

「何をしても楽しくない」「朝になると体が動かない」「眠れず、仕事や家事に手がつかない」。こうした変化は一時的な疲労でも起こりますが、続いている場合には、うつ病、適応反応症、双極症、身体疾患、薬や飲酒の影響などを区別して考える必要があります。
気分の落ち込みは、性格や我慢の問題ではありません。睡眠や身体状態、ストレス、孤立、考え方と行動の悪循環など、複数の要因が関係します。はっきりしたきっかけがある場合も、思い当たる原因がない場合もあります。
当外来では、診断名を急いで決めることより、症状の経過、安全性、生活への影響、身体状態、過去の「元気すぎた時期」の有無を順に確認します。治療は、休養と環境調整、心理療法、薬物療法、職場・学校との調整などを、本人の希望と状態に合わせて組み立てます。
受診前に原因や経緯をすべて整理する必要はありません。調子を崩し始めた時期、睡眠・食事、欠勤や家事の変化、現在の薬が分かれば診察を始められます。うまく話せないときは、短いメモやお薬手帳をご持参ください。
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うつ病は、気分の落ち込みだけでなく、興味や喜びの低下、疲労、睡眠・食欲の変化、集中困難、自責感、動作の変化などが組み合わさり、生活に支障が出る病気です。悲しいという自覚が乏しく、頭痛、胃腸症状、肩こり、痛み、仕事の能率低下として現れる方もいます。
うつ病は、意思の弱さや怠けではありません。生物学的、心理的、社会的な要因が複雑に重なって起こります。同じ診断名でも、症状、背景、必要な支援は一人ひとり異なります。
気分や意欲、集中力、睡眠・食欲は、脳の一つの場所だけで決まるものではありません。複数の領域がネットワークとして働き、からだの状態やストレス、生活環境とも影響し合っています。
このバランスの乱れが、気分の落ち込みやさまざまな症状につながると考えられています。ただし、一つの部位だけが原因なのではなく、睡眠・食欲・体内時計・ストレス反応を含む複数のネットワークが互いに影響します。
脳画像研究では、うつ病にこうしたネットワークの活動やつながり方の違いが関連すると報告されています。ただし、所見には大きな個人差があり、症状と脳の部位は一対一では対応しません。MRIなどの画像だけでうつ病を診断することはできず、症状の経過、生活への影響、身体疾患や薬剤、双極症の可能性も含めて総合的に判断します。
うつ病は決して珍しい病気ではありません。日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」では、日本で一生のうちにうつ病を経験する割合は5〜6%、女性の有病率は男性の約2倍とされています。ただし、この数字だけで個人の発症や重症度を判断するものではありません。
睡眠や食事を整える、身支度を再開する、家族との時間を持つ、安定して通勤・通学するなど、今の段階で大切な目標を選びます。「症状を軽くする目標」と「生活上できることを取り戻す目標」を分けると、治療の効果を見直しやすくなります。
このページは主に成人の単極性うつ病を想定した一般向け情報です。未成年、妊娠・授乳中、高齢者、双極症が疑われる方、重い身体疾患がある方では、評価と治療が異なることがあります。
「抑うつ状態」は、気分の落ち込みや意欲低下がみられる状態を表す言葉です。「うつ病」は、症状の組み合わせ、持続期間、生活への影響、ほかの原因の有無などを医師が総合して判断する診断です。つらい出来事の後に落ち込むこと自体は自然な反応であり、落ち込んでいる人すべてがうつ病というわけではありません。
■一時的な落ち込み
休息や時間の経過で少しずつ回復し、生活の多くを保てている状態です。
■抑うつ状態
落ち込み、意欲低下、不眠、疲労などがみられる状態で、原因や診断は複数考えられます。
■うつ病
抑うつ気分または興味・喜びの低下を中心に複数の症状が続き、生活機能に意味のある支障が出ています。
WHOのICD-11では、抑うつエピソードは、症状がほぼ毎日、1日の大部分にわたり、通常2週間以上続くことを一つの目安とします。ただし、強い希死念慮、食事・水分が取れない、仕事や育児の安全を保てない場合に、2週間を待つ必要はありません。
症状の強さに加え、仕事、学業、家事、育児、対人関係、身支度や食事などのセルフケアへの影響を確認します。質問票の点数は経過を見る補助であり、点数だけで診断や休職の必要性を決めるものではありません。
期間だけで自己判断せず、生活への影響と安全性を含めて相談します。
頭痛、肩こり、動悸、胃腸症状、慢性疼痛が前面に出ることもあります。子ども・思春期ではいら立ち、成績低下、登校困難、高齢者では身体症状や物忘れの訴えとして目立つことがあります。
「悲しくないから、うつ病ではない」とは限りません。普段との変化、症状が続く時間、場面による違い、生活への影響を関連づけて確認します。
期間だけで受診の要否を決める必要はありません。次の変化が一つでも続き、本人または周囲が困っているときはご相談ください。
■睡眠や食事が崩れた
眠れない、早朝に目が覚める、眠りすぎる、食事が減る・増える、体重が変わる。
■生活機能が下がった
身支度、入浴、家事、育児、通勤・通学、連絡や支払いが難しくなった。
■仕事・学業への影響
集中できない、決められない、ミスや欠勤が増え、安全を要する業務に不安がある。
■楽しさやつながりが減った
