心のクリニック 医療コラム
2025年7月27日
睡眠は減点法!

睡眠でいちばん大切なのは「量(時間)」です。
睡眠が足りていないのに「質」を追い求めても、本末転倒になりがちです。まずは自分に必要な睡眠時間を確保しましょう。一般に成人は7時間前後が目安ですが、現実的に難しい日があっても、最低限6時間は確保する意識が大切です。
そのうえで「質」を整えます。ただし、質を上げる“必勝法”は人により異なります。睡眠は「減点法」に近く、質を下げる要因(減点要素)を取り除くほど、自然と質が上がりやすくなります。

■まずは量を作る
・起床時刻を毎日そろえる(休日も±1時間以内)
・就寝は「眠気が来る時刻」に合わせ、少しずつ前倒しする
・2週間を目安に、週あたり合計睡眠時間を増やす(例:1日+30〜45分)
・昼寝は15〜20分、15時まで(長時間・夕方以降は夜の睡眠を削る)

■減点法の発想とは
やるべきことを増やすより、「質を落とす原因」を減らす考え方です。下の減点要素に心当たりが多いほど、睡眠の質は下がりがちです。

■主な減点要素(チェックリスト)
・就寝直前までの強い光(明るい照明、至近距離のスマホ/PC)
・カフェインの遅い時間の摂取(コーヒー、緑茶、栄養ドリンク、チョコ等)
・就寝前の飲酒(入眠は早まっても中途覚醒が増える)
・喫煙(ニコチンの覚醒作用)
・不規則な就床・起床(平日と休日の差が大きい)
・遅い時間の激しい運動
・寝室の環境不良(暑い/寒い/明るい/騒音/寝具不適合)
・ベッドでの長時間の作業・動画視聴(寝床=睡眠の場所でなくなる)
・長すぎる昼寝、夕方以降の仮眠
・痛み・かゆみ、足のむずむず、鼻づまりなどの身体要因の放置

■減点を減らす実践ヒント
・就寝1〜2時間前は照明を落とし、画面時間を減らす(ナイトモード活用)
・カフェインは就寝6〜8時間前までに切り上げる
・就寝90分前の入浴で体温の自然な下降を促す
・寝室は暗く静かで涼しく(目安20~25℃、湿度40〜60%)
・枕は首のカーブを保てる高さ、マットレスは体圧分散と姿勢保持を確認
・20分以上眠れなければ一度ベッドを出て、薄暗い部屋で静かな行動→眠気が戻ったら再入床
・アルコールは「眠りの質」を下げやすいことを念頭に控えめに

■量と質を両立させる小さなコツ
・朝の自然光を浴びる(起床直後〜1時間以内に5〜15分)
・通勤や昼休みに軽く体を動かす
・夕食は就寝2〜3時間前まで、脂っこい・辛いものは控えめに
・「寝つけない=明日が終わり」ではない、と受け止め方を調整する
・仕事・子育て・交代勤務など事情がある日は、できる範囲で“減点を減らす”に集中

■ポイント(要点まとめ)
・睡眠は量が先。30-40代の成人は7時間以上を目安に
・質は「減点法」。質を下げる要因を減らすほど、自然と眠りは整う
・起床時刻の安定と就寝前の光・カフェイン・アルコール対策が土台
・昼寝は短く(15〜20分、14時まで)。寝床は睡眠の場所として保つ
・困ったら減点要素から一つずつ外す。改善しない、日中機能に支障が出る場合は受診を検討する