


「頭の両側を締めつけられる」「首や肩のこりと頭痛が続く」「鎮痛薬を使う日が増えた」「片頭痛なのか分からない」。頭痛が繰り返すと、仕事や学業への集中、家事、外出、欠勤・早退などに影響することがあります。緊張型頭痛は、痛み方と頭痛日数を確認し、片頭痛や危険な二次性頭痛を除外して診断します。
緊張型頭痛は、本人の意志の弱さや「肩こり」だけで起こるものではありません。「締めつける」「両側が痛む」という訴えだけで診断が確定するわけでもありません。片頭痛でも両側性や締めつけ感、首のこりを伴い、両者が併存することがあります。発作ごとの悪心、光・音過敏、動作との関係を確認します。
当外来では、突然の激痛、発熱、神経症状など二次性頭痛の危険サインを先に確認します。そのうえで、頭痛日数、鎮痛薬使用日数、生活への支障、睡眠、仕事環境、心理的負担を頭痛日記で整理します。安全性と薬の使用日数を確認し、運動や作業環境の調整、急性期薬、必要時の予防療法を選び、数字で再評価します。
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緊張型頭痛外来では、頭全体を帯で締めつけるような痛み、後頭部から首・肩へ広がる重さ、夕方に強まる頭痛などを診察します。一般に「緊張性頭痛」と呼ばれることがありますが、国際頭痛分類と国内ガイドラインで用いる正式名称は緊張型頭痛です。国際頭痛分類では、頭痛が起こる頻度により稀発反復性、頻発反復性、慢性に分け、頭蓋周囲筋の圧痛の有無も付記します。同じ「緊張型頭痛」でも、まれで軽い型と頻発・慢性の型では生活への影響と必要な治療が異なります。
日本では、1990年代に15歳以上を対象として行われた全国調査に基づき、年間有病率は約22%(報告値22.4%)とされ、一次性頭痛のなかで最も一般的です。この数字は現在の有病率を直接測定したものではなく、調査方法、対象、用いた診断基準によって値は変わります。有病率が高いことは、目の前の頭痛が緊張型頭痛で安全だと示すものではありません。片頭痛、薬剤の使用過多による頭痛、頸部・顎・眼の病気、脳血管障害や感染症などを見落とさない整理が必要です。
痛む場所、性質、強さ、持続時間、随伴症状を確認します。
頭痛日数と鎮痛薬使用日数を別々に数え、病型を判断します。
突然の激痛、発熱、神経症状、妊娠・産後などを確認します。
薬だけでなく、運動、睡眠、仕事環境、心理的負担を整えます。
「肩こりがあるから緊張型頭痛」とは限りません。片頭痛でも首のこりを伴い、緊張型頭痛と片頭痛が併存することもあります。診断名を先に決めず、頭痛日記と診察から分けます。
治療目標は痛みを完全にゼロにすることだけではありません。頭痛日数、鎮痛薬使用日数、欠勤・早退、家事や学業の中断、睡眠への影響を比べ、生活の選択肢が広がっているかを確認します。

典型的には、両側性で、圧迫感または締めつけ感があり、軽度から中等度の頭痛です。歩行や階段昇降のような日常動作で悪化しにくく、反復性では通常、悪心や嘔吐を伴いません。
症状を整理するときは「肩こり頭痛」と先に決めず、月に何日あるか、いつ始まり何時間続くか、仕事・家事・睡眠へどの程度影響したか、鎮痛薬を使った日数まで記録します。欠勤や途中休憩も残します。頭痛日数と薬の使用日数を分けると、反復性か慢性か、薬剤使用過多が重なっていないかを評価しやすくなります。
毎回同じ型とは限らないため、左右、圧迫感か拍動感か、動作での悪化、吐き気、光・音のつらさを発作ごとに残します。突然始まって短時間で最も強くなる頭痛、新しい神経症状、回数や性質の明らかな変化がある場合は、従来の緊張型頭痛として様子を見ず、救急を含む早急な評価を受けます。
「ズキズキしない」「仕事は続けられる」だけで診断は決まりません。片頭痛でも両側性や非拍動性のことがあり、緊張型頭痛でも集中困難や疲労を伴います。発作ごとの組み合わせを記録します。
麻痺、ろれつ困難、けいれん、意識の変化、発熱と首の硬さ、片眼の痛みと視力低下は、緊張型頭痛の通常症状として扱いません。
