心のクリニック 医療コラム
2025年10月27日
働くあなたの“心の省エネ”術――睡眠・脳内物質・行動で整えるリカバリー

仕事の負荷が続くと、心はバッテリー表示が赤になります。うつ・不安・適応障害は、気力の問題ではなく、脳と体のシステムが“省エネモード”に入っているサイン。原因探しより、回復の順番を整えましょう。合言葉は「寝る→動く→整える」です。

寝る:睡眠は有効なメンタル投資です。起床と就寝の時刻を休日も±1時間で固定し、朝はカーテンを開けて3分で外光を浴び、夜はスマホの光を弱めます。入眠の90分前にぬるめの入浴、就床前はカフェインとアルコールを控える。ベッドは“眠る・休む専用”にし、考え事はメモに退避。これで体内時計が整い、翌日の判断力と感情の波が穏やかになります。

動く:軽い有酸素運動は、セロトニンを味方にして不安の過剰反応を下げます。目安は“息が弾む早歩き”を1日15〜20分。できない日は階段を使う、1駅だけ歩く、椅子から立って背伸びを3回でもOK。朝に体を動かすとドーパミンのスイッチが入り、やる気と集中が上がりやすくなります。完璧より、継続の設計が勝ちです。

整える:ストレスは「身体・思考・行動」の三層で現れます。身体(肩こり・胃の違和感・動悸)、思考(極端な予測・自己否定)、行動(先延ばし・過食・夜更かし)。まずは一つ選び、行動からテコ入れを。タスクは15分の小分け、通知は必要最小限にし、カレンダーに“回復の約束”(昼の散歩、昼寝10分、定時退勤日)を書き込みます。言葉も道具です。「〜しなければ」を「まずは5分やってみる」に変えるだけで、自分への圧が下がります。

食事と休息:朝はたんぱく質と炭水化物を組み合わせ、腸のリズムを整える発酵食品を少量。夜は腹八分で、寝る2時間前に食事を終えると睡眠の質が上がります。4-6呼吸(4秒吸って6秒吐く)を1分行うだけでも自律神経が落ち着き、パニック様のドキドキが和らぎます。

職場でできる工夫:朝礼の前に“今日やらないこと”を1つ決める、会議は30分で終了条件を先に共有、メールは1日3便のまとめ読み。相談の窓口や産業医、上司への伝え方は「症状→業務影響→希望する配慮」の順に。たとえば「睡眠の乱れで集中が続かず、電話応対でミスが増えた。2週間、午後の来客対応を他メンバーに交代できると助かる」のように具体化すると、配慮は通りやすくなります。

休職・復職のポイント:無理を続けて“強制停止”になる前に、早めの受診と環境調整が最短距離です。休職は負けではありません。睡眠の安定→日中活動の再構築→通勤訓練→段階的な業務復帰という階段を、一段ずつ上がれば大丈夫。横浜・新横浜エリアでの支援やカウンセリングの併用は、再発予防に役立ちます。

最後に。メンタルの不調は、意志薄弱ではなく生体の反応です。精神科・心療内科の専門家は、薬だけでなく生活リズム・認知行動の調整・職場連携までトータルで伴走します。うつや不安、眠れない夜でお困りなら、ひとりで抱え込まず早めにご相談ください。