

「眠りが浅く、朝から疲れている」「緊張すると喉がつまる感じがする」「不安や動悸に加えて胃腸の調子も崩れる」「月経や更年期の時期にイライラや気分の波が強い」。心の不調は、身体の感覚や生活リズムと重なって現れることがあります。
漢方メンタル外来では、精神科・心療内科として診断と安全評価を行ったうえで、漢方薬を治療選択肢の一つとして検討します。漢方薬だけに限定せず、標準的な薬物療法、心理療法、睡眠や生活の調整、休養と組み合わせます。
同じ「不眠」「不安」でも、喉のつかえ、動悸、冷え、ほてり、胃腸症状、疲れ方、月経との関係などで処方候補は変わります。病名だけでなく、現在の症状と経過をまとめて評価します。
「漢方メンタル外来」では、うつ病、不安症、睡眠障害、双極症、身体疾患、薬剤の影響などを確認し、必要な治療を組み立てます。
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天然由来であっても、副作用や飲み合わせがあります。別の漢方薬、甘草・グリチルリチンを含む薬、サプリメントの重複を確認し、改善が乏しいまま漫然と続けないことが大切です。
漢方メンタル外来は、不眠、不安、緊張、イライラ、気分の落ち込み、疲労、動悸、喉や胃腸の違和感などについて、精神科・心療内科の診察を行い、漢方薬の適否を検討する専門外来です。
精神科・心療内科の診断、身体疾患や薬剤性の確認、漢方医学上の「証」の評価、処方選択、副作用説明、効果判定、必要時の検査・他科連携を行います。
重いうつ状態、躁・軽躁、精神病症状、強い希死念慮、重いパニック・強迫、摂食障害、アルコールや薬物の離脱などでは、標準治療や休養、入院を優先または併用します。
病名が決まっていなくても相談できます。症状の一部だけで漢方薬を自己選択せず、経過、生活への影響、身体症状、持病、現在の治療を一緒に確認します。
| 症状群 | 確認すること | 必要に応じた対応 |
|---|---|---|
| 不眠・睡眠 | 寝つき、夜間覚醒、早朝覚醒、夢、日中の眠気、勤務時間 | 睡眠習慣の調整、睡眠薬等、睡眠時無呼吸などの評価 |
| 不安・緊張 | 予期不安、動悸、息苦しさ、喉のつかえ、吐き気、回避 | 不安症・パニック症の評価、心理療法、標準薬の検討 |
| イライラ・高ぶり | 怒りっぽさ、落ち着かなさ、音への過敏、寝不足、衝動性 | 双極症、薬剤性、甲状腺機能などの確認 |
| 月経・更年期 | 周期、ほてり、冷え、発汗、肩こり、出血、気分の変化 | 婦人科連携、貧血・甲状腺などの確認 |
| 疲労・身体症状 | 倦怠感、冷え、めまい、胃腸症状、食欲、頭痛、痛み | 内科的評価、生活調整、疾患別の治療 |
副作用への不安、現在の薬で残っている症状、妊娠希望、眠気を避けたい仕事、粉薬の得意・不得意などを確認し、現実的な治療計画を作ります。
漢方薬は、症状と体質に合わせて選ぶ医薬品です。治療の期待を現実的にし、安全性を保つため、次の点を共有します。
治療を始める前に、寝つきまでの時間、夜間覚醒、動悸の回数、食事量など、変化を振り返れる目標を一つか二つ決めます。開始前と服用後を同じ指標で比べ、期待した変化が乏しいときは診断や処方を見直します。
処方薬だけでなく、市販の漢方薬、一般用医薬品、サプリメントも、名前や写真を含めて一つの一覧にしてください。製品名や処方名が違っても、甘草、麻黄、大黄など同じ生薬が重なることがあるため、すべてをまとめて確認します。
服用後の変化に備え、利用できる相談先と、受診を早める目安を開始前に確認します。再診では、良くなった症状だけでなく、変わらない症状、新しく出た不調、実際に服用できた回数も共有してください。処方薬の増減や中止は自己判断で決めず、薬の説明書に直ちに中止・受診とある場合はその指示に従い、薬の名前が分かるものを持って医師・薬剤師へ相談します。
動悸、発汗、胃腸症状、めまい、睡眠の変化には、精神的ストレス以外の原因もあります。甲状腺疾患、貧血、不整脈、睡眠時無呼吸、薬剤性などを必要に応じて確認します。
添付文書の効能・効果、診療ガイドライン、研究報告は処方ごとに位置づけが異なります。症状に名前が含まれていても、診察後に適否を判断し、反応を確認します。
「証」は、現在の症状だけでなく、症状の現れ方、体力、食欲、便通、睡眠、冷え・ほてり、発汗、月経との関係、診察所見などを組み合わせて、その時点の心身全体の状態を漢方医学の視点から整理する考え方です。漢方薬を選ぶ際の手がかりとして用います。
同じ不眠や不安でも、喉のつかえが中心なのか、神経の高ぶりが強いのか、冷えや疲労が目立つのか、胃腸が弱っているのかによって、検討する処方は異なります。生活状況、季節、月経周期、治療経過によって状態が変われば、同じ方でも処方を見直すことがあります。
