心のクリニック 医療コラム
2025年9月14日
無理なく戻るための復職プラン

復職は“合意形成のプロジェクト”。主治医・産業医・人事・上司と「何を・どの順で・どの負荷で」行うかを共有します。基本は短時間勤務から始め、勤務日数→時間→業務量の順に調整。最初の1~2週間は単純タスク中心、会議は聴講のみなど刺激を制御します。

職場には配慮を“抽象ではなく仕様”で伝えましょう。例:残業なし、締切タスクは午後以降を避ける、席は出入口から離す、週1で状態確認ミーティングを設ける、など。

週ごとに「疲労回復までの時間」「朝の起床難易度」「人混み耐性」「集中の持続」「不安・落ち込みの波」を1~5で自己評価し、産業医と共有。悪化サイン(睡眠の崩れ、欠勤増、自己否定の強まり)が出たら、ただちに負荷を1段階戻します。

再発予防計画(WRAPのような考え方)を作ると安心です。平時の整え方(睡眠・運動・食事)、注意サイン、家族や職場にお願いしたい対応、緊急時の連絡先を一枚にまとめます。職場内では“メンター役”を決め、困り事を早めに相談できる導線を整えます。

評価面談は「成果」だけでなく「負荷に対する反応」を振り返る場に。タスクの切り分けや優先順位の調整力は、チームにとっても価値ある資産です。

段階イメージ:第1週は午前のみ×3日、電話応対やメール仕分け等の低負荷。第2週は午前×4日、簡単な資料更新を追加。第3週は6時間×4日へ延長、会議は一部参加。第4週は6~7時間×5日、重要タスクは先輩と共同で。以降、体調に応じて通常勤務に近づけます。急にフルタイムへ戻さず、段階の区切りごとに産業医と“次の一歩”を確認しましょう。

伝え方のコツは“短く具体的”。「午後は集中が落ちやすいので、締切仕事は午前に」「電話は1日○件まで」「会議は前半のみ参加」など、行動条件で示すと職場も調整しやすくなります。逆に“気合いで頑張る”“様子見で”は合意形成を曖昧にし、再発リスクを高めます。

もし再び体調が崩れたら、それは失敗ではありません。負荷と回復のバランスを測る“センサー”が働いた証拠。計画を1段階戻し、睡眠・日中活動・思考の偏り(極端な自己批判、先読み不安)を確認すれば、軌道修正は可能です。

復職のゴールは「働き続けられる状態」。完璧なパフォーマンスより、無理なく続けられる仕組みをチームで作ることこそ、あなたのキャリアを長期で守ります。