好きだったことが楽しめない、人を避ける、会話や連絡が負担になった。
■自責感や絶望感が強い
「自分が悪い」「将来は変わらない」と繰り返し考え、考えを切り替えられない。
■周囲が変化に気づいた
表情、話し方、動作、服装、飲酒量、仕事ぶりが普段と違うと指摘された。
まだ休職や薬を考えていない段階でも相談できます。症状と負担を整理し、休養、勤務調整、心理療法、薬を使うかどうかを一緒に検討します。
①「死にたい」「消えたい」という思いが強く、具体的な方法・場所・時期を考えている。
②自傷や過量服薬をした、準備をした、遺書を書いた、大切な物を配った。
③食事や水分がほとんど取れない、著しく衰弱している。
④強い焦燥、興奮、混乱があり、一人で安全を保てない。
⑤現実と合わない強い確信や、自分を傷つけるよう命じる声がある。
⑥産後に急な不眠、混乱、異常な高揚、幻覚・妄想が現れた。
切迫した危険がある場合は一人にならず、家族や身近な人に同席を頼み、危険物や大量の薬から距離を取ってください。119番へ連絡するか、救急外来を受診してください。本人が拒んでいても安全を保てない場合は、周囲の方が119番へ相談してください。
すぐに実行する状況ではないものの、一人で抱えきれないときは、厚生労働省のこころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556、相談先を探せる「まもろうよ こころ」も利用できます。相談窓口は救急医療の代わりではありません。
強い不安、焦燥、不眠、攻撃性、衝動性、異常な高揚が新たに出た場合は、自己判断で増量せず処方医へ早めに連絡してください。高熱、筋肉のこわばり、意識の変化、けいれんなどがある場合は救急評価が必要です。
落ち込みにはさまざまな原因があります。明確なきっかけがあるから適応反応症、ないからうつ病と単純に分けることはできません。初診で確定せず、経過を追って見直す場合があります。
■適応反応症(適応障害)
確認できるストレス因の後に、出来事へのとらわれと適応の困難が中心となり、生活に支障が出ています。
■不安症・パニック症・PTSD
不安、発作、トラウマ記憶、回避が中心か、抑うつ症状とどのように重なるかを確認します。
■身体疾患
甲状腺機能異常、貧血、感染症、睡眠時無呼吸、神経疾患、慢性疼痛などを症状に応じて確認します。
■薬剤・飲酒など
処方薬、サプリメント、アルコール、その他の物質と症状の開始・増悪時期を照合します。
■発達特性・認知機能
ADHD、自閉スペクトラム症に伴う二次的な抑うつ、認知症、せん妄などを年齢と経過に応じて検討します。
■月経・妊娠・産後
月経前不快気分障害、月経前増悪、周産期うつ病など、周期や出産との関係を確認します。
悲嘆、摂食症、依存症、統合失調症なども必要に応じて検討します。新しい情報に応じて診断を見直すことは、現在の状態に合う治療を選ぶために行います。
双極症では、うつ状態に加えて、過去に躁・軽躁エピソードがあります。軽躁期は本人にとって不調というより、「調子が良かった」「仕事がはかどっただけ」と感じられ、受診時に話題にならないことがあります。軽躁・躁は明るい気分だけでなく、強いイライラや焦り、落ち着かなさとして現れる場合もあります。そのため診察では、落ち込んだ時期だけでなく、活動性が普段より高かった時期も振り返ります。
睡眠が少なくても疲れなかった、話す量や予定が増えた、買い物や対人行動が普段と違った、といった変化を、続いた期間や生活への影響とともに確認します。本人だけでは気づきにくいため、同意のうえで家族の記憶や予定表、メッセージなども手掛かりにします。これは本人が診断を決めるためではなく、経過を正確に共有し、治療を安全に選ぶための確認です。うつ病と双極症では治療方針や薬物療法が異なるため、抗うつ薬を始める前に躁・軽躁の既往を確認することが重要です。
①睡眠が少なくても平気 数日以上、睡眠時間が明らかに短いのに疲れず、活動が増えた。
②話す量・考え・活動が増えた 次々に考えが浮かび、予定や仕事を詰め込み、周囲より速く動いた。
③自信が過度に高まった 普段より万能感が強く、批判を受け入れにくくなった。
④普段と違う行動 浪費、投資、性的行動、無謀な運転、攻撃的な言動などが増えた。
⑤周囲からの指摘 「別人のよう」「ハイになっている」「止められない」と言われた。
⑥薬の開始後の変化 抗うつ薬の後に異常な高揚、焦燥、強い不眠が出た。
うつ状態の最中に、強い焦燥、考えが次々に浮かぶ、睡眠が極端に少ないなどの変化が重なることもあります。単なる不眠や忙しさと区別するため、変化が続いた期間と、普段の本人との違いも確認します。
本人が軽躁期を不調と感じていないことがあります。本人の同意を基本に、普段との違い、期間、睡眠、金銭・対人・仕事への影響を家族や記録から確認します。
うまく話せないときは、短いメモやお薬手帳だけでも構いません。安全性を優先し、患者さんのペースで必要な情報を確認します。
双極症、適応反応症、身体疾患との鑑別には経過が必要です。暫定的な見立てを共有し、睡眠、活動性、生活への影響、治療への反応を追って見直します。
うつ病を単独で確定する血液検査や画像検査はありません。診断の中心は問診と経過ですが、身体疾患や薬の影響が疑われる場合は必要な検査や他科受診を検討します。
| 確認する領域 | 主な確認内容 | 診察での扱い |
|---|---|---|
| 血液・代謝 | 貧血、血糖、電解質、肝腎機能、栄養状態など。 | 症状、既往、服薬、食事・体重変化に応じて選択。 |
