出社前や登校前、胸がざわついたり体が鉛のように重くなる。そんな朝は珍しくありません。無理に気合いで押し切るより、心と体のブレーキをやさしく解除する「5分の整え」を試してみましょう。短い手順でも、積み重ねるほど自律神経が整い、仕事や学業への復帰期にも役立ちます。
まずは姿勢。椅子に浅く座り、かかとを床につけて背骨を伸ばします。両手は腹部に添え、4秒吸って6秒吐く呼吸を5回。長めの呼気は交感神経の過緊張をほどき、脳の警戒モードをゆるめます。深呼吸は睡眠不足のぼんやり感にも効き、目の前の一歩へ意識を戻しやすくします。
次に、光とリズム。カーテンを開けて朝の光を浴び、首・肩・股関節をゆっくり回すだけで十分。リズミカルな小さな運動は、気分を持ち上げる脳内物質の働きを支え、重たい始動エネルギーを点火します。ここでコーヒーを飲む人は、まず水を一杯。脱水を防ぐだけでも頭の回転が違います。
三つ目は「言葉の整頓」。心の中で渋滞している不安を、メモに三行で分解します。事実・解釈・次の一手。この順に短く書くと、漠然とした不安が具体的な作業に変わります。例えば「メールが怖い」を「未返信が3件」「評価が下がるのでは」「まず一行だけ返す」に置き換える。言葉にすることで思考が輪郭を持ち、行動のハードルが下がります。
四つ目は「感謝の一点集中」。今日は誰のどんな助けを受けているかを一つだけ挙げて、相手の名前を添えて書きます。感謝の視点は脳の注意の向きを切り替え、過度な自己監視から抜け出すスイッチになります。気分の底上げが目的なので、大きな出来事でなくて構いません。
最後は「ペース配分の宣言」。今日やることを三つまでに絞り、優先順に番号を振ります。疲労が強い時や休職明けの復職期は、15分働いて5分休むなど、休憩も予定に組み込みます。「小さく始めて必ず止まる」を守るほうが、結局は長く走れます。途中で心身の負担が増したら、予定の更新は失敗ではなく調整と捉えましょう。
この5分の整えは、適応障害や不安が強い時にも「今日を切り抜ける」具体策になります。睡眠が乱れている人は、起床時刻を一定に保ち、朝の光と軽いリズム運動をセットにするだけでも整いやすい。続けるほど、心のギアが噛み合う手応えが出てきます。
一人で抱え込まず、専門家の伴走を得ることも大切です。つらさが数週間続く、食欲や睡眠が極端に乱れる、仕事に戻ることを考えるだけで強い動悸がするなどのサインがあれば、医療につながってください。