心のクリニック 医療コラム
2025年10月28日
朝3分で整える“メンタルの地ならし”

忙しい朝ほど、不安やイライラに引きずられて1日が崩れがちです。そこで提案したいのが、出勤前の“3分ルーティン”。脳の覚醒と落ち着きを同時に高め、うつや適応障害の再発予防、休職・復職期の土台づくりにも役立ちます。ポイントは「光・呼吸・言葉・小さな行動」の4つだけ。道具は不要、今日から始められます。

まずはカーテンを開け、1分間だけ朝の光を浴びましょう。網膜に届いた光は体内時計をリセットし、昼の集中力と夜の眠気を整えます。睡眠が乱れていると不安・焦り・過食が増えやすいので、光で1日のリズムを先に決めてしまうのが近道です。天気が悪い日でも、窓辺に立つだけで十分な刺激になります。

次に30秒だけ、4秒吸って6秒吐く呼吸を続けます。長めの呼気は自律神経のブレーキ側を優位にし、心拍と筋緊張を落ち着かせます。考え過ぎで固まった体がゆるむと、気分も自然に下がり幅が小さくなります。肩・あご・眉間の力を抜く感覚を添えると、さらに効果的です。

続いて30秒、自分に短い言葉をかけます。「今日は全部やらなくていい」「30点で出して微調整」「困ったら5分だけ相談」。脳は曖昧さを嫌うため、行動の“合図”を先に決めると迷いが減ります。自己否定の独り言を小さな指示語に置き換えるのがコツです。

最後の1分は“着手のハードル下げ”。机に座るではなく「PCを開く」「メールを3件だけ既読に」「資料のタイトルを打つ」など、最初の一手だけをやって終了。達成感の小さな積み重ねが、意欲系の神経回路を温めます。通勤前に1往復歩く、白湯を飲む、という“体のスイッチ”でもOKです。

この3分は、症状が軽い日だけでなく、調子の悪い日こそ効きます。休職中なら「午前は光と呼吸、午後は散歩10分、夜は就寝前スクリーンを避ける」と時間帯で分けて練習を。復職期は始業前に職場の定位置で同じ流れを行い、「朝の不調=始業の合図」と条件づけておくと、波が来ても崩れにくくなります。大切なのは“毎日同じ順番”。結果は追わず、「やったか・やらないか」だけを記録しましょう。

1日の質は、朝の3分で大きく変えられます。不眠・不安・集中困難・食欲の乱れが目立つ場合は、専門家と併用するとより安全です。無理のない調整計画を一緒に作り、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを組み合わせましょう。