忙しい外来や会議の合間、緊張や不安で胸がざわつく瞬間は誰にでもあります。そんな時に役立つのが、90秒で自律神経を落ち着かせる「マイクロ休息」です。長い休暇や特別な環境は不要。短く、交感神経のブレーキを踏み、副交感神経の回復を促します。うつ、不安、適応障害、睡眠の不調を抱える方にも取り入れやすい、セルフケアとしておすすめです。
1つ目は、ゆっくりとした鼻呼吸。4秒で吸い、6秒で吐くリズムを5〜8回繰り返すと、心拍変動が整い、体内の「落ち着き信号」が増えます。ポイントは、吐く息をやや長くし、肩ではなく腹部が静かに上下するよう意識すること。マスク着用で実践できます。
2つ目は、視線のリセット。画面に集中し続けると、視野が狭くなり警戒モードが強まります。そこで、30〜60秒だけ遠くの景色や水平線のように“広い面”を見る。屋内なら廊下の奥行きや窓外の空を眺めるだけでもよく、注意資源の回復に役立ちます。
3つ目は、筋のオン・オフをつくる小さな反復。手を強く握って5秒、ふっと離すことを5回、肩をすくめて5秒、力を抜くことを3回。全身版の漸進的筋弛緩法を、“ミニ版”に落とし込んだものです。血流が巡り、呼吸が入ってきやすくなります。
安全面について。めまいや過換気の既往がある方は、座って背もたれを使い、無理はしないでください。息苦しさが出る日は回数を減らし、体調が悪い場合は主治医に相談を。呼吸法で症状が悪化する稀なケースでは中止が原則です。
続けるコツは「いつやるか」を決めること。通勤の乗車直後、診察の前後、就寝前など、既存の行動にひも付けると習慣化しやすい。スマホのリマインダーで1日3回、合計5分以内でも効果は感じやすく、負担の予防につながります。
大切なのは“完璧にやろうとしない”姿勢です。うまくできない日があっても、短時間の回復を重ねるほど、セロトニンの働きや睡眠の質が整い、気分の波がなだらかになります。心療内科や精神科の治療、カウンセリング、服薬と併用することで、再発予防の土台づくりにもつながります。