「やるべきことは分かっているのに体が動かない」。多くの方が抱えるこの停滞感には、からだ・思考・対人の3つを同時に整えると効果的です。どれか1つに偏らず、日常で回せる仕組みに落とし込むことがポイントです。
からだの柱:起床後1時間で朝の光を浴び、歩行やストレッチなど軽い運動を10~20分。朝食はたんぱく質を意識し、カフェインは昼過ぎまで。寝床にいる時間を伸ばし過ぎないことも大切です。眠れない夜は「横になっているだけでも回復の一部」と捉え、翌朝の起床時刻は守りましょう。週末の寝だめは1時間以内に。平日の合計で中等度の有酸素運動を週150分めざすと、日中の活力と睡眠の深さが整います。アルコールは寝つきを良くしても睡眠の質を下げがちなので控えめに。
思考の柱:先延ばしは「大きすぎる課題」と「不確実性」が燃料です。作業を5分単位の最初の一歩に分割し、終わりの定義を明確に。もし~なら~する、という事前の約束(例:13時になったら申請フォームを開く)を紙に書き出します。完璧主義には「最低限クリアの基準」を別に用意。感情は行動の引き金ですが、行動が感情を整えることも忘れずに。集中が切れる時は、45分作業+5分ゆるい休息のサイクルで負荷を調整します。寝る前1~2時間は強い光と長い動画を避け、脳を“着陸モード”に。
対人の柱:人は他者の視線で行動が続きます。毎朝、今日の「小さな成果」を同僚や家族と共有する、業務チャットに着手報告だけ先に投げるなど、外部に宣言する仕組みを。相手の話を要約して返す聞き方は、誤解を減らし、協力者を増やします。頼ることは甘えではなく、仕事を前に進める技術です。「お願いごとは具体的に」もコツ。例:明日10時までに下書きの見出し3つだけ見てほしい、など。
3本柱を回す記録術:手帳やメモアプリに、睡眠・光・運動・食事・着手時間・相談先の6項目を1行で。赤信号が続く項目だけ改善策を当てます。調子が崩れたら、光→歩行→5分着手→誰かに一言の順で「再起動」。続けるほど、意思の消耗が減り、自然と不安は小さくなっていきます。気分の点数(0~10)を朝夕で残すと、客観視が進み、回復の兆しに気づけます。
神経の視点:朝の光や歩行、規則正しい食事は安定感をもたらす物質の働きを後押しし、達成の積み重ねは意欲の回路を整えます。強すぎる刺激や徹夜は乱れの原因に。夜は温かい飲み物や呼吸法で静かな時間をつくると、回復スイッチが入りやすくなります。
ケースの例:休職中で朝起きられず活動が進まない方は、起床・朝光・散歩・軽食・5分家事の順に“ウォームアップ”を固定し、同時に午前中に15分だけメモ整理を設定。午後は支援者と進捗を共有。これを2週間続け、3週目からは通勤時間帯に外出する「通勤訓練」を追加。心身の土台が安定してから、職場との段階的な復帰計画へと進めます。
お一人で難しい場合は、専門家と一緒に整えるのが近道です。