当外来では、まずうつ病、不安症、睡眠障害、双極症などの精神科・心療内科の診断を確認し、身体疾患や薬剤の影響も検討します。そのうえで漢方医学上の「証」を重ね合わせ、治療目標と処方候補を整理します。診断名と「証」はどちらか一方を選ぶものではなく、役割の異なる二つの視点として治療に生かします。
受診前に、ご自身で「証」を判断したり、処方名を決めたりする必要はありません。症状が強い時間帯、食事や睡眠との関係、仕事の日と休日の違い、月経周期や季節による変化など、思い出せる範囲をお聞かせください。つらい時と比較的楽な時の違いも、処方を考える大切な手がかりになります。
服用後は、寝つき、中途覚醒、いら立ち、喉の違和感、食欲などから確認しやすい目標を選び、効果と体調の変化を見直します。症状の組み合わせが変わった時や、期待した変化が乏しい時は、同じ処方を前提にせず、精神科・心療内科の診断や併用治療も含めて再評価します。
精神科・心療内科の診断は、病気の種類、重症度、治療の優先順位を判断する基盤です。「証」は、その時点の心身の状態と漢方処方の候補を整理するために用います。漢方薬を選ぶ場合も、必要な向精神薬、心理療法、休養、身体科の検査・治療を適切に組み合わせます。
処方名を決める前に、症状の経過と安全に使用できる条件を確認します。お薬手帳だけでなく、手帳に載っていない薬やサプリメントもお伝えください。
反応する時期は、処方、症状、重症度、服用状況で異なります。改善が確認できないまま同じ処方を続けず、再評価日を決めます。
診断と安全確認から処方候補、効果判定、継続・変更・中止までを三段階で整理した図
精神科・身体疾患を評価
全薬剤と生薬重複を確認
変化を追う症状を決める
根拠・添付文書・飲みやすさ
効果と副作用を記録
再評価日を先に決める
改善と生活機能を比較
効かなければ診断も見直す
標準治療・他科連携を併用
処方候補を選ぶ時点で、何を目標に、いつ見直すかを決めます。効果・副作用・生活機能を比べ、自己判断で増減・中止せず相談します。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)気分がふさぐ感じとともに、喉や食道に何か詰まっているような違和感、動悸、めまい、吐き気などが重なる場合に検討される処方です。不安や緊張が高まる場面で喉のつかえが強くなる、検査では大きな異常がないものの違和感が続く、眠ろうとすると喉や胸が気になる、といった経過も確認します。
不安・不眠だけでなく、喉や胃などの身体症状を伴うことが、処方を選ぶ際の大切な手がかりです。症状がいつから始まり、食事・会話・仕事・外出などの場面とどう関係しているかも整理します。
飲み込みにくさ、声の変化、長引く咳、体重減少、胸痛などがある場合は、耳鼻咽喉科・消化器内科・呼吸器内科などでの評価を組み合わせます。服用後は、喉の違和感だけでなく、不安、睡眠、食事、仕事への影響が実際に軽くなっているかを確認します。
診察では、つかえ感が空腹時・食後・会話中・緊張時のどこで強まるか、飲み物や食事は通るか、症状のために避けている行動があるかも確認します。喉の症状が出る前後の流れを短くメモしておくと、必要な身体診療と漢方薬で確認する目標を分けやすくなります。
処方名が同じでも、製品によって構成生薬や注意点が異なることがあります。実際に使用する製品と、現在の体調・併用薬を確認して処方します。
加味逍遙散(かみしょうようさん)体質が比較的虚弱で、疲れやすさ、肩こり、精神不安、ときに便秘傾向があり、冷え症、月経不順・月経困難、更年期障害、血の道症などが重なる場合に検討される処方です。病名や一つの症状だけで決めず、体質と心身の症状の組み合わせを確認します。いら立ち、不安、気分の落ち込み、不眠に加え、ほてりと冷え、発汗、頭重感、肩こり、腹部症状など、複数の症状が時期によって一緒に揺れ動くことが処方選択の手掛かりになります。
月経前や更年期など、心と身体の症状が同じ時期に悪化する場合に選択肢となります。「血の道症」とは、月経、妊娠・出産、産後、更年期などに伴って現れる精神不安やいら立ちなどの精神神経症状と身体症状を表す言葉です。ただし、加味逍遙散は女性ホルモンそのものを補う薬ではありません。月経前に悪化して月経開始後に軽くなるのか、更年期を境に持続するのか、月経周期と関係なく続くのかを分け、PMS・PMDD、更年期障害、うつ病や不安症なども含めて整理します。
診察では、症状が強くなる時期と時間帯、冷えとのぼせ、睡眠、便通、食欲、疲れ方、生活への支障を確認します。月経日・症状・服用状況を簡単に記録すると、何がどの程度変わったかを比較しやすくなります。改善したい症状をあらかじめ決め、経過を確認し、改善がみられないまま漫然と続けません。月経量の増加、強い月経痛、不正出血、著しい倦怠感がある場合は、婦人科疾患、貧血、甲状腺疾患など別の原因も確認します。市販の漢方薬やサプリメントを含む服用中の製品は、お薬手帳とともに共有してください。
