心のクリニック 医療コラム
2025年10月8日
仕事と心を守るための「休む・整える・戻る」実践ガイド

朝の通勤で胸がざわつく。小さなミスが雪だるま式に大きく感じる。そんなサインが続くとき、無理に踏ん張るよりも「休職」という選択肢を早めに検討することが、未来のキャリアを守ります。休む目的は戦線離脱ではなく“回復と再設計”。主治医と相談し、会社とは「就業配慮」「業務調整」「復帰プロセス」を文書で共有するとスムーズです。面談では、症状・負荷要因・再発予防策の三点セットを簡潔に言語化しましょう。言葉にすること自体が、心の見取り図を描き直す作業になります。

「もしかして適応障害かも」と感じたら、環境要因と症状の時間的関係を振り返ります。特定の上司・業務・配置転換など“きっかけ”がはっきりしているなら、配置や働き方の見直しが治療そのもの。うつ・不安・ストレス反応は連続体で動くため、早期にカウンセリングを併用し、認知行動療法的に「事実」「解釈」「行動」を切り分ける練習が有効です。人は対話の中で視点を取り戻します。聞き手は結論を急がず、相手の感情→事実→希望の順で整理してあげると関係がラクになります。

回復期の最優先は睡眠です。入眠3時間前から照明を落とし、就寝1時間前のスマホ・カフェイン・アルコールを避ける。起床後はカーテンを開けて朝光を浴び、軽い散歩で体温とセロトニンを上げる。週末の“寝だめ”は体内時計を乱すため、起床時刻は±1時間に。昼寝は15~20分、17時以降は控えます。朝のリズムが整うと、日中の集中と感情の波が落ち着き、夜のドーパミン過多による浅い眠りも減っていきます。

復職準備は「段階」「時間」「人間関係」の三本柱で。①段階:自宅での模擬勤務→短時間出社→時短勤務→通常勤務。②時間:午前に集中タスク、午後はミーティングや雑務へ配分。③人間関係:上司・人事・産業医と“困ったらこうする”連絡動線を事前に合意。初月は“できること”を積み上げ、自責や完璧主義を手放します。感情に飲み込まれたら、紙に3行だけ書く――今の気分/身体感覚/次にやる一歩。この小さな言語化が、暴走思考のブレーキになります。

人間関係のストレスを減らすコツも携帯しておきましょう。伝えるときは、①事実を短く、②相手の利点を添え、③具体的提案を一つだけ。聞くときは、①復唱、②共感、③確認質問の三拍子。雑談は“相手の最近の変化”に光を当てると距離が縮まります。職場では「ありがとう」を数えてみてください。感謝の習慣はうつ・不安の緩和に相関し、自己肯定感を底上げします。横浜・日吉・武蔵小杉エリアで働く方のご相談でも、「うつ・不安・適応障害・休職・復職・睡眠・セロトニン・ドーパミン・ストレス・カウンセリング」といったテーマは日々扱う標準的なお悩みです。一人で抱え込まず、専門家にご相談ください。

最後に――“勇気”とは不安がない状態ではなく、不安があっても一歩進む力のこと。休む決断も、戻る挑戦も、その人の価値を減らしません。あなたのペースで、今日できる一歩から始めましょう。