国際頭痛分類第3版では、反復性緊張型頭痛は原則として同様の頭痛が10回以上あり、持続時間、痛みの特徴、随伴症状、ほかの疾患で説明されないことを組み合わせて診断します。
① 持続時間
頭痛は30分から7日続く。
② 痛みの特徴
両側性、圧迫・締めつける非拍動性、軽度〜中等度、日常動作で悪化しない、の4項目中2項目以上。
③ 悪心・嘔吐
反復性では悪心や嘔吐を伴わない。
④ 光・音過敏
反復性では光過敏と音過敏があっても、どちらか一方のみ。
⑤ 他疾患との区別
ほかのICHD-3診断でよりよく説明されない。
⑥ 回数・日数
頭痛日数により稀発反復性、頻発反復性、慢性に分類する。
慢性緊張型頭痛では、光過敏、音過敏、軽度の悪心のうち一つだけを伴うことがありますが、中等度以上の悪心や嘔吐は認めません。慢性型では持続時間が数時間から数日、または絶え間ないことがあります。
早めの服薬で持続時間が短い、複数の頭痛が混在する、症状を思い出せない場合があります。基準を一部欠く「緊張型頭痛の疑い」も含め、経過を見て診断します。
頭痛の特徴に加えて、月ごとの発生日数と持続期間を頭痛日記で確認します。
頭痛日が少ない時期でも、特徴と誘因、生活への影響を記録します。
頭痛日が増えてきたら、薬の使用日数と非薬物療法の実行可能性を確認します。
長い期間にわたり高頻度で続く場合は、併存症や薬剤使用過多も含めて再評価します。
区分は自己診断のためではありません。正確な日数基準と診断は、頭痛の性質や他疾患の除外を含めて医師が判断します。
病型は痛みの強さではなく、主に1か月の頭痛日数と持続期間で分けます。病型が変われば、頓服中心か予防療法を組み合わせるかも変わります。
同様の頭痛が10回以上あり、平均月1日未満(年間12日未満)。支障が小さければ医学的管理を要しないこともあります。
3か月を超えて平均月1〜14日、年間12日以上180日未満。予防療法を検討することがあります。
3か月を超えて月15日以上、年間180日以上。軽い日を含めて頭痛日を数えます。
各病型を、頭蓋周囲筋の圧痛を伴う型と伴わない型に細分類します。
慢性型は頻発反復性から進展することがあり、頭痛自体がストレスとなって睡眠、気分、活動量を悪化させる循環が生じます。鎮痛薬の使用過多が併存する場合は、慢性緊張型頭痛と薬剤の使用過多による頭痛の両方を診断します。
月14日と15日は治療上の絶対的な境界ではありません。日数、支障、薬の使用、持病、本人の希望を合わせて治療します。
緊張型頭痛と片頭痛は併存し得ます。発作ごとに特徴を分けないと、片頭痛発作に鎮痛薬を重ねたり、緊張型頭痛に片頭痛専用薬を使ったりして、効果判定が難しくなります。
片頭痛
拍動性、中等度〜重度、動作で悪化、悪心・嘔吐、光と音の両方がつらい等が手掛かりです。ただし両側性や締めつけ感もあります。
群発頭痛・三叉神経自律神経性頭痛
片眼周囲の激痛、涙、鼻水、瞼の下垂、落ち着かず動き回る状態は別の治療が必要です。
頸性頭痛
首の病変や可動域制限と時間的に関連し、首の動きや圧迫で誘発される場合に検討します。
顎関節症・歯科疾患
開口、咀嚼、食いしばりで悪化し、顎関節や咀嚼筋に痛みがある場合は歯科・口腔外科評価を検討します。
眼科・耳鼻科疾患
眼痛、視力低下、充血、副鼻腔症状、耳症状がある場合は該当科の評価が必要です。
新規発症持続性連日性頭痛
始まった日をはっきり覚え、その後24時間以内に持続性となった頭痛は別の一次性頭痛を検討します。
高血圧があるだけで頭痛の原因とは限りませんが、著しい血圧上昇と神経症状、胸痛、息苦しさ等を伴う場合は緊急評価が必要です。診断名ではなく、今起きている症状の組み合わせで判断します。
| 確認する特徴 | 主な手掛かり | 追加で伝えること |
|---|---|---|
| 緊張型頭痛 | 両側、圧迫・締めつけ、軽度から中等度 | 動作、悪心、光・音との関係 |
| 片頭痛 | 拍動性、中等度から重度、動作で悪化 | 悪心、光・音過敏、前兆 |
