心のクリニック 医療コラム
2025年11月7日
復職前2週間で整える「7つの地ならし」

休職からの復帰は、ゴールではなく再スタートです。大切なのは「元どおり」ではなく「再発しにくい働き方」をつくること。そのために、復職前の2週間で実行できる7つの地ならしを提案します。小さく着実に整えれば、初日の不安はぐっと軽くなります。

①体調の安定目標を決める
起床時刻、3食、日中の活動量を“最低ライン”として定め、毎日同じ時刻で回すことを優先します。完璧より反復。波が出た日は無理に取り戻さず、翌日に淡々と再開します。

②通勤と就業のリハーサル
実際の時間に合わせて家を出て、駅まで歩く、改札を通る、目的地まで乗り換える——を数日かけて慣らします。職場近くのカフェで1〜2時間、パソコン作業や資料読みの“模擬勤務”を行うのも有効です。

③「配慮事項シート」を1枚に集約
できる業務/難しい業務、必要な配慮(業務量、締切、会議時間、席の位置、休憩の入れ方など)を簡潔にまとめます。診断書の文言より、具体的な作業単位で書くと合意形成が早まります。

④面談準備は「Iメッセージ+3点法」
面談では、現状(私の困りごと)、理由(なぜ起きるか)、提案(こうすれば続けられる)を1分で言えるように練習します。主語を自分に置き、「誰のせいか」ではなく「どうすれば」を前面に。

⑤段階的復帰プランを設計
時間を短く、業務を限定し、休憩を計画的に——この三本柱で段階を刻みます。例:週1は午前のみ、週2は午後追加、週3は会議30分まで…と明示し、各段階の“卒業条件”と見直し基準をセットにします。

⑥支援窓口を見取り図に
人事、上司、産業医、保健師、両立支援の外部資源(地域の産業保健総合支援センター等)を把握し、誰に何を相談するかを決めておきます。復職後の不調サインが出たときの連絡ルートも先に合意しておきましょう。

⑦初週のセルフケア計画
睡眠・食事・入浴・軽い運動の“土台習慣”に加え、業務後15分のクールダウン(散歩やストレッチ)、夜の振り返りメモ(よかったこと・工夫・明日への一言)を固定化。週末は予定を詰め込まず、翌週の体力を貯めます。

これらは“気合い”ではなく“設計”の問題です。復職は個人の努力だけでなく、職場の仕組みと対話で成功率が上がります。主治医の所見、事業場の判断、段階的な勤務、復帰後フォローまでを一本の流れとして描き、必要に応じて見直す——この循環が再休職の予防線になります。