に、治療内容に応じて判断。 |
| 副作用・負担 | 眠気、吐き気、性機能、服薬日数、費用、通院負担を許容範囲にする。 | 開始・増量直後は早めに確認。 |
十分な効果がない、副作用がつらい、周期が不規則、妊娠希望が変わった、月経後も症状が残る場合は、診断と治療目標を見直します。精神科と婦人科のどちらか一方へ「丸投げ」せず、役割を分けて併診することがあります。
中等症~重症のPMS・PMDDで、抑うつ、不安、いらだち、感情の不安定さなどの精神症状が生活・仕事・対人関係へ影響する場合、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、根拠のある中心的な選択肢です。日本産科婦人科学会の2025年指針では、セルトラリン、エスシタロプラム、パロキセチンなどが挙げられています。処方前には、症状が月経前に悪化し、月経開始後に軽くなる経過を月経・症状日誌で確認し、うつ病などが月経前に悪化するPMEや併存症との違いも整理します。
PMDDに対するSSRIは、うつ病治療とは異なり比較的早い症状改善が報告されています。服用方法には、月経周期を通して服用する連続投与と、月経前の黄体期または症状が始まる時期に合わせる周期投与があります。周期が不規則な場合、月経後も症状が残る場合、周期投与で効果が不十分な場合などは連続投与が適することがあります。一方で、周期、過去の治療反応、副作用、併存症によって選び方は変わるため、開始日・終了日や服用量を具体的に決め、自己判断で飲む日や量を変更しません。
日本産科婦人科学会の2025年指針と臨床的根拠に基づいて使用を検討しますが、国内ではPMS・PMDDを目的とするSSRI治療は保険適用外です。一方、うつ病・うつ状態や、製剤ごとに承認された一部の不安関連疾患等を実際に満たす場合は取り扱いが異なります。診察では診断、処方目的、費用、妊娠希望、併用薬を確認します。開始・増量時は、嘔気、眠気、倦怠感、不眠、不安や焦燥の高まりなどに注意し、つらい副作用や衝動性の変化があれば早めに相談します。中止後の症状を避けるため、連続投与中の薬を自己判断で急に中止しないことも大切です。
2024年のCochraneレビューは、SSRIとプラセボを比較した34件のランダム化比較試験・計4,563人を検討しました。全般的な月経前症状の解析では12試験・1,742人を統合し、SSRIによる症状軽減を示す中等度の確実性のエビデンスが得られました(標準化平均差 −0.57、95%信頼区間 −0.72~−0.42)。投与法別では、連続投与7試験・1,055人で −0.69(−0.88~−0.51)、黄体期投与6試験・687人で −0.39(−0.58~−0.21)でした(サブグループ差P=0.03)。これは各投与法をプラセボと比べた層別解析で、投与法同士の直接比較や個人の改善率ではなく、効果を保証する数字ではありません。
周期の規則性、月経後の残存症状、躁・軽躁歴、自殺関連リスク、過去の薬物反応、妊娠希望、併用薬、運転・仕事内容を確認します。薬名だけでなく「いつ・何を目標に使うか」を共有します。
以下は診療で検討される薬剤の例で、すべての方に用いるものではありません。実際の処方は、診断、症状、治療歴、併存症、併用薬、安全性を確認し、医師が個別に判断します。 商品名は、お薬手帳や過去の処方内容を確認しやすくするために掲載しています。同じ成分でも製剤・用量・使用目的は異なり、一覧は処方を勧めるものではありません。日本産科婦人科学会の2025年指針で質の高い根拠が示される3剤は、指針上は使用が推奨される薬として位置づけられています。
| 成分名 | 先発品・代表商品名 | PMDD診療での位置づけ | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| セルトラリン塩酸塩 | ジェイゾロフト | SSRI。2025年指針で質の高い根拠が示され、中等症~重症のPMS・PMDDで使用が検討されます。 | 消化器症状、不眠・眠気、性機能への影響、賦活化、中止後症状、相互作用等。 |
