心のクリニック 医療コラム
2025年12月22日
■自分にやさしい言葉が回復力を育てる――セルフ・コンパッションのすすめ

仕事や家事、対人関係で疲れが重なると、いちばん厳しい言葉を自分に向けてしまうことがあります。日吉周辺でも、心療内科・精神科の外来で「もっとできたはず」「また失敗した」と自分を責める訴えは少なくありません。自己批判が続くと、気分の落ち込み(うつ)や不安、集中の低下が長引きやすくなります。心の負荷を軽くするセルフケアの考え方の一つが、セルフ・コンパッション(自分への思いやり)です。

自己批判は“改善”より“消耗”を招きやすい
自分を追い立てる言葉は、短期的には動けるように見えても、緊張を強めて心身のエネルギーを削りがちです。結果として、反すうや先読みの心配が増え、回復の手応えがつかみにくくなることがあります。

セルフ・コンパッションは「甘やかし」ではない
ポイントは、①つらさに気づく(見ないふりをしない)、②人間なら誰でも揺れると理解する、③自分に向ける言葉を少しやわらげる、の三点です。現実を直視しつつ、必要以上に自分を責めない姿勢は、結果的に行動や対人関係の安定につながりやすいと言われます。

日常で使える“内側の声”の整え方
例えば、頭の中の厳しい言葉をそのまま信じるのではなく、「いま疲れている」「不安が強い」など事実のラベルに置き換える方法があります。また、同じ状況の友人にかける一言を思い浮かべ、それを自分にも向けると、気持ちの波がほどけやすくなります。短い言葉でも、積み重ねが大切です。