心のクリニック 医療コラム
2025年10月24日
【気づいたら限界寸前?】不調のサインを見逃さないための「睡眠・運動・相談」の三本柱

朝から倦怠感が抜けず、集中が続かない。小さなミスが増え、休日は寝ても回復しない――こうした変化は、うつや適応障害の入り口かもしれません。放置すると休職が視野に入るほど悪化することもありますが、早めに手を打てば復職・再発予防まで見据えた回復ルートを描けます。今日は、誰でも今すぐ始められる三本柱「睡眠・運動・相談」をまとめます。

第一の柱は睡眠。起床時刻を毎日そろえるだけでも体内時計が整い、夜の入眠がラクになります。寝床は「寝る場所だけ」にし、眠れないまま長く横にならないこと。30分以上眠れなければ一度起きて静かな活動に切り替え、眠気が戻ったら再入床します。就寝前のカフェインとアルコールは控えめにし、朝は窓際で自然光を浴びてセロトニンのリズムを作る。日中の短い昼寝(20分以内)はOKですが、夕方以降は避けましょう。睡眠時間は個人差がありますが、多くの成人では7~8時間が目安。慢性的に不足すると不安や抑うつが悪化し、通勤・家事の負担も増します。

第二の柱は運動。特別なジム通いがなくても、少し息が弾む速歩を「1日20~30分、週5回」から。合計で週150分が実現できると、ストレス耐性が上がり、ドーパミンの働きが整って意欲の復活を後押しします。階段利用、1駅分だけ歩く、買い物カゴを左右で持ち替える――こうした“生活の中の筋トレ”も立派な介入です。可能なら週に2回、スクワットや腕立てなどの自重トレーニングを10分でも。大切なのは「完璧より継続」。記録アプリやカレンダーに〇を付けるだけでも動機づけになります。

第三の柱は相談。症状が2週間以上続く、食欲・睡眠の乱れが顕著、仕事や学業・育児が回らない――このどれかに当てはまったら、早めに専門家へ。薬物療法だけが選択肢ではなく、カウンセリングや認知行動療法、睡眠の行動調整など、段階的に組み合わせる方法があります。会社員の方は、人事・産業医・主治医で休職と復職の計画を共有するとスムーズ。診断書や主治医意見書を準備し、復職前は時短勤務や通勤訓練で負荷をならします。無理に「元どおり」を急がないことが、結果的に再発予防につながります。

不安は「見えない敵」ですが、数値化できるものもあります。睡眠記録、歩数、作業時間、気分の10段階評価を毎日1行でメモ。波が見えると、つらさを言語化しやすくなり、家族や職場とも共有しやすくなります。もし希死念慮や自傷衝動がある、朝起きられず欠勤が続く、パニックで外出できない――こうしたサインは受診の合図です。早いほど回復は近道です。

心のつらさを一人で抱え込まず、私たち専門職を頼ってください。