重大な副作用として、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害・黄疸、腸間膜静脈硬化症があります。胃腸が著しく弱い方や、食欲不振・悪心・嘔吐がある方では症状悪化にも注意します。
牡丹皮を含むため、妊娠中・妊娠の可能性がある場合は安全性を個別に確認します。妊娠を希望している場合も、処方前に必ずお知らせください。
処方名が同じでも、製品によって構成生薬や注意点が異なることがあります。実際に使用する製品と、現在の体調・併用薬を確認して処方します。
抑肝散(よくかんさん)虚弱な体質で神経が高ぶりやすく、いら立ち、怒りっぽさ、落ち着かなさ、不眠などが重なる場合に検討される処方です。いら立ちや怒りがあるだけで機械的に選ぶ薬ではありません。日中の刺激に過敏になり、夜になっても緊張が抜けない、些細なことで感情が大きく動く、寝つきや中途覚醒が悪化するといった経過に加え、症状が現れる時間帯、きっかけ、頻度、生活への影響まで確認します。
神経の高ぶりと睡眠の乱れを、生活状況や身体症状を含めて一緒に評価することが大切です。年齢や病名だけで決めず、胃腸の状態、食欲、疲れ方、便通、併用薬を確認します。睡眠不足、カフェインや飲酒、痛み・かゆみ、環境の変化、甲状腺疾患、ほかの薬の影響でも落ち着かなさは起こり得ます。処方時は改善したい症状を具体的に決め、睡眠時間、いら立ちの回数、本人と家族の負担などを比較し、改善がみられないまま漫然と継続しません。
眠らなくても活動できる、話し続ける、考えが次々に浮かぶ、浪費や衝動的な行動が増える場合は、躁・軽躁を含む別の状態を先に評価します。急に強い混乱や興奮が現れた場合も、感染症、脱水、薬剤など身体的な原因を確認します。抑肝散は甘草を含むため、市販薬やほかの漢方薬を含めた甘草・グリチルリチンの重複を確認します。服用中は血圧、体重、むくみ、脱力、筋肉痛などを確認し、必要に応じて血清カリウム値等を調べます。自己判断で増量したり長期間続けたりせず、効果と安全性を診察で見直します。
胃腸が著しく弱い方では、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などが生じることがあります。もともと食欲不振・悪心・嘔吐がある場合は、症状の悪化にも注意します。
認知症に伴う焦燥や興奮などでは、痛み、便秘、感染症、睡眠、環境の変化などを確認し、環境調整や非薬物的な対応も含めて総合的に検討します。抑肝散を用いる場合は、効果と眠気・ふらつき・低カリウム血症などを定期的に確認します。
処方名が同じでも、製品によって構成生薬や注意点が異なることがあります。実際に使用する製品と、現在の体調・併用薬を確認して処方します。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)抑肝散の構成に陳皮と半夏を加えた処方ですが、抑肝散とは構成生薬が異なる別の処方です。虚弱な体質で神経が高ぶりやすく、怒りやいら立ち、落ち着かなさ、不眠などが重なる場合に検討され、神経症、不眠症などが適応に含まれます。単に抑肝散の「強い薬」「胃腸に優しい薬」と考えず、体質、症状の組み合わせ、続いている期間を確認して選びます。
いら立ちや不眠と、食欲・胃部不快感・悪心・便通などを一緒に確認することが、抑肝散との使い分けの手掛かりになります。緊張が強い日に食事量が落ちる、夜に神経が高ぶると胃もたれも悪化するなど、精神症状と胃腸症状の時間的な関係も確認します。ただし、胃腸が弱い人へ一律に適するわけではありません。もともと食欲不振、悪心・嘔吐、下痢が強い場合は悪化することがあるため、症状の程度と別の消化器疾患の可能性を先に整理します。
服用後は、怒りやすさ、緊張、寝つき・中途覚醒、日中の落ち着きに加え、食事量、胃もたれ、吐き気、便通を記録します。改善したい症状と確認する期間をあらかじめ決め、変化がみられないまま漫然と継続しません。眠らなくても活動できる、話し続ける、考えが次々に浮かぶ、浪費や衝動的な行動が増える場合は、躁・軽躁を含む別の状態を先に評価します。甘草を含むため、ほかの漢方薬や市販薬を含めた甘草・グリチルリチンの重複も確認し、自己判断で抑肝散と入れ替えたり併用したりしません。
食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などが生じることがあります。「胃腸が弱い人向け」と一律に考えず、もともと強い悪心・嘔吐や食欲低下がある場合は、悪化がないか慎重に確認します。
甘草を含むため、むくみ、体重増加、血圧上昇、脱力感、筋肉痛、こむら返りなどに注意します。ほかの漢方薬やグリチルリチンを含む薬と重なる場合は、必要に応じて血圧や血清カリウムなどを確認します。
