心のクリニック 医療コラム
2025年7月27日
布団で20分以上過ごさない

布団に入ってからしばらく経っても眠れない、あるいは夜中に目が覚めて再入眠できないときは、思い切っていったん布団を離れましょう。眠れないまま布団の中で過ごす習慣が続くと、「布団=眠れない場所」という学習(条件づけ)が起き、ますます寝つきが悪くなります。これは不眠の行動療法(刺激制御)の基本的な考え方です。

■なぜ布団を出るのか
人の脳は、場所と行動を結びつけて学習します。布団の中で長く起きているほど、脳は布団を「目がさえる場所」と誤学習します。逆に、眠くない時は布団から離れ、眠くなってからだけ布団に戻る流れを繰り返すと、「布団=眠れる場所」へと再学習が進みます。

■実践ステップ
・時計は見続けない
時間確認は目安だけにし、数字を追わないようにする。

・長く感じたら離床
厳密に20分でなくて構いません。「長い」と感じたら静かに起きる。

・暗めの場所へ移動
寝室の外または椅子へ。間接照明や小さなライトで弱い明るさに。

・単調で静かな行動を選ぶ
紙の本で難しめ・興味薄めの内容を数ページ。呼吸法や軽いストレッチ、ボディスキャンもよい。

・刺激になることは避ける
スマホ、テレビ、ゲーム、仕事、強い感情が動くコンテンツ、明るい照明、カフェイン・喫煙は避ける。

・眠気の波が来たら再入床
「今なら寝られそう」と感じた時点で布団へ戻る。眠れなければ再び1~6を繰り返す。

・離床中にしてよいこと/避けたいこと
してよいこと
 紙の読書(参考書や説明書など単調なもの)
 やさしいストレッチ、首肩まわし、深呼吸
 白湯やノンカフェインの温かい飲み物を少量
 薄暗い部屋での静かな音(小さめの環境音)

避けたいこと
 スマホやPC、テレビ(強い光と情報刺激)
 食事や甘い間食、アルコール、喫煙
 家事や仕事の続き、熱中する趣味
 明るい照明、体が温まりすぎる行動

■よくあるつまずきと対策
・離床しても目が冴える
→ 明るさをさらに落とし、オレンジ色に調光を。読む内容をより単調に。椅子に深く腰かけ、姿勢もリラックスへ。

・何度も繰り返すのがつらい
→ 最初の1~2週間は学習の切り替え期。回数ではなく「原則を守れたか」を評価する。

・寒い、足が冷える
→ 薄手のブランケットやレッグウォーマーを用意。温めすぎて汗ばまない程度に。

・安全面が不安
→ 足元灯を最小限で。転倒リスクがある場合は寝室内の椅子を使って最短移動にする。

・夜中に時間が気になる
→ 文字盤を伏せる、時刻が見えにくい置き方にする。時間を見続けると不安が強化されやすい。

■小さな準備が成功のカギ
就寝前に、薄暗いランプ、読みかけの本、ブランケット、白湯などを手の届く場所へ。夜中の移動や迷いが減るほど、再入眠までの時間が短くなります。

■ポイント
・布団の中で起きたまま長く過ごさない。長いと感じたら静かに離床
・離床中は暗めの環境で単調な行動を。スマホやテレビは避ける
・眠気が来たら布団へ戻る。眠れなければ再び離床し、よい学習を積み重ねる
・時計は見続けない。数字を見るほど不安が強化されやすい
・安全と快適のための夜用セット(ランプ、本、ブランケット、白湯)を事前に準備
・最初の1~2週間は切り替え期。回数より原則遵守を評価する