心のクリニック 医療コラム
2025年9月23日
働く心を守る「からだ・思考・つながり」の整え方

忙しさが続くと、気力だけで踏ん張ろうとして消耗しがちです。そこで大切なのが、毎日まわせる小さな仕組みづくり。ポイントは「からだ」「思考」「つながり」の3層で整えることです。

〈からだ〉
朝は起きて60分以内に外へ出て、10分歩く。屋外の光とリズム運動は、体内時計を整え、日中の集中と夜の眠りにつながります。昼は1回でいいので窓の外を見るか短時間の外出で目とからだを切り替える。夜は寝る6時間前からカフェインを控え、就寝1〜2時間前の入浴でからだを温め、上がった体温が下がっていく流れで入眠しやすくします。明るい画面は就寝前に弱め、寝室は静かで涼しく。

〈思考〉
不安やモヤモヤは「書き出す→選ぶ→一歩だけ決める」で扱うのがコツ。紙に3分、気になる事柄を箇条書きにし、“今日できる具体的な1アクション”を1つだけ決めます。解決不能な事柄は「様子を見る期限」を決めて保留に。頭の中の回転を止めるだけでも、疲労感は下がります。

〈つながり〉
短い挨拶・相談・ねぎらいは、ストレス下の心を支える土台です。頼る・任せる・断るをていねいに言語化し、孤立しない設計を先に用意しましょう。休職や復職の場面では、早めの相談と段階的な復帰計画が再発予防に役立ちます。

補足すると、刺激物との付き合い方も鍵です。カフェインは覚醒を助けますが、体質によっては夕方以降まで眠りに響きます。寝酒は一時的に寝つきを良くしても、深い睡眠を減らすためおすすめできません。いびきや日中の強い眠気、脚のむずむずがある方は、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの可能性もあるため医療機関での評価を検討してください。

職場の環境づくりも同じくらい重要です。業務の優先順位をチームで明確にし、上司や同僚と「相談しやすい」関係を育てることが、負担の軽減と回復の早道になります。人事・産業医・公的な相談窓口の活用も、早期発見と再燃予防に有効です。

完全を目指さず「7割でよし」。3層の小さな行動を1つずつ積み重ねれば、気分の波に流されにくい日常が戻ってきます。無理なく続けられる形に調整していきましょう。