抑肝散加陳皮半夏と抑肝散は別の処方です。実際に使用する販売名、構成生薬、現在の体調・併用薬を確認して処方します。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)ツムラ医療用製剤の電子添文では、比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状がある方を使用時の目安とし、高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎が効能又は効果として記載されています。これらの病名があれば自動的に選ぶのではなく、体質・症状と処方の適合、必要な標準治療を確認します。精神科・心療内科では、動悸、不眠、いらだちなどの経過を整理しますが、不安症、うつ病、不眠症へ一律に用いる薬ではありません。
精神的な高ぶりと、動悸・胸のつかえ・睡眠・便通などの身体反応を一つの経過として確認することが処方選択のポイントです。仕事や対人関係の負担、症状が出る時刻、安静時の脈拍と血圧、カフェイン・飲酒・喫煙、甲状腺機能、貧血、不整脈、ほかの薬の影響も整理します。動悸や胸部症状をすべてストレスのせいにせず、胸痛、失神、強い息切れ、脈の著しい乱れ、けいれんがある場合は、漢方薬の検討より身体診療を優先します。
名称にある「竜骨」は大型哺乳類の化石化した骨、「牡蛎」は牡蠣の殻を基原とする生薬です。名称や構成生薬だけから効果を決めつけず、服用後は睡眠、動悸、日中の落ち着き、便通、胃部不快感を記録し、改善を確認する期間と目標をあらかじめ決めます。改善がみられないまま漫然と継続せず、販売名による構成の違いと他の漢方薬との生薬重複も確認します。発熱、空咳、息苦しさ、黄疸、濃い尿、著しい倦怠感が現れた場合は、服用を中止して速やかに医療機関へ連絡してください。
ツムラ医療用製剤は大黄・甘草を含みません。一方、JPSやコタローなどの医療用製剤には大黄を含むものがあります。大黄含有製品では、下痢・軟便の悪化、大黄含有薬との重複、妊娠中の流早産リスクに注意します。授乳中は大黄成分が母乳へ移行し、乳児に下痢を起こすことがあります。当院で実際に処方する販売名と添付文書を確認します。
動悸、胸部不快感、血圧の変化などがある場合は、必要な検査や標準治療と組み合わせて安全に用います。胸痛、失神、強い息切れ、けいれんなどは漢方薬だけで様子を見ず、身体診療を優先します。
構成と注意事項は販売名ごとに確認します。処方名だけで成分を断定しないことが、安全な使用の基本です。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)ツムラ医療用製剤の電子添文では、「心身がつかれ弱って眠れないもの」が効能又は効果として記載されています。疲れているのに寝つけない、夜中に目が覚める、眠った感じが乏しいといった訴えがあっても、処方名だけで決めず、疲労の程度、睡眠の経過、日中の眠気や活動への影響を確認します。 受診時には、平日と休日の睡眠、昼寝、交代勤務、就床前の過ごし方を整理し、単なる睡眠時間の長短だけでなく、寝つき、夜間覚醒、早朝覚醒、翌日の回復感を分けて評価します。疲労が強い日ほど長く寝床にいる、夕方に眠って夜に眠れないといった生活上の流れも、処方を考える手掛かりになります。
不眠の背景には、うつ病、不安症、双極症、睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、痛み、甲状腺疾患、カフェインや飲酒、ほかの薬の影響などがあります。眠れない原因と緊急性を整理してから、酸棗仁湯が治療目標に合うかを検討します。睡眠薬の代わりとして一律に用いたり、現在の睡眠薬を自己判断で中止したりはしません。
服用後は、就床時刻、寝つくまでの時間、夜間覚醒、起床時刻、翌日の眠気と回復感を簡単に記録します。胃腸が虚弱な方や、食欲不振、悪心、嘔吐がある方では、胃部不快感、腹痛、下痢などが現れたり悪化したりすることがあります。改善が認められないまま漫然と継続しません。
甘草を含むため、別の漢方薬やグリチルリチン含有薬との重複により、偽アルドステロン症や低カリウム血症に伴うミオパチーが起こりやすくなることがあります。むくみ、体重増加、血圧上昇、脱力、筋肉痛などが現れた場合は相談してください。
不眠の原因と治療目標を確認し、睡眠日誌などで効果と翌日の状態を再評価します。
加味帰脾湯(かみきひとう)ツムラ医療用製剤の電子添文では、虚弱体質で血色の悪い方の、貧血、不眠症、精神不安、神経症が効能又は効果として記載されています。疲れやすさ、不眠、不安、動悸などが重なる場合でも、顔色や自覚症状だけで貧血と決めず、食事量、体重、月経や出血の有無を確認します。 診察では、症状がいつから続き、月経、妊娠・出産、食事量、体重、仕事や介護の負担と連動しているかを時系列で整理します。休んでも疲れが戻りにくい、動くと息切れや動悸が出る、集中が続かないなど、日常生活で困る場面を確認し、必要な血液検査や身体診療につなげます。
息切れ、動悸、めまい、著しい倦怠感、月経量の増加がある場合は、必要に応じて血算、鉄・フェリチンなどを調べ、貧血の原因治療を優先します。漢方薬だけで貧血の評価や標準治療を置き換えません。不眠や精神不安についても、うつ病、不安症、双極症、身体疾患、服薬の影響を区別します。
