心のクリニック 医療コラム
2025年10月9日
【働くあなたの心を守る処方箋】休職・復職・睡眠・人間関係のコツを一つにまとめて

「朝、会社に向かう足が重い」「眠っても疲れが抜けない」。そんなサインは、うつや適応障害の入り口であることがあります。放置すると不安とストレスが雪だるま式に膨らみ、仕事の能率も人間関係も崩れやすくなります。まずは“立て直しの順番”を決めましょう。①睡眠と生活リズム、②体の回復(光・食・運動)、③心の整理(言語化とカウンセリング)、④職場との対話、の四層です。

①睡眠は最優先。起床後30分以内に外に出て日光を浴び、体内時計をリセット。朝の光はセロトニンの分泌を助け、夜は自然なメラトニンへとバトンが渡ります。寝る前のスマホとカフェインは控えめに。休日も同じ起床時刻をキープすると復職後のリズムが安定します。早朝の短い散歩や軽いスクワットは、日中のドーパミンと集中力を底上げします。

②体の回復は「少しだけ」を毎日。タンパク質と発酵食品を意識、昼は15分の散歩、入浴は就寝90分前に。これだけで不安の波が緩み、心療内科での治療効果も出やすくなります。

③心の整理は、感情に“名前をつける”ところから。モヤモヤ→怒り3/10、悲しみ2/10のように数値化すると、思考の暴走が止まります。さらに、1日3つの感謝を書き出す習慣は、自己否定の語りを穏やかにし、うつ予防にも役立ちます。相談相手がいないときは、オンラインのカウンセリングやグループ療法の力を借りましょう。

④職場との対話は「頼る設計」。上司には診断名の細部ではなく、業務で困る具体(朝の集中が落ちる、会議は60分以内など)と配慮事項を伝えます。休職が必要な場合は、主治医と産業医の意見書をもとに、段階的に働く“リハビリ出勤”を設計。復職後1〜2週間は、作業量より「帰宅後もバテない」ことを目標にします。

人間関係のコツは、話す前に“聴く姿勢”。相手の言葉を要約して返し、承認→自分の提案の順に。伝え方は「事実・気持ち・要望」を一文ずつ。雑談は天気・ニュース・近況の三点セットで十分です。小さな成功体験が不安を鎮め、ドーパミンの健全な回路を育てます。

セルフチェックの目安として、2週間以上つづく抑うつ気分、興味の低下、集中困難、食欲や睡眠の変化、遅刻や欠勤の増加があれば要注意。行動活性化(できる範囲の家事・散歩)やマインドフルネス呼吸を5分取り入れるだけでも、ストレス反応は和らぎます。迷ったら早めに専門家へ。