| 別の頭痛や身体疾患 | 眼・耳鼻・顎・首の症状、突然の変化 | 神経症状、胸痛、息苦しさなど |
主な手掛かり両側、圧迫・締めつけ、軽度から中等度
追加で伝えること動作、悪心、光・音との関係
主な手掛かり拍動性、中等度から重度、動作で悪化
追加で伝えること悪心、光・音過敏、前兆
主な手掛かり眼・耳鼻・顎・首の症状、突然の変化
追加で伝えること神経症状、胸痛、息苦しさなど
新しい強い頭痛や神経症状がある時は、緊張型頭痛と思い込まず緊急性を評価します。
突然の激しい頭痛
急に悪化する頭痛
発熱や項部硬直
麻痺・言語障害
意識や歩行の異常
がん・免疫低下・妊娠産褥
119や救急相談
自分で運転しない
発症時刻と薬を伝える
危険サインがある場合は、通常の外来予約を待たず救急受診を検討します。当院は救急医療の代替ではありません。
緊張型頭痛がある方にも、別の病気による頭痛は起こります。次の症状では通常の外来予約を待たず、救急医療機関、脳神経内科・脳神経外科などでの評価を優先してください。
■突然始まり、1分以内に最強になる頭痛
くも膜下出血、脳血管疾患などを除外します。
■麻痺、しびれ、ろれつ困難、意識変化、けいれん
脳卒中、感染症、てんかんなどとの区別が必要です。
■発熱、首の硬さ、発疹、強い全身症状
髄膜炎などの感染症を確認します。
■妊娠中・産後6週間以内の新しい強い頭痛
高血圧関連疾患、脳静脈血栓症などを確認します。
■片眼の強い痛み、充血、急な視力低下
急性緑内障発作など眼科救急を考えます。
早めに身体診療へつなぐ目安:頭部外傷後、がん・免疫低下、抗凝固薬使用中、50歳以降の新規頭痛、急速な悪化、体位・咳・運動で誘発、朝の嘔吐、性質が変わった頭痛。
危険サインが一つあるだけで重い病気と決まるわけではありません。しかし、「いつもの緊張型頭痛」と自己判断して鎮痛薬だけで様子を見ないことが安全につながります。
初診では、痛む場所だけでなく、始まり方、持続、月の日数、動作との関係、悪心、光・音過敏、神経症状、月経、睡眠、仕事、服薬を確認します。過去の頭痛と今回の頭痛が同じかも重要です。
初発年齢、急か徐々か、頻度の変化、無痛日、最近の性質変化を確認します。
処方薬、市販薬、総合感冒薬、鎮痛薬、カフェイン、サプリメントを確認します。
血圧、意識、脳神経、筋力、感覚、歩行、眼底、首・顎、頭蓋周囲筋などを必要に応じて診ます。
睡眠障害、うつ病、不安症、歯ぎしり、顎関節症、貧血、甲状腺疾患等を確認します。
典型的な緊張型頭痛で神経診察が正常、危険サインがなければ、画像検査を一律に行う必要はありません。画像は安心のためだけに行うのではなく、検査で答えるべき疑問があるかを考えて選びます。
血液検査、MRI、CT、眼科・歯科・耳鼻科・婦人科等への紹介は、症状と診察所見に応じて検討します。当院で実施できない検査や緊急評価が必要な場合は、対応可能な医療機関へつなぎます。

頭痛日記は診断のためだけでなく、治療前後の頭痛日数、薬を使った日数、生活への支障を同じ尺度で比べる道具です。強い発作だけを思い出して月全体を判断しないよう、その日のうちに短く残します。軽い頭痛の日と、まったく痛くなかった日も分けます。
頭痛日と服薬日は別々に数えます。1日に頭痛が複数回あっても月の頭痛日は1日、薬を複数回使っても服薬日は1日です。ただし、日数だけでなく薬名・成分・1回量・回数も残し、市販鎮痛薬や総合感冒薬も含めます。
薬の効果は、痛みが下がったかだけでなく、仕事や家事を再開できたか、睡眠への影響が減ったか、追加服用や副作用がなかったかでも確かめます。薬剤の使用過多による頭痛は錠数だけで決まらず、頭痛日数と薬の種類別の使用日数が数か月続くことを組み合わせて医師が判断します。使用日が増える傾向は診断基準に達する前から治療を見直す手掛かりです。長文は不要で、1日1行や記号でも構いません。日記だけを根拠に処方薬を急に中止・減量せず、診察で相談してください。
① 頭痛の有無と強さ
軽度・中等度・重度、仕事や家事を続けられたか。
② 痛みの特徴
両側・片側、締めつけ・拍動、動作で悪化したか。