甘草と山梔子を含むため、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、脱力に加え、長期投与時の腸間膜静脈硬化症にも注意します。腹痛、下痢、便秘、腹部膨満が繰り返す場合や便潜血陽性の場合は、服用を中止して必要な検査を行います。改善する症状と確認期間を決め、漫然と長期継続しません。
血色が悪い、疲れやすいという訴えだけで選ばず、出血、婦人科疾患、消化器疾患、栄養状態などを確認します。山梔子含有製剤の長期投与では、腹部症状の経過と必要な検査を確認します。
帰脾湯とは構成と承認内容が異なるため、販売名・構成生薬・安全性を確認して選びます。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)ツムラ医療用製剤の電子添文では、めまい・ふらつきがある、または動悸があり尿量が減少する方の神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛が効能又は効果として記載されています。めまいや動悸だけで機械的に選ぶのではなく、症状が出る姿勢、時間帯、持続時間、脈拍、血圧、尿量の変化を確認します。 診察では、起床時、立ち上がった時、歩行中、入浴後、緊張場面など、症状が起こる具体的な状況を分けて確認します。回転する感じ、ふわふわする感じ、目の前が暗くなる感じの違いに加え、吐き気、耳鳴り、難聴、胸部症状、転倒の有無も整理し、漢方薬で経過をみてよい状態かを判断します。
ふらつきや動悸には、脱水、貧血、不整脈、起立性低血圧、甲状腺疾患、耳鼻咽喉科疾患、薬の副作用などが関係することがあります。胸痛、失神、強い息切れ、片側の麻痺、言葉の出にくさ、突然の激しい頭痛がある場合は、漢方薬の検討より身体科・救急での評価を優先します。
服用後は、めまい・ふらつきの回数と持続時間、動悸、息切れ、頭痛、尿量、日常生活への影響を記録します。甘草を含むため、ほかの漢方薬やグリチルリチン含有薬との重複を確認し、むくみ、体重増加、血圧上昇、脱力、筋肉痛などに注意します。原因疾患の治療と並行して効果を再評価します。
めまい、動悸、息切れ、頭痛をすべて自律神経やストレスのせいにせず、必要な診察・検査と組み合わせます。安全性を確認できない状態では、漢方薬だけで経過を見ません。
症状の組み合わせと所見を確認し、改善した症状・変わらない症状を区別して継続可否を判断します。
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)+四物湯(しもつとう)「神田橋処方」は、この2剤を組み合わせる呼び名です。単一の製品名ではなく、すべての人に同じように用いる定型処方でもありません。
トラウマに関連するフラッシュバックなどに対して臨床で検討されることがあります。ただし、公開されている根拠は症例報告や限定的な研究が中心で、有効性を確立する高水準の研究は十分ではありません。また、PTSDやフラッシュバックは、両剤の電子添文上の効能・効果には含まれていません。
PTSDが疑われるときは、症状と安全性を評価し、認知処理療法、持続エクスポージャー療法、EMDRなど標準的に推奨される心理療法を含めて治療計画を検討します。この組み合わせだけで標準治療を置き換えることはありません。
桂枝加芍薬湯の甘草が、ほかの甘草含有漢方やグリチルリチン製剤と重なると、偽アルドステロン症、低カリウム血症、ミオパチーが起こりやすくなることがあります。むくみ、急な体重増加、血圧上昇、手足のだるさ・脱力、こむら返りなどが現れた場合は、服用を中止し、速やかに医師または薬剤師へ連絡してください。
診察では、服薬手帳、他院の処方薬、市販薬、サプリメント、妊娠・授乳の可能性、胃腸の状態などを確認します。PTSDやフラッシュバックを目的とする使用は電子添文上の効能・効果とは異なるため、適応と保険診療上の扱いも個別に確認します。
下表は、精神科・心療内科領域の症状と関連して検討されることがある漢方薬の例です。診察では、症状の組み合わせ、続いている期間、体力、持病、併用薬を一緒に確認し、複数の候補からその方に合う処方を検討します。服用後も、改善した症状と変わらない症状、副作用の有無を確認して調整します。
| 処方候補 | 検討時に確認する症状・状態 | 処方前・継続中の確認 |
|---|---|---|
| 酸棗仁湯 TJ-103 | 心身が疲れ弱っているのに眠れない、疲労感が強いのに寝つけない場合に検討します。 | 寝つき、中途覚醒、早朝覚醒、翌日の眠気や活動への影響を確認します。甘草の重複、むくみ、血圧、筋力低下にも注意します。 |
