心のクリニック 医療コラム
2025年11月16日
眠りの質を上げる「朝・昼・夜」の小さなコツ

「長く寝ているのに疲れが抜けない」「休みの日ほどぐったりする」。外来でも、こんなお悩みをよく伺います。睡眠は「時間」だけでなく、「質」と「リズム」が整っていることが大切です。

全部を一度に変える必要はありません。「これならできそう」と思えるものを一つ選び、少しずつ生活に足していくイメージで読んでみてください。

【朝】体内時計のスイッチを入れる

朝は、一日の土台づくりの時間です。まず意識したいのは「起きる時間をできるだけそろえる」こと。平日と休日で起床時刻が大きくずれると、体内時計が時差ぼけのようになり、だるさや気分の落ち込みにつながりやすくなります。

起きたらカーテンを開けて光を浴び、コップ一杯の水分を摂り、首や肩をゆっくり回す程度のストレッチをしてみましょう。強い運動である必要はなく、「少し体がほぐれた」と感じられれば十分です。

【昼】エネルギー切れを防ぐ休み方

午後になると、集中力が落ちたり、まぶたが重くなったりするのは自然なことです。この時間帯に「まだ頑張らなきゃ」と無理を続けると、夕方以降にどっと疲れが出て、夜の眠りも浅くなりがちです。

おすすめは、15〜20分以内の短い昼寝や、椅子に座ったまま目を閉じてゆっくり呼吸する小休止です。30分以上眠ると夜の睡眠に響きやすいため、「少し物足りないくらい」で切り上げるのがポイントです。コーヒーなどのカフェインは、できれば夕方以降は控えめにし、カフェインの少ないお茶や白湯に切り替えましょう。

【夜】「眠る準備時間」をつくる

夜は、一日のギアをゆっくり落としていく時間です。布団に入る直前まで仕事やスマートフォンに集中していると、脳が「まだ活動モード」で、布団に入っても考えごとが止まりにくくなります。

眠りたい時刻の1時間前を目安に、「眠る準備時間」をつくってみてください。照明を少し落とし、画面を見る時間を減らし、ぬるめのお風呂や音楽、ストレッチなどで心身をほどいていきます。不安や考えごとが頭の中をぐるぐるしている時は、「今気になっていること」をメモ帳に書き出し、「明日また考える」と一言添えておくと、頭の中で抱え込む負担が軽くなる方も多いです。

完璧を目指さず、リズムを守る

睡眠の整え方で大切なのは、「完璧にこなすこと」ではなく、「おおまかなリズムを大きく崩さないこと」です。例えば、「平日の起きる時間をそろえる」「寝る前1時間は画面を見続けないよう意識する」と一つのルールからでも、体調の変化を実感される方は少なくありません。

それでも、「夜なかなか眠れない」「朝起きられず遅刻をくり返してしまう」「寝つきや途中で目が覚めることが何週間も続いている」場合は、生活習慣だけでなく、睡眠障害やうつ病・不安症などが隠れていることもあります。お一人で責任を感じすぎず、専門家に相談してみてください。