心のクリニック 医療コラム
2025年9月23日
心が折れそうなときの“戻る力”

負荷が続くと心は危険信号を出します。いったん止まる決断は敗北ではなく、将来の働き方を守る戦略です。休職から復職までには流れがあり、主治医・産業医・職場が役割を分担して伴走するほど、再発リスクを下げやすくなります。

第一歩は「休む間に土台を整える」こと。生活のリズム、とくに起床時刻を毎日そろえ、朝に自然光を浴びましょう。光は体内時計の調整役で、日中の覚醒と夜の眠気の切替を助けます。就床前のスマホ長時間視聴やカフェイン過多は控え、眠れないときは一度ベッドを離れて静かに過ごすのがコツです。

次に「不安との付き合い方」を練習します。心配ごとは紙に書き、対応できるものだけ小さく行動化(まずは5分着手)。対応不要の心配は“心配タイム”を1日15分だけ確保し、時間外は手放す。呼吸法やストレッチで体の緊張を下げ、日中は短い散歩やリズム運動で気分の回復を促しましょう。朝の外気と歩行は夜の眠気づくりにも役立ちます。

復職前は「段階的な負荷」と「支援体制」を具体化します。勤務は短時間から、業務は単純→複雑へ。週ごとに目標と振り返りを設定し、上司・人事・産業医・主治医で情報共有。体調サイン表と、悪化時の連絡先・当面の対応をまとめた“再発予防プラン”を用意しておくと安心です。リワークなど専門プログラムでは、生活リズムの再構築やストレス教育、集団練習が復帰後の安定に役立ちます。

回復期は「言葉の力」も味方に。1日の終わりに「今日うまくいったこと」を三つ書き出す、つらい気持ちは“名前を付けて”短文で表す。自分の状態を言語化するほど、助けを求める場面でも要点を共有しやすくなります。薬や治療は担当医と相談し、自己流で無理をしないことが大切です。