心のクリニック 医療コラム
2025年11月12日
朝の“起動ルーティン”で眠りを底上げ

夜に頑張るより、朝を整える方が睡眠は安定します。鍵は「光・体温・動作」の3点セット。体内時計を前に進め、日中の眠気を減らし、夜は自然に眠気が高まる流れを作ります。

①光:起床後すぐに屋外の自然光を浴びる(目安5~15分)。カーテン越しよりベランダや玄関先が有効です。曇天でも屋内照明の数倍の照度があり、体内時計のリセットに十分。反対に、夜は明るい照明や画面の光が眠気ホルモンの分泌を抑え、寝つきを遅らせます。寝前1時間は照明を落とし、スマホは“音だけ”で通知を受ける設定に。

②体温:就寝1~2時間前の温浴(40~42℃で10分前後)は、いったん深部体温を上げ、その後の放熱で入眠を助けます。夏はシャワーでも可。逆に、寝る直前の熱すぎる入浴や運動は体を興奮させ、寝つきが悪くなることがあります。朝は顔を洗う、ぬるめのシャワーを浴びるなど「軽い温冷刺激」で覚醒スイッチを入れましょう。

③動作:朝に大きな筋肉を動かすと、体内時計と自律神経が整います。散歩、階段、ラジオ体操、スクワットなど5~10分でOK。日中の有酸素や筋トレは、夜の睡眠の主観的満足度を高める傾向があります。運動は“遅すぎない時間帯”に終えるのがコツ。

④カフェインの使い分け:朝~昼に少量(コーヒー1杯程度)で集中を底上げ。夕方以降は控えめに。高用量は摂取から12時間近く睡眠を乱す可能性があり、本人の自覚と実測のズレも起こりがちです。睡眠が崩れている時期は「午前だけ」と決めてみましょう。

実践ステップ(1週間お試し)
・起床後:カーテン全開→ベランダで深呼吸1分→コップ1杯の水→軽いストレッチ3種×各30秒。
・午前:屋外移動を“日光タイム”と意識。屋内では窓際席を選ぶ。
・午後:カフェインは15時まで。集中が切れたら3分歩く。
・夜:就寝2時間前から照明を落とし、SNSは“見るだけ”モード。入浴は40~41℃、10分。
・就床:部屋はできるだけ暗く、起床時刻は固定。

うまくできない日があっても大丈夫。体内時計は“平均”で動きます。3点セットのうち一つでも続ければ、数日~1週間で日中の冴えと夜の寝つきに変化が出やすいはず。睡眠薬の量を自己判断で変えるのは避け、体調に不安があれば専門家へ。