心のクリニック 医療コラム
2025年9月28日
朝と夜を整えて心を守る:ホルモン視点のセルフケア

不安や落ち込みは「気合い」で消せません。鍵になるのは体内リズムです。朝は光と活動でやる気のスイッチを入れ、夜は休息でブレーキをかける。この切り替えが、気分を安定させます。

朝は起床後1時間以内にカーテンを開け、屋外で数分でも自然光を浴びましょう。光は脳の時計をリセットし、睡眠と覚醒のリズムを整えます。軽い散歩や伸びもおすすめ。歩行の一定リズムは心のざわつきを鎮めるのに役立ちます。朝食はたんぱく質を少し加えると、日中の集中力が安定しやすくなります。

日中は「小さな達成」を積み重ねます。やることを3つだけ書き出し、最初は最短2分の行動から。完璧より「できた」を増やす戦略が、先延ばしの悪循環を断ちます。人と短く会話する、礼を一言添えるといった社会的なやりとりも、安心感を高めます。気分の波が強い日は「刺激の3減」—カフェイン、アルコール、過剰なニュース閲覧—を意識的に控えましょう。

夜は減速の時間。スマホの強い光と情報量は脳を覚醒させます。就寝前1時間は画面を閉じ、温かい飲み物、ぬるめの入浴、ゆっくりした呼吸で体温と心拍を整えましょう。寝床では「眠れなければ一度起きる」をルールに。横になり続けて焦るほど眠りは遠のきます。週末の寝だめは体内時計を乱すため、起床時刻の幅は±1時間にとどめるのがコツです。

もう一つの鍵は「言語化」。モヤモヤを3行で書き出し、事実・解釈・望む行動に分けてみると、感情の濁流から一歩外側に立てます。思考の偏りに気づけるだけでも、行動の選択肢は増えます。つらさが続く場合、休職や業務調整は「逃げ」ではなく回復のための戦略。主治医や職場と小刻みに相談し、復帰は「時間×負荷」を段階的に上げるイメージが有効です。

これらは疾患の治療を置き換えるものではありません。症状が長引く、仕事や家庭に支障が出ている場合は、早めの専門相談が回復を近づけます。