③ 随伴症状
悪心、嘔吐、光・音過敏、神経症状。
④ 薬の使用
薬名、時刻、用量、追加服用、効き始め、使用した日数。
⑤ 生活との関係
睡眠、月経、食事、勤務、画面作業、運動、心理的負担。
⑥ 無痛日と支障
頭痛がなかった日、欠勤・早退、中断した予定。
HIT-6は過去4週間の頭痛による支障をみる質問票で、一般に36〜49点は影響がほぼない、50〜55点はある程度、56〜59点は大きい、60点以上は極めて大きい影響の目安です。点数だけで診断や治療を決めず、本人が困る場面と合わせて使います。
毎日細かく記録することが負担なら、頭痛日数、鎮痛薬使用日数、休んだ日の3項目から始めます。
緊張型頭痛の仕組みは完全には解明されていません。反復性では頭頸部の筋・筋膜など末梢からの痛み入力、慢性型では痛みの感じやすさが変化する中枢性感作が、より重要と考えられています。
筋肉の硬さだけで頭痛を説明しません。押して痛い場所、姿勢、活動量、睡眠、服薬、片頭痛の併存を一緒に評価します。痛みが長いほど強く揉む、首を勢いよく矯正する、といった自己流の刺激は悪化や外傷につながる場合があります。
診断を確認し、生活・非薬物療法と急性期治療を組み合わせ、必要時に予防療法を検討します。
頭痛日記
危険サイン除外
片頭痛との区別
姿勢・運動・休息
急性期薬の適正使用
必要時の予防療法
頭痛日数
薬の使用日数
生活機能と副作用
鎮痛薬だけに頼らず、薬剤使用過多を避けながら、本人の生活と続けやすさに合わせて計画を調整します。
治療は病型と支障に合わせます。稀発反復性で支障が小さければ、正しい診断、生活調整、必要時の急性期薬で十分なことがあります。頻発反復性や慢性型では、非薬物療法と予防療法を組み合わせます。
二次性頭痛の危険サインと、緊急に身体診療が必要かを確認します。
緊張型頭痛、片頭痛、その他の頭痛を頭痛日記で分けます。
頭痛日数、薬使用日数、欠勤・早退、活動制限から優先目標を決めます。
運動、作業環境、睡眠、食事、心理的負担への対処を選びます。
急性期薬の効果と安全性、使用日数、予防薬の必要性を検討します。
4〜8週間程度の記録を比較し、続ける・変える・紹介するを判断します。
頻度が高い頭痛に頓服だけを繰り返すと、薬剤の使用過多に進むことがあります。効かなかったから追加した回数も含め、月に何日使ったかを確認します。
診断、説明、セルフマネジメント、非薬物療法、急性期治療、予防療法を組み合わせ、最小限の負担で継続できる計画を作ります。

非薬物療法は、薬が使えない場合だけの代替ではなく、すべての緊張型頭痛で検討する治療です。まず頭痛日記から、頭痛日数、痛みで中断した活動、鎮痛薬を使った日、回復までの時間を確認します。複数の方法を一度に義務化せず、続けられる一〜二項目から試すことが大切です。運動や体操は、体調のよい日に短時間から始め、翌日まで痛みが強く残らない負荷へ調整します。痛みを我慢して回数や強度を上げる必要はありません。めまい、しびれ、脱力、新しい強い痛みが出た場合は中止し、別の原因を確認します。効果は痛みの点数だけでなく、仕事・家事へ戻れたか、薬の使用日が減ったかでも振り返ります。実施する時間帯、回数、休む目安を先に決め、頭痛が軽い日にも短く続けられる形にします。一回ごとの痛みだけでなく、週ごとの頭痛日数・活動制限・薬使用日数を同じ方法で比べると、続ける方法と見直す方法を選びやすくなります。首肩の運動後に症状が増える場合は、回数・動かす範囲・速度のどれが負担かを一つずつ調整します。
有酸素運動と頸肩周囲の軽い運動を、痛みを増やさない範囲で段階的に行います。
肩甲帯と首をゆっくり動かします。めまい、しびれ、強い痛みが出たら中止します。
筋電図等で筋緊張を見える化し、力を抜く練習をします。比較的根拠のある方法です。
呼吸法、漸進的筋弛緩法などを、症状のない時間にも短く練習します。
ストレス、考え方、回避、活動量と頭痛の関係を整理し、対処の選択肢を増やします。
慢性型で検討されることがあります。施術者の資格、衛生、費用、効果を確認します。