| エスシタロプラムシュウ酸塩 | レクサプロ | SSRI。2025年指針で質の高い根拠が示され、中等症~重症のPMS・PMDDで使用が検討されます。 | 消化器症状、性機能への影響、賦活化、中止後症状、QT延長、相互作用等。 |
| パロキセチン塩酸塩水和物 | パキシル/パキシルCR | SSRI。2025年指針で質の高い根拠が示され、中等症~重症のPMS・PMDDで使用が検討されます。 | 消化器症状、性機能への影響、賦活化、中止後症状、妊娠可能性、相互作用等。 |
| フルボキサミンマレイン酸塩 | ルボックス/デプロメール | SSRI。症状、併存疾患、治療歴等を踏まえて個別に使用が検討されることがあります。2025年指針で質の高い根拠が示される3剤とは、根拠の量が異なります。 | 消化器症状、眠気、性機能への影響、中止後症状、薬物相互作用等。 |
| ベンラファキシン塩酸塩 | イフェクサーSR | SNRI。有効性の報告があり、症状や併存疾患を踏まえて個別に使用が検討されます。SSRIの3剤と比べると根拠は限定的です。 | 悪心、血圧・脈拍上昇、発汗、不眠、中止後症状、相互作用等。 |
| デュロキセチン塩酸塩 | サインバルタ | SNRI。併存するうつ病・うつ状態や疼痛等が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 悪心、眠気、血圧、肝機能、中止後症状、相互作用等。 |
| ボルチオキセチン臭化水素酸塩 | トリンテリックス | 抗うつ薬。併存するうつ病・うつ状態が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 悪心、めまい、性機能への影響、出血傾向、相互作用等。 |
| ミルタザピン | リフレックス/レメロン | 抗うつ薬。併存するうつ病・うつ状態を治療する際に、睡眠・食欲症状等も踏まえて使用が検討されます。 | 眠気、食欲・体重増加、運転、飲酒・ほかの鎮静薬との併用等。 |
| スルピリド | ドグマチール | ベンズアミド系薬。うつ病・うつ状態等が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 高プロラクチン血症、月経異常・乳汁分泌、錐体外路症状、QT延長等。 |
| 方法 | 考え方 | 検討しやすい状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 連続投与 | 月経周期を通して毎日服用します。 | 周期が不規則、月経後にも症状がある、PME・うつ病・不安症の併存、黄体期投与で不十分な場合。 | 総服薬日数が増えます。長期服用後は自己判断で急に中止せず、段階的な減量を検討します。 |
| 黄体期投与 | 一般に月経前の一定期間、または症状開始時から月経開始頃まで服用します。 | 周期が比較的規則的で、症状のない時期が明確なPMDD。 | 開始時期を判断できる記録が必要です。周期が不規則だと難しく、連続投与より効果が弱い可能性もあります。 |
| 連続+時期的調整 | 連続投与を土台に、増悪期の調整を検討する場合があります。 | 既存疾患の治療中で、月経前だけ残る症状が明確な場合。 | 自己増減は避け、症状日誌と副作用を見ながら医師が判断します。 |
妊娠中は排卵が止まるためPMS・PMDD症状は一般に消失しますが、併存するうつ病・不安症の治療は別に考える必要があります。妊娠希望、妊娠の可能性、授乳を伝え、精神症状の再発リスクと薬のリスクを個別に比較します。
強い不安や不眠があると「すぐ効く薬」を希望することがあります。しかし、日本産科婦人科学会の2025年指針は、抗不安薬の使用を最小限に留めるとしています。特にベンゾジアゼピン系抗不安薬は強い不安等に対して必要性を慎重に評価し、補助的・短期的な使用を検討することがあります。