| 加味帰脾湯 TJ-137 | 体質が虚弱で血色がすぐれず、疲れやすさ、不眠、精神不安、動悸などが重なる場合に検討します。 | 食欲、体重、月経量、貧血の有無を確認します。甘草・山梔子を含むため、むくみ、血圧、筋力低下、腹痛や便通変化にも注意します。 |
| 帰脾湯 TJ-65 | 体質が虚弱で血色が悪く、疲れやすさ、貧血傾向、不眠などが重なる場合に検討します。 | 食事量、月経や出血、動悸・息切れを確認し、必要に応じて血液検査を組み合わせます。甘草を含む他の処方との重複にも注意します。 |
| 抑肝散加陳皮半夏 TJ-83 | 神経の高ぶり、いら立ち、不眠に、胃腸の弱さ、食欲低下、胃部不快感などが重なる場合に検討します。 | 抑肝散とは別の処方として、胃腸症状を含む全体像から選びます。甘草を含むため、むくみ、血圧、脱力などを確認します。 |
| 柴胡桂枝乾姜湯 TJ-11 | 体力が比較的弱く、冷えや疲れやすさに、動悸、神経過敏、不眠などが重なる場合に検討します。 | ほてりと冷え、月経・更年期との関係、食欲を確認します。甘草・黄芩を含むため、むくみ、筋力低下、咳・息苦しさ、肝機能にも注意します。 |
| 苓桂朮甘湯 TJ-39 | めまい、ふらつき、立ちくらみ、動悸などの身体症状に、不安や神経過敏が重なる場合に検討します。 | 立位、移動、疲労、睡眠不足との関係を確認し、不整脈、貧血、耳鼻科疾患などの評価も組み合わせます。甘草の重複にも注意します。 |
| 黄連解毒湯 TJ-15 | 比較的体力があり、のぼせ、顔面紅潮、熱感に、いら立ちや不眠が重なる場合に検討します。 | 血圧、飲酒、皮膚症状、月経・更年期との関係を確認します。黄芩・山梔子を含むため、咳・息苦しさ、黄疸、腹痛や便通異常にも注意します。 |
| 女神散 TJ-67 | のぼせやめまいを伴い、月経、産前産後、更年期などの変化と気分・不安の症状が重なる場合に検討します。 | 月経周期、妊娠可能性、出血量、動悸、冷え、発汗を確認し、必要に応じて婦人科と連携します。甘草・黄芩の重複や肝機能にも注意します。 |
| 桂枝加竜骨牡蛎湯 TJ-26 | 比較的体力が衰え、神経過敏、疲れやすさ、緊張の抜けにくさ、不眠などが重なる場合に検討します。 | 睡眠、動悸、発汗、体重変化、生活への影響を確認し、似た名称の処方と区別します。甘草を含むため、むくみ、血圧、脱力にも注意します。 |
| 茯苓飲合半夏厚朴湯 TJ-116 | 気分のふさぎ、喉・食道の異物感に、動悸、めまい、吐き気、胸やけ、胃もたれなどが重なる場合に検討します。 | 半夏厚朴湯とは別の処方です。飲み込みにくさ、体重減少、胸痛などがある場合は、耳鼻咽喉科・消化器内科・循環器内科の評価も組み合わせます。 |
| 半夏瀉心湯 TJ-14 | みぞおちのつかえ、悪心、食欲低下、腹鳴、軟便・下痢があり、緊張で胃腸症状が悪化する場合に検討します。 | 感染症、炎症性疾患、潰瘍、薬の影響などを確認します。甘草・黄芩を含むため、むくみ、脱力、咳・息苦しさ、肝機能にも注意します。 |
| 柴朴湯 TJ-96 | 喉の異物感や気分のふさぎに、咳、喘鳴、息苦しさなどの呼吸器症状が重なる場合に検討します。 | 症状と緊張の関係を整理し、喘息や気管支炎などの評価・治療も組み合わせます。甘草・黄芩の重複、呼吸状態、肝機能にも注意します。 |
疲労や食欲低下は、睡眠不足やストレスだけでなく、貧血、甲状腺疾患、感染症、脱水、内科疾患、薬の影響などでも起こります。漢方薬を検討する場合も、症状の原因と緊急性を先に確認します。
| 処方候補 | 検討時に確認する症状・状態 | 処方前・継続中の確認 |
|---|---|---|
| 補中益気湯 TJ-41 | 消化機能が衰え、食欲不振と強い倦怠感があり、病後や長く体調を崩した後に体力が戻りにくい場合に検討します。 | 睡眠不足、貧血、甲状腺疾患、感染症、うつ状態、薬の影響なども確認します。甘草を含むため、むくみ、血圧、血清カリウムにも注意します。 |
| 清暑益気湯 TJ-136 | 暑さによる食欲不振、下痢、全身倦怠、夏やせなどが重なり、季節との時間的な関係が明確な場合に検討します。 | 水分・塩分摂取、発熱、尿量、体重変化を確認します。意識の変化、強い脱水、体温上昇など熱中症が疑われる場合は、速やかな身体評価を優先します。 |
| 十全大補湯 TJ-48 | 病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血傾向などが重なる場合に検討します。 | 体重減少、出血、感染症などを確認し、必要な血液検査や身体治療と組み合わせます。甘草の重複、むくみ、血圧、脱力にも注意します。 |
| 人参養栄湯 TJ-108 | 病後や長引く体調不良の後に、食欲不振、疲労、寝汗、手足の冷え、貧血傾向などが残る場合に検討します。 | 胃腸の状態、睡眠、呼吸器症状、併用薬を確認して処方を選びます。甘草を含むため、むくみ、血圧、血清カリウムにも注意します。 |
