急に動悸がして、胸が苦しい――そんな時は「危険ではない身体反応」を落ち着かせることが第一歩です。コツは、意識を“今ここ”に戻すこと。まずは椅子に深く腰掛け、足裏で床を感じながら、鼻から4秒で吸い、いったん止めて、口をすぼめて6〜8秒かけて吐く呼吸を5サイクル。肩と顎の力を抜き、吐く息を長めに保つと自律神経が整いやすくなります。呼吸に意識を置けない時は、指で数えたりタイマーを使ってもOK。
次に、感覚に注意を向ける「5-4-3-2-1」法を試しましょう。見えるものを5つ、触れられるものを4つ、聞こえる音を3つ、香りを2つ、味を1つ、心の中で順番に数えます。例えば「青いポスター」「机の木目」「椅子の縫い目」……。五感の情報に集中すると、最悪の想像へ拡がる思考が落ち着きます。手のひらに冷たい缶を握る、足裏で床を強めに踏みしめる、といった“接地”の刺激も有効です。
避けたいのは、過剰なカフェインやアルコール、徹夜、SNSでの不安検索など体と心の負担を増やす行動。軽いストレッチや散歩、ぬるめの入浴で体を“安心モード”へ切り替え、寝る前の深呼吸や日記で一日の終わりに区切りをつけましょう。発作が繰り返す、外出や乗り物を避けるようになった、仕事や学業に支障が出る――そんな時は医療のサポートを。薬だけでなく、認知行動療法などの心理的支援も有効です。
パニック時のピークは多くが数分〜10数分で自然に下がります。体は“危険に備える誤作動”をしているだけ、と理解するだけでも波は弱まります。深い呼吸、五感を使った接地、安心メッセージ――この3点セットを繰り返し練習しておくと、本番で使いやすくなります。近しい人には「そばにいて、ゆっくり呼吸を一緒にして」と頼み方を共有しておくと安心です。
焦らず、できることを小さく積み重ねることが回復の近道です。「いま、私は安全だ」「波はやがて引く」と短い言葉で自分に声をかけるのも助けになります。一人で抱えず、必要に応じて当院へご相談ください。