| 薬の種類 | 位置づけ | 主な注意点 |
|---|---|---|
| SSRI | 中等症~重症PMS・PMDDの精神症状に対する中心的な薬物療法。指針と臨床的根拠に基づき使用が検討されます。 | 消化器症状、睡眠変化、性機能、賦活化、中止後症状、使用目的、費用。 |
| ベンゾジアゼピン系抗不安薬 | ほかの方法も含めて必要性を慎重に評価し、使用する場合は短期・最小限とします。 | 依存、耐性、離脱、眠気、ふらつき、記憶への影響、飲酒との併用、運転。 |
| 睡眠薬 | 不眠が強く、治療対象となる場合に、原因・期間・生活への影響を評価して使用を検討します。 | 薬剤により翌朝の眠気、転倒、依存等に注意。ほかの鎮静薬・飲酒との重複を避け、睡眠日誌も活用します。 |
| 気分安定薬等 | 双極症、てんかん等の併存疾患が治療対象となる場合、その治療薬として使用を検討します。 | 併存疾患と処方目的を確認し、妊娠、ホルモン製剤との相互作用、血中濃度等を専門医が確認します。 |
気分安定薬は双極症やてんかん等の併存疾患が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。PMDDにみえる症状が、双極症等の月経前増悪ではないかも確認し、検査計画に基づいて用います。妊娠希望、避妊方法、婦人科のホルモン製剤は必ず共有します。
| 成分名 | 先発品・代表商品名 | PMDD診療での位置づけ | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 炭酸リチウム | リーマス | 双極症等の併存疾患が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 血中濃度、腎機能・甲状腺機能、脱水、妊娠、NSAIDs等との相互作用を確認。 |
| ラモトリギン | ラミクタール | 双極症の再発・再燃抑制やてんかん等が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 重篤な皮膚障害を避けるため漸増。エストロゲンを含むホルモン製剤で血中濃度が変化し得ます。 |
| バルプロ酸ナトリウム | デパケン/デパケンR | 双極症、てんかん等が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 妊娠中の胎児リスクが重要。妊娠可能性、避妊、肝機能、血球、膵炎等を確認。 |
| カルバマゼピン | テグレトール | 双極症、てんかん等が治療対象となる場合、その治療薬として使用が検討されます。 | 重篤な皮膚障害、血球・肝機能・ナトリウム低下、薬物相互作用。ホルモン避妊薬の効果を弱める可能性があります。 |
商品名は服薬内容を照合し、診療上の選択肢と位置づけを確認するために掲載しています。アルプラゾラムにはPMSに対する限定的な有効性報告があります。依存等のリスクを踏まえ、抗不安薬は使用を最小限に留めます。そのほかの薬も、併存する不安・緊張・不眠等が各薬の使用目的と症状が合う場合、目的と期間を明確にして検討されます。
| 成分名 | 先発品・代表商品名 | PMDD診療での位置づけ | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ロラゼパム | ワイパックス | ベンゾジアゼピン系抗不安薬。併存する不安・緊張等が治療対象となる場合、短期・最小限で使用が検討されます。 | 眠気、ふらつき、記憶への影響、依存・耐性・離脱、飲酒、運転。 |
| アルプラゾラム | ソラナックス/コンスタン | ベンゾジアゼピン系抗不安薬。PMSに対する限定的な有効性報告があります。依存等のリスクを踏まえ、必要時に短期・最小限で使用が検討されます。 | 眠気、依存・耐性・離脱、飲酒、運転。漫然とした連用や自己増量を避けます。 |