理学療法、姿勢矯正、マッサージ、温冷パックは広く行われますが、効果の根拠は方法により限定的です。首を強くひねる矯正、痛みを我慢する強揉み、長時間の固定は避けます。
「正しい姿勢を一日中保つ」より、同じ姿勢を長く続けないことを優先します。30〜60分ごとに短く立つ、目線や椅子の高さを調整する、肩を動かす等を試します。

急性期治療の主体はアセトアミノフェンとNSAIDsです。痛みが軽いうちに適切な1剤を使い、効かなかったときの追加方法と上限を処方時に確認します。薬の選択は、胃腸、腎臓、肝臓、喘息、心血管疾患、妊娠、併用薬によって変わります。
急性期薬は「何を飲んだか」だけでなく、服用理由、服用時刻、服用前の痛み、どの程度・何時間楽になったか、再服用、胃痛・眠気などを頭痛日記へ残します。効いたか不明な薬も記録します。効果が乏しい時に同じ薬を重ね続けず、診断、飲むタイミング、別の治療や予防策を診察で見直します。
鎮痛薬の使用日が増えると、元の頭痛に薬剤使用過多による頭痛が重なることがあります。処方薬と市販薬を合わせた使用日数を確認し、オピオイドは緊張型頭痛の急性期治療には用いません。妊娠、消化管・腎・肝・心血管の病気、抗凝固薬の使用がある方は自己判断で選びません。
| 種類 | 代表例・規格 | 国内での位置づけ・主な注意 |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン | カロナール錠500 500mg 1錠 | 「各種疾患及び症状における鎮痛」の承認範囲。ほかの配合薬との成分重複、肝障害、多量飲酒に注意。 |
| ロキソプロフェン NSAID | ロキソニン錠60mg 60mg 1錠 | 電子添文の承認効能に緊張型頭痛はないが、審査上、保険診療における適応外使用が認められている。胃腸・腎・心血管リスク、喘息、妊娠後期に注意。 |
| イブプロフェン NSAID | ブルフェン錠200 200mg 1錠 | ガイドライン掲載薬だが、緊張型頭痛としては保険適用外。ほかのNSAIDsと重ねず、胃腸・腎・心血管リスク等を確認。 |
| ナプロキセン NSAID | ナイキサン錠100mg 100mg 1錠 | ガイドライン掲載薬だが、緊張型頭痛としては保険適用外。消化性潰瘍、腎障害、喘息、抗凝固薬等を確認。 |
| メフェナム酸 NSAID | ポンタールカプセル250mg 250mg 1カプセル | 電子添文で「頭痛(他剤が無効な場合)」が承認されている。用法・禁忌を確認し、胃腸・腎・血液障害等に注意。 |
| 抗不安薬 ベンゾジアゼピン受容体作動薬 | デパス錠0.5mg エチゾラム0.5mg 1錠 | エチゾラムは電子添文で「筋収縮性頭痛における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張」が承認され、ガイドラインでは不安が強い反復性緊張型頭痛で鎮痛薬に頓用で加える限定的な補助選択肢。RCTの全体解析ではNSAID単独との差は有意ではありません。漫然投与を避け、依存・離脱、眠気・ふらつき、飲酒との併用に注意し、服用中は自動車運転等をしません。 |
NSAIDs同士を重ねて服用しません。市販の鎮痛薬・総合感冒薬にも同じ成分やNSAIDsが含まれることがあります。アセトアミノフェンも重複すると過量になり得ます。
痛みへの治療に加えて、強い不安や筋緊張、自律神経症状を評価し、必要に応じて補助薬を検討します。鎮痛薬とは異なる役割の薬を、症状に応じて使い分けます。
| 主な商品名 | 成分名 |
|---|---|
| グランダキシン | トフィソパム |
グランダキシンは自律神経調整薬です。更年期障害、自律神経失調症、頭部・頸部損傷などに伴う自律神経症状のうち、頭痛・頭重、動悸、発汗などが使用対象です。緊張型頭痛そのものの標準的な鎮痛薬とは区別します。
| 主な商品名 | 成分名 |
|---|---|
| デパス | エチゾラム |
| セルシン ホリゾン | ジアゼパム |
