心のクリニック 医療コラム
2025年10月21日
心が疲れる前に整える一週間メンテナンス術

忙しさが続くと、気づかないうちにストレスが積み重なり、うつや不安、適応障害の前触れが日常に紛れます。精神科・心療内科の現場では、悪化してから受診される方が少なくありません。そこで今日は、睡眠、食事、運動、言葉の使い方、人との関わりを「一週間の型」に落とし込んだセルフケアをご提案します。

月曜はリセット。出勤前の10分だけ深呼吸と軽いストレッチを行い、夜はベッドに入る時刻を固定します。就床時刻より朝の起床時刻を一定にすることが睡眠の質に直結します。寝不足はドーパミンの乱れを招き、集中力と意欲が落ちやすくなります。

火曜は仕事の優先順位を3つまでに絞る日。やることリストを減らすと不安の暴走が止まり、心の負担が軽くなります。会議では「結論から短く話す」を意識し、伝え方の工夫でコミュニケーションの摩擦を減らします。

水曜は体を動かす中日。出勤や買い物で15分だけ早歩きを追加。リズム運動はセロトニンの活性化につながり、イライラや焦りの緩和が期待できます。夜はぬるめの入浴を就床2時間前までに済ませ、画面を見る時間を短くします。夕方以降のカフェインは控え、スマホの強い光やブルーライトを避けると自律神経が整い、寝つきが良くなります。

木曜は人間関係のメンテ。相手の話をさえぎらず、最後に一文だけ要約して返す練習をします。聞き方を整えると、職場でも家庭でも誤解が減り、ストレス対処力が上がります。

金曜は振り返り。今週のよかった出来事を3つ書き出し、誰か一人に感謝を伝えます。感謝の習慣は睡眠の満足度を上げ、翌日の活力を引き出します。お酒は控えめにし、翌朝の寝起きを守りましょう。

土曜はメンテのロング版。午前の明るい時間帯に屋外で30分歩き、体内時計を整えます。午後は買い置きの整頓や家事を小分けに。達成感は不安を和らげ、パニック症状の土台となる過覚醒を鎮めます。

日曜は準備の日。翌週の服と持ち物をセットにし、月曜午前の最優先1タスクを決めてから寝ます。将来の自分へのメッセージを書いておくと、月曜の朝の迷いが減ります。

もし休職が必要になった場合は、早めに主治医に相談し、診断書と会社連絡の段取りを確認します。休職中は月に数回の受診と、生活記録の簡単な記入が役立ちます。復職前は、起床時刻の固定、軽い運動、通勤相当の外出時間の確保を目安に、段階的にペースを戻しましょう。無理のない範囲で、カウンセリングを活用して不安の扱い方や自己理解を深めておくと安心です。

最後に、これは完璧を目指す計画ではありません。忙しい週は一つでもできたら合格。積み重ねるほど、睡眠、気分、集中の波が安定し、仕事のパフォーマンスも改善します。心が折れそうだと感じたら、一人で抱えず専門家に相談してください。精神科や心療内科の初診では症状の評価に加え、生活の整え方も一緒に考えます。