| ブロマゼパム | レキソタン | ベンゾジアゼピン系抗不安薬。併存する不安・緊張等が治療対象となる場合、短期・最小限で使用が検討されます。 | 眠気、ふらつき、依存・耐性・離脱、飲酒、運転。 |
| クロチアゼパム | リーゼ | チエノジアゼピン系抗不安薬。併存する不安・緊張等が治療対象となる場合、短期・最小限で使用が検討されます。 | 眠気、ふらつき、依存・耐性・離脱、飲酒、運転。 |
| ジアゼパム | セルシン/ホリゾン | ベンゾジアゼピン系抗不安薬。併存する不安・緊張等が治療対象となる場合、短期・最小限で使用が検討されます。 | 作用が長く残ることがあり、眠気、ふらつき、蓄積、依存・離脱、飲酒、運転に注意。 |
| エチゾラム | デパス | チエノジアゼピン系の抗不安薬・ベンゾジアゼピン受容体作動薬。併存する不安・緊張等が治療対象となる場合、短期・最小限で使用が検討されます。 | 眠気、筋弛緩、依存・耐性・離脱、飲酒、運転。 |
| ブロチゾラム | レンドルミン | 睡眠薬。併存する不眠が治療対象となる場合、期間を限定して使用が検討されます。 | 翌朝の眠気、健忘、ふらつき、依存・離脱、飲酒、運転。 |
| トリアゾラム | ハルシオン | 睡眠薬。併存する不眠が治療対象となる場合、期間を限定して使用が検討されます。 | 健忘、翌朝への影響、依存・離脱、飲酒、運転、CYP3A阻害薬との相互作用。 |
不安や怒りをその場だけ鎮める薬を重ねるより、診断の確認、SSRI、睡眠・ストレスへの介入、婦人科治療、仕事・家庭の調整を組み合わせる方が適切なことがあります。
漢方薬は、気分の落ち込み、不安、いら立ちなどの精神症状に加え、冷え、むくみ、めまい、疲れやすさ、月経不順、腹部の張りなど、心と身体の症状をまとめて捉え、症状の組み合わせや体質に合わせて選ぶ治療選択肢です。単独で用いるほか、生活調整やほかの治療と組み合わせることもできます。日本産科婦人科学会の2025年指針では、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸を中心に、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏なども挙げています。
実際の症状が「血の道症」「神経症」「月経不順」など各製剤の治療対象となる場合、漢方薬の使用が検討されます。月経周期、体質、併存症、併用薬、妊娠可能性などを確認し、単独で用いるか、SSRI等や婦人科治療と組み合わせるかも含めて治療計画を立てます。
漢方薬も、効果と安全性を確認しながら使う医薬品です。服用後の気分、睡眠、身体症状を周期記録で確認し、手応えがあれば継続し、十分でなければ処方や治療全体を見直します。PMS・PMDDに対する研究の蓄積はSSRI等より多くありませんが、指針で検討対象として挙げられる処方があり、症状と承認適応が合えば治療選択肢になります。加味帰脾湯について指針が挙げる根拠は基礎研究の段階です。複数処方や長期使用では同じ生薬の重複にも注意し、より合った処方や使用期間へ調整します。
開始後は、期待した症状の変化に加え、むくみ、血圧、筋力、胃腸症状、発疹なども確認します。市販薬や他院の漢方薬を追加した場合は処方名を共有し、効いたかだけでなく、続けて安全かも同じ周期で確認することで、継続・変更・中止を判断しやすくなります。次回の確認時期を開始前に決め、飲み始めた日と気になった変化が分かる記録を持参すると、漫然投与を避けやすくなります。
お薬手帳、他科の処方薬・サプリ、過去の漢方歴、むくみ・血圧・筋力・腹部症状、妊娠可能性を確認します。同じ甘草や山梔子を含む処方の重複にも注意します。
| 処方名 | 診療で確認する特徴の例 | 主な安全上の確認 |
|---|---|---|
| 当帰芍薬散 (TJ-23) | 冷え、虚弱傾向、めまい、頭重、肩こり、むくみ、月経不順など。 | 胃腸症状、発疹等。妊娠可能性・併用薬を確認。 |
