心のクリニック 医療コラム
2025年10月6日
休職から自分らしい復職へ 眠りと体調と対話を整える実践ガイド

「限界だ」と感じたときの休職は、逃げではなく未来のキャリアを守る選択です。いちど減速し、心身を整えてから走り直すほうが、長く安定して働けます。ここでは、休職中から復職準備、そして復職後の定着までを、睡眠の立て直し、体力と脳のはたらき、対話スキルの三本柱でまとめます。

第一に睡眠です。毎日同じ時刻に起きることを最優先にしましょう。起床直後にカーテンを開けて朝の光を浴びる、就寝前はスマホやPCの使用を控える、寝室を暗く静かに保つ。枕やサプリの前に、起床時刻と光と環境という土台を整えるだけで、一日の気分や集中力、夜の寝つきが好循環に変わります。

第二に体力と脳のはたらきの視点です。ウォーキングなど軽い有酸素運動を一日十〜二十分、呼吸が弾む手前の強度で反復します。頑張り過ぎは不要です。続けるほど睡眠の質が上がり、不安や落ち込みの波をやわらげ、復職後の疲れやすさにもブレーキがかかります。入浴で体を温める、夕方以降のカフェインを控えるなど、眠りにつながる行動も組み合わせましょう。

第三に対話スキルです。自分の状態を短い言葉で見える化すると、周囲に伝えやすくなります。例えば 朝のだるさは十段階中七 午後に不安が増える 会議前に動悸 といった簡潔なメモで十分です。主治医や産業医、上司と共有しながら、業務量、締切、静かな作業時間、休憩の取り方など、環境の調整点を一緒に探します。原因となるストレスが明確な場合は、環境とスキルの設計が特に効果的です。

復職は当日の出社がゴールではありません。段階的に負荷を上げ、定着を目指すプロセスが重要です。例えば最初の二週間は午前のみで反復作業中心、次の二週間で午後の会議を一本だけ追加、といった客観的なステップを決めます。週ごとに症状と業務の手応えを振り返り、調整点を一つだけ増やすのが続けやすいコツです。

日常の行動計画に落とし込むと 次の通りです。朝は同時刻に起床して朝光を浴び 十〜二十分の散歩。昼はカフェインは十四時まで。不安が高い日は三分の呼吸リセット。夕は軽い運動か入浴で体温を上げ 就床二時間前から照明を落とす。週一回は状態メモを主治医と共有し 職場では静かな席などの調整を一点だけ試す。月一回は面談で次の二週間の負荷を微調整します。

大切なのは 焦って元の百分の百を急がないこと。眠り 体力 対話の三本柱を少しずつ積み上げるほど 波に引っ張られにくくなり 休職から復職 そして定着へと滑らかに移行できます。必要に応じて薬物療法やカウンセリングを併用し 無理のないペースで整えていきましょう。