| 甲状腺・内分泌 | 甲状腺機能、月経・妊娠との関係など。 | 身体症状や治療計画に応じて内科・婦人科と連携。 |
| 睡眠 | 不眠、過眠、いびき、無呼吸、脚の不快感、日中の眠気。 | 睡眠日誌や専門科での睡眠検査を検討する場合がある。 |
| 薬剤・物質 | 処方薬、サプリメント、飲酒、その他の物質。 | 開始・増量日と症状発生日を照合し、自己中止せず相談。 |
| 心電図・画像等 | 心電図、脳画像、妊娠検査など。 | 症状や予定する治療に必要な場合のみ個別に検討。 |
すべての患者さんに同じ検査が必要なわけではありません。急な意識変化、麻痺、けいれん、発熱、胸痛などがある場合は、うつ病と決めつけず身体科での評価を優先します。
うつ病は、面接で症状、持続期間、生活への支障、躁・軽躁の有無、身体疾患や薬の影響などを合わせて診断します。質問票や機器検査は情報を補うもので、点数、波形、色分けされた脳画像だけで診断や薬の選択は決まりません。
質問票は、本人が感じている症状を言葉と数字にし、初診時の整理や治療中の変化を追うために使います。同じ質問票を時期を変えて繰り返すと、気分だけでなく睡眠、食欲、集中、活動性などの変化を比べやすくなります。
回答する日の体調、身体疾患、年齢、妊娠・産後、文化や生活状況でも点数は変わります。点数が高い場合も低い場合も、実際の困りごと、生活機能、診察で確認した経過を優先します。
頭皮から近赤外光を当て、言葉を挙げる課題などを行っている間の酸素化・脱酸素化ヘモグロビンの変化を測る検査です。主に脳表に近い大脳皮質の血行動態を間接的に捉えます。
光トポグラフィーだけで「うつ病」「双極症」「統合失調症」と確定することはできません。2026年の日本臨床神経生理学会委員会報告では、頭皮血流の影響など技術的な課題が残り、疾患ごとの診断を補助する十分な性能は確立していないとして、課題が解決するまで臨床診断への利用を控えることが望ましいと整理されています。診療報酬上の項目があることと、日常診療での有用性が確立していることは分けて考えます。
QEEGは、通常の脳波をコンピューターで解析し、周波数ごとの強さ、比率、部位間のつながりなどを数値や色付きの図で示す方法です。研究では、うつ病の群としての傾向や治療反応を予測する指標が検討されています。
現時点では、QEEG単独でうつ病を診断したり、個人に効く抗うつ薬やrTMSの方法を選んだりする精度は、日常診療で安定して使える水準に確立していません。解析条件、基準データ、眠気、目の開閉、筋電図、服薬、年齢などで結果が変わり、色の違いがそのまま病気や重症度を示すわけでもありません。
けいれん、意識の変化、てんかん、脳炎などを疑うときに行う通常の脳波検査とは、目的を分けて考えます。検査を勧められた場合は、何を確認する検査か、結果で治療がどう変わるか、陰性・陽性をどう解釈するかを確認します。
治療の目標は症状の点数を下げることだけでなく、睡眠、食事、身支度、家族との時間、仕事・学業など、本人が大切にしたい生活を取り戻すことです。
最初に、安全を保てるか、食事・水分・睡眠を維持できるか、仕事や育児で事故につながる心配がないかを確認します。そのうえで、今週から変えることと、回復を待って取り組むことを分けます。すべてを一度に始めず、優先順位を決めることが治療の負担を減らします。
短期目標は「水分を取る」「受診を続ける」「起床時刻のずれを小さくする」など、今の体力で確認できる内容にします。中期目標は、集中できる時間、外出、家事、仕事・学業への復帰など、本人が取り戻したい生活に合わせて段階を作ります。
治療を始める際には、次の診察までにどの変化を記録するか、困った時の連絡先、家族に頼むことも共有します。一時的に良い日があっても負荷を急に戻さず、反対に悪い日が一日あっても治療全体が失敗したとは判断せず、一定期間の流れで見直します。
効果の確認では、気分だけでなく、起床できた日、食事の回数、身支度、連絡、外出、集中できる時間など、生活上の小さな変化も見ます。良い日と悪い日の波があっても、数週間の経過から回復の方向を判断します。
軽度では心理療法、環境調整、経過観察を軸にし、薬を選択肢として相談します。中等度・重度では抗うつ薬、心理療法、両者の併用などを検討します。精神病症状、自殺・自傷の切迫、食事・水分の維持困難がある場合は、入院、ECTなどを含む治療を優先することがあります。
精神病性うつ病では、現実的な説明では修正できない強い罪業感・貧困・虚無の確信や、責める声などの幻聴を伴うことがあります。緊張病では、著しい無言・動けなさ・反応の乏しさ、同じ姿勢の保持、拒食・拒水がみられ、反対に興奮が目立つこともあります。身体疾患や薬剤による状態との区別を含め、当日の評価が必要です。
① 自殺・自傷の危険が切迫
具体的な方法・時期・準備があり、外来や家庭で安全を保てない。
② 食事・水分・服薬を維持できない
脱水、低栄養、著しい衰弱など、身体管理が必要。
③ 幻覚・妄想、強い混乱がある
現実検討が難しく、本人や周囲の安全、治療継続に支障がある。
④ 無言・動けなさ・拒食などが強い
緊張病を疑い、検査、身体管理、迅速な治療が必要。
⑤ 家庭での療養が成り立たない
一人で安全を保てず、継続した観察や環境調整が必要。
⑥ 迅速な治療が必要
重症で急速な改善が必要、または外来治療で十分な改善が得られず、ECT等を検討。