| 加味逍遙散 (TJ-24) | 精神神経症状と身体症状が混在し、いら立ち、不安、疲労、のぼせ、月経不順等がある場合。 | 甘草による偽アルドステロン症、山梔子の長期投与と腸間膜静脈硬化症等。牡丹皮を含むため妊娠中・妊娠可能性の扱いを確認。 |
| 桂枝茯苓丸 (TJ-25) | 冷えのぼせ、下腹部症状、肩こり、頭重、月経不順など。精神症状だけで選びません。 | 発疹、胃腸症状、肝機能障害等。妊娠時の扱いを確認。 |
| 抑肝散 (TJ-54) | 神経のたかぶり、いら立ち、怒り、不眠などが目立つ場合に検討することがあります。 | 甘草による偽アルドステロン症・低カリウム血症、肝機能、間質性肺炎等。 |
| 抑肝散加陳皮半夏 (TJ-83) | 慢性化したいら立ち・不安に、食欲低下や胃腸虚弱などが重なる場合。 | 甘草重複、偽アルドステロン症、低カリウム血症等。 |
| 加味帰脾湯 (TJ-137) | 不安、不眠、精神疲労、食欲低下などを伴う場合に検討することがあります。 | 甘草・山梔子を含むため、重複処方や長期投与時の副作用に注意。 |
甘草を含む製剤では偽アルドステロン症・低カリウム血症により、むくみ、血圧上昇、筋力低下、こむら返り等が起こることがあります。息切れ・急な体重増加、強い筋痛や脱力、発熱・咳なども相談が必要です。山梔子を含む製剤の長期投与では、腸間膜静脈硬化症との関連が指摘されています。自己判断で複数の漢方薬を追加せず、処方医・薬剤師へ相談してください。
症状の重症度、精神症状と身体症状のバランス、国内承認適応、副作用、希望を踏まえ、単独または組み合わせを検討します。効果が乏しい場合に同じ処方を漫然と続けず、症状記録をもとに見直します。
日本産科婦人科学会の指針では、疾病教育、症状日誌、生活習慣、運動、食事、認知行動療法(CBT)が非薬物療法として挙げられています。心理療法は「気にしないようにする」訓練ではなく、周期的な脳と身体の変化に備え、悪化を大きくする考え・行動・環境を調整する方法です。
薬物療法と心理療法は競合しません。重いPMDDではSSRI等を中心にしながら、危機計画、対人関係、睡眠、仕事負荷を同時に整える方が生活機能を守りやすいことがあります。
一方、運動・食事・リラクゼーションだけで重いPMDDが必ず治るわけではありません。生活改善ができなかったことを本人の責任にせず、治療の一部として現実的に取り入れます。
症状が比較的軽い時期は、増悪期のための「練習期間」として使えます。休憩の取り方、家族への伝え方、重要な判断を翌日に回す手順などを実際に試し、調子が悪い日でも実行できる1~2個の行動まで絞ります。次の診察では、できなかった項目を責めるのではなく、負荷が大きすぎなかったか、薬物療法や婦人科治療を追加・調整すべきかを一緒に見直します。
対処法は数を増やすほどよいわけではありません。月経前でも実行できた休憩、連絡、判断保留の方法を記録し、実行できた手順を残し、負担の大きい手順は小さくするよう調整します。症状が強い周期には、心理的対処だけで抱えず、薬物療法や婦人科治療、安全計画も見直します。
早期サイン、距離を置く合図、重要判断を保留する基準、呼吸・休憩、相談相手、緊急連絡先を安定期に決めます。次の周期に記録を見直し、実行できた工夫を残します。
| 領域 | 確認すること | 実践例 |
|---|---|---|
| 睡眠 | 不眠・過眠、起床困難、夜勤、月経前の睡眠変化。 | 起床時刻を大きくずらさず、重要予定の前夜に余白を確保。 |
| 運動 | 普段の活動量、痛み・疲労、続けられる強度。 | 短い散歩や軽い有酸素運動から。症状を罰するような過度の運動は避ける。 |
| 食事・飲酒 | 欠食、過食、カフェイン、塩分、飲酒、衝動的な摂取。 | 規則的な食事を基本にし、飲酒で不安や不眠を調整しない。 |
| 予定 | 重要会議、締切、育児・介護負担、症状が強い時期。 | 予測できる範囲で集中作業を分散し、代替手段と連絡方法を決める。 |
