心のクリニック 医療コラム
2025年10月5日
秋の“なんとなく不調”を軽くし、冬に持ち越さないコツ

朝晩の涼しさが増すこの時期、「やる気が出ない」「眠りが浅い」「頭が重い」といった“なんとなく不調”が増えがちです。体は季節に適応する途中にあり、自律神経は寒暖差への微調整でフル回転。そこに勤務環境の変化や行事、人間関係の負荷が重なると、心身のバランスが崩れやすくなります。放っておくと冬に長引くことも。今日から整えられるポイントをまとめます。

まず、起床時刻を毎日そろえること。眠る時間より「同じ時間に起きる」ほうが体内時計は整い、夜の寝つきも良くなります。起きたらカーテンを開け、ベランダや窓辺で自然光を浴びて深呼吸を数回。できれば軽くストレッチして、手足の末端を動かしましょう。筋肉が温まると血流が上がり、脳の“始動”がスムーズになります。

次に、午後のだるさ対策です。午前中に予定を詰め込み過ぎると、昼食後にパフォーマンスが落ちます。60〜90分ごとに2〜3分「立って肩を回す」「席を離れて窓まで歩く」といった“極小休憩”を入れて、疲労がたまる前にリセットしましょう。カフェインは午前中に。午後は常温の水やノンカフェインのお茶をこまめに摂ると、脱水由来の頭重感を防げます。

食事は“温・色・噛”の三つを意識。温かい汁物で体の芯を温め、彩り豊かな副菜で栄養の偏りを避け、よく噛んで満腹中枢をゆっくり刺激します。忙しい日は、具だくさん味噌汁とおにぎり、茹で野菜にオイルと塩をひとかけ——これだけでも十分バランスが取れます。夜遅い食事は睡眠の質を下げるため、就寝3時間前には終わらせるのが目標です。

メンタル面では、“見える化”が役に立ちます。手帳やスマホに「やること」と「やめること」を1行ずつ書き分け、今週の“負荷”を見渡せる形に。ToDoが多いときほど、先に削る項目を決めることが回復への近道です。また、気持ちの波が大きい日は「事実」と「解釈」を分けてメモするのも有効です。例えば「上司に指摘された(事実)」と「自分は向いていないかも(解釈)」を切り分けられると、感情の嵐に飲み込まれにくくなります。

睡眠前の“着地”も大切です。就寝30分前からは、画面を閉じて照明を落とし、湯気の立つ飲み物で呼吸を深めましょう。入浴は就寝90分前が理想的。ぬるめの湯で体温をいったん上げ、深部体温が下がるリズムに乗って眠りに入りやすくなります。寝具は“寒くないけれど少しひんやりする”室温が目安。首元とお腹を冷やさない工夫も有効です。

これらを続けても、2週間以上「気力が戻らない」「興味や喜びが薄い」「眠りや食事が乱れ続ける」などのサインが続く場合は、早めの相談を。働き方の見直し、環境調整、休養の取り方、薬物療法や心理療法の適切な組み合わせで、回復のカーブは確実に変えられます。季節の揺らぎは“自分が弱いから”ではなく、誰にでも起きる自然な反応。ひとりで抱え込まないことが、最短の回復ルートです。