忙しさに押し流されると、気づかないうちに心の余力(バッファ)が削られます。うつや不安、適応障害は突然のようでいて、多くは“慢性的な過負荷+休息不足”の積み重ねです。そこで提案したいのが、毎日を小さく整える「回復ルーティン」。特別な才能ではなく、誰でも今日から始められる設計です。
まずは睡眠。就床・起床を一定にし、夜の入眠2時間前は照明とデジタル刺激を控えめに。日中は短時間でも日光を浴び、軽いリズム運動で体内時計をそろえます。深く眠れた最初の90分が翌日の集中力と感情の安定を底上げし、ストレス耐性を高めます。量(睡眠時間)を先に確保し、そのうえで質を下げる要因を一つずつ外していくのがコツです。
次に、感情のガス抜き。嫌な出来事は「一度だけ言語化→区切る→別の行動へ」。繰り返し反芻すると記憶が強化され、疲れが長引きます。短いメモや誰かに一回だけ共有して、スイッチを切り替える習慣を。合わせて、1日1つ「感謝できる具体」を探すと、注意が“できていること”にも向きやすくなります。小さな達成や感謝を積むほど、自己効力感は回復します。
対人面では、「伝え方・聞き方」を簡素化。要件は①結論②理由③お願いの順で短く、相手の発話は途中で遮らず要約で返す。これだけで衝突が減り、職場や家庭のストレスを大幅に圧縮できます。自分に向けても同様で、完璧主義の基準を“可動式”に。体調や業務量に応じてハードルを下げても構いません。「今日は60点で合格」の日があって良いのです。
さらに、エネルギーの源を日中に配分。朝はタンパク質と咀嚼を意識し、昼休みに5〜10分の散歩。午後のカフェインは控えめにして、夕方以降は“鎮静モード”へ。これらは直接、気分と活力に働き、復職前後の不安や焦りの波を緩やかにします。
もし「朝起きられない」「職場に近づくと動悸がする」「週末にしか回復できない」が続くなら、セルフケアだけで抱え込まず専門家へ。休職・復職の判断や通勤訓練の方法、薬物療法とカウンセリングの使い分けまで、早めの相談が回復を速めます。心の調子は、走りながら整えるより、立ち止まり方を覚えるほど安定します。
最後に。あなたの“今週の回復ルーティン”を、①睡眠時間の固定②夜の減光③感情の一回書き出し④短い散歩⑤要約で聴く、の5点に絞って始めてみてください。小さな一貫性が、心の余力を静かに増やしていきます。