心のクリニック 医療コラム
2025年10月7日
「壊れそう」を見逃さない――適応障害・休職と復職、そして睡眠を整える実践法

「朝から動悸がして出社が怖い」「眠れずミスが増えた」。こうした変化が続くとき、仕事や人間関係などの強いストレスに心身が追いつけず、適応障害や不安・うつの手前にいるサインかもしれません。早めの相談と環境調整、そして睡眠の立て直しが、休職や復職の成否を大きく左右します。

まず知っておきたいのは、適応障害は“原因となるストレス”がはっきりしている点です。原因を特定し、負荷を下げる工夫(業務配分の見直し、在宅・配置転換の検討)を並行して進めると、回復が早まります。加えて「眠りの再設計」は最優先課題。起床後は屋外光をしっかり浴び、就寝1〜2時間前は強い光やブルーライトを避ける。カフェインは昼過ぎまでに。寝床は「眠る場所」に限定し、眠れなければ一度起きて静かな行動に切り替える――これらの基本は、体内時計と睡眠圧を整え、日中の不安や抑うつ、集中力低下を和らげます。朝の短い散歩は、体内時計の前進を助け、やる気や快の回路(セロトニン・ドーパミン)を活性化させる実感的な一歩です。

メンタルの回復は「関係性」によっても加速します。人とつながる安全感はストレス反応を鎮め、安心のホルモンと呼ばれる仕組みが働きやすくなると考えられています。深呼吸や感謝のメモ、短い雑談、頼み方・聴き方の工夫など、対人ストレスを下げる小さなコミュニケーション練習を毎日1つ。これだけでも不安の“粘り”が変わります。

休職が必要なときは、主治医・産業医・会社が同じ地図で動くことが肝心です。①診断と治療方針の共有、②勤務負荷の調整、③生活リズムと体力の回復、④段階的なリハビリ出社(短時間・軽作業から)、⑤本格復職とフォローアップ――と段階を区切り、睡眠・活動量・不安の指標で進捗を確認します。復職後3か月は再燃しやすい時期。会議の数やシフトの幅を最初から広げすぎない「余白の設計」が、長く働き続ける鍵です。

「もう限界かも」と感じたら、それは“弱さ”ではなく“助けを呼ぶ合図”。専門家の評価とカウンセリング、必要に応じた薬物療法、そして生活習慣の現実的な調整を組み合わせれば、職場での居場所は再び作れます。WEB予約での受診やオンライン相談も活用して、今日から一歩を。