心のクリニック 医療コラム
2025年10月10日
朝の光・小さな運動・ことばの力で整える——休職から復職までの実践メソッド

「うつや不安が続く」「会社に行くのが怖い」。そんなサインが出たら、早めに立て直しの地図を描きましょう。ポイントは①睡眠の土台、②日中の行動と脳内物質、③対人コミュニケーションの3本柱です。休職中の回復から復職後の再発予防までを、一気通貫で解説します。

まずは睡眠。夜は明るい照明やスマホの光を弱め、入眠1〜2時間前からゆるやかに暗くすることが基本です。メラトニンの働きを妨げない環境作りが、翌日の集中力を底上げします。朝は起床後30分以内に屋外で20〜30分の採光を。曇天でも室内光よりはるかに明るく、体内時計が前進し、夜の眠気が整います。起床時刻は土日も大きくずらさないのがコツです。

次に行動。ウォーキングなど軽い有酸素運動を1日合計20〜30分。リズム運動はセロトニンの働きを助け、抑うつ感や不安の改善に寄与します。午前は「太陽+歩く」、午後は「短い散歩+水分補給+深呼吸」のミニ休憩を90分おきに。ドーパミンの過不足で気分の波が大きい時は、完璧主義を手放し「小さな達成」を積むタスク設計を。ToDoは3つまで、最初は2分で終わるものから始め、達成感でエンジンを温めます。食事はタンパク質とビタミンB群を中心に、よく噛んで摂ること。カフェインは昼過ぎ以降を控えめに。

三本目はコミュニケーション。復職準備期は「伝え方・聞き方・雑談力」を意識しましょう。上司や産業医には「事実→影響→希望」の順で簡潔に共有。会話の最初に相手の要点を要約して返す“聞き方”は誤解を減らし、関係の摩耗を防ぎます。家庭や職場での短いスキンシップやペットとのふれ合いも、ストレス緩和に役立つことが報告されています。孤立を避け、週に1回は誰かと予定を入れる——これだけで気分の底上げが起こります。

休職は「逃げ」ではなく、未来のキャリアを守る戦略です。主治医と相談しながら、①睡眠の安定、②日中活動の再開、③勤務時間・業務量の段階的増加、④定期面談というステップで復職を設計しましょう。復職後3か月は無理をしない期間。残業を避け、昼休みに散歩、退社後は入浴と軽いストレッチ、就寝前はデジタル機器の使用を短く。うつ・不安・適応障害の再発予防には、睡眠・運動・人とのつながり・カウンセリングの“地味だが効く基本”を続けることが最短ルートです。

最後に合言葉を——「朝の光、歩く、短く話す」。これを毎日まわすだけで、セロトニンとドーパミンのバランスが整い、ストレスに折れない土台が育ちます。