当院では外来で重症度と安全性を評価し、入院が適すると判断した場合は、入院設備のある医療機関と連携します。切迫した危険、意識の変化、著しい衰弱がある場合は予約を待たず、119番または救急外来へつないでください。
治療歴、併存症、妊娠、年齢、通院可能性、費用、価値観を含めて個別に判断します。薬を使いたくない、心理療法を希望する、副作用が心配など、希望や懸念も診察でお伝えください。
■認知行動療法(CBT)
気分、考え方、行動、身体反応のつながりを整理し、反すうや回避などを少しずつ変えます。単なる前向き思考の訓練ではありません。
■行動活性化(BA)
「達成感」「つながり」「楽しさ」につながる小さな行動を、負担にならない量から計画します。
■対人関係療法(IPT)
喪失、役割の変化、対人関係の葛藤、孤立など、現在の関係性と症状の関連に焦点を当てます。
■問題解決・支持的支援
困りごとを分け、優先順位、利用できる支援、次の一歩を具体化します。気持ちを整理し、安全と生活を支えます。
心理療法には一定の時間と参加が必要です。合わないと感じたときは「自分が治療に向いていない」と決めつけず、目標、進め方、頻度、治療者との相性を相談してください。
活動を急に増やすと、疲労や自責感が強くなることがあります。休養と小さな行動の両方を状態に合わせて調整します。
抗うつ薬は、すべての気分の落ち込みに必要な薬ではありません。重症度、症状の持続、生活への影響、過去の治療反応、心理療法の希望と利用可能性、副作用への懸念を確認して決めます。双極症が疑われる場合は、先にその評価を行います。
副作用は早く出ても、望ましい効果には通常数週間かかります。開始後は、気分、睡眠、食事、焦燥、希死念慮、軽躁・躁の変化を確認します。自己判断で急に中止・増減せず、困る変化は処方医へお伝えください。
薬を選ぶ際は、不眠・過眠、食欲・体重、痛み、不安、日中の眠気、仕事や運転、妊娠の希望、持病、併用薬などを照合します。同じ「抗うつ薬」でも特徴が異なるため、症状だけでなく、生活の中で避けたい副作用も選択の手がかりになります。
開始後は、最初に改善を期待する症状を具体的に決めます。たとえば「朝に起きられる日」「食事を取れる回数」「考え込みから離れられる時間」などを確認すると、気分の一日の波があっても効果を見直しやすくなります。
飲み忘れや中断した日があっても、叱られる心配をせずそのままお伝えください。服用できた期間、飲みにくかった理由、服用時刻を確認することが、量や薬の種類、支援方法を安全に調整する材料になります。
開始直後は副作用が先に現れ、望ましい効果はまだ十分に分からないことがあります。気分だけで結論を出さず、安全性、生活機能、続けやすさを一緒に確認します。18〜25歳の方や希死念慮・自傷の危険が懸念される場合は、開始・増量から1週間後を目安に、状態に応じてさらに早く確認します。
① 気分と安全性
落ち込み、希死念慮、強い不安・焦燥、衝動性が新たに出ていないか。
② 睡眠・食欲・身体症状
不眠・過眠、食欲、吐き気、眠気、発汗、体重などの変化。
③ 生活機能
身支度、食事、集中、連絡、欠勤・欠席などが少しでも変化したか。
④ 躁・軽躁への変化
睡眠が少なくても平気、活動性や会話の増加、浪費、いら立ちなどがないか。
PHQ-9などの質問票は、同じ条件で繰り返すと経過を比べる補助になります。ただし、点数だけで診断、増減薬、治療終了を決めるものではありません。診察では本人の実感と生活への影響を合わせて判断します。
| 分類 | 一般名(成分名) | 主な先発品名 | 主な確認点 |
|---|---|---|---|
| SSRI | パロキセチン | パキシル パキシルCR | 吐き気、性機能への影響、離脱症状など。 |
| SSRI | セルトラリン | ジェイゾロフト | 胃腸症状、睡眠変化、性機能への影響など。 |
| SSRI | エスシタロプラム | レクサプロ | 吐き気、眠気・不眠、性機能、QT延長に注意する場合。 |
| SSRI | フルボキサミン | ルボックス デプロメール | 吐き気、眠気、薬物相互作用など。 |
| SNRI | ミルナシプラン | トレドミン | 吐き気、発汗、動悸、排尿症状など。 |
| SNRI | デュロキセチン | サインバルタ | 吐き気、口渇、眠気、肝腎機能、血圧など。 |
| SNRI | ベンラファキシン | イフェクサーSR | 吐き気、発汗、血圧、離脱症状など。 |
| NaSSA | ミルタザピン | リフレックス レメロン | 眠気、食欲増加、体重増加など。 |
| S-RIM | ボルチオキセチン | トリンテリックス | 吐き気、睡眠変化など。 |
| ベンザミド系 | スルピリド | ドグマチール | うつ病・うつ状態に国内承認。プロラクチン関連症状、錐体外路症状、眠気・めまい、腎機能、QT延長など。 |
| GABAA調節薬 | ズラノロン | ザズベイ | 急性期に1日1回14日間用いる薬。傾眠・めまい、運転禁止、飲酒・中枢抑制薬との併用、妊娠、再治療の間隔など。 |
| その他 | トラゾドン | デジレル レスリン | 眠気、立ちくらみなど。 |
一つの治療で改善が乏しくても、すぐに「治らない」とは判断しません。当院では精神科・心療内科の専門外来として、まず次の条件を当院で再評価し、外来治療を組み直します。
① 診断を見直す
双極症、精神病症状、不安症、発達特性、認知症などが隠れていないか。