| ワイパックス | ロラゼパム |
| コンスタン ソラナックス | アルプラゾラム |
| レキソタン | ブロマゼパム |
デパス:筋収縮性頭痛に伴う不安・緊張や筋緊張などに対する補助薬です。頭痛の治療では不安が強い場合に頓用で検討しますが、鎮痛薬への上乗せ効果の根拠は限定的です。
セルシン・ホリゾン:併存する強い不安・緊張などに対して検討する薬です。緊張型頭痛自体への承認適応はなく、頭痛に一律に使う鎮痛薬ではありません。
ワイパックス・コンスタン・ソラナックス・レキソタン:併存する不安・緊張に対して検討する補助薬で、緊張型頭痛そのものの標準的な鎮痛薬・予防薬ではありません。
共通の注意点:眠気・ふらつき・注意力低下などに注意が必要です。服用中は運転・飲酒を避け、睡眠薬などとの併用を処方医に確認します。グランダキシンにも、眠気や依存への注意があります。
必要性と使用期間を定期的に見直し、漫然と使い続けません。特にベンゾ系は連用による依存や急な減量・中止による離脱症状があるため、自己判断で増量したり、継続中の薬を急に中止したりせず、処方医と相談します。
頻発反復性または慢性緊張型頭痛で、生活への支障が大きい、急性期薬の使用日数が増える、非薬物療法だけでは不十分な場合に予防療法を検討します。目的は鎮痛薬を毎日使うことではなく、頭痛日数と支障を減らすことです。
| 種類 | 代表例・規格 | 国内での位置づけ・主な注意 |
|---|---|---|
| 三環系抗うつ薬 | アミトリプチリン塩酸塩錠10mg 10mg 1錠 | 第一選択として検討。電子添文の承認効能に緊張型頭痛はないが、審査上、保険診療における適応外使用が認められている。眠気、口渇、便秘、尿閉、緑内障、心電図異常、過量服薬リスクを確認。 |
| その他の抗うつ薬 | ミルタザピン、ベンラファキシン等 | 研究結果は一定せず、緊張型頭痛として国内承認・保険適用なし。うつ病・不安症等の診断がある場合は、その疾患の治療として別に判断。 |
| 効果が確立していない薬 | SSRI、チザニジン、プロプラノロール、バルプロ酸等 | 緊張型頭痛の予防目的で有効性は確立していない。肩こりや不安だけを理由に漫然と追加しない。 |
アミトリプチリンは一般に少量から開始し、眠気や口渇、便秘、ふらつき等を確認しながら調整します。効果はすぐに判断せず、頭痛日数と支障を比較します。ガイドラインでは予防療法を6〜12か月ごとに再評価する考え方が示されています。
抗うつ薬を急に中止・増減しません。心疾患、閉塞隅角緑内障、前立腺・排尿障害、双極症、自殺リスク、併用薬、運転業務等を確認します。
鎮痛薬を頻繁に使う状態が3か月を超えて続き、頭痛が月15日以上ある場合は、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を検討します。本人の意志が弱いからではなく、発作が抑えられず使用日数が増えた結果として起こる治療上の問題です。
① 頭痛日数
以前から頭痛疾患があり、頭痛が月15日以上。
② 期間
急性期・対症薬の過剰使用が3か月を超える。
③ 単純鎮痛薬・NSAIDs
アセトアミノフェンやNSAIDsは合計で月15日以上が診断上の目安。
④ 配合鎮痛薬等
複合鎮痛薬、トリプタン、エルゴタミン、オピオイド等は月10日以上が目安。
⑤ 日数で数える
1日に複数回飲んでも「1日」。種類を替えた日も合計使用日で確認。
⑥ 両方を診断
もとの緊張型頭痛・片頭痛とMOHを併記して治療する。
治療は、過剰使用薬の中止・減量、離脱期の支援、もとの頭痛への予防療法を組み合わせます。オピオイド、鎮静薬、重い併存症、過去に中止が難しかった場合は、自己判断で急に中止せず専門的な計画が必要です。
診断基準に達する前から予防します。国内ガイドラインは急性期薬を週2〜3日以上使わないよう注意を促しています。月の日数が増えたら早めに治療を見直します。
| 記録欄 | 書く内容 | 診察で見ること |
|---|---|---|
