心のクリニック 医療コラム
2025年9月18日
言葉にして整える——3分セルフノートのすすめ

「頭の中がぐるぐるする」をほどく近道は、外に出して並べ替えること。おすすめは就寝前や通勤時の“3分ノート”。使うのは四つの枠だけ——①事実②感情③考え④一歩。毎日同じ枠を埋めるだけで、混線しがちな思考と情動がほぐれます。

①事実:日時・場所・相手・自分の行動を一文で。評価語は避け、録画の字幕のように淡々と書きます(例「9/18 10:00 会議。資料提出の遅れを指摘された」)。②感情:今の気持ちに名前を付け、強さを0〜10で(「不安7・悔しさ5」など)。③考え:頭に浮かんだ言葉をそのまま書き出し、極端さ(決めつけ、読心、過度の「べき」)に気づく。④一歩:明日の自分ができる具体行動を一つだけ——「上司に確認の一文を送る」「昼休みに5分散歩」など。

感情に名前を付ける行為は、脳の警戒反応(扁桃体)の過度な働きを鎮めやすいことが示されています。さらに、ストレス体験を数日に分けて短時間ずつ書く「筆記表現」は、気分や睡眠、健康指標の改善に寄与する可能性が国内外で繰り返し報告されています。完璧な文章は不要。乱文・箇条書き・スマホメモで十分です。

続けるコツは“ハードルを下げる”。1日3分、同じノート・同じ時間帯に書く。ページが埋まらなくてもOK。タグを付ける(#仕事 #家庭 #体調 など)と振り返りが楽になります。週末は1週間分を俯瞰し、「一歩」を実行できた回数と、感情の強さの平均を眺めるだけでも効果的。寝る直前に反芻が強まる人は、タイマー3分で切り上げて、リラックス行動(入浴や軽い伸び)へ。

仕事でも活きます。1on1や面談前に書くと、要点が自然に整理され、感情の高ぶりを抑えた伝え方に切り替えやすくなります。衝突があった日は、事実→感情→考えの順を守ることで、自己批判のスパイラルを避けられます。まずは7日間だけ続けて、手応えを確かめてみてください。

テンプレはシンプルに。「事実|感情0–10|考え|一歩|(任意)今日ありがたかった1つ」。プライバシー保護のため、見られたくない内容は鍵付きアプリや手帳の後ろに。心の土台が揺れている時やトラウマ想起が強い時は、専門家の支えの下で行いましょう。