心のクリニック 医療コラム
2025年10月23日
不安が強い日のリセット術—今日からできる5つの整え方

「胸がざわつく」「考えが止まらない」。そんな不安は、体と脳のしくみを味方にすれば和らぎます。ここでは、精神科・心療内科の視点から、安全に試せる方法を5つご紹介します。

①呼吸でブレーキを入れる
息を4秒吸い、6秒吐くペースを3分。長めの吐く息が自律神経のバランスを整え、動悸や手の震えを落ち着かせます。姿勢は背もたれに骨盤を立て、肩と舌の力を抜くのがコツ。

②朝の光と体温リズムを合わせる
起床後1時間以内に屋外で5〜15分の朝日。体内時計がリセットされ、睡眠と気分が整います。カフェインは起床から90分後を目安に。焦りと眠気の“同時発生”を減らします。

③10分ウォークでセロトニン回路を起動
一定のリズム運動は不安のループを切り離します。速すぎず、会話できる速さでOK。腕を振り、目線は水平に。音楽はテンポ100前後が歩幅と合い、続けやすくなります。

④考えと自分を“くっつけない”
「私はダメだ」という“言葉”と“自分”を離して眺める練習です。紙に浮かんだ考えを書き出し、前に「今、頭に浮かんだのは——」を付け足す。現実と推測の境界が見えます。

⑤夜の“心配タイム”を予約する
1日15分、同じ場所で“心配の時間”を確保。日中に湧いた不安はメモして後回し。決まった時間にだけ向き合うと、脳は「今はやらなくていい」と学習します。

補助の知恵
・腸を整える:食物繊維・発酵食品・十分な水分はセロトニン経路を支えます。
・スマホのブルーライトは寝る1時間前に最小化。
・緊急時の合図:息苦しさ、食事が摂れない、仕事や学業が続けられない、自己否定が止まらない——これは専門家に相談する目印です。

現場で役立つ小技
・5-4-3-2-1法:見えるもの5つ、触れるもの4つ、聞こえる音3つ、匂い2つ、味1つを順に挙げると、注意が“今ここ”に戻ります。
・小さな達成でドーパミンを整える:机の上を3分片づけ、メールは2通だけ、と行動を細分化。達成→ごく短い休憩のリズムは、やる気の波を無理なく支えます。
・睡眠は「起床時刻固定」が最優先。夜はぬるめの入浴とストレッチで体温の下げどきを作ると、入眠しやすくなります。

職場とのやり取り
不安が長引き、勤務が難しいと感じたら、主治医と相談のうえ、休職や就業調整も選択肢です。復職の準備では、通勤訓練や短時間勤務から段階的に。業務量・業務内容・人間関係のストレス要因を見直し、再発予防計画を“紙で共有”すると合意形成がスムーズです。心の負担を説明する診断書や産業医への情報提供もサポート可能です。