心のクリニック 医療コラム
2025年10月19日
毎日15分で整える「心のルーティン」――言葉・体・人とのつながりで不調を崩さない

仕事や家庭のストレスが積み重なると、気分の波が大きくなり、不安やイライラ、集中力低下が続きます。放置すると、うつや適応障害につながり、休職・復職の判断も難しくなりがちです。そこで提案したいのが、脳と体の仕組みに沿った「15分の心のルーティン」。特別な道具は不要、今日から始められます。

最初の5分は「言語化タイム」。頭の中のモヤモヤは、言葉にすると輪郭が出ます。紙に三つだけ書き出しましょう。①事実(起きたこと)②解釈(自分の受け止め)③次の一歩(今できる最小の行動)。例えば「上司に注意された→自分はダメだ」ではなく、「会議で指摘→資料の根拠が薄い→明日はデータ1点追加」。思考を整理するだけで、心拍数が下がり、行動が具体になります。これは認知行動療法の要点を日常に落とし込む方法で、過度な反芻や心配グセのブレーキになります。

次の5分は「からだスイッチ」。姿勢を正し、肩を回し、深呼吸を4回。朝なら窓際で光を浴びながらの軽いスクワットでもOK。筋肉と呼吸を同時に動かすと、自律神経が整い、睡眠のリズムも整いやすくなります。日中の小さな運動は夜の寝つきを助け、浅い眠りの中断を減らします。結果的に翌日の集中力が上がり、ストレス耐性が増します。

最後の5分は「つながりのケア」。短いメッセージで感謝・労い・近況を一人に送る。あるいは、同僚や家族に「今日できた小さなこと」を1つ共有する。人とのポジティブなやりとりは、安心感を育て、孤立感を減らします。雑談や相手の話を要約して返す聞き方も効果的です。伝え方・聞き方の工夫は、職場の摩擦を減らし、チームの生産性を上げます。復職期の方は、この5分を通勤準備の前後に置くとリズムが安定しやすいでしょう。

続けるコツは、完璧を目指さないこと。できる日の「15分」より、できない日の「3分」を大切に。体調が不安定なときは、①の言語化だけでも十分な一歩です。