心のクリニック 医療コラム
2025年9月11日
朝の20分散歩で睡眠と心がよみがえる

 最近「朝散歩」が心身のリズムを整えると注目されています。早朝に屋外で太陽光を浴びながら20分程度歩くだけで、体内時計をリセットする「同調シグナル」が脳の視交叉上核に届き、夜間のメラトニン分泌がスムーズになります。その結果、寝つきが良くなるだけでなく、深いノンレム睡眠が増え、翌日の集中力や感情の安定に直結します。特に在宅ワークや夜型生活で乱れがちな人には効果絶大。朝に光を浴びるとセロトニンも分泌され、前向きな気分を生むため、軽度の気分の落ち込みやストレス反応の緩和にも寄与します。
 コツは「起床後1時間以内」「サングラスなし」で歩くこと。紫外線B波が肌に触れるとビタミンDが生成され、免疫機能や骨の健康にもプラスに働きます。暑い季節は木陰や公園などでゆったりしたペースがおすすめです。もし時間が取れない日は、ベランダで背伸びしながら深呼吸するだけでも体内時計は前進します。
 また、歩行中にリズムよく腕を振ると、大脳皮質の前頭前野が活性化し、意思決定能力まで高まるという研究もあります。スマートウォッチを使用して歩数や心拍数を可視化すると、達成感がプラスされ習慣化しやすくなります。水分補給は200ml程度を目安に常温またはやや冷たい水を選ぶと代謝が促進され、運動後の体温低下が睡眠準備にも好影響です。
 さらに、朝散歩を行った日は夜のスマホ使用を1時間早く切り上げる「デジタルサンセット」を併用すると、ブルーライトの影響を最小限にでき、睡眠の質向上が相乗的に進みます。就寝前は38~40℃のぬるめ入浴で深部体温を一度上げてから下げると自然な眠気が訪れます。
 このシンプルなルーティンを3週間続けると、平均で就床後の入眠時間が15分短縮し、翌朝の寝覚めスコアが20%向上したという臨床データも報告されています。当院でも生活リズム改善を目的としたカウンセリングの初回ステップとして推奨しており、多くの利用者から「気分が安定した」「夜中の中途覚醒が減った」といった声が届いています。
 わずか20分の習慣で、睡眠の質・脳の働き・メンタル安定という“三つの健康投資”が同時に得られる朝散歩。明日の朝、まずはお気に入りの靴で一歩踏み出してみませんか。