| 頭痛 | 発生日、強さ、持続、生活への影響 | 月の頭痛日数と変化 |
| 薬 | 使用日、種類、回数、効き方 | 種類を替えた日も合計使用日で確認 |
| 生活 | 睡眠、仕事、欠勤、活動 | もとの頭痛と生活要因の関係 |
| 見直し | 副作用、増量、追加購入 | 予防療法や減量計画の必要性 |
書く内容発生日、強さ、持続、生活への影響
診察で見ること月の頭痛日数と変化
書く内容使用日、種類、回数、効き方
診察で見ること種類を替えた日も合計使用日で確認
書く内容睡眠、仕事、欠勤、活動
診察で見ることもとの頭痛と生活要因の関係
書く内容副作用、増量、追加購入
診察で見ること予防療法や減量計画の必要性
ストレス、不安、抑うつ、睡眠不足は緊張型頭痛を悪化させることがありますが、頭痛が気のせいという意味ではありません。痛みと睡眠・気分は相互に影響するため、それぞれを治療対象として整理します。
就床・起床時刻、睡眠時間、中途覚醒、いびき、日中の眠気を確認します。
欠食、過度なカフェイン、飲酒、脱水を記録し、極端な制限を避けます。
頭痛の結果なのか、独立した疾患なのかを診断し、必要な治療を選びます。
起床時の顎疲労、歯の摩耗、開口痛があれば歯科・口腔外科を検討します。
痛みを恐れて動かない日と、無理をして反動が出る日の波を小さくします。
コーヒーだけでなく茶、栄養飲料、鎮痛薬の配合成分も合計します。
睡眠時無呼吸症候群、うつ病、不安症等が疑われる場合は、頭痛とは別に評価します。薬を使う場合も、どの診断を何の目的で治療するかを明確にします。

仕事や学校では、痛みを完全に防ぐことより、悪化しにくい環境と早めに調整できる手順を作ります。まず、頭痛が始まる時刻、直前の作業、連続して画面を見た時間、休憩後の変化、帰宅後や翌日までの回復を記録します。画面、会議、運転、重い装備、夜勤など負担を場面ごとに分けると、必要な調整を具体化しやすくなります。姿勢を一日中固定するのではなく、椅子・画面・照明を整え、短い休憩で姿勢と視線を変えます。休憩を取った結果と、取れなかった日の差も治療の手掛かりです。本人だけの努力にせず、可能な業務、避けたい連続作業、休憩場所、勤務時間を職場・学校と相談します。配慮は固定せず、開始日と見直す時期を決めて効果を再評価します。
画面と机
目線、椅子、肘、キーボード、照明、反射を調整し、同じ姿勢を長く続けません。
短い休憩
30〜60分ごとに1〜2分、立つ、遠くを見る、肩を動かす等を試します。
勤務・授業調整
長時間連続作業、夜勤、休憩困難、重い装備など具体的な負担を整理します。
合理的配慮
休憩、席、照明、在宅勤務、時差出勤、保健室利用等を必要に応じて相談します。
運転・危険作業
眠気を起こす予防薬の開始・増量時は、自動車運転や機械操作の可否を確認します。
目標
欠勤だけでなく、能率低下、早退、残業後の悪化、休日の寝込みも評価します。
診断書は「頭痛がある」だけでなく、困る機能と必要な配慮を具体化します。職場・学校に開示する範囲は本人と相談します。
妊娠、授乳、年齢だけで一律に薬を禁止・許可しません。頭痛の危険性、薬を使わない不利益、妊娠週数、児の月齢、腎肝機能、転倒リスクを合わせて判断します。
新しい強い頭痛、血圧上昇、むくみ、視覚症状、神経症状は身体評価を優先します。
アセトアミノフェンを含め必要最小限を個別検討します。NSAIDsは妊娠後期禁忌の製剤があります。
薬の母乳移行、児の月齢、服用時刻、短期・長期使用を確認し、自己判断で授乳を中止しません。
学校生活、睡眠、視力、いじめ、欠食を確認します。用量は体重等に基づき、成人薬を流用しません。
50歳以降の新規頭痛は二次性頭痛を確認し、腎機能、胃腸出血、転倒、併用薬に注意します。
予防薬、NSAIDs、持病薬を妊娠前に見直します。自己判断で急に中止しません。
妊娠中・産後の突然の頭痛、神経症状、けいれん、意識変化、著しい血圧上昇は救急評価が必要です。
