心のクリニック 医療コラム
2025年10月27日
体調の“微差”を味方にする:メンタル不調を早めに整えるコツ

朝の目覚め、通勤時の足取り、夕方の集中力。どれも「ちょっとだけ違う」変化ですが、積み重なると心と体のシグナルになります。大きく崩れる前に、この微差を見つけて整える—それが再発予防にも、キャリアを守るうえでも有効です。

まず注目したいのは睡眠のリズムです。就寝・起床が30分以上ぶれる日が週に3回以上あると、翌日の気分や判断が不安定になりやすくなります。睡眠時間の長短より「毎日ほぼ同じ時刻に寝て起きる」ことを先に整えると、日中のだるさや不安感が落ち着くことが多いです。

次に、朝の「光と動き」。起床後1時間以内に外の光を浴び、5〜10分だけでも歩くと、体内時計が前に進み、午前の頭の重さが軽くなります。特別な運動でなくて構いません。駅まで一駅手前で降りて歩く、バス停一つ分を歩く—その程度で十分です。

食事は「朝と昼にタンパク質をひとつ」を合言葉に。卵、納豆、ヨーグルト、魚、鶏肉など、どれでも良いので一品を確保しましょう。午後の集中切れが減り、間食の量も自然と落ち着きます。夜は炭水化物を少し控えて、眠気を邪魔しない構成に。

仕事面では、午前中の最初の60〜90分に「頭を使う作業」を集め、午後はルーチンや連絡など「軽めのタスク」をまとめます。集中力の高低に合わせて配置換えするだけで、同じ労力でも達成感が増し、残業も減りやすくなります。

不安や緊張が強い日は、言葉の使い方を意識しましょう。「いつも」「絶対に」を「今日は」「まずひとつ」に置き換えるだけで、脳の警戒モードが下がります。自分にも他者にも、短い肯定文で要点を伝える練習が役立ちます。

人間関係の疲れには「一言の感謝」を。毎日ひとり、具体的に感謝を伝える相手を決めます。「資料の締切を分かりやすく示してくれて助かった」など事実を添えると、相手との信頼が早く積み上がり、自分の孤立感も減っていきます。

もし「朝から会社に向かえない」「ミスが続く」「会議前に動悸が強い」といったサインが1〜2週間以上続くなら、無理に踏ん張らず、早めに相談を。必要に応じて勤務量を調整したり、休職をはさんで回復を優先する選択が、結果として復職後のパフォーマンスを守ります。

実践のコツは「週ごとのミニ実験」です。①今週は就寝・起床を固定、②来週は朝の5分歩行を追加、③再来週は午前のタスク配置換え—のように、一度に一つだけ変えて効果を比べます。うまくいった手順だけを残せば、再現性の高い自分専用マニュアルができあがります。

最後に、ひとりで抱え込まないこと。感情の嵐は言語化すると弱まります。短くても良いので、箇条書きで「今の体調」「困りごと」「助かったこと」を残す習慣をつけましょう。診察やカウンセリングでの共有もスムーズになります。

もし今、働き方や体調に不安がある方は、専門家の助けを借りて“微差の調整”を始めてみませんか。