精神症状が強い場合でも、月経周期を作る卵巣機能や婦人科疾患の評価は重要です。婦人科では、月経痛、出血、骨盤痛、周期不順、避妊・妊娠希望を確認し、排卵抑制を目的とするOC(経口避妊薬)・LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)等のホルモン療法を検討することがあります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 期待する効果 | 排卵を抑え、月経前の周期的変動、月経困難症、出血等を改善する可能性があります。根拠はドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合剤に比較的集積し、製剤・投与方法で異なります。 |
| 国内適応 | PMS・PMDD単独への国内承認・保険適用はありません。OCは避妊目的で自費、LEPは月経困難症等の承認適応を実際に満たす場合に扱いが異なります。 |
| 身体リスク | 血栓症、喫煙、年齢、血圧、前兆を伴う片頭痛、肥満、肝腎機能、既往歴等を婦人科で確認します。 |
| 精神科薬との相互作用 | エストロゲン含有製剤はラモトリギン濃度を下げることがあり、カルバマゼピンはホルモン剤濃度・避妊効果を下げることがあります。三環系抗うつ薬等を含め併用薬を婦人科・精神科で確認します。 |
| 妊娠希望 | 開始前に妊娠可能性を確認します。妊婦には使用せず、避妊の希望、妊娠を考える時期、治療中断後の計画を共有します。 |
突然の脚の痛み・腫れ、急な息切れ・胸痛、激しい頭痛、視野や言葉の異常、片側の脱力などがある場合は、直ちに服用を中止し、救急医療機関を受診してください。処方元への連絡は、受診と並行または受診後に行います。
精神科で症状が落ち着いても月経管理が必要なことがあり、婦人科治療中でも希死念慮やPMEの評価が必要です。各科が担当領域を継続し、同じ症状日誌を共有すると治療効果を判断しやすくなります。
精神科・心療内科と婦人科の役割を分け、同じ症状記録で効果と安全性を見直します。
PMDD・PMEと併存症
SSRI・心理療法
危機対応と生活機能
痛み・出血・周期
OC・LEP等の適否
妊娠・避妊の希望
効果と副作用
薬の相互作用
目標と治療を見直す
治療は一つに固定しません。身体リスク、妊娠希望、国内承認適応、希望を確認し、必要に応じて各科が継続して担当します。
PMS・PMDDの症状は毎日同じではないため、支援も「休むか通常どおりか」の二択ではなく、症状が強い時期に負荷・時間・判断の重さを調整する形が実用的です。周期が予測できる場合は、安定期に相談内容を準備します。
職場へ病名や月経の詳細をどこまで伝えるかは、業務上必要な情報と本人の希望を分けて考えます。「月経前に集中力と睡眠が悪化する」「連続会議を避けたい」「短い休憩が必要」など、機能と配慮を中心に整理できます。
2026年4月から、治療と仕事の両立支援への取組は事業主の努力義務となりました。実際に利用できる制度は勤務先ごとに異なるため、就業規則、人事労務、産業医・保健師、上司などへ確認します。
配慮は一度決めて終わりではなく、まず1~2周期を一つの区切りとして試し、欠勤だけでなく、集中できた時間、ミス、休憩、対人衝突、帰宅後の消耗まで振り返ります。「何を減らすと機能が保てたか」「どの時期なら通常の活動へ戻せたか」を記録すると、本人・主治医・産業医や学校側で次の調整を具体化しやすくなります。
勤務先や学校へ伝える内容は、診断名の詳しさより、実際に難しくなる作業、保てている機能、配慮が必要な期間を中心に整理できます。困る機能・必要な期間・次に見直す日を具体化すると、過度に広い情報共有を避けながら、試行と再評価を進めやすくなります。
支障が出る時期、難しい業務、保てている業務、希望する調整、必要な期間、共有してよい情報の範囲をメモします。診断名だけでなく、働く機能と具体的な対応を中心に相談します。
| 場面 | 困りごと | 相談できる工夫 |