当院では、頭痛の経過と日記の整理、心理・睡眠・仕事への影響の評価、処方可能な範囲の急性期・予防治療、必要な診療科への紹介を行います。緊張型頭痛という名称だけで薬を決めず、危険サインと併存症を確認します。
頭痛の特徴、神経症状、頭痛日数、薬使用日数、生活支障を確認します。
日記、生活調整、非薬物療法、薬の利益と不利益を共有します。
脳神経内科・脳神経外科、救急、眼科、歯科、婦人科等へつなぎます。
頭痛日数、薬使用日数、支障、副作用を比較し治療を調整します。
突然の最悪の頭痛、新しい麻痺・ろれつ困難・意識変化・けいれん、発熱と首の硬さ、妊娠・産後の新しい強い頭痛、頭部外傷後の悪化では、救急車を要請するか救急医療機関へ相談してください。
救急性がなくても、月4日以上で支障がある、月15日以上続く、薬を週2〜3日以上使う、頭痛の性質が変わった、薬の副作用がある場合は、早めの診察をご検討ください。
本文中に引用番号は置かず、診断・治療・薬剤の確認に用いた資料をまとめています。電子添文、診療報酬上の取扱いは更新されるため、診察時に最新情報を確認します。
1. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修:頭痛の診療ガイドライン2021
3. ICHD-3:Tension-type headache
4. ICHD-3:Infrequent episodic tension-type headache
5. ICHD-3:Frequent episodic tension-type headache
6. ICHD-3:Chronic tension-type headache
7. ICHD-3:Medication-overuse headache
8. ICHD-3:Simple analgesic-overuse headache
9. NICE CG150:Headaches in over 12s—Recommendations
11. NICE:Treatments for tension-type headache
12. Do TP, et al. Red and orange flags for secondary headaches: SNNOOP10 list. Neurology. 2019
13. ACR Appropriateness Criteria: Headache
14. PMDA:カロナール錠200/300/500 医療用医薬品情報
15. PMDA:ロキソニン錠60mg/細粒10% 医療用医薬品情報
17. PMDA:医療用医薬品情報検索
18. 社会保険診療報酬支払基金:アミトリプチリン塩酸塩(片頭痛・緊張型頭痛)審査情報提供事例275
19. 社会保険診療報酬支払基金:医薬品の適応外使用に係る審査情報提供事例
20. Bendtsen L, et al. EFNS guideline on the treatment of tension-type headache. Eur J Neurol. 2010
21. Jensen RH. Tension-Type Headache—The Normal and Most Prevalent Headache. Headache. 2018
27. Linde K, et al. Acupuncture for tension-type headache. Cochrane Database Syst Rev. 2009
34. World Health Organization:Headache disorders
35. International Association for the Study of Pain:Terminology
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39. NICE:Headaches in over 12s—Diagnosis information for the public
42. PMDA:グランダキシン錠50(トフィソパム)電子添文