② 治療条件を確認する
服用量・期間、飲み忘れ、副作用、飲みにくさ、これまでの反応。
③ 身体と生活を確認する
甲状腺疾患、貧血、睡眠障害、痛み、飲酒、併用薬、過重な生活負担。
④ 次の選択肢を相談する
薬の変更・追加、心理療法、休養・環境調整を状態と希望に合わせて検討。
外来で処方の変更や増強療法、心理療法との併用を検討し、経過を測定しながら次の段階を決めます。増強療法は、抗うつ薬をただ増やす方法ではなく、異なる働きの薬を加えて治療効果を補う方法です。症状の残り方、これまでの治療歴、持病、併用薬、必要な検査を照合して選びます。
上記のように診断と治療条件を見直した後に検討される併用法の一つが、ベンラファキシン(SNRI)とミルタザピン(NaSSA)の併用です。海外の文献や臨床の場で通称「カリフォルニア・ロケット燃料(California rocket fuel)」と呼ばれることがあります。正式な治療名や商品名ではなく、この名称の配合剤があるわけでもありません。両薬はそれぞれ「うつ病・うつ状態」に承認されていますが、この通称や併用方法自体が独立した承認治療ではありません。
作用の異なる2種類の抗うつ薬を組み合わせる方法で、十分な量・期間で行った治療でも改善が乏しい場合に、診断、服薬状況、双極症や身体疾患の可能性を見直したうえで検討されることがあります。最初から一律に選ぶ治療ではなく、専門的な判断を要する選択肢です。
STAR*D試験では複数の薬物療法で改善しなかった方の選択肢として検討されましたが、寛解率は13.7%で、比較したトラニルシプロミンとの差は統計学的に明確ではありませんでした。CO-MED試験でも、治療開始時からの併用はエスシタロプラム単剤を上回らず、副作用の負担が多い結果でした。そのため、名前の印象から「強力で必ず効く治療」と考えるのではなく、これまでの治療経過と利益・不利益を個別に検討します。
併用時は、ベンラファキシンによる吐き気・発汗・血圧上昇・離脱症状、ミルタザピンによる眠気・食欲増加・体重増加などを確認します。焦燥、躁・軽躁への変化、まれなセロトニン症候群にも注意し、自己判断で併用、増量、中止をしないことが大切です。
増強療法(オーグメンテーション)
併用療法は、作用の異なる抗うつ薬を組み合わせる方法です。増強療法(オーグメンテーション)は、抗うつ薬以外の薬を追加し、残っている抑うつ、不安、意欲低下、睡眠や認知機能への効果を補う方法です。
一つの抗うつ薬で一部は改善したものの、生活を取り戻すには不十分な場合などに検討します。追加前に、双極症、精神病症状、甲状腺機能、貧血、睡眠障害、飲酒、服用量・期間・飲み忘れを再確認し、利益と負担を比べます。分類上「抗精神病薬」と呼ばれる薬もありますが、追加すること自体が精神病の診断を意味するわけではありません。
| 一般名(成分名) | 主な先発品名 | 位置づけと主な確認点 |
|---|---|---|
| アリピプラゾール | エビリファイ | 抗うつ薬の効果を補う目的で追加します。落ち着かなさ・アカシジア、眠気、不眠、体重・血糖・脂質、錐体外路症状などを確認します。 |
| ブレクスピプラゾール | レキサルティ | 抗うつ薬で改善が十分でない場合に追加します。アカシジア、眠気、体重・代謝、立ちくらみなどを確認します。 |
| 炭酸リチウム | リーマス | これまでの治療歴を踏まえ、対象を選んで専門的に検討します。血中濃度、腎機能、甲状腺機能、カルシウム・電解質、妊娠の可能性、併用薬を確認します。脱水、発熱、下痢、食事や塩分摂取の急な変化、NSAIDs・利尿薬等との組み合わせでは中毒に注意します。 |
| レボチロキシン(T4) | チラーヂンS | 甲状腺機能低下症が抑うつ症状に関係している場合は、甲状腺機能を整える治療を優先します。うつ病治療を補う目的で考える場合は対象を慎重に選び、TSH・FT4、動悸・頻脈、不整脈、振戦、発汗、不眠、体重、心疾患や骨への影響を確認します。 |
| リオチロニン(T3) | チロナミン | 海外の診療指針で専門的な増強療法の候補として挙げられることがあります。T4と同じ扱いにはせず、甲状腺機能と身体状態を確認し、動悸・頻脈、振戦、発汗、不眠等を見ながら判断します。 |
離脱症状は、減量・中止や飲み忘れの後に、めまい、電撃様の感覚、吐き気、頭痛、発汗、不眠、不安、いら立ちなどが現れる状態です。比較的短い間隔で始まることがありますが、薬の種類、量、服用期間によって異なります。
再燃・再発では、落ち込み、興味の低下、強い自責感、集中困難、希死念慮など、もとのうつ症状に近い変化が再び目立ちます。離脱症状と再発が同時に起こる場合もあり、時期だけでは区別できません。
減量は、治療期間、再発回数、残っている症状、生活の安定を確認し、段階的に行います。症状が出ても自己判断で元の量へ戻したり、さらに中止したりせず、処方医へご相談ください。希死念慮や急速な悪化がある場合は、次回予約を待たず評価します。
標準治療で改善が乏しい場合は、診断、治療歴、症状、国内外の根拠を確認し、専門的な薬物療法を個別に検討することがあります。単に「効かない」と判断する前に、服薬状況、期間、量、診断、併存症、副作用を見直します。
毎年、秋から冬にかけて気分の落ち込み、意欲低下、過眠、朝の起きにくさ、食欲増加などが現れ、春になると軽くなる経過を、うつ病の「季節性パターン」として確認することがあります。一般に「冬季うつ」と呼ばれますが、寒い季節に調子を崩したという一度の経験だけで決めるものではありません。診断では、同じ季節に発症と回復が繰り返されているか、季節以外の時期に起きた抑うつエピソードより多いかを、複数年の経過から確認します。