株式会社ツムラでは、エキス顆粒128処方と軟膏剤1処方の計129処方の医療用漢方製剤を取り扱っています。下記は製品番号と処方名を確認するための一覧です。
この一覧は、製品番号と処方名を確認するための索引です。当院は院外処方のため、診察では症状と経過、体力、持病、妊娠・授乳、併用薬・サプリメントを確認したうえで、必要な処方を個別に検討します。調剤薬局での在庫や取り寄せの可否、受け取りまでの時間は薬局ごとに異なるため、処方後にご利用の薬局へご確認ください。
番号について:ツムラの製品番号は連番ではなく、欠番があります。番号は薬の強さ・新しさ・推奨順位を示しません。調剤用のコウジン末・ブシ末は生薬製剤のため、この129処方には含めていません。
安全性について:処方名が異なっても、甘草、麻黄、附子、大黄、山梔子など同じ生薬が重なることがあります。別の漢方薬、他院の薬、サプリメントも含めて確認し、詳しい注意点は「20. 副作用・重複・検査」をご覧ください。
候補にない処方を検討することも、漢方薬を使わないこともあります。初回から多数を重ねず、何を目標に、どの処方を、いつまで試すかを明確にします。
原料のイメージだけで判断せず、処方全体と実際の販売製品を照合するための図
複数の生薬から作る医療用製剤です。診断と添付文書に沿い、規格化された品質・用量を確認します。
根・茎・葉・果実・樹皮、鉱物・動物由来素材等は処方全体の一部です。原料・加工法を確認し、一成分の足し算で効果を決めません。
同名処方でもメーカー、構成量、添加物、用法、注意が異なるため、販売名と薬袋を確認します。
薬局・メーカー・剤形が変わった時は自己判断で置き換えず、お薬手帳や薬袋を医師・薬剤師と照合します。
医療用漢方製剤には、複数の生薬を煎じたエキスを濃縮して顆粒・細粒等にした製品があります。処方名が同じでも、メーカーにより生薬の量、添加物、用法、効能・効果、注意事項が異なる場合があります。
生薬一つの作用を足し算して処方効果を説明することはできません。処方全体としての承認内容と安全性を確認し、実際にお渡しする販売名をお薬手帳に記録します。
薬局や製品が変わったときは、お薬手帳の記録や以前の薬袋を照合します。同じ処方名でも「前と同じ薬」と決めつけず、メーカー・販売名・1日量を確認することが大切です。転院や処方切替の際は、以前の製品名や服用回数が分かるものをご持参ください。
初回と再診では、1包の量、1日何回飲めたか、飲み忘れや残薬、味・においによる飲みにくさ、服用後の胃部不快感なども確認します。実際に服用できた量が分からないまま効果不足と判断せず、服用方法、剤形、処方自体の見直しにつなげます。
生薬由来のため外観や香りに一定の特徴がありますが、自己判断で別製品へ置き換えたり、複数処方を混ぜたりしないでください。服用しにくさは診察時に相談し、剤形や処方の見直しを検討します。
服用時刻や回数は製品と処方指示に従います。「漢方薬は必ず食前」と一律には考えず、胃腸の状態、併用薬、生活時間も踏まえて説明します。
処方、症状、重症度、服用状況によって異なり、数日で変化を感じる場合も、数週間かけて評価する場合もあります。改善が乏しいのに長期間そのまま継続せず、あらかじめ決めた時期に見直します。
漢方薬は治療の一部です。診断と重症度に応じ、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、気分安定薬、抗精神病薬などの標準的な薬物療法や、認知行動療法等の心理療法、休養・就労調整を組み合わせます。
| 治療 | 主な役割 | 大切なこと |
|---|---|---|
| 漢方薬 | 症状・体質・経過が合う場合の薬物療法の選択肢 | 目標と再評価日を決め、副作用を確認 |
| 標準的な薬物療法 | 診断ごとの有効性・安全性情報に基づく治療 | 自己判断で減量・中止せず、変更は段階的に |
| 心理療法 | 不安への向き合い方、考え方・行動・睡眠習慣の調整 | 症状に合う方法を選び、練習を積み重ねる |
| 休養・環境調整 | 過重労働、対人負担、夜勤、家庭負担等の軽減 | 薬だけで環境要因を抱え込まない |
「漢方薬を始めたから」という理由で、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬などを自己中止すると、離脱症状や再燃が起こることがあります。減量・変更を希望する場合は、処方医と計画を立てます。
漢方薬も、副作用、相互作用、同じ生薬の重複があります。診察では、他院処方、別の漢方薬、グリチルリチンを含む薬、サプリメント・健康食品、時々使う薬まで一覧にします。
販売名、開始日、増量日、新しい症状の発生日を照合すると、薬剤性の可能性を整理しやすくなります。自己判断で増減せず、警告症状がある場合は指示に沿って中止・受診します。
