心のクリニック 医療コラム
2025年10月28日
朝の不安をほどく「1日の整え方」—光・呼吸・温度の小さな工夫

朝、胸がざわつく。頭は動かしたいのに体が重い。そんなときは気合いより、脳と体のリズムを整える小さな手当てが役に立ちます。ポイントは光、呼吸と動き、体温のメリハリです。道具は要りません。今日から静かに始められます。

まずは起床後の光。カーテンを開けて窓辺やベランダで十〜三十分、外の明るさを浴びます。朝の光は体内時計を前に進めて日中の覚醒を助け、夜の眠りにも良い影響を与えます。曇りでも屋外は室内より十分に明るいので、できる範囲で取り入れてみましょう。難しければデスクを窓側に寄せる、通勤前に一駅だけ歩くなど生活動線とセットにすると続けやすくなります。

次に呼吸と動き。不安で胸が詰まる朝は一分間だけでも長めの息吐きを行います。鼻から四拍で吸い、口をすぼめて六から八拍で吐くペースを五サイクル。肩の力が抜けて体の緊張がほどけやすくなります。呼吸が整ったら家の周りを五〜十分だけ歩き出しましょう。一定のリズムで体を動かすこと自体が気分の底上げにつながります。強い運動は不要です。

日中は集中の波を味方にします。午前は十五〜二十五分の短い集中と小休憩を数セット。難しいタスクほど朝の光を浴びて歩いた後の一〜二時間に当てると効率が上がります。カフェインは起床直後ではなく九十分ほど後に。自然な覚醒の立ち上がりを活かせるため切れ味が長持ちします。メールや通知は時間を決めて確認する窓を作り、こまめな多重処理を避けると摩耗しにくくなります。

夜は温度で眠りの準備をします。就寝一〜三時間前に湯船にゆったり浸かると、いったん上がった深部体温が下がる過程で寝つきがスムーズになります。熱すぎる湯や就寝直前の入浴は逆効果になりやすいので、ぬるめで長めを意識します。寝室は暗く静かに整え、就寝前の強い光や刺激的な画面は控えましょう。

これらは完璧にやるより気楽に続けることが鍵です。朝の光、短い歩行、ゆっくり呼吸、夜の入浴。この四つだけでも不安の波に呑まれにくい一日の骨組みができます。つらさが長引く、仕事や学業に支障が出る、眠れないまたは食べられない状態が続く場合は、無理をせず専門家に相談してください。