冬季型では、気分の落ち込みだけでなく、眠っても起きにくい、日中も眠い、体が重い、炭水化物や甘い物を欲しやすい、食欲や体重が増える、人との交流や活動が減るなどの変化が重なることがあります。ただし現れ方には個人差があり、すべての症状がそろうとは限りません。普段の自分からどの程度変わったか、それが仕事・学業・家事や対人関係にどのような支障を及ぼしたかを確認します。
診察では、過去数年間の症状が始まる月と軽くなる月、日照時間との関係、睡眠・食欲・体重、月経、仕事や生活の変化、服薬の影響を整理します。冬の繁忙期や年末年始の負担、甲状腺疾患、貧血、睡眠障害などでも似た変化が起こるため、季節だけを原因と決めつけずに評価します。春から夏に「眠らなくても平気」「急に活動的になる」「話し続ける」「浪費や過剰な計画が増える」時期がないかも確認し、単極性うつ病と双極症を区別してから治療を組み立てます。症状と睡眠、活動量を月ごとに記録すると、季節との関係を具体的に振り返りやすくなります。
■高照度光療法とは
高照度光療法は、専用のライトボックスから強い白色光を取り入れ、体内時計と睡眠・覚醒リズムへ働きかける治療です。標準的な方法の一例は、10,000ルクスの白色光を、起床後の早い時間に毎日30分前後使用する方法です。研究や機器によって20〜60分程度の範囲があり、症状、開始時刻、照度、照射距離によって調整します。
目は開けて過ごしますが、光源を直接見つめる必要はありません。朝食、読書、パソコン作業などをしながら、説明書で指定された位置にライトを置きます。「10,000ルクス」と表示されていても、その明るさが得られる距離は製品ごとに異なるため、照度の数字だけで選ばないことが大切です。
高照度光療法用のライトボックスは、Amazonなどの通販サイトでも購入できます。購入時は口コミや外観だけでなく、10,000ルクスとなる照射距離、UV(紫外線)を除去する設計、照射面の大きさ、光療法用の使用方法、販売者と安全情報が明記されているかを確認します。
商品によって照度、照射範囲、適切な距離に差があります。特定の商品を一律に推奨するのではなく、購入前に候補の仕様を診察で確認し、説明書に沿って使用します。日焼け用・皮膚治療用の紫外線ランプは、高照度光療法の代わりには使用しません。
① 双極症の可能性
高照度光療法で軽躁・躁状態が誘発されることがあります。過去の睡眠減少、活動性増加、浪費、強い高揚・いら立ちを確認します。
② 眼の病気と服薬
網膜疾患、緑内障、白内障、糖尿病による眼の病気、最近の眼科手術、光に過敏になりやすい薬がある場合は事前に相談します。
③ 使用時刻と睡眠
遅い時間の使用は寝つきを遅らせる場合があります。起床時刻、眠気の時刻、夜勤・交替勤務の有無に合わせて設定します。
④ 困る症状
頭痛、眼精疲労、めまい、吐き気、焦燥感、不眠などが出た場合は、使用時間・距離を自己流で変更せず相談します。
睡眠時間の急な短縮、活動性の過剰な増加、普段と異なる高揚・いら立ちが現れた場合は使用を中断し、早めに医師へご相談ください。高照度光療法は、購入して光を浴びればよいという家電の使い方ではなく、時刻・照度・距離・経過を確認して行う治療です。
機器を自己流で使い始めず、適応・時刻・距離・経過を医療者と確認します。
薬物療法や心理療法を続けても生活機能の回復が十分でない場合や、重症でより早い改善が必要な場合には、ECT(電気けいれん療法)、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)、入院治療を検討します。いずれも単に「最後の手段」として後回しにするものではありません。治療を切り替える前には、診断、薬の量と期間、服薬状況、副作用、心理療法や休養・環境調整の内容、双極症や身体疾患など、改善を妨げている要因をもう一度整理します。
選択で最初に確認するのは、どれほど早い改善と安全確保が必要かです。食事や水分を取れない、自殺・自傷の危険が切迫している、精神病症状や緊張病がある、急速に衰弱している場合は、ECTや入院を早い段階で検討します。一方、比較的安定して外来通院を続けられる場合には、これまでの治療反応や通院条件を踏まえてrTMSを検討することがあります。3つの治療に固定された順番はなく、状態によって適する役割が異なります。
治療を決める際は、期待できる効果だけでなく、ECTの麻酔や記憶への影響、rTMSの頻回通院や頭皮の不快感・頭痛、入院による生活上の負担なども説明し、本人の希望と医学的な必要性を一緒に確認します。開始前に「食事を取れる」「安全を保てる」「身支度や会話が戻る」などの目標を決め、治療中も効果と副作用を見直します。外来で待つこと自体が危険な状態では、安全確保を優先し、設備や入院機能のある医療機関へつなぎます。
① 緊急性
希死念慮、拒食・拒水、急速な悪化、強い焦燥、精神病症状や緊張病の有無。
② これまでの治療
薬の種類・量・期間、心理療法、休養・環境調整、過去に有効だった治療。
③ 身体と通院条件
麻酔リスク、けいれんリスク、持病、植込み機器、頻回通院が可能か。
④ 本人の希望
期待する効果、心配な副作用、通院・入院の負担、家族や職場との調整。