受診時は、最新のお薬手帳に加え、手帳へ反映されていない薬の袋・説明書、別の医療機関で処方された漢方薬、サプリメント・健康食品の外箱や写真をご用意ください。処方名だけでなく、メーカー・販売名・1日量まで分かると、同じ生薬や成分の重複をより正確に確認できます。
安全性評価では、「何を飲んでいるか」と同じくらい、「いつ始め、いつ変更し、その後いつ症状が出たか」が重要です。服用前の血圧・体重や最近の健康診断・血液検査があれば、服用後の変化と比較できます。新しい不調が薬の影響か、もとの病気、感染症、脱水、食事や生活の変化によるものかを整理し、必要な検査と再診時期を決めます。
一度に複数の薬を追加・変更すると、どの薬が効いたのか、どの薬が不調に関係したのか分かりにくくなります。目標症状と確認時期を決め、必要に応じて一つずつ見直します。当院は院外処方のため、飲み合わせや重複に疑問がある場合は、医師と調剤薬局の薬剤師が処方内容を照合します。
ツムラ加味逍遙散とツムラ抑肝散は、いずれも電子添文上の標準的な成人1日量にカンゾウ1.5gを含みます。他の漢方薬やグリチルリチン含有薬との重複を、処方医が販売名単位で確認します。
ツムラ芍薬甘草湯は、電子添文上の標準的な成人1日量にカンゾウ6.0gを含み、治療上必要な最小限の期間にとどめるよう明記されています。処方の要否と期間は処方医が判断します。
厚生労働省・PMDAの偽アルドステロン症マニュアルは、早期発見で確認する低カリウム血症の所見として「3.5mEq/L以下、または服用前より低下傾向」を示しています。検査時期や結果への対応は、症状・持病・併用薬を踏まえて処方医が決めます。
カンゾウ量や検査値は、「この量なら安全」「この値だけで中止」と決める自己調整の基準ではありません。製品差、年齢、心臓・腎臓の状態、利尿薬、他のカンゾウ・グリチルリチン含有薬を含め、処方医が総合的に判断します。
| 注意するもの | 主な警告症状 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 甘草・グリチルリチン | むくみ、体重増加、血圧上昇、脱力、筋肉痛・こむら返り、動悸 | 重複確認、血圧・体重・血清カリウム・腎機能等 |
| 間質性肺炎 | 空咳、息切れ、呼吸しにくい、発熱 | 該当薬を中止して速やかに医療機関へ連絡 |
| 肝機能障害・黄疸 | 強い倦怠感、食欲低下、吐き気、黄疸、濃い尿 | 速やかに連絡し、肝機能検査等を検討 |
| 山梔子の長期使用 | 反復する腹痛、下痢・便秘、膨満、便潜血 | 服用を中止して速やかに連絡。CT・大腸内視鏡等を実施 |
| 心不全・筋障害等 | 添付文書に記載のある処方で、急な体重増加、むくみ、息切れ、強い脱力・筋肉痛 | 速やかに受診し、電解質、腎機能、筋肉の障害を調べる血液検査(CK)等を確認 |
処方、含有生薬、年齢、使用期間、持病、併用薬、症状に応じて、血圧、体重、血清カリウム、腎機能、肝機能、筋肉の障害を調べる血液検査(CK)、胸部画像などを組み合わせます。山梔子含有製剤では多くが5年以上の長期投与例で腸間膜静脈硬化症が報告され、長期使用時は症状がなくても定期的なCT・大腸内視鏡検査を検討します。
重大な副作用の種類は処方・製品ごとに異なります。間質性肺炎・肝機能障害は黄芩の有無だけで判断せず、実際に使用する製品の電子添文を確認します。
安全に処方するため、妊娠・授乳、年齢、心臓・腎臓・肝臓・甲状腺等の持病、過去の薬剤性障害を確認します。「漢方だから妊娠中も安全」「高齢者なら少量で安全」と一律には判断できません。
半夏厚朴湯、抑肝散、ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯は、妊娠中には治療上の利益が危険性を上回る場合にのみ検討します。加味逍遙散は牡丹皮を含むため妊婦への投与は望ましくないとされ、大黄を含む柴胡加竜骨牡蛎湯製剤も流早産の危険性に注意します。効能に産前産後の症状があっても、妊娠中の安全性を保証するものではありません。
自殺の具体的な計画、過量服薬や自傷の危険、幻覚・妄想による危険、数日眠らず活動性が著しく高い状態、強い混乱、飲食できない状態は、漢方薬の選択より緊急の精神科・救急評価を優先します。胸痛、失神、強い呼吸困難、けいれん、意識障害なども救急医療機関へ相談してください。
症状に応じて、内科、婦人科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、耳鼻咽喉科、睡眠医療機関などへ紹介します。紹介は漢方治療を否定するものではなく、安全に治療方針を決めるための手順です。
漢方薬だけを前提にせず、安全確認と必要な治療を優先します。
本文は、医療用漢方製剤の電子添文、国内学会の診療指針・エビデンス集、厚生労働省・PMDAの安全性資料、日本語の漢方医学・精神科領域の専門書を中心に作成しています。書籍刊行後に更新された効能・禁忌・安全性については、実際に使用する販売名の最新電子添文を優先して確認します(最終確認:2026年7月19日)。