|---|---|---|
| 学校 | 欠席、集中困難、試験、体育、対人トラブル。 | 保健室、担任・学生相談、試験や提出の扱い、保護者との共有範囲を確認。 |
| 家庭 | 家事・育児負担、口論、一人になる時間がない。 | 家事分担、重要な話し合いの時期、タイムアウトの合図、危機時の連絡先。 |
| パートナー | 拒絶への過敏さ、強い言い方、関係への悲観。 | 症状が安定した時期に、本人が望む支援と望まない対応を具体化。 |
| 一人暮らし | 危機時に孤立、食事・服薬・受診が止まる。 | 定時連絡、緊急連絡先、オンライン連絡、受診同行を事前に決める。 |
労働基準法第68条は、生理日の就業が著しく困難な方が休暇を請求したときの取扱いを定めています。月経前のPMS・PMDDへ自動的に適用されると断定はできません。勤務先独自の休暇、年次有給休暇、フレックス、在宅勤務、治療と就業の両立支援制度なども含めて確認してください。
症状、診断、治療経過、具体的な業務、必要な期間を診察で確認し、医学的に必要な内容を判断します。希望する配慮がそのまま認められることを保証するものではなく、最終的な就業上の措置は勤務先が検討します。
PMS・PMDDは、思春期、妊娠を考える時期、産後、周閉経期で診断と治療の優先順位が変わります。年齢だけで治療を決めず、月経・排卵、生活環境、妊娠可能性、併存症を確認します。
| 時期 | 特徴・注意点 | 主な連携 |
|---|---|---|
| 思春期 | 月経周期が不安定なことがあり、学校生活、家庭環境、摂食、いじめ、自傷、発達特性を含めて評価。若年者のSSRI賦活化にも注意。 | 保護者、小児科・婦人科、学校、精神科・心療内科。本人のプライバシーと安全を両立。 |
| 妊娠希望 | 妊娠時期、避妊の終了、精神疾患の再発リスク、薬の継続・変更を事前に検討。自己中止を避ける。 | 婦人科・産科と精神科・心療内科。必要に応じ薬剤師。 |
| 妊娠・産後 | 妊娠中はPMS・PMDDは一般に消失しますが、うつ病・不安症・双極症は別に管理。産後は睡眠不足と気分変化を注意深く評価。 | 産科、精神科、自治体・周産期支援。授乳を含め薬を個別評価。 |
| 周閉経期 | 周期不順、ほてり、睡眠障害、抑うつ・不安が重なり、2周期の比較が難しいことがあります。HRTのプロゲストーゲンに伴うPMS様症状も確認します。 | 婦人科で周閉経期・身体疾患・ホルモン治療を評価し、精神科で持続する気分症状を評価。 |
欠席だけで重症度を決めない:登校していても、保健室利用、集中困難、友人関係、家庭での反動を確認します。
月経痛と出血を同時に見る:痛みや過多月経が強い場合は、婦人科・小児科で身体評価を受けます。
安全を優先する:自傷、希死念慮、摂食、家庭内暴力、性被害などは、周期記録の完成を待たず対応します。
本人の言葉を尊重する:保護者への説明が必要な場合も、本人へ共有範囲と理由を説明します。
「いつか希望する」段階から伝えて構いません。抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬、OC・LEPなどの選択は、妊娠を考える時期によって変わります。薬を止めること自体が安全とは限らないため、症状が安定している時期に計画します。
妊娠中、授乳期の無月経、閉経後に続く抑うつ・不安は、うつ病、周産期メンタルヘルス、周閉経期、甲状腺疾患など別の評価が必要です。以前PMDDがあった方でも、現在の症状を改めて診断します。
症状の原因、薬の適応、検査、婦人科との連携は一人ひとり異なります。生活への支障がある、自己調整する薬が増えている、月経後にも症状が続く場合は、医療機関へご相談ください。
本ページは、2026年7月時点で確認できる国内外の診療指針、原著論文、公式資料、電子添文に基づく一般情報です。統計は対象者・評価方法により異なり、個人の診断確率を示すものではありません。診断・薬の適応・検査・連携は診察で個別に判断します。