心のクリニック 医療コラム
2025年9月14日
朝の5分で自律神経を整えるルーティン

朝のスタートが整うと、一日中の心身の波が静かに安定します。必要なのは5分だけ。ステップは三つです。①光を浴びる②呼吸をゆるめる③体を少しだけ温める。まずカーテンを開け、窓辺に立ってゆっくり深呼吸。息を4秒で吸い、6秒で吐くのを5回繰り返します。長く吐くと交感神経の昂りが落ち、頭の雑音が静まります。次に、首・肩・背中を円を描くように回し、胸を開くストレッチを30秒。背筋が伸びると「やる気スイッチ」が入りやすくなります。最後に白湯を一杯。内臓が温まり、胃腸の動きがスムーズになります。

時間に余裕があれば、ベランダや玄関先で光を浴びながら2〜3分の散歩を。歩幅を少し広げ、腕を振るだけで気分は上向きます。朝にスマホの通知を一気に見るのはおすすめしません。外からの刺激に飲み込まれ、思考が細切れになるからです。まず自分の体の声を聞き、今日の最小目標を一つ決める。「メールを3通だけ返す」「10行だけ資料を読む」など、達成しやすい行動から始めましょう。できた印としてカレンダーに丸をつけると自己効力感が育ちます。

便秘気味や胃もたれがある人は、朝の冷たい飲み物を避け、温かい飲み物に置き換えるだけでも調子が変わります。朝食は一口でもたんぱく質を。卵、納豆、ヨーグルト、チーズなど“手に取りやすいもの”で十分です。家族がいる場合は、起きる時刻をそろえ「おはよう」の一言を交わすだけでも、脳の安心回路が強化されます。完璧を目指さず、まず一つだけ選んで続ける。たとえ眠りが浅い日でも、朝の5分で“整える力”は取り戻せます。

よくある落とし穴は、週末に寝だめして体内時計を崩してしまうこと。休みの日も起床は平日±1時間以内に。二度寝したい日は、いったん起きて光を浴び、軽く体を動かしてから20分以内の仮眠にするとリズムが崩れにくくなります。目覚まし時計は手を伸ばして届かない場所へ。起き上がるという一動作が眠気の惰性を断ち切ります。朝の光を取り入れにくい部屋なら、照度の高い照明を起床直後に点けるのも有効です。

「続かない」が心配な人は、トリガーを決めてセット化しましょう。歯を磨く→白湯→深呼吸→ストレッチと順番を固定し、終えたら手帳に小さな丸。たとえ1つしかできなくても丸をつけます。大切なのは“できた回数”の見える化です。心と体は朝の小さな合図を待っています。今日できる5分を積み重ね、あなた本来のリズムを取り戻しましょう。