迅速な改善が必要な重症状態ではECTや入院を優先することがあり、比較的安定して通院できる場合はrTMSを検討することがあります。ECTとrTMSは強さだけで並べる治療ではなく、適する状態が異なります。
① 安全を保てない
自殺・自傷の危険が切迫し、一人で安全を維持できない。
② 身体管理が必要
食事や水分を取れない、急速な体重減少、脱水、著しい不眠・衰弱がある。
③ 重い精神症状
強い幻覚・妄想、無言・動けなさ、緊張病、強い興奮・混乱がある。
④ 外来療養が難しい
家庭で休養や見守りを確保できず、短い診察間隔でも状態を保てない。
当院では精神科・心療内科の専門外来として、これまでの治療歴と現在の状態を評価し、外来で続けられる治療を組み直します。ECT・rTMSや入院治療が適する場合は、治療設備と入院機能を備えた医療機関へ診療情報をつなぎ、治療後の外来フォローも含めて連携します。
単純な順番ではなく、状態・治療歴・通院条件・本人の希望を分けて検討します。
休養は一日中何もしないことと同義ではありません。急性期に負荷を減らすことは重要ですが、長期間の完全な不活動は睡眠リズムや体力を崩すことがあります。状態に合わせて休む量と活動量を調整します。
■起床と光
起床時刻を大きくずらしすぎず、朝にカーテンを開けて光を取り入れます。
■食事と水分
量を完璧にするより、取れる食品と水分を確保し、食事の間隔を極端に空けないようにします。
■小さな活動
短い散歩、着替え、食器を一つ洗うなど、翌日に強い反動が出ない量から始めます。
■飲酒
睡眠薬代わりの飲酒を避けます。飲酒は睡眠、衝動性、気分、薬の眠気へ影響します。
■大きな決断
退職、離婚、転居、投資など取り返しにくい決定は、可能なら症状が落ち着くまで保留します。
■簡単な記録
睡眠、食事、気分、活動を短く記録します。記録そのものが負担なら中止して構いません。
「できなかったこと」だけでなく、食事、受診、連絡など保てた行動も確認します。運動は回復の一部として役立つ場合がありますが、重症時の治療や安全確保の代わりにはなりません。
働く・学ぶことが回復の支えになる人もいれば、続けることで症状が悪化する人もいます。「通常通り続けるか、完全に休むか」だけでなく、中間的な配慮も検討します。
調整の必要性は、出勤できたかだけで決めません。通勤後に仕事へ取りかかれるか、判断や注意を保てるか、ミスや事故の危険がないか、帰宅後や休日にどの程度回復するかを確認します。勤務を続けるために生活のすべてを使い切っている場合も、負荷の見直しが必要です。
負荷を下げる場合も、いつまで何を減らし、どの状態になれば見直すかを決めます。配慮を始めた後は、欠勤やミスだけでなく、睡眠、食事、帰宅後の疲労、休日の回復を確認します。配慮をしても悪化が続く場合は、休養を含めて方針を組み直します。
学校や家事でも考え方は同じです。提出物、試験、登校時間、送迎、買い物、食事づくりなどを分け、今すぐ必要なこと、代わってもらえること、延期できることを整理します。できないことを責めず、生活を保つための分担として調整します。
配慮は「うつ病だから軽くする」という曖昧な形ではなく、残業を控える、重要判断を一時的に外す、締切を分散するなど、困っている機能と必要な期間を具体化します。開始時から見直し時期も決め、回復に合わせて維持・変更・終了を検討します。
診断書は、症状と生活・就労機能への影響を診察で確認し、医学的に必要な場合に検討します。病名だけでなく、必要な配慮と期間を本人の同意のもと必要最小限で記載します。利用できる制度や配慮は、勤務先・学校の規程で異なります。
休職中は生活リズムと治療を整えます。復職前には、勤務日に近い起床、通勤相当の外出、一定時間の集中、身支度や服薬、疲れた時の休み方を確認します。復職直後の調子だけで負荷を急に戻さず、業務量、睡眠、通院を見直します。
主治医の医学的意見、産業医等の職場評価、本人の希望、職場の実情は役割が異なります。医療機関は、ハラスメントの事実認定、違法性、労災認定、人事上の最終決定を行う機関ではありません。
利用できる制度や配慮は、勤務先・学校・生活状況により異なります。
家族や周囲は治療者になる必要はありません。安全、食事、受診、事務手続きなど、具体的な負担を一部支えることが役立ちます。支える側も休み、家族だけで抱え込まないことが大切です。
■話を聴く
「頑張れ」より「つらかったね」「何を手伝える?」と尋ね、原因探しや責任追及を急ぎません。
■安全を確認する
「死にたい」と聞いた時は話題をそらさず、方法・時期・準備の有無を率直に確認します。
■具体的に手伝う
食事、受診同行、連絡、書類、子どもの送迎など、本人が選んだ負担を一部引き受けます。
■普段との違いを伝える
本人の同意を基本に、睡眠、食事、活動、服薬後の変化などを診察で共有します。
■大きな決定を急がせない
退職、離婚、転居などは症状が強い時期に結論を迫らず、回復後も含めて考えます。
■無理を強いない
旅行、運動、気晴らし、復職・復学を急がせず、本人の回復度と希望を確認します。
一人にせず、危険物や大量の薬から距離を取り、119番または救急外来へつないでください。「口にすると実行につながる」と避けず、具体的な方法や準備があるか確認します。
■18歳未満
年齢に応じた心理療法、家族支援、学校調整、安全性評価を基本にします。薬を検討する場合は国内適応と根拠を確認し、子どもの診療経験がある医師が慎重に判断します。
■妊娠を希望する方・妊娠中
