心のクリニック 医療コラム
2025年12月21日
■夜の「考えすぎ」で眠れない――反すうと思考のスイッチ

布団に入ると、仕事の失敗や人間関係のやり取りが頭の中で何度も再生され、眠りに入りにくい。こうした状態は「反すう(同じ内容を繰り返し考える)」や「心配」が、就寝前の脳を“起きているモード”に保ちやすいことと関係します。睡眠は時間だけでなく、入眠前に心身の覚醒が下がることが大切ですが、頭の中で分析や反省が続くと、脳は危険や課題に備えようとして注意を高めます。結果として寝つきが悪くなったり、浅い眠りが増えたりして、朝に疲れが残りやすくなります。

反すうは、真面目で責任感が強い人ほど起こりやすく、「原因を突き止めたい」「次は失敗しないように」と考える力の裏返しでもあります。ただ、夜は判断力や注意力が落ちやすく、同じ思考が堂々巡りになりがちです。さらに「眠れないかも」という予測が加わると、眠りそのものが“検査対象”になり、ますます覚醒が上がる悪循環が起こります。睡眠の悩みが長引くほど、気分の落ち込みや不安、集中力の低下が重なりやすいのも、この相互作用が背景にあります。日中は気にならないことが、夜だけ大きく感じられるのも自然な反応です。

医療の現場では、考えをゼロにするよりも、いったん外に出して整理する(紙に書き出す等)、浮かんだ思考に短いラベルをつけて距離を取る、注意を「今この瞬間」の感覚に戻す、といった“思考の扱い方”が不眠や不安のケアで用いられます。加えて、不眠に特化した認知行動療法(CBT-I)では、睡眠へのとらわれや就寝前の認知的覚醒に焦点を当て、生活リズムと心身の条件づけを整えていきます。

眠りの質が落ちる状態が続く、日中の不安や抑うつが強い、生活に支障が出ている場合は、精神科・心療内科での評価やカウンセリングも選択肢です。心のクリニック武蔵小杉は武蔵小杉駅から徒歩2分の精神科・心療内科で、WEB予約にも対応しています。お悩みがございましたらご相談ください。