薬の影響だけでなく、未治療の重いうつ病が本人と胎児へ及ぼす影響も考えます。自己判断で薬を急に中止せず、産婦人科と精神科で相談します。
■産後・授乳中
睡眠不足、育児負担、授乳、家族の支援、薬剤ごとの情報を確認します。急な不眠、混乱、異常な高揚、幻覚・妄想は緊急評価が必要です。
■高齢者
身体疾患、多剤併用、認知機能、転倒、低ナトリウム血症、出血、心電図変化に注意します。急な物忘れや意識変化は身体評価を優先します。
薬剤ごとのデータ、妊娠時期、重症度、過去の再発歴、授乳希望を踏まえて利益とリスクを比較します。精神科、産婦人科、小児科で情報を共有します。
回復は一直線ではありません。良い日と悪い日を繰り返しながら改善することがあります。気分だけでなく、睡眠、食事、身支度、集中、外出、対人関係、仕事・学業の回復を段階的に確認します。
再発リスクが高い場合は、抗うつ薬の継続、CBT、マインドフルネス認知療法などを検討します。良くなった直後に薬や通院を急に終えず、残っている症状と再発サインを確認します。
服薬量・期間、飲み忘れ、副作用、双極症、身体疾患、併存症、生活環境を当院で再評価し、薬の変更・追加、心理療法、休養・環境調整を組み直します。rTMS、ECT、入院治療が適する場合は、必要な設備を持つ医療機関と連携します。詳しい見直し方は「13. 薬物療法」で説明しています。
2週間は診断上の目安ですが、2週間待つ必要はありません。つらさが強い、睡眠や食事が崩れた、仕事・家事・学校に支障が出ている時は早めにご相談ください。希死念慮、食事・水分が取れない、急速な悪化は予約を待たず評価が必要です。
気分の落ち込みだけでは診断できません。興味・喜び、睡眠、食欲、集中、自責感、活動性、希死念慮、生活への影響、持続期間、ほかの原因を合わせて判断します。
休息で回復するか、楽しさや意欲が広い場面で低下しているか、睡眠・食事・自己評価・生活機能が変わっているかを確認します。一度の診察で区別しにくい場合は、経過を追って見直します。
うつ病、双極症、希死念慮、幻覚・妄想などの評価は精神科が中心です。心療内科でもうつ病を診る施設があります。身体症状が強い場合は、内科と精神科・心療内科の連携が役立ちます。
上手にまとめる必要はありません。症状が始まった頃、睡眠・食事・仕事や家事の変化、過去の「元気すぎた時期」、服薬、飲酒、困っていることが分かれば診察を始められます。短いメモや家族からの情報も役立ちます。
典型的な場合は初診で診断できることもありますが、双極症、適応反応症、身体疾患との鑑別には経過が必要です。「現時点の見立て」として説明し、後から見直すことがあります。
うつ病だけを確定する検査はありません。質問票は症状の整理、光トポグラフィーは限られた条件での補助情報であり、QEEGは標準的な診断・治療選択検査として確立していません。詳しくは「10. うつ病の検査・質問票」をご覧ください。血液検査等は別の原因や治療上のリスクを確認するために行います。
いいえ。生活機能を損なう医学的な状態です。治療で考え方や対処パターンを扱うことは、性格を責めたり変えたりすることを意味しません。
必ずではありません。症状、安全性、仕事内容、通学負担、利用できる配慮により異なります。短時間勤務や課題調整で続けられる場合も、安全と回復のため休養が必要な場合もあります。
必須ではありません。説明、経過観察、心理療法、環境調整を優先することが多く、薬は本人の希望、生活への影響、過去の治療反応などを踏まえた選択肢です。
副作用は早く出ても、望ましい効果には数週間かかることがあります。変化が乏しい時も、量、期間、服薬状況、診断、併存症を確認してから次の方針を決めます。
一般に渇望や酩酊を求める依存を起こす薬ではありません。ただし急な中止で離脱症状が出ることがあり、段階的な減量が必要です。
急な中止は避けてください。再燃予防のため寛解後も続けることがあります。減量は再発歴、残る症状、生活の安定、離脱症状を見ながら主治医と計画します。
もちろんです。生活の質に関わる大切な情報です。薬の選択、量、服用時刻、変更を検討できるため、我慢せずお伝えください。
アルコールは睡眠の質、衝動性、抑うつを悪化させ、薬の眠気や判断力低下を強めることがあります。特に治療開始時や症状が強い時期は避け、飲酒習慣を医師へ伝えてください。
自己判断で急に中止しないでください。薬の影響と未治療のうつ病の影響を比較し、産婦人科と精神科で相談します。
軽度では心理療法だけが適することがあります。中等度・重度では薬との併用が適する場合があります。重症度、希望、過去の反応、利用可能性で決めます。
個人差が大きく、数週間で大きく改善する方も、数か月以上かかる方もいます。期限を断定せず、気分だけでなく睡眠、身支度、集中、生活機能の回復を段階的に確認します。
本人が同意すれば、多くの場合可能です。普段との変化や服薬後の様子は重要な情報です。一方で、本人だけで話す時間を設けることもあります。
否定や説得より、まず具体的な方法・時期・準備があるかを率直に確認し、一人にしないでください。切迫していれば119番または救急外来へ。切迫していなくても主治医へ早めに連絡してください。
本記事はWHO ICD-11、厚生労働省、日本うつ病学会、NIMH、NCCIH、NICE、PMDA等の公式資料を参照し、患者さん向けに整理しています。診断、検査、治療、薬の適応・禁忌は個別の診察と最新情報で確認してください。
最終確認日:2026年9月4日